キチン・キトサン

 キチンはN-アセチルグルコサミンがβ-1,4結合した多糖で、カニ、エビ、シャコ、オキアミといった甲殻類の殻、イカの軟骨、イナゴなどの昆虫の殻、きのこ、酵母、カビなどの細胞壁に含まれている。不溶性の食物繊維の成分でもある。キチンを濃アルカリ溶液に漬けて熱処理するとキトサンに変化する。
 キトサンはビフィズス菌の増殖を促進し、腸内環境の改善を図るほか、がん予防、高血圧予防、動脈性疾患予防、免疫増強作用、アレルギー疾患改善、便秘改善、肥満防止や神経痛、腰痛の改善、白内障や骨粗鬆症などの改善作用があるといわれているが、人での科学的な比較試験で確立しているのは、いまのところコレステロールの低下作用だけといわれている。とくにダイエットやがん治療効果を示す臨床的根拠はない。 

カプサイシン

 化学名はN-(ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)-8-メチル-6-ノネアミドで唐辛子の主要辛味成分である。バニリルアミンに有機酸がアミド結合しているバニリルアミドを一般にカプサイシン類と呼び、唐辛子には約20種類が見出されている。
 体内に蓄積された脂肪を分解し、エネルギー消費を促進する作用があることから、肥満防止、食欲増進、疲労回復、冷え症改善、健胃に有効といわれる。

カテキン

 フラボノイドの一つで3-ヒドロキシフラバノール類の総称。茶に多く、乾物当り10%以上含む。  緑茶の主要なカテキンは(-)-エピカテキン、(-)-エピガロカテキン、(-)-エピカテキン-3-ガレート、(-)-エピガロカテキン-3-ガレートの4種で、(-)-エピガロカテキン-3-ガレートは緑茶の全カテキンの半分を占める。
    カテキンには抗酸化、抗菌、抗がん、血圧上昇や血糖値の上昇抑制、消臭など多彩な作用をもつといわれる。

ヘム鉄

 鉄は体内で鉄を吸収するタンパク質であるフェリチン(貯蔵鉄)、鉄を輸送するタンパク質のトランスフェリン(輸送鉄)、そして様々な生理作用を持つヘムタンパク質(機能鉄)に分かれる。
 ヘムは、プロトポルフィリンという赤い色素に2価鉄が結合したものです。鉄は、体内での需要と供給のバランスから、成長期や運動、女性の生理、妊娠などによって鉄分が不足すると、ヘムの生産量が減少しますので、ヘムタンパク質の機能が発揮できず、貧血、息切れ、疲れやすいなどといった様々な症状が出やすくなります。
 そこで、食品から鉄分を摂取する際に鉄の吸収率が大きな問題となって、鉄の吸収率の高いヘム(10~30%吸収;肉類、レバーなどの動物性食品に多い)を「ヘム鉄」と呼び、吸収があまりよくない鉄分(1~5%吸収;野菜、穀類などの植物性食品に多い)を「非ヘム鉄」と分けるようになりました。ヘム鉄は非ヘム鉄と異なって、穀類に含まれるフィチン酸、お茶に含まれるタンニン、あるいは食物繊維などによる吸収阻害がありません。
 ヘム鉄を多く含んでいる食品の摂取は鉄分補給に効果的ですし、また、消費者庁から「特定保健用食品」として許可されたヘム鉄飲料などが市販されています。
(近藤雅雄:ヘム鉄、2015年7月9日掲載)

ミネラル(必須性が認められているもの)

 ミネラルには、人が日常健康生活を送る上で、生命の機能維持に必要不可欠であると確認されているものを必須ミネラルと呼び、これまでに16種類(Na, K, Cl, P, Ca, Mg, S, Zn, Fe, Cu, Mn, Co, Cr, I, Mo, Se)が知られている。その中でも、特に欠乏や過剰が心配される13元素(Ca, Fe, P, Mg, Na, K, Cu, I, Mn, Se, Zn, Cr, Mo)については、摂取基準が策定されている。
 ミネラルは体のバランスを調節し、機能を保つ働きを持つ。さらに、ナトリウムとカリウムのように、関わりあいながら機能しているミネラルもあるので、全体的にバランスよく摂取することは、健康の維持・増進、疾病の予防に重要な役割を発揮する。そのため、毎日の食事では補いきれず不足しがちなものを補うのが、サプリメント活用の目的である。

1.カルシウム(Ca)
 カルシウムは人体でもっとも多く存在する無機質で、成人体重の約2%(体重50kgの成人で約1kg)を占める。人体中のカルシウムの約99%は骨や歯などの硬い組織に存在し、生体を維持する働きをする。これらの硬組織はカルシウムの貯蔵組織としても機能する。残りの約1%のカルシウムは細胞や血液中に存在し、生命の維持に必要な機能の調節に重要な役割を果たしている。さらに遊離カルシウムの濃度は細胞内が細胞外より大きく、この差が情報伝達に関与している。
 生体内の細胞や血液中のカルシウム濃度は、副甲状腺ホルモン、活性型ビタミンD、カルシトニン(甲状腺ホルモン)により一定に保たれている。さらに腸管からのカルシウム吸収を調節し、血液中のカルシウムを骨に沈着させ、骨のカルシウムを血液中に溶出させることによってカルシウム濃度が一定に保持される(図2-7)。したがって、カルシウム欠乏状態が長く続くと骨のカルシウム含量を低下させ、骨粗鬆症の原因となる。
 骨は硬組織ではあるが、約3ヶ月単位で骨吸収と骨形成を繰り返し、常に作り変えられている。
 細胞や血液中のカルシウムは、主としてイオンとして①細胞の分裂・分化、②筋肉の収縮、③神経の刺激、④細胞膜の透過性、⑤血液の凝固などに関与している。
欠乏症-血液中のカルシウム濃度はホルモンによって一定に保たれているので、カルシウム欠乏は貯蔵部位である骨にみられることが多い。幼児では骨のは発育障害、成長障害がおこる。高齢者、特に閉経後の女性では骨粗鬆症が多く見られる。

**骨粗鬆症**
 骨粗鬆症は骨の外形は変化せず、骨塩量の低下により内部が萎縮する疾病で、骨折の原因となる。骨折の後発部位は胸椎、腰椎、大腿骨頚部、上腕骨頭部である。人体の骨量は骨形成と骨吸収のバランスで定まり、骨量は青年期に最大骨量となり、それ以後男女ともに減少する。最大骨量が少ないほど発症しやすいので、青少年期までのカルシウム摂取は重要である。女性は閉経期以降、卵胞ホルモン(エストロゲン)の低下に伴い、発症が多くなる。本症はビタミンDの血中濃度が低く、副甲状腺ホルモン分泌が亢進して、骨量減少が進行する。予防として日光浴と運動が有効である。ビタミンK摂取も良い。また摂取するカルシウムとリンの比率は1:1程度がよく、同時にマグネシウムの摂取も必要である。減量経験者や低体重者は骨密度が低いので、注意が必要である。

2.マグネシウム(Mg)
 マグネシウムは人体に約0.05%(成人で約25g)存在し、リン酸塩や炭酸塩として骨に沈着し、また筋肉に多く、血液にはわずかしか存在しない。マグネシウムは300種以上の酵素の活性剤として働き、エネルギーの生産、アミノ酸の活性化、タンパク質の合成に関与している。また神経の興奮を抑制し、血管を拡張して、血圧を降下させる。その他、脂肪酸合成、ビタミンDの活性化、体温調節にも関与している。過剰症は発生しにくい。カルシウムの約半量摂取するのが望ましい。
欠乏症-マグネシウムが慢性的に欠乏すると虚血性心疾患などの心臓血管の障害をもたらす。欠乏が進行すると、神経過敏症、筋肉のけいれん、不整脈、循環器障害がみられる。

3.リン(P)
 リンはカルシウムについで多く存在する無機質で、成人体重の約1%(約500g)を占めている。そのうち、大部分がカルシウムとともに骨や歯に存在する。残りの大部分はタンパク質、脂質、糖などと結合した有機リン化合物としてすべての細胞に含まれ、細胞の構成成分として、また高エネルギーリン化合物(ATP)としてエネルギー代謝に供給するなど、多くの代謝反応に関与する。また遺伝情報を担う核酸にも含まれる。体液中のリン酸塩はpHや浸透圧の調節にも関与する。
欠乏症と過剰症-リンは日常食品中に十分含まれ、欠乏症はほとんどみられない。長期的に欠乏すると、骨の石灰化が阻害される。現在の日本の食生活では加工食品の利用増加に伴い、食品添加物として広く用いられているリン酸塩の摂取が多くなっている。リンの過剰摂取はカルシウムの吸収を低下させる。カルシウムとリンの摂取量の比率は1:1から1:2の範囲が望ましい。

4.鉄(Fe)
 鉄は体内に男性3.8g、女性2.3g含まれ、その60~70%が血液中のヘモグロビン、20~30%が肝臓、脾臓、骨髄などのフェリチン、ヘモシデリンに貯蔵鉄として、3~5%が筋肉中の酸素運搬・貯蔵物質のミオグロビンに、約1%が鉄含有酵素に存在している。体内に存在する鉄は機能鉄と貯蔵鉄に分けられ、貯蔵鉄の割合は男性は全身鉄の1/3であるが、女性は1/8である。食物中の鉄の形態は、ヘモグロビンやミオグロビンなどのヘム鉄や植物、乳製品、貯蔵鉄に含まれる非ヘム鉄(食品中の鉄の85%以上を占める)からなる。ヘム鉄の吸収率は非ヘム鉄の数倍高い。非ヘム鉄はビタミンCを同時に摂取すると吸収がよくなる。一方、穀類、豆類に含まれるフィチン酸、野菜などに含まれるシュウ酸、お茶に含まれるタンニンは吸収を低下させる。
 鉄は赤血球のヘモグロビンや筋肉細胞のミオグロビンの構成成分となり、酸素を運搬する。また種々の酵素に含まれATP生成に必要なため、エネルギー代謝にもかかわっている。
欠乏症-鉄欠乏は貧血、疲れやすい、頭痛、動悸を起こす。乳児では発育が遅れる。

5.ナトリウム(Na)と塩素(Cl)
 摂取した食塩はナトリウムイオンや塩化物イオンとして吸収される。吸収されたナトリウムは腎臓で調節を受けて、排泄される。ナトリウムは血漿浸透圧に関与している。血漿浸透圧が高くなると、脳視床下部の口渇中枢を刺激して水分摂取を促し、抗利尿ホルモンの分泌を刺激する。したがって、食塩の過剰摂取は高血圧発症因子である。高血圧発症の機序としては、循環血液量の増大が心拍手量を大きくすることによる。そのほかに腎臓のナトリウム排泄能の低下、内因性ジキタリス様物質の放出増大、交感神経亢進が考えられる。
 ナトリウムは体液の浸透圧の維持、細胞外液量の調節、酸・塩基平衡の保持、神経の興奮、筋肉の収縮、細胞膜の糖やアミノ酸の輸送などに関与している。
欠乏症-日常の食事でナトリウムが不足することはないが、多量の発汗に起因するけいれん、食欲不振、疲労などがある。
塩素は浸透圧の調節、酸・塩基平衡、胃酸としてペプシンやアミラーゼの活性化、膵液の分泌刺激などに関与している。
欠乏症-腎臓にカルシウムが沈着する。

6.カリウム(K)
 カリウムは成人で約100g存在するが、大部分は細胞内にある。ナトリウムとともに浸透圧の維持、神経刺激の伝達、筋肉の収縮、水分の維持などに関与する。カリウムは腎臓でのナトリウム再吸収を抑制して尿中への排泄を促進するため、高血圧症に対して降圧作用がみられる。
欠乏症-カリウムは多くの食品に含まれるので欠乏症はほとんどみられない。

7.亜鉛(Zn)
 成人の体内に約2gの亜鉛が含まれ、95%以上が細胞内に存在している。全量の50%以上が筋肉に、約20%が皮膚に存在している。血液中には全量の0.5%が含まれ、その70%が赤血球中に、10~20%が血漿中に存在する。亜鉛は100種類を超える亜鉛含有酵素として機能している。また中枢神経活動、免疫系の発達と維持、遺伝子の転写制御、細胞の増殖と分化などに関与している。
欠乏症-成長障害、食思不信、発疹、味覚障害、免疫能低下、皮膚障害が起こる。亜鉛の吸収は鉄やカルシウムと拮抗し、フィチン酸により吸収が阻害される。

8.銅(Cu)
 人体に70~100mg存在し、肝臓や脳に比較的多く存在する。銅は銅含有酵素として機能している。また乳児の成長、ヘモグロビンの合成、骨の合成に関与している。
欠乏症-ヘモグロビンの形成が減少して、貧血になる。骨折・変形を起こす。

9.マンガン(Mn)
 マンガンは人体では肝臓、膵臓などの組織に比較的多く存在し、骨の発育に必要とされる。炭水化物、脂質、タンパク質代謝における各種酵素の活性剤として機能する。
欠乏症-体重減少、骨の生育低下、生殖能力低下、運動失調。
10.ヨウ素(I)
 ヨウ素は人体に15~20mg存在し、その70~80%は甲状腺に含まれる。甲状腺ホルモンの成分として、タンパク質の合成や交感神経の感受性に関与している。
欠乏症と過剰症―欠乏症は日本ではまれであるが、世界的には内陸地域では多くみられ、甲状腺肥大、肥りすぎ、疲労、発育停止が起こる。過剰摂取によっても甲状腺腫や甲状腺機能障害を引き起こす可能性がある。

11.セレン(Se)
 グルタチオンペルキシダーゼという酵素の成分であり、この酵素は抗酸化作用を有し、過酸化脂質を還元する。生体内で過酸化物から細胞を防御する役割を持つ。
 克山病という心筋壊死をともなう心疾患は中国でみられ、セレン欠乏が基本的誘因と考えられている。セレン過剰症としては脱毛や爪の変形がみられる。

12.クロム(Cr)
 糖代謝、脂質代謝、発育、免疫力に関与する。クロムの必要量は極めて微量であるため、通常は欠乏しない。クロムを取り扱う作業者は呼吸器障害などの過剰症がみられる。

13.モリブデン(Mo)
 キサンチン酸化酵素、フラビン酵素、アルデヒド酸化酵素の補因子として機能する。食生活が原因の欠乏症は知られていない。モリブデンを過剰に摂取すると銅欠乏症を発症する。
(近藤雅雄:必須ミネラル、2015年7月8日掲載)

ビタミン(水溶性)

1.ビタミンB1(チアミン)
生理作用:ビタミンB1は糖質が体内で代謝されるときに必要な酵素の補酵素として作用している。食物から摂取された糖質はグルコースに変えられ、血液中を血糖(グルコース)として運ばれ、各臓器で利用される。このグルコースを完全に燃焼し細胞内でエネルギーに変えるには、解糖系、TCA回路、呼吸鎖などの経路が必要である。この解糖系とTCA回路を結ぶ酵素にピルビン酸デヒドロゲナーゼがあり、この酵素の反応には補酵素としてチアミンにリン酸が結合したチアミンピロリン酸が必要である。
欠乏症:糖質が多い食生活の場合にビタミンB1が欠乏すると、脚気(多発性神経炎、浮腫)やウエルニッケ脳症(精神障害、運動障害、眼球運動麻痺)を起こす。

2.ビタミンB2(リボフラビン)
生理作用:ビタミンB2は生体内ではフラビンモノヌクレオチド(FMN)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)として存在している。両者は多種類の酸化還元酵素に固く結合して存在するが、これらの酵素はフラビン酵素として知られ、生体内の酸化還元反応に関与している。また水素伝達系の構成員として水素の運搬をする。すなわちビタミンB2は糖質、脂質、タンパク質からエネルギー(ATP)の生成に関与している。
欠乏症:口角炎、舌炎、皮膚炎

3. ビタミンB6(ピリドキシン)
自然界にはビタミンB6の作用のある物質としてピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミンの三つの型がある。生体内ではリン酸エステルとして存在しており、ピリドキサールリン酸(PLP)が活性型である。
生理作用:PLPは酵素の作用でアミノ酸と結合して、アミノ酸の代謝に広くかかわっている。したがって、タンパク質の摂取が多くなると、ビタミンB6の必要量が増加する。
欠乏症:ヒトでは腸内細菌によってビタミンB6が合成されることもあり、欠乏症は起こりにくい。欠乏が起これば皮膚炎、貧血を起こす。

4.ナイアシン(ニコチン酸、ニコチン酸アミド)
ニコチン酸とニコチン酸アミドを総称してナイアシンという。体内ではリボース、リン酸、アデノシンと結合してニコチン酸アミド・アデニン・ジヌクレオチド(NDA)あるいはニコチン酸アミド・アデニン・ジヌクレオチド・フォスフェート(NDAP)として存在し、補酵素として作用する。
生理作用:NDAおよびNDAPは多くの脱水素酵素の補酵素として水素の伝達反応に関与し、糖質、脂質、タンパク質の代謝に広く関与している。
欠乏症:ペラグラ(皮膚炎、下痢、中枢神経症状(認知症))、口舌炎、胃腸病

5.パントテン酸
パントテン酸は補酵素コエンザイムA(CoA)の構成成分である。
生理作用:体内でパントテン酸は補酵素であるCoAとなり、脂肪酸の分解と合成など広範な代謝にかかわっている。
欠乏症:動物がパントテン酸欠乏になると、成長障害、皮膚炎等などが起きることがある。ヒトでは腸内細菌がパントテン酸を合成するので欠乏症はあまりみられないが、重症の栄養失調症では手足の麻痺や疼痛がみられる。

6.ビオチン
ビオチンは酵素タンパク質と固く結合してビオチン酵素を形成している。
生理作用:ビオチンは代謝過程で生成する二酸化炭素を糖質や脂質に固定するピルビン酸カルボキシラーゼやアセチルCoAからマロニルCoAカルボキシラーゼなどの補酵素として重要な役割を果たす。
欠乏症:ビオチンは腸内細菌によって合成され吸収利用されるので、通常の食生活では欠乏することはない。しかし生卵白を大量に食べると、卵白中のアビジンという糖タンパク質とビオチンが結合して吸収を阻害するため、欠乏を起こすことがある。卵白を加熱するとアビジンの作用は消失する。ビオチン欠乏では、皮膚炎、筋肉痛、食欲不振、悪心などの症状を呈する。

7.葉酸(フォラシン)
ホウレンソウから抽出した成分が乳酸菌の増殖に有効であることが見出され、葉酸と命名した。
生理作用:葉酸の活性型であるテトラヒドロ葉酸は、1炭素原子の転移反応の補酵素として作用する。たとえばグリシンからのセリンの合成、核酸塩基の合成、コリンの合成、ヘモグロビンのポルフィリン核の合成などに関与している。
欠乏症:葉酸が欠乏すると巨赤芽球性貧血となり、さらに口内炎、舌炎、下痢などの症状を呈する。

8.ビタミンB12(コバラミン)
分子中にコバルトを含むのでコバラミンとよばれる。生体内では補酵素型であるアデノシルコバラミン、メチルコバラミン、ヒドロキシコバラミンとして存在する。
生理作用:生体内での補酵素作用としてはメチル基、転移反応、核酸の合成、アミノ酸や糖質の代謝に関与している。
欠乏症:ビタミンB12は赤血球の成熟に関係があり、欠乏すると悪性貧血を起こす。しかし腸内細菌が合成するので、一般的に欠乏症は起こりにくい。

9.ビタミンC(アスコルビン酸)
ビタミンCにはアスコルビン酸(還元型ビタミンC)とデヒドロアスコルビン酸(酸化型ビタミンC)がある。アスコルビン酸は酸化されるとデヒドロアスコルビン酸となるが、この物質は還元されるともとのアスコルビン酸に戻る。ビタミンCは体内に広く分布しているが、摂取量が多くても体内の貯留量はそれほど増えず、尿中に排泄される。
生理作用:アスコルビン酸の強い還元力で下記のような生体内の種々の酸化還元反応に関与して、アスコルビン酸はデヒドロアスコルビン酸になる。
① 過酸化脂質の生成抑制、ビタミンEの作用を増強。
② 肝臓の解毒物質の代謝に関与。
③ コラーゲン(結合組織タンパク質)の生成に関与。
④ 副腎皮質ホルモンの合成に関与。
⑤ フェニルアラニン・チロシン代謝に関与。
⑥ 鉄の吸収促進。腸管内での吸収を高める。
⑦ 発ガン物質であるニトロソアミンの生成抑制。
欠乏症:ビタミンCの欠乏により、結合組織のコラーゲンの生成が不足し、毛細血管が損傷しやすく、歯ぐきや皮下の出血が起こる。そのような症状を壊血病という。また小児では骨の形成不全がみられる。

ビタミン(脂溶性)

1.ビタミンA(レチノール)
 ビタミンAは動物性食品に含まれるレチノールと、植物に広く分布するプロビタミンAであるカロテノイド類が存在する。カロテンには3種類あるが、食品中にはβ-カロテンがもっとも多く、しかもビタミンA効力がもっとも高い。
生理作用:①眼の網膜にある視覚を司る物質であるロドプシンの構成成分となっている、②上皮組織における粘膜の糖タンパク質の合成に関与し、機能を維持している、③成長促進、細胞増殖と分化の制御、免疫機能の維持に関与している。
欠乏症:ビタミンAが不足すると、ロドプシンの生成が低下するため、暗いところで物を見る機能が遅れ、夜盲症となる。上皮細胞の角質化が起こり、皮膚、粘膜の乾燥により、細菌感染に対する抵抗力の低下がみられる。
過剰症:過剰に摂取すると肝臓に蓄積されて、急性の脳圧亢進症、慢性では成長停止、関節痛、脂肪肝などがみられる。

2.ビタミンD(カルシフェロール)
 天然には植物起源のビタミンD2と動物起源のビタミンD3があり、両者の生理活性はほぼ同じである。紫外線照射によりビタミンDに変化するものをプロビタミンDといい、ビタミンD2はきのこなどに含まれるプロビタミンD2から、ビタミンD3は動物の皮膚に含まれるプロビタミンD3から生じる。
生理作用:ビタミンDは体内で活性型に変えられ、カルシウムの吸収や骨への沈着、骨からのカルシウムの動員を司っている。このカルシウムの代謝は種々のホルモンも関与している。
欠乏症:幼児期に不足するとくる病、成人では骨軟化症を引き起こす。
過剰症:食欲不振、体重減少が起こり、血中カルシウム濃度が高くなるので腎臓、心臓、動脈にカルシウムが沈着し、動脈硬化や腎不全を起こす。

3.ビタミンE(トコフェロール)
 ビタミンEは天然には8種類あるが、重要なのは生理活性がもっとも高いα-トコフェロールである。
生理作用:ビタミンEは抗酸化作用(酸化防止作用)が強く、多価不飽和脂肪酸が酸化されるのを防ぐ作用がある。細胞内にはビタミンEの大部分が生体膜に組み込まれて存在しており、ビタミンEは抗酸化作用を通して生体膜を正常に保つ作用をしている。
欠乏症:ビタミンEが不足すると、血漿のビタミンE濃度が低下し、細胞膜が破壊されやすくなり、赤血球が溶血しやすくなる。動物ではビタミンE欠乏により不妊症や筋肉の萎縮が起こることが報告されているが、ヒトでは明確ではない。
過剰症:明らかではない。

4.ビタミンK(フィロキノン)
 生理作用:血液の凝固にはプロトロンビンが必要であり、肝臓でのプロトロンビン合成にビタミンKが関与している。またビタミンKはビタミンDとともに骨の石灰化を促進して、骨形成に重要な役割を果たしている。
欠乏症:ビタミンKが欠乏すると血液中のプロトロンビンが減少して、血液の凝固を遅延させる。
過剰症:嘔吐、腎障害

イソフラボン

 ポリフェノール化合物の一種で、大豆胚芽に多く含まれる。イソフラボンは女性ホルモンのエストロゲンと同じようなはたらきをするため、更年期の様々な症状に有効であり、また、抗酸化作用も認められ、がんの予防にも役立つとされている。とくに、骨粗鬆症の予防に有効といわれている。 

アルギニン

 牛乳、鶏肉、子牛肉、ナッツ類レーズン、玄米などに含まれ、成長ホルモンの合成に関与し、その他、動脈硬化の予防作用、免疫力を高めたり、筋力を増強する働きがあると考えられている。

アリシン

 ニンニクやネギ、ニラ特有のにおいの成分でアリル化合物、硫化アリルなどとも呼ばれている。ニンニク(英名はガーリック)は、ユリ科植物ネギ属の多年生草本で、学名をAllium (臭う)Salivumという。最近、欧米を中心に、ニンニクの科学的研究が盛んに進められ、発がん抑制効果、抗菌、抗ウイルス作用、血小板凝集能改善効果、高血圧の改善、免疫能増強、水虫の治療効果などが報告され、また、セレニウム含量が高く、強心作用があるといわれている。
 1990年にアメリカ国立がん研究所は、ニンニクは食物の中では最もがん予防が期待され、強い抗酸化能があると報告している。
 ニンニクは自然の状態では無臭であり、ニンニクを刻んだり、砕くと細胞が壊れ無臭のアリインと酵素アリナーゼが混ることによって、アリインが分解され、強い刺激臭のあるアリシンに変化する。
 このアリシンは不安定な化合物で、さらに二硫化ジアリルなどのニンニク特有の臭気を有する含硫化合物へと変化する。アリシンはビタミンB1と結合し、容易に安定な化合物アリチアミンになる。アリチアミンはビタミンB1分解酵素チアミナーゼの作用を受けず、ただちに腸管吸収し、体内でビタミンB1に戻る。
 オイル焼きしたニンニクには、その成分のS-アリルシステインが脳神経細胞を刺激し、がん予防作用もあるといわれている。
 ニンニクを食べた後、生のリンゴを食べると臭みを感じなくなる。最近は、無臭ニンニクが栽培され、また生のニンニクをバジルやローズマリーなどのハープエキスに涌ければ無臭になるといわれている。
 アリシンの主な作用は抗菌、抗がん、血圧低下、血行改善、ビタミンB1吸収促進(疲労回復)、胃液の分泌促進、たんぱく質の消化促進、代謝促進、解毒促進、食欲促進、冷性の改善、風邪の初期症状の改善、血小板凝集抑制、抗酸化、抗ストレス、肝細胞保護などの多彩な作用が知られている。
 しかし、生のニンニクには細胞毒性があるため、生や加熱したものでも大量に摂取すると、胃粘膜(胃炎)を荒らし、貧血(溶血性)、疲労の助長、アレルギーなどの症状が出ることがあるので、食べ過ぎには注意が必要である。(近藤雅雄)

アスパラギン酸

 アスパラガスから発見されたアミノ酸で、体内でアスパラギンとなり、主に代謝を活性化し、疲労回復効果があるといわれる。アスパラガスのほかに大豆やもやしなどの発芽しかけた豆類にも豊富に含まれている

アスタキサンチン

 βーカロチンなどと同じカロチノイドの一種で、βカロテンの環状構造物が酸化されてヒドロキシル基とケトンを持った化合物。キサントフィルの一種で、サケ、エビ、カニ、イクラ、オキアミ、サクラエビ、キンメダイや海藻などの魚介類に多く含まれる赤い色素である。カロチノイドの仲間の中では抗酸化力に極めて優れ、ビタミンEの約1000倍といわれる。同じカロチノイドの仲間で緑黄色野菜にはルテイン、リコペン、βカロテンが多い。これら抗酸化力の直接試験についての知見は乏しいが、アスタキサンチンはビタミンEの約1000倍の抗酸化力(サントリー基礎研究所)が示され、自然界で最強の抗酸化物質との指摘がある。
 主な効能は脂質の酸化防止、LDLコレステロールの低下、動脈硬化の予防・改善、糖尿病性白内障の進行抑制、ストレスなどによる皮膚の免疫機能低下の抑制、紫外線による皮膚の酸化障害防止、炎症の抑制、ビタミンAの生産、日周リズム(概日リズム)の調節などといわれている。最近、脳血管性認知症やアルツハイマー病の予防、糖尿病の合併症予防、白内障の予防、加齢性黄斑変性症の予防などにも効果が期待できると注目されている。(近藤雅雄)

ウコン

 ウコンは日本には平安時代中期に中国から入ってきた。秋ウコンは主に食材として、春ウコンの根茎は健胃薬や利胆剤などの生薬に使われてきた。
 ウコンはショウガの仲間で、分類はショウガ目ショウガ科ウコン属に属する多年草植物で、ウコン属のものが約50種類ある。中でも代表的なものはキョウオウ(春ウコン)、ウコン(秋ウコン)、ガジュツ(紫ウコン)の3種類で、ショウガと同様に根茎が利用されている。ウコンの英語名は「ターメリック」と呼ばれ、諸外国でも食品や染物等に使われていた。ウコンの黄色い色素は「クルクミン」という成分で、カレーや沢庵などの黄色に利用されている。クルクミンは肝臓の機能を高め、胆汁分泌作用をもつことが知られているが、人での臨床的な試験データは見当たらない。

1.春ウコン(キョウオウ)
 英語名:ワイルドターメリック 
 原産地:インド
 開花期:4月~6月、春に淡いピンクの花が咲く。
 成 分:クルクミンが約0.3%含まれる。精油分は3種類のウコンの中では一番多く、約6.0%含まれ、テルペン類はとしてターメロン、クルクモール、B-エレメン、カンファー、 カンフェン、その他フラボノイド、タンニン、ビタミンB、ビタミンCなどが含まれています。ミネラルは約6%で、カルシウム、カリウム、マグネシウム、リン、鉄などが含まれている。
 予防作用:肝臓病、糖尿病、高血圧、心臓病、狭心症、痔、慢性肝炎、胃潰瘍、黄疸ろく膜、十二指腸潰瘍、利尿促進、二日酔い、活性酸素除去、胃酸過多、むくみなどが知られている。

            2.秋ウコン(ウコン)
 英語名:ターメリック
 原産地:熱帯アジア・東南アジア
 開花期:8月~10月、夏から秋にかけて白い花が咲く。
 成 分:クルクミン約3.6%含まれ、精油分1~4%で、テルペン類はターメロン、デヒドロターメロン、ジンギベレン、シオネ-ルなどが、ミネラルは春ウコンと同じ成分が含まれているが0.7%と少ない。また、ビタミンB、ビタミンCなどが含まれる。
 主な効能:肝炎、胆道炎、胆石症、カタル性黄疸、健胃、動脈硬化、閉経痛、腹痛などが知られている。
 その他:クルクミンの含有量が多いためカレー、タクアンの着色のほか、染物などに用いられている。

3.紫ウコン(ガジュツ)
 英語名:ゼドアリー
 原産地:インド、マレーシア
 開花期:6月~8月初夏にピンクの花が咲く。
 成 分:精油分1~1.5%で、テルペン類はクルクメノ-ル、クルクモール、クルクマジオール、シネオール、カンファー、カンフェンで、その他サポニン、ビタミンB、ビタミンCなどが含まれている。ミネラルは春ウコンと同じ成分が含まれているが、1.3%と低い。
 主な効能:胃・十二指腸潰瘍、消化不良、腹痛、下痢、抗がん作用、高血圧、高血糖、活性酸素除去、花粉症、腎臓病、喘息、神経痛、ピロリ菌除去など。ガジュツはダイエット成分だけではなく昔から医者要らずと呼ばれるほど様々な働きが知られている。
 その他:クルクミンの含有率は0%で、春、秋ウコンに比べて苦味が強い。ガジュツはインド、中国南部、スリランカ、東インド諸島などで、また日本でも屋久島,奄美大島,沖縄などの一部で栽培されている。近藤雅雄)

蜂産品類

蜜蜂と自然が生み出したからだに優しい栄養バランスを含んだ花粉食品と各種フラボノイド化合物が濃縮されたプロポリス食品が認定されている。

(1)花粉食品
 蜜蜂のはたらきバチが食糧にするために集めた花粉で、栄養価が高い。成分としてはアミノ酸を約10%含むほかビタミンA、B群、C、E、ルチン、カリウム、リン、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅などの必須栄養素、各種酵素、抗菌酵素、成長促進因子など多数の成分を含んでいる。効用としては食欲増進、消化吸収、新陳代謝亢進により、成長促進、体力回復、強壮、精神安定、更年期障害の症状改善、前立腺疾患の症状改善など、虚弱体質、更年期を迎えた人、勢力が衰え始めた人、貧血気味の人に効果があるといわれている。

(2)プロポリス食品
 プロポリス(propolis)プロポリスの歴史は古く、古代エジプトでは腐敗、保存の効果目的で、ミイラを作る時の防腐剤として使用されていた。また、東欧諸国でも早くからニキビや肌荒れ防止、育毛剤など民間薬として使われてきた。 プロポリスは蜜蜂が樹木から集めた樹脂状のものに自らの唾液を混合させて作ったもので、強い殺菌、消毒作用がある。これを巣の入り口や、隙間の壁に塗りつけて、巣の修理補強や細菌繁殖、外敵の侵入を防ぐというような、幼虫を育てやすい環境を作るのに重要な働きをしている。そこで、プロポリスはギリシャ語でプロ(前を守る)とポリス(都市)を結合し命名された。すなわち、巣を守る(敵の侵入を防ぐ城壁)という意味である。これに対して、ローヤルゼリーや蜂蜜はもともと食べ物で、ミツバチのメスの幼虫にローヤルゼリーを与えると女王蜂になり、蜂蜜と花粉を与えると働き蜂となる。
 プロポリスの成分は樹脂、ミツロウ、精油、花粉、各種有機酸、脂肪酸、アミノ酸、ミネラル、ビタミン、酵素などが知られているが、薬効の中心を担うのはフラボノイド化合物で,その一部はビタミンPとも呼ばれている。この成分は産地により異なるが、化学成分のほとんどはフラボノイドである。フラボノイドの多くは植物中に配糖体として存在するが、プロポリスのものは、すべて加水分解され、糖の脱離したアグリコン(非糖部)として存在する。その他、ケルセチン、カフェイン酸フェネチルエステル、クロレデン系ジテルペン、アルテピリンCなどが薬効成分として注目されている。
 効用として免疫機能の強化、抗菌・抗ウイルス・抗炎症、抗がん・抗腫瘍、抗酸化、毒性軽減、細胞膜の若返り、打撲症・切り傷・しもやけ・あかぎれ・火傷・日焼け・角化症・いぼ・脱毛症、カンジダや白癬菌などの抗菌などに効果があるといわれ、また、不眠症の人、便秘の人、湿疹・アトピー性皮膚炎の人、花粉症・喘息などのアレルギー症状のある人、リウマチの人や、また、糖尿病、肝臓疾患、循環器疾患、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・大腸炎などの消化器疾患、がんなどにも効果があるといわれている。
 しかし、プロポリスにはブラジル産、オーストラリア産、中国産、日本産などが市販されており、産地によってハチが樹液(ユウーカリ、アレクリン、カバ、ポプラなど)を採取する植物が違うために薬効にも差があることが知られている。日本ではブラジル産のユーカリ系製品が多い。
 プロポリスは養蜂家の接触皮膚炎などを引き起こす原因でもあり、香料アレルギーなどを示す人の場合は、プロポリスでかぶれる可能性が高く、注意が必要である。サプリメントとして使用する場合は効果に製品差、個人差があるので摂取に際しては専門家のアドバイスを受けることが望ましい。(近藤雅雄)

発酵微生物類

酵母食品、乳酸菌(生菌)利用食品、植物発酵食品、植物エキス発酵飲料、納豆菌培養エキス食品にJHFAマークが表示されている。

(1)酵母食品 
 酵母(イースト)は単細胞の菌で、無酸素下で糖類をアルコールと炭酸ガスに分解する作用があり、ビール酵母、黒酵母、亜鉛酵母などがある。この作用を利用して酒類、味噌、醤油、パンなどが生産される。健康補助食品や医薬品、調味料などにはビール酵母やパン酵母を分解・抽出した酵母エキスが用いられており、その成分は約50%がアミノ酸バランスの優れたたんぱく質で、その他ビタミンB群、ミネラルを多く含む。また、多糖類のグルカンやマンナンなどの食物繊維、解毒や抗酸化作用のあるグルタチオン,核酸を含んでおり、肝臓・消化器系に対する作用、造血系に対する作用などがいわれている。

(2)植物発酵食品
 食べにくい・消化しにくいという食用植物の難点を、微生物発酵させることによって解決した新しいタイプの発酵食品であり、穀類(玄米、胚芽、ハトムギなど)、大豆、根菜類、きのこ、果実類、海藻類、ゴマ、ミツバチ花粉などが含まれている。これを麹菌、酵母、納豆菌、乳酸菌などで発酵させ、数年間をかけて熟成後、粉末、顆粒、ペーストなどにしたもので、多種類の栄養成分を含む。

油脂類

 油脂類としてはアボガド油、オリーブ油、玄米胚芽油、ゴマ油、小麦胚芽油、コメ油、シソ油、大豆油、月見草油、ヒマワリ油、ベニバナ油、亜麻仁油、クリルなど多数が知られている。健康補助食品に認定されているのは不飽和脂肪酸のγ-リノレン酸含有食品、イコサペンタエン酸(EPA)含有精製魚油食品およびドコサヘキサエン酸(DHA)含有精製魚油食品、大豆レシチン食品および月見草油である。
 必須脂肪酸としてアラキドン酸、リノール酸、リノレン酸が知られているが、EPAやDHAはα-リノレン酸から生産される。月見草油は古くから有用植物として知られ、γ-リノレン酸を豊富に含んでいる。近年、注目されている亜麻仁油にはα-リノレン酸がゴマの約100倍含まれている。また、オキアミから抽出されるクリルにはDHA、EPAを豊富に含み、さらに抗酸化成分のアスタキサンチンが含まれ脂質過酸化防止に有用である。
 不飽和脂肪酸にはn=3系(αリノレン酸、EPA, DHA)とn=6系(リノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸)との関係がある。n=3とn=6系の摂取比率には多くの議論がある。これらのうち、EPA(エチルエステル)は動脈硬化症(閉塞性)の医薬品(医療用)として認可されている(商品名エパデール)。

藻類

 藻類には紅藻(アサクサノリなど)、褐藻(昆布、若布など)、緑藻(クロレラ、青海苔など)、藍藻(スピルリナ、スイゼンジのりなど)などが知られているが、このうち、健康補助食品として認可されているのはたんぱく質、ビタミンB2、鉄分などが豊富で緑黄色野菜の多いクロレラとスピルリナである。これらの食品は健康食品の中でも総合的な栄養補給に優れた食品として注目されているが、その反面副作用も多く報告されている。

 クロレラには解毒作用、糖尿病の予防、抗がん作用、免疫力増強作用など多数の効用が報告されているが、副作用も多く報告されている。クロレラは単細胞で極めて増殖力が旺盛で、たんぱく質のほか炭水化物、脂肪、ビタミン(E、カロチン、B群、C)、ミネラル(鉄、マグネシウム、カルシウム、カリウム)、食物繊維、葉緑素などを豊富に含み、いわゆる完全食品としてNASA(アメリカ航空宇宙局)が宇宙食として試作、話題を呼んだことで有名である。このクロレラは、1890年オランダ人バイリングが発見し、ギリシャ語のクロロス(緑の)とラテン語のエラ(小さいもの)をあわせて命名された。

 スピルリナは細胞の形がスパイラル(らせん状)をしており、緑黄色野菜の代替として、糖尿病、肝炎、貧血症、高脂質血症、慢性膵炎、胃腸炎、解毒作用など多くの効果が報告され、メキシコでは1937年にスピルリナを正式な食品として認可している。

きのこ類

 きのこ類にはたんぱく質、ビタミンDやB2、ミネラル類、βーグルカンなどの多糖類を多く含んでおり、シイタケ食品やマンネンタケ(霊芝)食品が健康補助食品としてJHFAマーク表示されている。
 国内には4~5千種類のきのこが自生しているが、このうち食用になるのは約百種類で、毒キノコ類など食用にならない方が圧倒的に多い。通常市販されているものにはマツタケ、シイタケ、マイタケ、ブナシメジ、ナメコ、エノキダケ、メシマコブなどが有名で、多くの効用が報告されている。
 きのこに多く含まれているβグルカンには腸の環境を整え、免疫力を活性化し、がんを防ぐ作用があることが動物実験で確認されている。さらに便秘の予防や血中コレステロール減少作用、骨粗鬆症予防効果などが知られている。
 最近、ヤマブシイタケに神経の成長を促す活性物質が静岡大学の河岸洋和教授によって発見され、アルツハイマーなどの中枢神経系の病気との関連が指摘され、将来的には新薬の開発につながる可能性も秘めているといわれている。
 きのこは植物ではなく、菌類に分類される生物で、きのこ特有のうまみはグアニル酸という成分による。これは核酸の構成成分であり、この量が多いか、少ないかによって味が大きく変わる。きのこに昆布などに含まれるうまみの成分グルタミン酸と一緒になるとうまみが数十倍に上昇するといわれる。

(1)シイタケ食品
 日本でも最も多く食用されているのがシイタケで、糖質が約60%を占め、残り20%がたんぱく質、10%が食物繊維、5%がミネラル、3%が脂質、残りがビタミン類で、とくにDの前駆体であるエルゴステロールが多いのが特徴である。サプレメント食品にはシイタケ自体や子実体に育つ前の菌子体から抽出したエキスが用いられている。
 この菌子体には抗がん作用のあるβグルカンが含まれ、白血球の免疫機能に関与するマクロファージやT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞の機能を増強させることが動物実験で確認されていることから、免疫機能を高めることによってがんを予防する効果があるといわれている。また、シイタケの核酸成分であるエリタデニン、デオキシレンチナシン、5’-AMPには血小板の凝集を防ぐ抗血栓作用があり、エリタデニンには体内のコレステロールの排出と代謝を促進する作用がある。また、動脈硬化、高血圧、糖尿病などの予防にも関与するといわれている。

(2)マンネンタケ食品
 サルノコシカケ科に属する担子菌の一つであり、色の違いによって赤芝、白芝、黄芝など、形の違いによって鹿角芝、牛角芝などと呼ばれている。また、霊妙なる薬効から霊芝とも呼ばれている。
 薬効があるのは子実体(かさの部分)で、これを煎じたり、乾燥させて粉末や粒状、カプセルにしたサプレメントが商品化され、制がん作用、頭痛、不眠症、神経衰弱、白内障、口内炎、気管支炎、胃炎、動脈硬化、婦人科疾患、腰痛など多彩な症状に効果があるといわれている。

(3)アガリクス
 アガリクス茸(和名 かわりはらたけ)の原種は、ブラジル東南部サンパウロ郊外のピエダーテの山中に自生するキノコで、「アガリクス」と名前がつくキノコは32種類存在している。
 現地では「太陽のキノコ」「神々のキノコ」「神秘のキノコ」などと呼ばれ、古くから珍重されてきた。現在市場に出ているものは、人工栽培のものが多く、ピエダ-テの天然アガリクスが日本の市場にでることは、まずありえないといわれているが、産地による大きな違いはない。
 アガリクス茸は、1965年ペンシルバニア州立大学教授のシンデン博士とランバート研究所のランバート博士の二人が制ガン作用等の研究発表を行い、その制がん作用が注目されるようになった。

アガリクス茸(学名:アガリクス・ブラゼイ・ムリル)
ⅰ)成分
   多糖類:β-(1,3)-D-グルカン・β-(1,6)-D-グルカン・キシログルカン・ヘテログルカン蛋白質複合体・キチン質・マンナン・マンノースなど
 アミノ酸:イソロイシン・ロイシン・メチオニン・フェニルアラニン・リジン・バリン・スレオニン・トリプトファン・アスパラギン酸・グルタミン酸・アラニン・グリシン・セリン・プロリン・システイン・チロシンなど
 酵素:アスパラキナーゼ・アミラーゼ・カタラーゼ・グルコシターゼ・スクラーゼ・セルラーゼ・ぺクターゼ・ペプシン・ぺプシターゼなど
 その他:核酸

ⅱ)効能
 最も注目されているのは、アガリクスに含まれるβ-1,3/1,6-Dグルカン(シイタケやマイタケなどに含まれるブドウ糖の独特の結合物)の免疫活性作用である。これは、マクロファージ、顆粒細胞、NK細胞といった特定の白血球細胞の表面にある受容体分子と一致するため、これらの細胞が刺激されて微生物を殺す物質を作り、あらゆる体内の異細胞を分解し、さらに活性化されると白血球を増やすようにB細胞やT細胞に伝えるサイトカインというシグナル分子をつくる。そのため、抗腫瘍作用、制がん作用、がん予防、血糖低下、動脈硬化改善、アレルギー、リウマチ、花粉症予防などの作用があることが知られている。
 そのほかにアガルクスには血圧と動脈硬化に関する作用、肝機能に関する作用、腎機能に関する作用、血液に関する作用、消化機能に関する作用、脳神経系機能に関する作用、成長と発育に関する作用、皮膚や毛髪に関する作用など多くの効用が報告されているが同時に副作用も報告されている。(近藤雅雄)

イチョウ葉エキス食品

 イチョウは、およそ1億5千万年前から地球上に存在しており、「生きた化石」と呼ばれている。何千年も生き長らえる生命力の強い植物で、原爆で被災した広島で最初に芽吹いたのがイチョウであったといわれている。
 イチョウ葉エキスにはケルセチン、ケンフェロール、イソラムネチンの配糖体、カテキンなど約20種類以上のフラボノイドのほかビロバライド、クエルシトリン、テポニン、シマリン、他の植物には含まれていないギンコライド(A,B,C,J)などのテルペン類を含んでおり、血小板凝固作用、アレルギー因子の作用抑制,血液の粘性改善し、血液をサラサラにする、血流障害除去、活性酸素の発生抑制、記憶力改善など多彩な作用が知られている。
 副作用としては、一過性の頭痛や胃腸の不快感、アレルギー性の皮診が知られている。アレルギーについてはイチョウの葉に含まれているギンコール酸にアレルギー作用があるため、健康補助食品としてはギンコール酸を極力除去 (5ppm以下)した原料が用いられている。抗凝固剤を使用している場合は血管拡張作用などが強く現れることがあるので、使用しないほうが良い。

 イチョウは古い進化の歴史を持ち、最盛期のジュラ紀中頃(約2億年前)には地球全土で大繁盛していたことがわかっているが,その後、地殻変動や氷河期のたびに絶滅していき、最後にわずか1種類だけが中国南西部の温暖地方に生き残ったのが現存のイチョウである。日本へは12~13世紀ごろに人によって運ばれたと考えられている。
 ヨーロッパ諸国には1730年に長崎の出島に滞在するドイツ人医師によって伝わり、現在ではドイツやフランスでイチョウの葉を乾燥させて成分を抽出したイチョウ葉エキスが脳血管障害や脳機能障害に対する予防・改善効果があることから医薬品として認可されている。日本では高齢化が進む中でボケ防止、生活習慣病予防などにより逆輸入された食品である。(近藤雅雄)

アロエベラ食品

 アロエはアラビア語の「苦み」を意味する Alloch に由来し、有史以前から世界最古の下剤といわれ、食品および香粧品としても広く利用されてきた。ブッシュマンも古くから傷の手当てに用いていた壁画が残っている。古代エジプトの医学を知る上で重要な資料である『医学パピルス』には、マダガスカル島のアロエが苦味健胃薬として用いられていたことが記載されている。

 アロエはアフリカ原産のユリ科植物で、常緑多肉質の葉をもつ多年性草本。最近は、ユリ科からアロエ科アロエ属に分類されている。アロエ属植物はサハラ砂漠以南の岩の多い草地に自生し約350種が知られており、園芸品種を含めると500種以上の品種があるといわれる。代表的のものは日本の太平洋側に野生で生えている茎のあるキダチアロエと西インド諸島のバルバドスを原産地とし、食用向けにアメリカ・テキサス州で大量栽培されているアロエベラで、飲用や食用、外用に使われている。
 アロエの代表的な薬効成分のほとんどは葉皮に含まれ、真中の半透明な部分は抗炎症、保湿の成分を含むが、99.5%が水分である。
 日本では、薬事法上、アロエ薬理成分アロインが下剤として医薬品に登録されているため、アロエベラ、ケープアロエについては、アロインの含まれる葉皮を取り除かないと食品としては使えないが、キダチアロエは特別な場合を除き非医薬品に分類されているので、食品などにも加工されている。

ⅰ)成分
 アロエは多肉植物で、アロイン、アロエウルシン、アロエエモジン、アロエシン、アロエソンエモジン、アロエチン、アロエニン、アロミチン、アロエマンナン、サポニン、アロクチン、アルボランA・B、ホモナタロイン、ベータババロイン、食物繊維、蛋白質ビタミンA、B、C、Eを含み、多肉部分はムコ多糖類とミネラルを含んでいる。

ⅱ)効能
(a) 内服の場合
 便秘、胃、十二指腸潰瘍、糖尿病、高血圧、低血圧、肝臓病、胆石、二日酔い、肩こり、冷え性、喘息、更年期傷害、頭痛、気管支炎、鼻炎、膀胱炎などの抗炎症に効果があるとされている。

(b) 外用の場合
 打ち身、かぶれ、湿疹、ひび、あかぎれ、痔、やけど、すり傷、切り傷、虫刺され、うおのめ、いぼ、歯痛、歯槽膿漏など。(近藤雅雄)