君が見る夢、4つの夢とその生理

人は生涯を通して多彩な夢を見る。広義には記憶に関わる「睡眠中に見る」ものと生きるための活力となる「将来の希望」といったものの2種類があり、どちらも社会生活上重要である。本稿では、これに2つを加えた4つに分類し、筆者の経験に基づき、その生理について解剖した。
第1の夢はレム睡眠中に見る無意識の夢であり、喜・怒・哀・楽・愛・悪・欲の7情に関するものが多い。
第2の夢は睡眠中に見るものではなく、将来の希望や人生の目標と言ったものを指す。目標を設定し、強い意志でそれに立ち向かえば夢は叶えられることが多い。
第3の夢は寝る前とレム睡眠時に強く意識したことが夢となって現れ、新たなアイデアや発想が浮かんでくることがある。強い意志が夢を呼ぶのだ。
第4の夢は死に直面した無意識の夢「忘却の物語」である。現実世界と死後世界の境界である。臨死体験だが、「川」「光」「闇」の出現は広く知られている。
「人生は夢と共にあり、夢と共に消えゆく」夢が人生を変える。ならば、楽しい夢のある夢を見て生きて行きたいものだ。
PDF:夢23.10.22.vir1doc

単行本「前へ」出版

本書は、学びの路線「研究職と教育職」を生涯の職として選択し、それを走破、たどり着いた我が学者人生を追懐した。昭和から平成、令和の3時代を生き、そして、古希を過ぎ、終の人生を迎えるにあたって、過去の多くの出来事を記録し、後世に遺すことは、次代に生きる人の「人生の道しるべ」として役立つかもしれない。また、生きるヒントになるかもしれない、終の人生を世話になった人への感謝と次代への引継ぎとして本書の創作を企画した。
人は誰にでも死は訪れるものだ。これまで幸せな生活を送り、突然に「死を宣告」された時、大切な言葉を一つ挙げるならば、それは「前へ」であった。死に行く者も、生きていればさまざまな喜怒哀楽、ストレスが日々変化して訪れる。それをうまくコントロールし、「前へ」突進む努力をする。人間は、前向きで、大切なものをこころに持ち、素直に社会に貢献する謙虚な姿勢を持ち続けることが大切だ。それを行動に移し、新たな道を拓き生きて行く。そして、「1日でも長く健康で、前へ生きる」、「家族のため、社会のために頑張る」が最も基本的で豊かな人生といえる。さらに、そこに「感謝する人がいて、そして、感謝される」そういう人生は真に幸せである。

本書は、勉強が嫌いな子どもが、高校に進んでから勉強が好きになり、多くの良き人間に恵まれ「学び」を生涯の職として生きる人生の記録集である。第1章は過去の忘れられない時代を検証した。第2章は筆者の主な先駆的な研究の成果を記し、次代への参考とした。第3章は健康寿命の延伸とQOL向上を目指し、自発的治癒の重要性と新たな病気に侵された筆者の挑戦について記録した。第4章は平成19年以降、教育機関などで行った挨拶を「こころのメッセージ」として綴った。第5章は昭和、平成、令和の時代を駆け巡った教育・研究者としての実録と「人生の道しるべ」となった人々との出会いを回想した。第6章は家族、恩人、友人などへの感謝と伝えたい言葉、夢を見ることの重要性、そして、多くの人への感謝をこころ込めて綴った。(B5版、216頁)
令和5(2023)年8月 近藤 雅雄

医学書「指定難病 日本のポルフィリン症」1, 2, 3 を出版

ポルフィリン症について、3部作で纏めました。
まず、第1部はポルフィリン症の診断・治療、患者の権利、指定難病・未承認薬獲得までの経緯など医学・医療の総合的書物として纏めました。
2022年7月、「ポルフィリン症」の歴史、病因、診断法、診断基準、治療法、疫学・臨床統計、予防法、生活実態などについて、40年以上に亘る研究の成果を独自の視点から科学的に纏めました。また、未承認薬や指定難病の承認の経緯などについて纏めました。(B5版、321ページ)

構成は「Ⅰ.医学編」と「Ⅱ.患者編」に分け、医学編(第1章)ではポルフィリン症の医学と題し、遺伝性ポルフィリン症が「指定難病」認定のきっかけとなった調査研究として、2009年、厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)の「遺伝性ポルフィリン症の全国疫学調査ならびに診断・治療法の開発に関する研究」研究班(研究代表者:筆者)を中心に纏めた診断基準および治療指針を編集・修正して記載すると同時にポルフィリン・ヘム生合成機序ならびにその調節機序、遺伝性ポルフィリン症の発症機序などについて纏めました。患者編(第2~5章)では患者を中心とし、第2章は患者さんの権利獲得に向けた活動(指定難病、未承認薬承認)を中心に書きました。第3~5章は患者さんの治療後の現状、診療体制の問題点、患者さんの生活習慣改善、健康維持に関する諸情報を纏めました。

本書が医師などの医療関係者、医学研究者等々の目に留まり、ポルフィリン症患者の診断の向上並びに臨床研究の発展に繋がることを期待しています。そして、何よりもポルフィリン症患者さんのQOLの向上と健康寿命の延伸、そして、患者さん方が未来に向かって安心・安全な社会活動が送れるよう、病気が根治可能な社会となることを願っています。
そして、第2部、第3部については、2023年4月、「ポルフィリン症2」(B5、200ページ)の診断と治療について、臨床研究用に纏めました。
また、「ポルフィリン症3」(B5,252ページ)は臨床医用に即診断と治療に利用できるよう纏めました。
PDF

植物内ポリフェノールの増量方法の発見

現代人の免疫能は低下し、特に高齢者の免疫能は著しく低下している。その主な原因として、急速な食生活の変化、肥満、加齢、ストレスなど、各種酸化ストレスによる影響が示唆されている。この活性酸素が原因で起こる各種疾病の防御を目的としてフラボノイド類の摂取が注目されている。フラボノイド類には約5-7,000種ともいわれる多数の物質が報告され、その構造は極めて似ているが、その抗酸化機能は各種異なる。これらフラボノイドの標準統一分析方法は未だになく、各々の抗酸化物質の抗酸化能についてもはっきりしていない。
そこで、約30種類の抗酸化物質についてその作用を検討すると同時に、世界に先駆けてUV検出器とHPLC分析による各種フラボノイドの一斉同時自動分析法の開発を行った。さらに、各種野菜・果物のフラボノイドを分画定量し、その含有量およびペンタキープ(ALA肥料、コスモ石油(株))投与による影響を検討した。その結果、これまでに多くの抗酸化物質の中で、ルテオリンが細胞内・外での活性酸素消去能が最も高いことを証明し、さらに、ALAを投与し栽培した植物のフラボノイドおよびミネラル量に及ぼす影響について検討を行った。その結果、ルテオリン(図)をはじめフラボノイド類が平均約10倍増量することを見出した。
PDF:ALA-ポリフェノール

二つの脳、右脳と左脳

脳は大脳(皮質、辺縁系、基底核)、間脳(視床、視床下部)、脳幹(中脳、橋、延髄)、小脳からなりますが、人では他の哺乳動物と異なって大脳皮質が大きく発達し、知的な活動もコントロールできるようになりました。この皮質については、①全ての人が同じ数の神経細胞(約140億個)を持つ。②心身(こころとからだの働き)の司令塔である。③感覚、運動の統合、意志、創造、思考、言語、感情の中心となる。④成長に従って発達し、ゆっくり退化する。⑤一日、週、月、四季、摂食・消化、神経・ホルモンの各リズムが存在する。⑥心身の疲労を回復し、記憶に役立つ睡眠のリズムが存在する。⑦男と女との違い等、脳の中で最も重要ですが、その中で人として最も大切なのが、前頭連合野です。この部位は思考、言語、理解、理性、感性と8つの知性など人間としてのこころの働き(精神活動)の中心となっているので、人としての「こころの中枢」と言えます。 PDF:右脳と左脳

内リンパ水腫(蝸牛型メニエール病)の治療評価法の新規作成と治療体験

 近年、蝸牛型メニエール病(急性低音障害型感音性難聴, ALHL)の発症が増加している。本症は「内リンパ水腫」を原因とするのでメニエール病の不全型ともいえる。症状は激しい回転性のめまいはなく、低音が聞こえにくい難聴、耳鳴り、耳閉塞感を主とし、状態がよくなっても再発を繰り返すのが特徴で、メニエール病に移行することが多い。病気が完成すると難治性となるため、早期の治療が重要である。しかしながら、現代の医療では治療法は確立していない。一般的によく言われているのが、安静の確保とストレスを取り除くこと。そして、基本的な薬物療法を行うことである。薬物療法の第一選択は強い浸透圧による脱水力で内リンパ水腫を軽減させるイソソルビドなどの利尿剤が用いられる。内耳の血液循環改善薬が使われることも多い。また、炎症を抑えるためにステロイド剤や精神安定剤、ビタミンB12製剤も使われることがある。

 本論文では、筆者自らALHLを発症したのを契機に、治療に対する評価法を新たに作成し、科学的に原因究明と治療の経過を追及したので報告する。また、本疾患を体験して、大学病院の耳鼻咽喉科における医療の現状についても報告した。(2022年8月1日執筆)

PDF:メニエール病論文  

グローバル社会に生きる-海外に行き、海外を知り、海外で活躍そして日本に貢献-

 たった一つの新型コロナウイルスによってすべての価値が一変しました。あっという間に、このウイルスは世界中に拡散して私たちを自粛の世界へと導き、オンライン勤務、物の売買や教育など、社会生活を一変させ、日本経済の破綻を加速させました。社会生活においてはコンピュータ(PC)やスマホが日常生活上不可欠となり、この2つがあればどこでも仕事ができ、オンラインやテレワーク、在宅という言葉が日常化しました。また、情報や生活必要品はいつでも自宅にいながら得ることができるようになりました。一方で、飛行機やリニアなどの交通の利便性により、世界が身近になり、さらに空飛ぶ自動車やドローンの開発など、すでに現代はグローバル社会であることに気付きます。

 グローバル化とは、社会的あるいは経済的な事象などが国や地域などの境界を越えて地球規模で拡大し、多様な変化を起こす現象ですが、現代はすでにグローバル社会(国際化時代)といえます。そして、国境を越えた市場の時代を迎え、グローバルビジネスや企業はもとより官公庁、大学でも必須となっています。

 このようにグローバル21世紀を生きる私たちは、急速な時代の変化を理解し、それ対応する能力を持ち、さらに、海外で多様に活動する気概も必要です。日本人はこのグローバル時代に、海外に行き、海外を知り、海外での活躍に呼応していかないと、日本の地位は更に低下するでしょう。

 私たちはグローバル社会を理解し、その実態を自分の目で見て、異文化を理解する必要性があります。私も、44歳時に米国ニューヨーク州マンハッタンにあるロックフェラー大学にて友人の藤田先生と共に血液生化学のプロフェッサーと共同研究を行うために2~3か月間の研究生活を体験しました。滞在中に世界に先駆けて患者の遺伝子の異常を発見し、発症機序を解明しました。その時の経験は日本ではまったく得ることができないほど貴重なもので、その後の人生(教育・研究)は大きく変わりました。私が海外生活を送ったのは中年期でしたが、海外生活は若ければ若いほどその体験は大きな広がりを見せます。しかし、中・高齢期であっても得られる価値観は同じで、その後の人生、社会が大きく良い方向に変わっていくものと信じます。

 海外で活躍したい人、海外での生活に興味がある人、外国人と接したい人、海外留学したい人は勿論のこと、日本国内でこれから頑張ろうという人もグローバル時代に国際人として活躍し、生きる資質を身につけることが当然の如く必要となってきます。

 現在、日本の経済力、科学技術力、教育力などが低下、GDPも2010年に中国に抜かれてから急速に低下し、しかも「国の借金」は1,200兆円を超えています。このように、現代日本社会はいつ崩壊してもおかしくない不安定なバランスの上に成り立っています。すでに「日本の未来予測年表と医療」に記載しましたが、2065年以降日本は経済が破綻し、外国人によって無人の日本国土が占拠される(もう始まっている)。日本国はどこに向かっているのだろうか?50年後、100年後といった未来への展望がみえません。現在の日本組織はかなり脆弱になっています。現金(ポイント)のバラマキが横行している今日、年金介護問題、少子高齢社会、国家財政の破綻などの多くの問題を抱えている日本ですが、日本国民として、歴史を重んじ平和で幸せな活力ある国家となるよう期待したいです。

 グローバル社会は1975年松下幸之助氏曰く、「国際化時代とは一国一民族という垣根をはなれて、多くの国、多くの民族、あるいは多くの言語や習慣の違う人々と交わり、共同作業をすることが多くなる時代です。その時に最も大事なのは、世界人類が共々に持っている人間としての本質と共に、国や民族、あるいは時代によって違っている面を、正しく見つめ、理解し、これを生かし合っていくことであろう。」と述べています。科学分野では、この70~90年代は多くの若手博士研究者が海外に留学に出ました。米、英、仏、独国などが多く、帰国後は大学や研究所で活躍しましたが、その後は研究者の留学は減少し、逆に留学した経験を基に大学のグローバル授業の一環として海外大学協定校への留学システムを構築し、学生の留学数が増加しています。これは日本にとって大変良いことと思います。

 一方、東洋医学におけるICD-11第26章活用およびICF, ICHIの導入として、伝統医学のグローバル化が注目されています。伝統医療は多数あり、多様な文化的背景に根差す風土固有の規範、信念、経験に基づく知識、技術、実践法が集約されたものであり、人々の健康維持と共に、心身の病を診断、治療する手段として利用されてきたものです。そこで、大志を掲げるあはき師も、日本の伝統精神と療法をしっかりと受継ぎ、東洋医学療術師として現代および次代のグローバル時代を生き、国際人として大いに活躍していってほしいと願います。(近藤雅雄:2022年7月8日)

運動とミネラル:激運動による血液中モリブデン量の減少

 運動は動物にとって生命を維持する上で不可欠な仕事であるが、激しい運動(競技用スポーツ)の場合はそれなりの管理が必要となる。そこで、日常的に激しい運動を行っている男子大学駅伝選手および女子高校バスケットボール選手の体内ミネラルの影響について、とくに汗や代謝によって失われる微量元素の血液中の変動を検討した。
 その結果、選手群は男女共に日常的に運動をしていない対照群に比してモリブデン(Mo)量の著明な減少を世界に先駆けて見出した。また、男子選手群では対照群に比してマンガン(Mn), ガリウム(Ga), スズ(Sn)の有意な減少(p<0.05)とニッケル(Ni), カドミウム(Cd)の増加傾向を見出した。女子選手群では亜鉛(Zn)が対照群に比して有意に減少(p<0.05)したが、男子では有意差は見られなかった。
 以上の結果、激しいスポーツ活動が血液中のミネラル量に与える影響は男女で異なることがわかった。しかし、Moについては男女ともに選手群で著明に減少しており、激運動によってMo量が減少することが明らかとなった。PDF:運動とミネラル

紅茶による胃がんと風邪の予防

紅茶の健康効果は沢山ありますが、2つを挙げました。
1.胃がんの予防
胃がん発症の一次予防としてはピロリ菌除去と塩分を控えることが大切ですが、紅茶飲用による予防も可能かもしれません。

2.風邪の予防
紅茶(発酵茶)には緑茶に含まれる抗酸化物「カテキン」が発酵過程でテアフラビン(紅茶ポリフェノール)となり、これがインフルエンザウイルスに対して効果があると言われています。紅茶でうがいをしてはどうでしょうか。風邪ウイルスの感染予防として期待できかもしれません。現代のコロナ禍時代は口腔ケアの時代とも言えますね。
 いずれにしてもこれらの詳細は下記のPDFを参照してください。 PDF:紅茶と健康    

日本の未来予測~これから80年

 新型コロナウイルス(COVID-19)は昨年末(2020年12月8日)中国武漢で発生以来、南極大陸を除く全ての大陸に瞬く間に広がりました。この世界的大流行は今後の世界及び日本の未来に大きく影響を与えることは確実です。事実、流行地域のすべての国において、甚大な社会的、経済的、そして政治的危機を引き起こし、医療・福祉、教育、食糧・食生活、地域社会、レジャー、仕事、働き方等々、日常生活に大きな影響を与えています。同時に、今回のパンデミックから新たな感染症や地球環境の異常、経済の大恐慌、覇権統治・覇者の誕生、国家間の紛争など、この地球上でいつ起きてもおかしくない状況にあることを学びました。
 さらに、現在のGAFA(4つの巨大企業グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に依存したIT社会、汎用AI、デジタル化など、このコロナ禍によって一気に加速することが考えられます。高齢者にとっては益々住み難い社会となるでしょう。人間らしい生き方、人間社会のあり方、社会・経済・政治のあり方等、国家のあり方について、私たちが生活を営む「地球環境と生物多様性」の保全を基本に、真摯に考え直す時期が今です。
 私は地球規模的に、いつどのような危機が到来しても子どもと高齢者が住みやすい、健康で人間としての尊厳を失わず、生きる術として大切な善悪の判断、感謝し奉仕する素直なこころ、さらに、前向きに生活技術の工夫を行う知恵と将来を夢見るこころを持って「自由」なこころで、「正当性」「責任」を持って、「平和」に貢献できる人間社会の構築を願っています。
 そこで、今後80年間の日本の未来について検討し、PDFに予測年表として掲載しました。内容は今回のコロナ禍によって変わることが予測されます。(近藤雅雄:2020年10月18日掲載)
PDF:日本の未来20.10.18

こころとからだの健康(18)幸せホルモン・愛情ホルモン「オキシトシン」の多様性

 幸せホルモン、愛情ホルモンとして有名なオキシトシン(Oxytocin, OXT)は、視床下部の室傍核(PVN)と視索上核(SON)の神経細胞で生産され、脳下垂体の後葉から血管内分泌される9個のアミノ酸(Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly)からなるペプチドホルモンです。1906年に英国の研究者ヘンリー・ハレット・デールによって発見され、出産時に子宮を収縮させる作用があることから「早い」と「陣痛」(oxy「早い」、tocin「出産」)を意味するギリシャ語として命名され、1952年に分子構造が決定されました。このホルモンの半減期(寿命)は約3分と短い。

 オキシトシンの分泌調節には未だに不明な点が多いが、エストロゲンによって分泌が増加し、オキシトシン受容体の発現を脳内で増加させる。これまでに、オキシトシンは分娩時に子宮平滑筋を収縮させ陣痛を促進させる作用と授乳による乳頭への機械的刺激に応答して乳汁射出を促す作用があることからり、出産と新生児の栄養補給に不可欠なホルモンとして広く知られてきた。

 一方、男性にもオキシトシンが存在することが分かっていましたが、その作用は長い間不明でした。それが、近年の分子生物学的手法によって、男女共にオキシトシンは大脳皮質前頭前野、海馬、扁桃体などに作用し、抗ストレス、摂食抑制、うつ病の改善、鎮痛、鎮静、催眠、感情、記憶、学習能力の向上、認知症予防など多様な作用が相次いで見出されています。そして、中枢神経のほか、子宮、乳腺、皮膚、腎臓、心臓、胸腺、膵臓、脂肪組織でも発現が確認され、その作用が注目されています。

 本稿では「オキシトシン」検索を行った結果、Google 166万件、Yahoo 201万件ヒット (2019年8月20日現在) し、この中からオキシトシン作用の多様性についてまとめました。
(近藤雅雄:2019年9月1日発表、2020年6月14日掲載)

以下のPDFに内容を示しました。PDF:オキシトシン縦書き    

受験生がんばれ ‼~受験に成功するための戦略と心得

 毎年、1月から3月は学校の定期試験、入学試験、様々な資格にかかわる試験、昇格試験など人生を左右する大きなイベントが集中し、受験の季節となります。この時期は、冬から春にかけて気象の変動が著しく、インフルエンザなどの風邪や自己免疫性疾患や持病などの症状が出現しやすい季節でもあります。これらを乗り越えて、漸く春がやって来ます。
 ここでは、受験に失敗しないための戦略とその心得の一例を紹介します。
1.試験前
1)計画を立てる。PDCAサイクル(plan-do-check-act cycle)に従う。
 試験の日程が決まったら、それに合わせて自分に合った試験準備を計画、これを実行し、勉強の方法・準備が適切であるかを評価する。その際、ムリ、ムダ、ムラの「3ム」がないよう、何度も繰り返し、最適な方法を考える。自分に合った勉強法が確立したら、それを実行する。
2)過去問題を徹底的に調べる。
 試験に出題される内容の重要ポイント(キーワード)はいつの時代も同じです。したがって、過去に出題された問題を繰り返し実施し、これを理解すれば試験準備は十分です。
3)体調を万全にする。
 季節的にも風邪や持病などが発生しやすい時期なので、こころとからだの健康管理を怠らないよう、強い意志と自信をもって日常の生活と体のリズムを守り、自己管理を行って下さい。

2.試験前日
 試験前日には試験勉強を行わないで、翌日に備え受験票や筆記用具などの準備を完璧に行い、カバンにしまって、早めに寝る。その際、絶対合格するという自信を持つことが大切です。

3.試験期間中
1)試験会場に30分前には必ず到着する。
 前もって試験会場を下見し、余裕をもって試験会場に到着できるよう交通機関などを調べておく。また、交通機関のアクシデントに備え、迂回路も調べておき、少なくとも30分前には会場に到着し、トイレなども済ませておきたい。
2)試験を受けるためのPDCAサイクルを考える。
 試験用紙が配布されたら問題全体を速読し、簡単な問題から解答し、難解な問題は後回しにする。問題順に一つひとつ解答していくと、難解な問題に遭遇した時に、それに関わる時間があっという間に過ぎてしまい、時間が足りなくなり、これが致命傷となることがあります。まずは、問題全体を早めに把握しておくことが大切です。
3)試験が終了した後の心構え。
 試験が終了してからも、ケアレスミスがないかを確認することが大切です。必ず、何度も問題と解答を見直す。また、迷った時は、最初に解答した答えが正解のことが多い。

4.試験終了後
 試験がすべて終了したら、自宅などで問題を必ず見直し、間違っていないかを確認する。間違いが確認されたら直ちに修正する。この確認作業はその後の人生においても、同じ間違いは絶対に繰り返さないという「考え抜く力」「課題発見・解決力」などが養われるますので、必ず行って下さい。(近藤雅雄:平成30年12月7日掲載)

こころとからだの健康(15) 脳を元気にする食と栄養素

「こころとからだの健康(10)脳に良い食品、食品機能性食品とその成分」の改訂版である。
 脳は大脳、間脳、脳幹および小脳から構成され、心身(こころとからだの働き)の司令塔である。とくに、大脳皮質は感覚・運動の統合、意志、創造、思考、言語、理性、感情、記憶を司り、前頭連合野は人間中枢とも言うべき重要な働きを行っている。脳を元気にするためには脳に必要な栄養素の摂取と適度な有酸素運動の実施および良い睡眠をとることが基本である。
 近年、アルツハイマー病やうつ病などの疾病が社会問題となっている。2015年、国際アルツハイマー病協会は認知症の新規患者数は毎年約990万人、2050年には1億3200万人に達し、現在(約4680万人)の3倍になると“世界アルツハイマー報告書2015”に発表した。高齢社会においてその数は急激に増加している。認知症には①アルツハイマー型、②脳血管性、③レビー小体型、④ピック病、⑤混合型、⑥その他などがあるが、この内、70%近くがアルツハイマー病であり、酸化ストレスが病気の進行に大きく寄与している。また、最近、疲労の原因は脳の眼窩前頭野で疲労感として自覚することによると言われ、これも酸化ストレスが関わっている。
 そこで、本論文では情報化・高齢化の時代に認知症やうつ病などの脳の障害を予防し、いつまでもイキイキした脳を維持するために必要な食品および有効成分について文献調査を行った。

Ⅰ.脳が元気になる食品
 人は美味しいものを食べると自然と笑顔となるが、これは脳が元気になったのではない。逆に、濃い味付けや甘いものなどは習慣化し、脳はじめ多くの生体機能にダメージを与えるので注意する。自らの健康は自らが守ることを意識し、脳に良い食品を意識的に摂取することが大切である。

Ⅱ.脳の活性化が期待される主な有効物質
 脳の機能保持には脳の構成材料、脳代謝に不可欠な栄養素および酸化ストレスに対する抗酸化物質の摂取を日常的に意識して摂取することが望ましい。抗酸化物質として、ポリフェノールは植物の色素や苦味の成分であり、アントシアン、タンニンやカテキンなどのタンニン類、ケルセチンやイソフラボンなどのフラボノイド類からなる。フラボノイドは植物に広く存在する色素成分でクロロフィルやカロチノイドと並ぶ植物色素の総称である。広義には赤、紫、青を発するアントシアニンもフラボノイドに分類される。フラボノイドを豊富に含んでいる食品としてはチョコレート、ココア、緑茶、紅茶、赤ワインなどが知られ、注目されている。
 これら抗酸化物質の作用としては活性酸素を除去し老化抑制、抗凝固、血圧降下、消臭、血管保護および血流増加、動脈硬化や心臓病の予防、免疫力増強、抗菌・抗ウイルス・抗アレルギー、血管保護、抗変異原性、発癌物質の活性化抑制など、多様な作用が推測されている。ビタミンC・E、クエン酸を含む食品と併用すると抗酸化作用の相乗効果を示す。
 なお、抗酸化物質についてはいずれも食品として摂取することが望ましく、サプリメントとして摂取する場合は過剰摂取による問題などがあり、十分に配慮することが大切である。(近藤雅雄:平成29年3月25日投稿)
内容の詳細をPDFに記載した。 PDF:こころとからだの健康(15)脳を元気にする食と栄養素2017.3.25

こころとからだの健康(10)脳に良い食品、機能性食品とその成分

 脳は大脳(皮質、辺縁系、基底核)、間脳(視床、視床下部)、脳幹(中脳、橋、延髄)および小脳から構成され、心身(こころとからだの働き)の司令塔である。特に大脳皮質は感覚・運動の統合、意志、創造、思考、言語、理性、感情、記憶を司る人間としての最も重要な器官であり、その中でも前頭連合野は人間としての中枢とも言うべき、様々な重要な働きをし、哺乳動物の中では一番重たい。脳は骨格筋、肝臓に次いで基礎代謝量が高く、多くの栄養素を必要としているため、栄養の摂取バランスの異常や不足は脳の機能にダメージを与え、こころとからだに様々な影響を与える。その代表的なものとして、近年、アルツハイマー病やうつ病などの疾病が大きな問題となっている。2012年の世界保健機関の報告によると、認知症患者は毎年770万件増加し、その数は世界中で3,560万人と推定されている。これが2030年までに倍増、2050年までに3倍以上(1億人以上)になると予測されている。認知症には①アルツハイマー型、②脳血管性認知症、③レビー小体型認知症、④ピック病(前頭側頭型認知症)、⑤混合型認知症、⑥その他などがあるが、この内、70%近くがアルツハイマー病という。
 そこで、認知症やうつ病などの脳の障害を予防し、脳(こころとからだの司令塔)の働きをよくする食品および有効成分について文献調査を行い、こころとからだの健康に役立つ資料とした。 掲載した食品および機能性物質は以下の24食品、24物質であり、その詳細はpdfに掲載した。

1.脳(アンチエンジング)の活性化が期待される食品
 亜麻の種(亜麻仁油)、イチョウ葉、オリーブオイル、カワカワ、くるみ、ココア、コーヒー、魚、ザクロ、センテラ(ゴツコーラ、ブラーミ、ツボクサ)、SOD様作用食品、セイヨウオトギリソウ、セイヨウカノコソウ、ダークチョコレート、納豆、ニンニク、ビルベリー、ブルーベリー、ほうれん草、豆類、松葉、ムール貝、ヨヒンベ(ヨヒンビン)、緑茶の24食品。

2.脳に良いとされる機能性物質
 アスタキサンチン、アントシアニン、イソフラボン、カテキン、γ‐アミノ酪酸(GABA、ギャバ)、ギンコライド、グルタチオン、コエンザイムQ10、サポニン、ジメチルアミノエタノール、食物繊維(不溶性食物繊維、水溶性食物繊維)、タウリン、テアフラビン、テアニン、DHA、トリプトファン、ビフィズス菌、分岐鎖アミノ酸(BCAA)、フェルラ酸、ホスファチジルセリン、ポリフェノール、フラボノイド、メラトニン、レシチンの24物質。
 原稿は以下のpdfを参照されたい。(近藤雅雄:平成27年10月6日掲載) こころとからだの健康(10)脳に良い食品、機能性食品

こころとからだの健康(3)12か条

 生活習慣病、感染症、癌等に罹患しない丈夫なからだ作り、ストレスを溜めないこころの健康作りが各個人、社会に求められています。個人ならびに集団社会が惰性的であったり、依存的である場合、あるいは個人が身体を動かさなかったり、偏食、喫煙、薬に頼るようなことになると、生きがいを持たない、暗い性格(キレ易い、悲観し易いなど感情の変化が著しい)を持ったヒトが多くなり、社会全体が非活動的・非生産的になるばかりでなく、医療費の高騰を招きます。個人においてはストレスを溜め易く、不定秋訴→籠もり易い→病気(こころとからだの病気)によって健康寿命をはやめる結果となります。
 こころとからだの健康には日頃から報恩、感謝の気持ちを抱くこと、いのちの尊さを理解すること、愛情を持つこと、ストレスを貯めないで前向きであること、目標(夢、志)を持つこと、自然のリズムを大切にすることなどが重要です。これらはすべて酸化ストレスを少なくし、免疫能を増強させ、こころとからだを軽くし、毎日がウキウキと生きがいの満ちた生活となり、人生を楽しく、また素晴らしいものにしてくれます。
 そこで、私の考える健康増進の処方箋として「こころとからだの健康」12か条を以下に挙げました。

1.栄養(バランスの取れた食生活:団欒、育自、共育、神経・内分泌・免疫機能の維持)
 厚生労働省から提出されている食事摂取基準には年齢に応じた栄養素の摂取が記載されています。第一次・第二次性徴期、青年期、中高年齢期には栄養のバランスを考えた食事摂取が重要であることは言うまでもありませんが、特に中高年齢期になると基礎代謝が低下しますので、カロリーの過剰摂取は肥満につながります。肥満はメタボリック症候群と直結しますので、高血圧症、糖尿病、脂質異常などの生活習慣病のリスクが高まります。また、過剰な食事制限(ダイエット)は生体のリズムの乱れにつながり、若い女性では月経困難症、貧血、感染症など多様な疾病の原因となります。したがって、バランスのとれた食生活が大切です。さらに、食事摂取時には団欒が大切です。食事を通して家族、友人などの人間関係を形成するこの上ない貴重な時間となります。家族であれば、育児(自)、教(共)育の時間となり、食事時間のリズムを遵守することによって、神経・内分泌・免疫の各機能が適切に働くだけでなく、食及び他者への感謝の気持ちを持ち、ストレス解消に役立ちます。

2.運動(身体を動かす:神経、循環、免疫機能の増強)
 人は動物です。動物は動く物と書きます。筋肉は第2の心臓とも言うように、適度な筋肉をつけることが大切です。とにかく身体を動かすこと。運動は定期的に3メッツ以上の強度の身体運動を毎日1時間は行いたいものです。運動によって、脳や筋肉が喜び(心身一如)、循環機能を高めるだけでなく、こころもすっきり、免疫力も高まり、まさにこころとからだのアンチエイジングに繋がります。糖尿病や心臓疾患などの基礎的疾患を抱えている場合は医師の指導に従ってください。

3.休養(疲れる前に休む:脳と全身筋肉の機能保持)
 思春期以降、1日約90分の時間のリズムがあります。90分前後仕事をしたら、10分前後の休息をとることが大切です。すなわち、疲れる前に休むことが大切で、疲れ果ててしまってからの休養は回復力が悪く、健康を取り戻すのに多くの時間がかかります。
 睡眠においても約90分のリズムがあります。就寝してから深い睡眠のノンレム睡眠が現れ、約90分後に浅い睡眠のレム睡眠が出現します。レム睡眠というのはREM(rapid eye movement)と言い、寝ていながら筋肉は弛緩(脱力症状)していますが、眼球が動いている状態で、この時に夢をみます。また、歯ぎしりをしていたり、寝返りを打っていたり、寝言を言っていたりする時の睡眠で、逆説睡眠といって体の睡眠を指します。一方、ノンレム睡眠は脳の睡眠(徐波睡眠)と言って、筋電図は動いていますが、眼電図はプラトーとなっています。この時に成長ホルモンなどが分泌され、生体がリセットされます。成長期の子どもは寝る子は育つと申しますが、まさに成長ホルモンの分泌が高まります。
 一日のスタートとして、目覚めは重要です。朝起きるときにはレム睡眠時の浅い睡眠時に目覚まし時計などを設定して起きると快適な朝を迎えることができます。逆に、深い睡眠のノンレム睡眠時に起きたりすると、一日中頭が働かないなど、不愉快なことが多々起こります。さらに、この2つの睡眠は記憶力にも関与していると言われていますので、良い睡眠を心がけるようにしたいものです。このように、良い睡眠を取ることは脳と全身筋肉の機能が改善し、こころとからだがスッキリします。

4.体質を知る(遺伝子・環境因子相互干渉作用)
 米国などの他の先進国に比べて日本は島国として、また長い間鎖国を通して比較的単一民族にて長年種族を保存してきました。すなわち、日本国民は比較的純粋培養され、遺伝子による影響はその血筋(家族・親戚)に左右されることが推測されます。
 自分の家族親戚(血筋)の中に癌や高血圧症、糖尿病、脂質異常症、肥満などがあれば、その体質を受け継いでいると考え、「生活習慣を考える」または「見直す」必要があります。もしも、大腸癌が家族にみられれば、大腸癌の体質を受け継いでいると考え、食物繊維や抗酸化食品の積極的な摂取やストレスに対する対処によって病気を予防できます。また肺癌の血筋であれば喫煙を止め、また副流煙(受動喫煙)や大気汚染からからだを守り、抗酸化食品を積極的に摂取するなどして病気を予防することが可能です。これを遺伝子―環境因子相互干渉作用と呼んでいますが、遺伝子の働きには生後の環境因子が最も大切であることを意味しています。
 一方で、近年生殖工学が進展し、匿名の第三者の卵子からの体外受精などによって誕生した人については遺伝的な背景に対する情報が少なく、体質について考えることは困難です。今後さらに増加する傾向にありますが、この場合には自身の「からだからのサイン」を修得し、自分なりの健康法を身に付けると、よい結果につながるでしょう。

5.危険因子からの予防(自己防御:遺伝的素因、食生活、アレルギ-、タバコなど)
 「体質を知る」ことと共通しますが、ここでは体質とは異なって、人間として、日常生活の上で必要な対処について延べます。例えば夏の猛暑の中を活動したりすると熱中症のリスクが高まりますが、そのようなときに水分、塩分の補給を怠らず、また帽子などを被ることによって熱中症からの予防できます。同じように紫外線等の環境因子だけでなく、食べ物などの生活因子等、経済・産業・文明の発展に伴って、健康を脅かす多くのリスク因子が満ち溢れていますが、これらのリスク因子からの予防、すなわち自己防御が現代社会に住む私たちにとって大変重要です。

6.からだからのサインを習得する(早期診断:感染症、遺伝病、癌、生活習慣病の予防)
 妊娠可能な女性は排卵後、基礎体温が上昇します。これと同じように、体内に異物が侵入したり、異物が発生したりすると熱が出ます。これらはすべて、からだからのサインを意味していますので、これを早く自覚することによって、その場への対応が可能になります。特に後者の場合に、熱が出たからと言って無理をすると、本来すぐ治るべきものが病気となって長い間寝込むことになります。からだは異常を起こすとすぐに何らかのサインを体に伝えます。そのサインを修得し、早目に対処することによって、自然治癒力が増して、感染症、遺伝病、癌、生活習慣病、ストレス病等の予防につながります。

7.環境の向上を図る(生活・社会環境の改善、ストレス解消、スローライフなど)
 こころとからだの健康は自らが考え保持し、常に最適な状態を維持しなければなりません。すなわち、自分の体は自分で守ることが、今求められています。例えば、アレルギー体質であれば、体質を改善すべく、生活環境・習慣を見直し、自分に合った環境の向上を図ることによって、多くのことが改善されます。そのような努力が日々必要であるという意味です。環境の改善によって、また新たな問題が出てきた場合は、あきらめないで再度検討することが重要で、自分自身が納得するまで、前向きに健康を意識して生活・社会環境の改善に取組むことが大切です。人間環境についても同じで、十分にコミュニケーションを取り、環境の向上を図ることによってストレス解消が果たされます。

8.自然との対話(自然環境との融合、マイナスイオン、アロマテラピー、音楽など)
 日本は木造建築の中に3世代が住むのが通常でしたが、戦後のコンクリート住まいの中に少数住む共稼ぎ夫婦といった核家族や一人住まいが進展し、家族のコミュニケーションも少なくなりました。このような無機的な住まいの中に観葉植物や木製の家具、またはペットとして小鳥や金魚などの生物をコンクリート部屋の中に同居することによって、私たちと同じ遺伝子を共有することができます。そのことは、自然環境との融合を意味し、遺伝子同士の不可思議なコミュニケーションが起こり、気分が楽になったり、ストレスが解消されたりすることがあります。私たち自然界に住むすべての生物はすべて共通の遺伝子を持ってそれぞれの種族が保存されています。したがって、本来自然の中で済むことが一番の快適環境ですが、産業の発展と同時に私たちの身の回りにはプラスチックやコンクリートなどの無生物が生活環境に満ちあふれております。そのような中にあって、ちょっとした自然環境の融合がストレス解消に大きく役立つことがあります。

9.生きがいを見出す、夢を持つ(趣味、家庭、仕事等将来設計、希望、明日に向かって)
 人生50年の時代から80年の時代に突入している。女性でいえば、更年期以降30年以上の平均寿命を要している。少子化、核家族化の今日、幼児期、学童期、思春期、青年期、成人期、中年期、高齢期といった、それぞれのライフステイジにおいて、生きがいや夢を持つことが大切な時代に突入しています。生きがいや夢を持つことによって当面の目標が設定され、明日への希望が出てきます。とくに男性の定年退職後の生き方においては、ボランテア活動などをすることによって、いつも教育(今日行くところがある)と教養(今日用事がある)を心がけ、人のために自分が必要であると思うことと毎日目的を持つことが一番の生きがいとなることでしょう。

10.自信を持つ、前向きである(免疫、こころの機能維持)
 生きがいを見出す、夢を持つとも共通していますが、ここでは、とにかくも一歩前に進むことが大切であることを言っています。前に進めば、必ず結果がついてくる。結果が出れば、自信につながり、次の行動への対応が可能となります。それを繰り返していると、生体の機能は前向となり、自然治癒力も向上し、ストレスもよい方向に働き、免疫力も向上し、こころの機能維持につながります。成功体験がないからと言って、自信を喪失しないで、身近なことから一歩一歩前に踏み出していく力が必要です。そうすれば、いつの日か、自信へとつながり、必ず、成功体験を獲得し、大きく前進する力となります。

11.概日リズムを守る(約1日のリズム、バイオリズム、睡眠リズムなど)
 地球における生命の誕生以来、生命は太陽のリズムに従ったいのちのリズムが獲得されてきました。すなわち、地球には時間や周、月、季節の各リズムがあるように、生体にも同じ時間的な体内リズムがあります。1日のリズム(これをサーカディアンリズム(Circadian rhythm, 概日リズム)という)には食生活(摂食)のリズム、睡眠のリズム、自律神経のリズム、免疫のリズム、内分泌のリズムなどがあり、生体の機能維持にとって重要な働きとなっています。したがって、これらのリズムを知り、生活にメリ・ハリをつけることが大切です。生活のリズムが崩れると生体のリズムも崩れ、何らかの病気となってあらわれてきます。

12.感謝の気持ちを持つ(健康への感謝とこころへの感謝)
 いのちに対する感謝、家族への感謝、仕事に対する感謝、人間関係に関する感謝など人間としての基本を考えることです。この世の中は自分を取り巻く環境が日々変化しています。そんな中で、言葉の使い方が最も大切です。こころは言葉の影響を最も受け易いため、日常的に前向きな、きれいな言葉を使うよう心掛けるようにすれば、一日が大変充実して、楽しくなります。
(近藤雅雄:平成27年8月12日掲載)

こころとからだの健康管理(1)正しい栄養素の摂取と言葉

~正しい栄養素の摂取と言葉~

1.健康とストレス

 半世紀以上も前にWHOが「健康とは身体的にも精神的にも社会的にも完全に健康な状態をいう」と定義し、「社会的健康」の重要性を示しました。この社会的健康とは、最近よく耳にする「人間力」で言えば、「共助」の精神に当たります。8つの知性(言語、音楽、空間、絵画、論理数学、身体運動、感情、社会)では「社会的知性」に当たります。また、自我(自己意識、自己制御)における「自己制御」に当たります。
 しかし、社会的健康、すなわち徳育(道徳心)については、現代の少子・核家族社会・個人情報保護法などによって家族制度や地域社会が急速に変化し、人間の人格形成にかかわる若い時代に学習(躾)されないまま大人になっていくようです。また、家庭や地域社会の中での人間関係が希薄化すると共に、長期間にわたる激しい経済情勢の中で、企業における雇用管理も大きく変化して来ています。これらの結果が、現代人に様々なストレスとなって心身に影響を与えていると思われます。事実、心身の健康について不安を持っている成人が3人に一人いるとも言われています。現代社会では「自己管理」と「社会的知性」がいかに重要であるかがわかります。

2.こころとからだの栄養素

 「自己管理」については、心身の健康管理を怠ると摂食障害などを起こし易くなり、これが病気の原因作り、その病気をさらに増悪させる要因となります。したがって、栄養学的な知識を持つことが重要です。健康寿命の延伸とQOL(生活の質)の向上を目指して、栄養に関する多様な研究が行われていますが、栄養素の過不足が心身の健康に大きく影響を与えることは明白です。
 例えば、チロシンやトリプトファンなどのアミノ酸や葉酸、B12、Cなどのビタミン、銅、鉄などのミネラルの不足は、慢性疲労、頭痛、集中できない、イライラする、学習・精神障害など様々な病気の素因と関係してきますので、このような成分の生理作用およびこれら栄養成分がどのような食品に含まれているのかを知ることが大切です。

~知識の消化吸収は人生最大の栄養素となる!~

 最近、特に若い人の免疫力・体力が低下し、これが心身の病気と関係していると言われます。その原因の多くがストレスに対する適応力の低下(コミュニケーション能力の低下など)と栄養学に対する無関心にあると思われます。生命現象はすなわち栄養現象ですが、生理学的に最も重要なのが免疫力です。免疫力は適正な栄養現象によって獲得されます。
 しかしながら、その免疫力については、スキャモンの発達曲線からも明らかなように、11歳頃をピークとして、免疫中枢である胸腺の萎縮が始まり、その萎縮の原因が多くのストレスやエイジングによって発生する活性酸素によることが最近の研究によって明らかになってきておりますので、如何に体内に多くの活性酸素を発生させないか、また活性酸素を除去させる方法が注目されています。
 その一つの方法としてポリフェノールなどの抗酸化物質や抗酸化ビタミンおよび免疫や抗酸化に関わるミネラル類(亜鉛、セレン、銅、マンガン、鉄など)を日常的に摂取することがあげられます。こころとからだの健康管理の上でも、自分自身が摂取する栄養素をしっかりと意識することによって、体力、健康力に自信を持ち、前向きになれます。
 そして、ストレスを前向きにとらえ、しっかりと自分自身に必要な良質の栄養素を摂取すれば免疫の機能も高まり、心身一如、こころもからだも元気になります。
 次に、社会的健康において最も重要な感謝するこころとからだについて述べます。

3.感謝するこころとからだ

 人間が他の哺乳動物や生物と異なっている決定的な要因は、大脳の前頭葉にあります。前頭葉は人間が400gでチンパンジーが70gです。人の脳の約30%が前頭葉です。猿は12%、犬が6%、ネコが2~3%、ネズミは0%でもわかるように、前頭葉は人間においてのみ大いに発達し、人としての思考、知性、言語、理解、理性など精神活動の中心を司る中枢です。すなわち、「こころの中枢」とも言えます。この前頭葉の働きにおいて、最も脳の活動に影響を与えるのが言葉です。良い言葉を使うと、免疫の機能(生体防御機能)、内分泌機能(成長・発達・代謝機能)、神経機能(自律神経機能、善悪の判断、理性)などの情報連絡系が活性化され、自然治癒力が高まります。言葉そのものが私たちの健康・人生を創っていくといってもよいでしょう。

~言葉は人間の原点であり、こころとからだを健康にする最大の栄養素である!~

 「はじめに言葉ありき、言葉は神と共にあり言葉は神である」と聖書にも出ています。また「言葉は天地(あめつち)を動かす」と古今和歌集に出ています。紀貫之は「力をも入れずして天地を動かし目に見えぬ鬼神をもあわれと思わせ、男と女の仲をも和らげ、猛き武士(もののふ)の心をなぐさむるは歌なり」と言っています。歌とは言葉のことです。言葉には力があります。ドイツ医学はムンドテラピー(ムンテラ)(mund(独):口、言葉の意)を重視しています。すなわち、ムンテラとは「言葉による治療」を意味します。診療や看護には必ず言葉を添えています。日本では適当に症状を説明する位のことしか理解されていませんが、本当は言葉の力による元気づけを意味しているのです。
 言葉を話すのは人間だけであり、人類の発展に大きく貢献し、書物となり永遠と続きます。言葉は、地球の平和と環境保全にも深く関わります。こころは言葉の影響を最も受けやすく、威圧的な言葉、汚い言葉、人の悪口、否定的な言葉を使うのを止め、笑顔で、プラスの言葉を口にしていけば、自分のこころも相手のこころもとても心地よい状態になるはずです。言葉には魂があります。

 一つしかないいのちであれば、人生を感謝と喜びに満ち、明るく、おおらかにプラス思考で生きて行きていくことによって健康寿命は全うできるものと思います。
(近藤雅雄:こころとからだの健康管理(1)、2015年6月5日掲載)    

生命の科学から健康の科学へ

 生体色素ポルフィリン(紫質)とヘム(血基質)は地球上の生物が生存するために必須な光合成反応や酸素の運搬などに関与する生命の根源物質です。しかし、その代謝異常症は、ある日突然に体内にポルフィリンの代謝産物が過剰蓄積し、その結果、太陽と活性酸素によって全身の機能が障害され、生命が奪われる。これまでに、筆者はこの病気の遺伝子異常および発症機序の解明、確定診断法の確立、治療法の開発などといった「生命の科学」に関する一連の研究を行ってきました。その一方で、健常者にこの代謝産物の一つを投与すると、造血促進、免疫力増強、抗酸化機能促進、運動機能促進などといった健康の回復・保持・増進が期待できることを見出しました。
 生命科学の研究は表裏一体であり、良い方向に研究が行われれば、人類、ひいては万物に貢献できますが、悪い方向に進めば、万物の破壊へとつながる危険性を含んでいます。

 本内容は、平成17年4月長生学園50周年記念に刊行された「長生学園史」掲載原稿を少し修正して記載しました。さらに読みたい方は下記のpdfからご覧ください。(近藤雅雄) 生命の科学から健康の科学へpdf  

こころとからだの健康(2)~中高年齢者の免疫強化によるアンチエイジング~

1.はじめに
 介護の必要がなく健康的に生活できる期間を「健康寿命」と言いますが、平成25年の日本人の健康寿命は男性71.19歳(同年の平均寿命は80.21歳)、女性74.21歳(同86.61歳)です。女性の方が介護期間は長くなっています。そこで、中高年齢女性の健康寿命の延伸とQOL(生活の質)の向上を図るには、適切な食生活と運動の習慣等、酸化ストレスからの予防によって目標が達成できます。

2.男女の寿命の違い
 世界中の国において男性の方が短命です。その理由は、①男性は免疫の中枢である胸腺の萎縮が早い(酸化ストレスにかかりやすい)、②基礎代謝量の違い、③染色体の違い(Y染色体は傷つくと回復しない)等が挙げられます。したがって、男性は筋肉量が多く、免疫力が弱い、偏食も多く、デリケートであり、孤独に対して弱いのに対して、女性は免疫力が強く、ストレスに強い。すなわち、男性の方が不適切な食生活や筋肉をたくさん持つことから、酸化ストレスによる免疫力の低下が著しく、その結果、短命であると言えます。

3.免疫強化とアンチエイジング
 筋肉(骨格筋、心筋、平滑筋)は24時間活動を行っていますので、それだけ酸素の需要が多い。すなわち活性酸素の生産量も多くなります。そこで、生体は活性酸素を分解する酵素SOD(スーパーオキシドデスムターゼ)、GPx(グルタチオンペルオキシダーゼ)等を進化の過程で獲得してきましたが、これにはエイジングがあり、40歳前後から酵素活性が著しく減少します。そこで、これら活性酸素を分解する酵素の代替作用のある抗酸化栄養素の摂取、適度な運動、休養が大切になります。そして、免疫にとって重要な臓器である胸腺は活性酸素によるダメージが大きいことが分かっています。12歳頃をピークとして胸腺は萎縮してきますが、その後の萎縮のスピードは活性酸素の発生量が多い男性の方が早い。したがって、免疫強化には抗酸化食品を積極的に摂取することが望ましいのです。

4.活性酸素除去方法(抗酸化は抗加齢・免疫強化につながる)
 抗酸化食品の摂取、適度な運動(手足を動かす)、疲れる前に休むことが重要です。抗酸化・免疫に関わる食品としてはビタミンA,C,E,B6、フラボノイド類、亜鉛、マンガン、銅、鉄、セレン等を多く含む食品が挙げられます。これら栄養素を含む野菜(目安量1日350g)、果物(目安量1日200g)、豆類、良質のタンパク質の摂取、特に、運動後は十分に摂取することが大切です。

5.健康食品としての5-アミノレブリン酸(ALA)
 健康食品には①表示の問題、②過剰の問題、③摂取方法の問題等があり、十分に情報を得てから摂取する必要があります。一方、最近、生体物質である5-ALAが新機能性アミノ酸として貧血予防、運動・代謝機能の亢進、抗酸化、免疫増強、美容などのヘルスケアー領域、脳腫瘍の診断・治療をはじめ多くの疾患の予防・治療などのメディカルケアー領域で、各々注目されています。この5-ALAの大量生産が可能となり、中高年齢者の皮膚の若返りや育毛効果等も期待されます。

6.運動はこころとからだのアンチエイジング
 人は動物です。動物は動く物と書きます。筋肉は第2の心臓ともいうように、適度な筋肉をつけることが大切です。運動は定期的に3メッツ以上の強度の身体運動を毎日1時間は行いたいです。運動によって、脳や筋肉が喜び(心身一如)、循環機能を高めるだけでなく、こころもすっきりし、まさにこころとからだのアンチエイジングにつながります。休養は良い睡眠をとりストレスを貯めない工夫が大切です。そして、言葉の使い方も大切です。こころは言葉の影響を最も受け易いため、日常的に前向きな、きれいな言葉を使うよう心掛けましょう。
こころとからだの健康
1.栄養(バランスの取れた食生活)
2.運動(身体を動かす)
3.休養(疲れる前に休む)
4.体質を知る(遺伝子・環境因子相互干渉作用)
5.感謝の気持ちを持つ
6.生きがいを見出す、夢を持つ
7.環境の向上を図る
8.危険因子からの予防(自己防御)
9.自然との対話(自然環境との融合)
10.からだからのサインを習得する(早期診断)
11.自信を持つ、前向きである
12.概日リズムを守る
(出展:近藤雅雄著:健康のための生命の科学、2004)
7.こころとからだの健康
 こころとからだの健康には日頃から感謝の気持ちを抱くこと、いのちの尊さを理解すること、愛情を持つこと、ストレスを貯めないで前向きであること、目標(夢、志)を持つこと、自然のリズムを大切にすることなどが重要です。これらはすべて酸化ストレスを少なくし、免疫能を増強させます(表参照)。
(近藤雅雄:女子体育4・5Vol.57-4・5,p70-71, Apr.May 2015, JAPEW)