主なハーブ類とその効能

1.各地独特のハーブ

 ヨーロッパや地中海地方のハーブは有名だが、日本のミョウガ・山椒・ワサビなどの薬味や、ヨモギ・シソなどの野草、また生薬として使われてきた薄荷(ハッカ)・生姜・芍薬(シャクヤク)なども日本独自のハーブといえる。同じように、中国では漢方薬、インドではスパイスなど、世界各地でそれぞれの独特なハーブがある。

2.ハーブの効用

 ハーブには、殺菌・抗菌作用のあるものや、血液をきれいにする作用のあるものが多いため、飲んだり食べたりすることで体内をきれいにするといわれている。ハーブを体内に通過させる方法としてはハーブティーが昔から愛飲されている。また、ハーブには身体に良い成分(ミネラル、ビタミン、鉄分、カリウム、カルシウム、マグネシウム、プロテイン、繊維質、タンパク質など)を含んだものが多いため、最近ではダイエットを目的としてハーブティーを飲む人も増加している。
 ハーブティーにするハーブとしてはローズ・ミント類・カモミール・レモングラス・ハイビスカスなど、料理に良く使うハーブとしてはローズマリー・タイム・バジルなどである。ただし、シャクナゲ、トリカブト、チョウセンアサガオ、スズランなどには毒があり、すべてのハーブが食用になるとは限らないので注意が必要である。以下に主なハーブの推測効能を示した。

主なハーブの推測効能

カモミール:抗炎剤であるアズレンが含まれており、のどの痛み、口内炎、腹痛に効果がある。他に、発汗・保湿、鎮静、浄血、消化促進、駆風(腹の中にたまったガスの排出)の作用
キャラウェイシード:消化促進作用
サザンウッド:殺菌作用、抜け毛予防、毛髪の成長促進
セイジ:消化促進作用、殺菌効果
セントジョーンズワート:精神安定作用
チコリ:血液浄化作用
タイム:殺菌作用、消化器系、気管支系の薬草として知られる
チャイブ :防腐、殺菌作用
パセリ:ビタミンAやCを多く含み、消化促進、利尿作用のほか、血行促進作用
バジル:殺菌効果
ヒソップ :かぜの諸症状やのどの不快感をやわらげる働き
フェンネル:種に消化促進作用
ペパーミント:殺菌作用、花粉症、アレルギー性鼻炎に
ポットマリーゴールド:保湿効果
ボリジ:無機塩類やカリウムなどが含まれおり、体調を整える
マロウ:のどや気管支の炎症を抑える
ラベンダー:殺菌作用
レモンバウム(メリッサ):気分を高め、頭をすっきりさせる.不安や憂鬱を和らげる.他に、健胃、強壮作用

3.香りの効用

人間が元来持っている自然治癒力の活性化に香りが効果的である。香りが健康に効果的であると着目されてからハーブは芳香療法、すなわち、アロマテラピーとして注目を集めている。心地良いと思われる香りが私たちの心に働き、やる気を起こす、リラックスする、不安を取り去る、集中力を高める、ストレス解消などの効果が知られている。また自律神経失調症にも有効であるという。

4.代表的なハーブ

西洋の代表的ハーブ
カモミール:日本ではカミツレと呼ばれている。他にカモマイル、カミルレなどと呼ばれる。語源は「地面のリンゴ」で、花はリンゴやパイナップルに似た甘い香りがする。
オレガノ:イタリア料理にはなくてはならないハーブで、乾燥させたものの方が風味は強く、ミートソースやピザに使われる。
タイム:シソ科で、ローレル(月桂樹)やパセリと相性が良く、ほとんどの洋風料理に合う。ブーケガルニ(煮込み料理に使う香草の束)には欠かせない。ハーブビネガーやハーブオイルにも適している。
ローズ:薬効や芳香がある「オールドローズ」と呼ばれるバラの原種。ダマスクローズ、ドッグローズ、八重に咲く香りの強いバラを指す(ダマスクス系、ガリカ系など)。農薬を使用せずに栽培されたものなら、花弁をハーブティーやジャム、シャーベットなどに使える。
バジル:強い芳香と殺菌効果を持つシソ科のハーブで、シナモンの香りのシナモンバジルや、レモンの香りのレモンバジル、赤紫色のダークオパールや、矯性種のブッシュバジルなどがある。
 インドでは「聖なる灌木」とされ、神々に捧げられる一方、古代ギリシャ人にとっては不吉な意味を持つ植物で、バジルの種をまくときには罵りながらまかないとうまく育たないという俗信があった。また、中国ではバジルの種子を光明子と呼び、眼病の治療に用いた。日本でもかすみ目や目にゴミが入ったときに種子を目に入れてゴミを取り除いたため、メボウキ(目箒)という和名がついている。
コリアンダー:セリ科の独特なエスニックな香りがするハーブ。世界で最もたくさんの人が使っているといわれている。中国や東南アジア系料理には「香菜(シャンツァイ)」と呼ばれるコリアンダーの葉が欠かせない。種子はピクルスやカレーなどに使われる。
薄荷(ハッカ):日本特産のシソ科の植物で、各地の湿った原野に自生している。特有の香りがあり、口に含むと清涼感がある。
梅:早春の花の代表として梅があげられます。梅は中国原産で唐の時代に渡来したと言われている。万葉集にも数多くの歌が詠まれている。
どくだみ:別名をジュウヤクといい、10種類の薬効があるという意味。昔から煎じて薬として用いられてきた。
柚子:夏から初秋にかけての「青ゆず」と、秋から冬の「黄ゆず」、どちらも日本人には馴染み深い。冬至の日にゆず湯に入るが、疲労回復や神経痛に効果がある。

a)その他の西洋のハーブ
 キャラウェイ、スウィートマジョラム、セイジ(和名=薬用サルビア)、センテッドゼラニウム、タラゴン、チャイブ、ディル、ナスタチウム、パセリ、ヒソップ、フェンネル、ポットマリーゴールド(和名=キンセンカ)、ボリジ、マロウ(和名=ウスベニアオイ)、レモングラス、レモンバウム(メリッサ)、ロケット、ナツメグ、クローブ、キャットニップ、アーティチョーク、セントジョーンズワート、チコリ、チャイブス、スティンギングネトル、タンポポの根など多数が知られている。

b)その他の日本のハーブ
 シソ、ワサビ、ニラ、フキノトウ、ミツバ、セリ、からしな、にんにく、月見草、ジンジャー、トウガラシなど多数が知られている。

健康食品の話題

1.薬と食品の相互作用およびサプリメントの副作用

 医薬品の多さと同じように食品も多種多様なものが氾濫している今日、薬同士の相互作用、薬と食品との相互作用、および食品同士の相互作用のチェックも重要な課題となってきた。例えば、次のようなことが広く知られている。
①民間薬の強壮剤として使用されてきた高麗人参は心臓に作用して血圧を上昇させるので、血圧が高く降圧剤を服用している人は避けた方がよい。
②抗凝血療法(血栓防止)にワルファリン(脳血栓を起しやすい人や心臓の手術をした人が主に服用する薬)を使用している人が納豆およびクロレラ食品を摂取するとワルファリンの効果が減弱する。これは、ワルファリンがビタミンKの作用に拮抗するため肝臓でビタミンKによってプロトロンビンなどの血液の凝固因子の生産が促進し血栓形成を促進するためである。このほか、ほうれん草、ブロッコリー、ワカメをはじめとする海藻類などには比較的ビタミンKが多いので大量の摂取は避けた方がよい。
 このほかにも薬品と食品成分との相互関係を示すものは多数知られているので、薬を服用している人はサプリメントを利用する場合には必ず医師に相談することが望ましい。
 一般に、サプリメントを利用する場合は、自分の健康状態をチェックし、健康診断で異常があるか無いかを調べ、はっきりとした異常があれば病院でそれに対する治療を行い、異常が無い場合は日常の食生活や運動などの生活習慣を見直し、食生活の中でなかなかとれない栄養素(サプリメントとして)を摂るように心がけるのが望ましい。しかし、サプリメント自体にも過剰摂取や粗悪品を飲用して副作用が生じた報告もかなり多い。

2.米国のサプリメント

 サプリメント(栄養補助食品)の法制度化を最初に手がけたのは米国であり、従来、米国では食品、医薬品、化粧品を取り扱う基本的な法律は「連邦食品、医薬品、化粧品法(USFDCA)であったが、米国議会はこの法律の一部を改正してサプリメントを食品の1カテゴリーとして扱う「栄養補助食品健康教育法(Dietary Supplement Health and Education Act; DSHEA)単にサプリメント法とも呼ばれる)」が1994年10月クリントン大統領時代に成立してからアメリカ人の日常生活に浸透し、需要と供給が増加している。
 この制度によってサプリメントを「食事を補充する目的で製造されたもの」と定義付け、サプリメントの構造、機能表示を認めた。この法律によって、ビタミンやミネラル、ハーブ、植物性栄養物、代謝産物、代謝に必要な成分、組成物、抽出物、濃縮物およびそれらの混合物などまでがサプリメントに組み入れられた。したがって、これまでに医薬品扱いであった副腎皮質ホルモンであるデヒドロエピアンドロステロン、松果体ホルモンであるメラトニン、ハーブ類などもサプリメントとして扱われるようになった。これらサプリメントの販売は医薬品扱いをしない、あくまでも食品であるとしている。
 これらDSHEAは有効性と安全性に関する科学的な指針や、第三者による実証試験の機能評価が無くても表示できるが、替わりにボトルのラベルにはこの効能を米国食品医薬品局(FDA)は認知していないという表示がされる。そこで、ここ数年、米国ではサプリメントの服用者から死亡事例が出たことから(因果関係が不明な例がある)、2003年9月から暫定的ながら条件付ヘルスクレーム表示制度を導入し、信頼度をA~Dの4つのランクに分け、科学的な根拠の強さによって判断できるようにし、このランクの違いの意味を説明するための文章を表示に加えることが条件とされている。
表 ヘルスクレーム(健康への効果効能表示)の信頼度
A High 良好な機能がある
B Moderate 良好な根拠があるが、限定的で結論できない
C Low 示唆的な根拠はあるが、限定的で結論付けられない
D Extremely Low 限られた初歩的な根拠しかなく、協調表示を支持する科学的根拠は殆ど無い
 ここで、商品のイメージからも表のDに示した表示を付けるサプリメントはなく、これまでのDSHEA法に基づいて販売されている多くの商品はDより下に位置づけられる。また、これらの表示が信頼できるという判断基準が明確にされていない。交通やインターネットが便利になった今日、各国で販売している機能性食品を手軽に入手する機会が多くなっていることから、サピリメントに対する有効性や安全性などに関する国際的な総合的議論が期待される。

3.サプリメントを購入するときの注意点

 サプリメントを購入する際には以下の点について気を付けたい。
①ラベルに原材料、内容成分がわかりやすく表示されていること。
②中蓋シールでしっかり密閉され、開封した後が無いこと。
③アレルギーの人はアレルギーに該当する成分をチェックすること。。
④自分の体質に合ったものを選択する。
⑤信頼できるメーカーの製品を選ぶ。例えば、メーカーに直接問合せた時に、きちんと対応してくれるかどうか。
⑥出来ればインターネットなどで、サプリメントの副作用事例などについてチェックする。
(近藤雅雄:健康食品の話題、2015年7月10日掲載)

ミネラル(必須性が認められているもの)

 ミネラルには、人が日常健康生活を送る上で、生命の機能維持に必要不可欠であると確認されているものを必須ミネラルと呼び、これまでに16種類(Na, K, Cl, P, Ca, Mg, S, Zn, Fe, Cu, Mn, Co, Cr, I, Mo, Se)が知られている。その中でも、特に欠乏や過剰が心配される13元素(Ca, Fe, P, Mg, Na, K, Cu, I, Mn, Se, Zn, Cr, Mo)については、摂取基準が策定されている。
 ミネラルは体のバランスを調節し、機能を保つ働きを持つ。さらに、ナトリウムとカリウムのように、関わりあいながら機能しているミネラルもあるので、全体的にバランスよく摂取することは、健康の維持・増進、疾病の予防に重要な役割を発揮する。そのため、毎日の食事では補いきれず不足しがちなものを補うのが、サプリメント活用の目的である。

1.カルシウム(Ca)
 カルシウムは人体でもっとも多く存在する無機質で、成人体重の約2%(体重50kgの成人で約1kg)を占める。人体中のカルシウムの約99%は骨や歯などの硬い組織に存在し、生体を維持する働きをする。これらの硬組織はカルシウムの貯蔵組織としても機能する。残りの約1%のカルシウムは細胞や血液中に存在し、生命の維持に必要な機能の調節に重要な役割を果たしている。さらに遊離カルシウムの濃度は細胞内が細胞外より大きく、この差が情報伝達に関与している。
 生体内の細胞や血液中のカルシウム濃度は、副甲状腺ホルモン、活性型ビタミンD、カルシトニン(甲状腺ホルモン)により一定に保たれている。さらに腸管からのカルシウム吸収を調節し、血液中のカルシウムを骨に沈着させ、骨のカルシウムを血液中に溶出させることによってカルシウム濃度が一定に保持される(図2-7)。したがって、カルシウム欠乏状態が長く続くと骨のカルシウム含量を低下させ、骨粗鬆症の原因となる。
 骨は硬組織ではあるが、約3ヶ月単位で骨吸収と骨形成を繰り返し、常に作り変えられている。
 細胞や血液中のカルシウムは、主としてイオンとして①細胞の分裂・分化、②筋肉の収縮、③神経の刺激、④細胞膜の透過性、⑤血液の凝固などに関与している。
欠乏症-血液中のカルシウム濃度はホルモンによって一定に保たれているので、カルシウム欠乏は貯蔵部位である骨にみられることが多い。幼児では骨のは発育障害、成長障害がおこる。高齢者、特に閉経後の女性では骨粗鬆症が多く見られる。

**骨粗鬆症**
 骨粗鬆症は骨の外形は変化せず、骨塩量の低下により内部が萎縮する疾病で、骨折の原因となる。骨折の後発部位は胸椎、腰椎、大腿骨頚部、上腕骨頭部である。人体の骨量は骨形成と骨吸収のバランスで定まり、骨量は青年期に最大骨量となり、それ以後男女ともに減少する。最大骨量が少ないほど発症しやすいので、青少年期までのカルシウム摂取は重要である。女性は閉経期以降、卵胞ホルモン(エストロゲン)の低下に伴い、発症が多くなる。本症はビタミンDの血中濃度が低く、副甲状腺ホルモン分泌が亢進して、骨量減少が進行する。予防として日光浴と運動が有効である。ビタミンK摂取も良い。また摂取するカルシウムとリンの比率は1:1程度がよく、同時にマグネシウムの摂取も必要である。減量経験者や低体重者は骨密度が低いので、注意が必要である。

2.マグネシウム(Mg)
 マグネシウムは人体に約0.05%(成人で約25g)存在し、リン酸塩や炭酸塩として骨に沈着し、また筋肉に多く、血液にはわずかしか存在しない。マグネシウムは300種以上の酵素の活性剤として働き、エネルギーの生産、アミノ酸の活性化、タンパク質の合成に関与している。また神経の興奮を抑制し、血管を拡張して、血圧を降下させる。その他、脂肪酸合成、ビタミンDの活性化、体温調節にも関与している。過剰症は発生しにくい。カルシウムの約半量摂取するのが望ましい。
欠乏症-マグネシウムが慢性的に欠乏すると虚血性心疾患などの心臓血管の障害をもたらす。欠乏が進行すると、神経過敏症、筋肉のけいれん、不整脈、循環器障害がみられる。

3.リン(P)
 リンはカルシウムについで多く存在する無機質で、成人体重の約1%(約500g)を占めている。そのうち、大部分がカルシウムとともに骨や歯に存在する。残りの大部分はタンパク質、脂質、糖などと結合した有機リン化合物としてすべての細胞に含まれ、細胞の構成成分として、また高エネルギーリン化合物(ATP)としてエネルギー代謝に供給するなど、多くの代謝反応に関与する。また遺伝情報を担う核酸にも含まれる。体液中のリン酸塩はpHや浸透圧の調節にも関与する。
欠乏症と過剰症-リンは日常食品中に十分含まれ、欠乏症はほとんどみられない。長期的に欠乏すると、骨の石灰化が阻害される。現在の日本の食生活では加工食品の利用増加に伴い、食品添加物として広く用いられているリン酸塩の摂取が多くなっている。リンの過剰摂取はカルシウムの吸収を低下させる。カルシウムとリンの摂取量の比率は1:1から1:2の範囲が望ましい。

4.鉄(Fe)
 鉄は体内に男性3.8g、女性2.3g含まれ、その60~70%が血液中のヘモグロビン、20~30%が肝臓、脾臓、骨髄などのフェリチン、ヘモシデリンに貯蔵鉄として、3~5%が筋肉中の酸素運搬・貯蔵物質のミオグロビンに、約1%が鉄含有酵素に存在している。体内に存在する鉄は機能鉄と貯蔵鉄に分けられ、貯蔵鉄の割合は男性は全身鉄の1/3であるが、女性は1/8である。食物中の鉄の形態は、ヘモグロビンやミオグロビンなどのヘム鉄や植物、乳製品、貯蔵鉄に含まれる非ヘム鉄(食品中の鉄の85%以上を占める)からなる。ヘム鉄の吸収率は非ヘム鉄の数倍高い。非ヘム鉄はビタミンCを同時に摂取すると吸収がよくなる。一方、穀類、豆類に含まれるフィチン酸、野菜などに含まれるシュウ酸、お茶に含まれるタンニンは吸収を低下させる。
 鉄は赤血球のヘモグロビンや筋肉細胞のミオグロビンの構成成分となり、酸素を運搬する。また種々の酵素に含まれATP生成に必要なため、エネルギー代謝にもかかわっている。
欠乏症-鉄欠乏は貧血、疲れやすい、頭痛、動悸を起こす。乳児では発育が遅れる。

5.ナトリウム(Na)と塩素(Cl)
 摂取した食塩はナトリウムイオンや塩化物イオンとして吸収される。吸収されたナトリウムは腎臓で調節を受けて、排泄される。ナトリウムは血漿浸透圧に関与している。血漿浸透圧が高くなると、脳視床下部の口渇中枢を刺激して水分摂取を促し、抗利尿ホルモンの分泌を刺激する。したがって、食塩の過剰摂取は高血圧発症因子である。高血圧発症の機序としては、循環血液量の増大が心拍手量を大きくすることによる。そのほかに腎臓のナトリウム排泄能の低下、内因性ジキタリス様物質の放出増大、交感神経亢進が考えられる。
 ナトリウムは体液の浸透圧の維持、細胞外液量の調節、酸・塩基平衡の保持、神経の興奮、筋肉の収縮、細胞膜の糖やアミノ酸の輸送などに関与している。
欠乏症-日常の食事でナトリウムが不足することはないが、多量の発汗に起因するけいれん、食欲不振、疲労などがある。
塩素は浸透圧の調節、酸・塩基平衡、胃酸としてペプシンやアミラーゼの活性化、膵液の分泌刺激などに関与している。
欠乏症-腎臓にカルシウムが沈着する。

6.カリウム(K)
 カリウムは成人で約100g存在するが、大部分は細胞内にある。ナトリウムとともに浸透圧の維持、神経刺激の伝達、筋肉の収縮、水分の維持などに関与する。カリウムは腎臓でのナトリウム再吸収を抑制して尿中への排泄を促進するため、高血圧症に対して降圧作用がみられる。
欠乏症-カリウムは多くの食品に含まれるので欠乏症はほとんどみられない。

7.亜鉛(Zn)
 成人の体内に約2gの亜鉛が含まれ、95%以上が細胞内に存在している。全量の50%以上が筋肉に、約20%が皮膚に存在している。血液中には全量の0.5%が含まれ、その70%が赤血球中に、10~20%が血漿中に存在する。亜鉛は100種類を超える亜鉛含有酵素として機能している。また中枢神経活動、免疫系の発達と維持、遺伝子の転写制御、細胞の増殖と分化などに関与している。
欠乏症-成長障害、食思不信、発疹、味覚障害、免疫能低下、皮膚障害が起こる。亜鉛の吸収は鉄やカルシウムと拮抗し、フィチン酸により吸収が阻害される。

8.銅(Cu)
 人体に70~100mg存在し、肝臓や脳に比較的多く存在する。銅は銅含有酵素として機能している。また乳児の成長、ヘモグロビンの合成、骨の合成に関与している。
欠乏症-ヘモグロビンの形成が減少して、貧血になる。骨折・変形を起こす。

9.マンガン(Mn)
 マンガンは人体では肝臓、膵臓などの組織に比較的多く存在し、骨の発育に必要とされる。炭水化物、脂質、タンパク質代謝における各種酵素の活性剤として機能する。
欠乏症-体重減少、骨の生育低下、生殖能力低下、運動失調。
10.ヨウ素(I)
 ヨウ素は人体に15~20mg存在し、その70~80%は甲状腺に含まれる。甲状腺ホルモンの成分として、タンパク質の合成や交感神経の感受性に関与している。
欠乏症と過剰症―欠乏症は日本ではまれであるが、世界的には内陸地域では多くみられ、甲状腺肥大、肥りすぎ、疲労、発育停止が起こる。過剰摂取によっても甲状腺腫や甲状腺機能障害を引き起こす可能性がある。

11.セレン(Se)
 グルタチオンペルキシダーゼという酵素の成分であり、この酵素は抗酸化作用を有し、過酸化脂質を還元する。生体内で過酸化物から細胞を防御する役割を持つ。
 克山病という心筋壊死をともなう心疾患は中国でみられ、セレン欠乏が基本的誘因と考えられている。セレン過剰症としては脱毛や爪の変形がみられる。

12.クロム(Cr)
 糖代謝、脂質代謝、発育、免疫力に関与する。クロムの必要量は極めて微量であるため、通常は欠乏しない。クロムを取り扱う作業者は呼吸器障害などの過剰症がみられる。

13.モリブデン(Mo)
 キサンチン酸化酵素、フラビン酵素、アルデヒド酸化酵素の補因子として機能する。食生活が原因の欠乏症は知られていない。モリブデンを過剰に摂取すると銅欠乏症を発症する。
(近藤雅雄:必須ミネラル、2015年7月8日掲載)

ビタミン(水溶性)

1.ビタミンB1(チアミン)
生理作用:ビタミンB1は糖質が体内で代謝されるときに必要な酵素の補酵素として作用している。食物から摂取された糖質はグルコースに変えられ、血液中を血糖(グルコース)として運ばれ、各臓器で利用される。このグルコースを完全に燃焼し細胞内でエネルギーに変えるには、解糖系、TCA回路、呼吸鎖などの経路が必要である。この解糖系とTCA回路を結ぶ酵素にピルビン酸デヒドロゲナーゼがあり、この酵素の反応には補酵素としてチアミンにリン酸が結合したチアミンピロリン酸が必要である。
欠乏症:糖質が多い食生活の場合にビタミンB1が欠乏すると、脚気(多発性神経炎、浮腫)やウエルニッケ脳症(精神障害、運動障害、眼球運動麻痺)を起こす。

2.ビタミンB2(リボフラビン)
生理作用:ビタミンB2は生体内ではフラビンモノヌクレオチド(FMN)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)として存在している。両者は多種類の酸化還元酵素に固く結合して存在するが、これらの酵素はフラビン酵素として知られ、生体内の酸化還元反応に関与している。また水素伝達系の構成員として水素の運搬をする。すなわちビタミンB2は糖質、脂質、タンパク質からエネルギー(ATP)の生成に関与している。
欠乏症:口角炎、舌炎、皮膚炎

3. ビタミンB6(ピリドキシン)
自然界にはビタミンB6の作用のある物質としてピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミンの三つの型がある。生体内ではリン酸エステルとして存在しており、ピリドキサールリン酸(PLP)が活性型である。
生理作用:PLPは酵素の作用でアミノ酸と結合して、アミノ酸の代謝に広くかかわっている。したがって、タンパク質の摂取が多くなると、ビタミンB6の必要量が増加する。
欠乏症:ヒトでは腸内細菌によってビタミンB6が合成されることもあり、欠乏症は起こりにくい。欠乏が起これば皮膚炎、貧血を起こす。

4.ナイアシン(ニコチン酸、ニコチン酸アミド)
ニコチン酸とニコチン酸アミドを総称してナイアシンという。体内ではリボース、リン酸、アデノシンと結合してニコチン酸アミド・アデニン・ジヌクレオチド(NDA)あるいはニコチン酸アミド・アデニン・ジヌクレオチド・フォスフェート(NDAP)として存在し、補酵素として作用する。
生理作用:NDAおよびNDAPは多くの脱水素酵素の補酵素として水素の伝達反応に関与し、糖質、脂質、タンパク質の代謝に広く関与している。
欠乏症:ペラグラ(皮膚炎、下痢、中枢神経症状(認知症))、口舌炎、胃腸病

5.パントテン酸
パントテン酸は補酵素コエンザイムA(CoA)の構成成分である。
生理作用:体内でパントテン酸は補酵素であるCoAとなり、脂肪酸の分解と合成など広範な代謝にかかわっている。
欠乏症:動物がパントテン酸欠乏になると、成長障害、皮膚炎等などが起きることがある。ヒトでは腸内細菌がパントテン酸を合成するので欠乏症はあまりみられないが、重症の栄養失調症では手足の麻痺や疼痛がみられる。

6.ビオチン
ビオチンは酵素タンパク質と固く結合してビオチン酵素を形成している。
生理作用:ビオチンは代謝過程で生成する二酸化炭素を糖質や脂質に固定するピルビン酸カルボキシラーゼやアセチルCoAからマロニルCoAカルボキシラーゼなどの補酵素として重要な役割を果たす。
欠乏症:ビオチンは腸内細菌によって合成され吸収利用されるので、通常の食生活では欠乏することはない。しかし生卵白を大量に食べると、卵白中のアビジンという糖タンパク質とビオチンが結合して吸収を阻害するため、欠乏を起こすことがある。卵白を加熱するとアビジンの作用は消失する。ビオチン欠乏では、皮膚炎、筋肉痛、食欲不振、悪心などの症状を呈する。

7.葉酸(フォラシン)
ホウレンソウから抽出した成分が乳酸菌の増殖に有効であることが見出され、葉酸と命名した。
生理作用:葉酸の活性型であるテトラヒドロ葉酸は、1炭素原子の転移反応の補酵素として作用する。たとえばグリシンからのセリンの合成、核酸塩基の合成、コリンの合成、ヘモグロビンのポルフィリン核の合成などに関与している。
欠乏症:葉酸が欠乏すると巨赤芽球性貧血となり、さらに口内炎、舌炎、下痢などの症状を呈する。

8.ビタミンB12(コバラミン)
分子中にコバルトを含むのでコバラミンとよばれる。生体内では補酵素型であるアデノシルコバラミン、メチルコバラミン、ヒドロキシコバラミンとして存在する。
生理作用:生体内での補酵素作用としてはメチル基、転移反応、核酸の合成、アミノ酸や糖質の代謝に関与している。
欠乏症:ビタミンB12は赤血球の成熟に関係があり、欠乏すると悪性貧血を起こす。しかし腸内細菌が合成するので、一般的に欠乏症は起こりにくい。

9.ビタミンC(アスコルビン酸)
ビタミンCにはアスコルビン酸(還元型ビタミンC)とデヒドロアスコルビン酸(酸化型ビタミンC)がある。アスコルビン酸は酸化されるとデヒドロアスコルビン酸となるが、この物質は還元されるともとのアスコルビン酸に戻る。ビタミンCは体内に広く分布しているが、摂取量が多くても体内の貯留量はそれほど増えず、尿中に排泄される。
生理作用:アスコルビン酸の強い還元力で下記のような生体内の種々の酸化還元反応に関与して、アスコルビン酸はデヒドロアスコルビン酸になる。
① 過酸化脂質の生成抑制、ビタミンEの作用を増強。
② 肝臓の解毒物質の代謝に関与。
③ コラーゲン(結合組織タンパク質)の生成に関与。
④ 副腎皮質ホルモンの合成に関与。
⑤ フェニルアラニン・チロシン代謝に関与。
⑥ 鉄の吸収促進。腸管内での吸収を高める。
⑦ 発ガン物質であるニトロソアミンの生成抑制。
欠乏症:ビタミンCの欠乏により、結合組織のコラーゲンの生成が不足し、毛細血管が損傷しやすく、歯ぐきや皮下の出血が起こる。そのような症状を壊血病という。また小児では骨の形成不全がみられる。

ビタミン(脂溶性)

1.ビタミンA(レチノール)
 ビタミンAは動物性食品に含まれるレチノールと、植物に広く分布するプロビタミンAであるカロテノイド類が存在する。カロテンには3種類あるが、食品中にはβ-カロテンがもっとも多く、しかもビタミンA効力がもっとも高い。
生理作用:①眼の網膜にある視覚を司る物質であるロドプシンの構成成分となっている、②上皮組織における粘膜の糖タンパク質の合成に関与し、機能を維持している、③成長促進、細胞増殖と分化の制御、免疫機能の維持に関与している。
欠乏症:ビタミンAが不足すると、ロドプシンの生成が低下するため、暗いところで物を見る機能が遅れ、夜盲症となる。上皮細胞の角質化が起こり、皮膚、粘膜の乾燥により、細菌感染に対する抵抗力の低下がみられる。
過剰症:過剰に摂取すると肝臓に蓄積されて、急性の脳圧亢進症、慢性では成長停止、関節痛、脂肪肝などがみられる。

2.ビタミンD(カルシフェロール)
 天然には植物起源のビタミンD2と動物起源のビタミンD3があり、両者の生理活性はほぼ同じである。紫外線照射によりビタミンDに変化するものをプロビタミンDといい、ビタミンD2はきのこなどに含まれるプロビタミンD2から、ビタミンD3は動物の皮膚に含まれるプロビタミンD3から生じる。
生理作用:ビタミンDは体内で活性型に変えられ、カルシウムの吸収や骨への沈着、骨からのカルシウムの動員を司っている。このカルシウムの代謝は種々のホルモンも関与している。
欠乏症:幼児期に不足するとくる病、成人では骨軟化症を引き起こす。
過剰症:食欲不振、体重減少が起こり、血中カルシウム濃度が高くなるので腎臓、心臓、動脈にカルシウムが沈着し、動脈硬化や腎不全を起こす。

3.ビタミンE(トコフェロール)
 ビタミンEは天然には8種類あるが、重要なのは生理活性がもっとも高いα-トコフェロールである。
生理作用:ビタミンEは抗酸化作用(酸化防止作用)が強く、多価不飽和脂肪酸が酸化されるのを防ぐ作用がある。細胞内にはビタミンEの大部分が生体膜に組み込まれて存在しており、ビタミンEは抗酸化作用を通して生体膜を正常に保つ作用をしている。
欠乏症:ビタミンEが不足すると、血漿のビタミンE濃度が低下し、細胞膜が破壊されやすくなり、赤血球が溶血しやすくなる。動物ではビタミンE欠乏により不妊症や筋肉の萎縮が起こることが報告されているが、ヒトでは明確ではない。
過剰症:明らかではない。

4.ビタミンK(フィロキノン)
 生理作用:血液の凝固にはプロトロンビンが必要であり、肝臓でのプロトロンビン合成にビタミンKが関与している。またビタミンKはビタミンDとともに骨の石灰化を促進して、骨形成に重要な役割を果たしている。
欠乏症:ビタミンKが欠乏すると血液中のプロトロンビンが減少して、血液の凝固を遅延させる。
過剰症:嘔吐、腎障害

蜂産品類

蜜蜂と自然が生み出したからだに優しい栄養バランスを含んだ花粉食品と各種フラボノイド化合物が濃縮されたプロポリス食品が認定されている。

(1)花粉食品
 蜜蜂のはたらきバチが食糧にするために集めた花粉で、栄養価が高い。成分としてはアミノ酸を約10%含むほかビタミンA、B群、C、E、ルチン、カリウム、リン、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅などの必須栄養素、各種酵素、抗菌酵素、成長促進因子など多数の成分を含んでいる。効用としては食欲増進、消化吸収、新陳代謝亢進により、成長促進、体力回復、強壮、精神安定、更年期障害の症状改善、前立腺疾患の症状改善など、虚弱体質、更年期を迎えた人、勢力が衰え始めた人、貧血気味の人に効果があるといわれている。

(2)プロポリス食品
 プロポリス(propolis)プロポリスの歴史は古く、古代エジプトでは腐敗、保存の効果目的で、ミイラを作る時の防腐剤として使用されていた。また、東欧諸国でも早くからニキビや肌荒れ防止、育毛剤など民間薬として使われてきた。 プロポリスは蜜蜂が樹木から集めた樹脂状のものに自らの唾液を混合させて作ったもので、強い殺菌、消毒作用がある。これを巣の入り口や、隙間の壁に塗りつけて、巣の修理補強や細菌繁殖、外敵の侵入を防ぐというような、幼虫を育てやすい環境を作るのに重要な働きをしている。そこで、プロポリスはギリシャ語でプロ(前を守る)とポリス(都市)を結合し命名された。すなわち、巣を守る(敵の侵入を防ぐ城壁)という意味である。これに対して、ローヤルゼリーや蜂蜜はもともと食べ物で、ミツバチのメスの幼虫にローヤルゼリーを与えると女王蜂になり、蜂蜜と花粉を与えると働き蜂となる。
 プロポリスの成分は樹脂、ミツロウ、精油、花粉、各種有機酸、脂肪酸、アミノ酸、ミネラル、ビタミン、酵素などが知られているが、薬効の中心を担うのはフラボノイド化合物で,その一部はビタミンPとも呼ばれている。この成分は産地により異なるが、化学成分のほとんどはフラボノイドである。フラボノイドの多くは植物中に配糖体として存在するが、プロポリスのものは、すべて加水分解され、糖の脱離したアグリコン(非糖部)として存在する。その他、ケルセチン、カフェイン酸フェネチルエステル、クロレデン系ジテルペン、アルテピリンCなどが薬効成分として注目されている。
 効用として免疫機能の強化、抗菌・抗ウイルス・抗炎症、抗がん・抗腫瘍、抗酸化、毒性軽減、細胞膜の若返り、打撲症・切り傷・しもやけ・あかぎれ・火傷・日焼け・角化症・いぼ・脱毛症、カンジダや白癬菌などの抗菌などに効果があるといわれ、また、不眠症の人、便秘の人、湿疹・アトピー性皮膚炎の人、花粉症・喘息などのアレルギー症状のある人、リウマチの人や、また、糖尿病、肝臓疾患、循環器疾患、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・大腸炎などの消化器疾患、がんなどにも効果があるといわれている。
 しかし、プロポリスにはブラジル産、オーストラリア産、中国産、日本産などが市販されており、産地によってハチが樹液(ユウーカリ、アレクリン、カバ、ポプラなど)を採取する植物が違うために薬効にも差があることが知られている。日本ではブラジル産のユーカリ系製品が多い。
 プロポリスは養蜂家の接触皮膚炎などを引き起こす原因でもあり、香料アレルギーなどを示す人の場合は、プロポリスでかぶれる可能性が高く、注意が必要である。サプリメントとして使用する場合は効果に製品差、個人差があるので摂取に際しては専門家のアドバイスを受けることが望ましい。(近藤雅雄)

発酵微生物類

酵母食品、乳酸菌(生菌)利用食品、植物発酵食品、植物エキス発酵飲料、納豆菌培養エキス食品にJHFAマークが表示されている。

(1)酵母食品 
 酵母(イースト)は単細胞の菌で、無酸素下で糖類をアルコールと炭酸ガスに分解する作用があり、ビール酵母、黒酵母、亜鉛酵母などがある。この作用を利用して酒類、味噌、醤油、パンなどが生産される。健康補助食品や医薬品、調味料などにはビール酵母やパン酵母を分解・抽出した酵母エキスが用いられており、その成分は約50%がアミノ酸バランスの優れたたんぱく質で、その他ビタミンB群、ミネラルを多く含む。また、多糖類のグルカンやマンナンなどの食物繊維、解毒や抗酸化作用のあるグルタチオン,核酸を含んでおり、肝臓・消化器系に対する作用、造血系に対する作用などがいわれている。

(2)植物発酵食品
 食べにくい・消化しにくいという食用植物の難点を、微生物発酵させることによって解決した新しいタイプの発酵食品であり、穀類(玄米、胚芽、ハトムギなど)、大豆、根菜類、きのこ、果実類、海藻類、ゴマ、ミツバチ花粉などが含まれている。これを麹菌、酵母、納豆菌、乳酸菌などで発酵させ、数年間をかけて熟成後、粉末、顆粒、ペーストなどにしたもので、多種類の栄養成分を含む。

油脂類

 油脂類としてはアボガド油、オリーブ油、玄米胚芽油、ゴマ油、小麦胚芽油、コメ油、シソ油、大豆油、月見草油、ヒマワリ油、ベニバナ油、亜麻仁油、クリルなど多数が知られている。健康補助食品に認定されているのは不飽和脂肪酸のγ-リノレン酸含有食品、イコサペンタエン酸(EPA)含有精製魚油食品およびドコサヘキサエン酸(DHA)含有精製魚油食品、大豆レシチン食品および月見草油である。
 必須脂肪酸としてアラキドン酸、リノール酸、リノレン酸が知られているが、EPAやDHAはα-リノレン酸から生産される。月見草油は古くから有用植物として知られ、γ-リノレン酸を豊富に含んでいる。近年、注目されている亜麻仁油にはα-リノレン酸がゴマの約100倍含まれている。また、オキアミから抽出されるクリルにはDHA、EPAを豊富に含み、さらに抗酸化成分のアスタキサンチンが含まれ脂質過酸化防止に有用である。
 不飽和脂肪酸にはn=3系(αリノレン酸、EPA, DHA)とn=6系(リノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸)との関係がある。n=3とn=6系の摂取比率には多くの議論がある。これらのうち、EPA(エチルエステル)は動脈硬化症(閉塞性)の医薬品(医療用)として認可されている(商品名エパデール)。

藻類

 藻類には紅藻(アサクサノリなど)、褐藻(昆布、若布など)、緑藻(クロレラ、青海苔など)、藍藻(スピルリナ、スイゼンジのりなど)などが知られているが、このうち、健康補助食品として認可されているのはたんぱく質、ビタミンB2、鉄分などが豊富で緑黄色野菜の多いクロレラとスピルリナである。これらの食品は健康食品の中でも総合的な栄養補給に優れた食品として注目されているが、その反面副作用も多く報告されている。

 クロレラには解毒作用、糖尿病の予防、抗がん作用、免疫力増強作用など多数の効用が報告されているが、副作用も多く報告されている。クロレラは単細胞で極めて増殖力が旺盛で、たんぱく質のほか炭水化物、脂肪、ビタミン(E、カロチン、B群、C)、ミネラル(鉄、マグネシウム、カルシウム、カリウム)、食物繊維、葉緑素などを豊富に含み、いわゆる完全食品としてNASA(アメリカ航空宇宙局)が宇宙食として試作、話題を呼んだことで有名である。このクロレラは、1890年オランダ人バイリングが発見し、ギリシャ語のクロロス(緑の)とラテン語のエラ(小さいもの)をあわせて命名された。

 スピルリナは細胞の形がスパイラル(らせん状)をしており、緑黄色野菜の代替として、糖尿病、肝炎、貧血症、高脂質血症、慢性膵炎、胃腸炎、解毒作用など多くの効果が報告され、メキシコでは1937年にスピルリナを正式な食品として認可している。

きのこ類

 きのこ類にはたんぱく質、ビタミンDやB2、ミネラル類、βーグルカンなどの多糖類を多く含んでおり、シイタケ食品やマンネンタケ(霊芝)食品が健康補助食品としてJHFAマーク表示されている。
 国内には4~5千種類のきのこが自生しているが、このうち食用になるのは約百種類で、毒キノコ類など食用にならない方が圧倒的に多い。通常市販されているものにはマツタケ、シイタケ、マイタケ、ブナシメジ、ナメコ、エノキダケ、メシマコブなどが有名で、多くの効用が報告されている。
 きのこに多く含まれているβグルカンには腸の環境を整え、免疫力を活性化し、がんを防ぐ作用があることが動物実験で確認されている。さらに便秘の予防や血中コレステロール減少作用、骨粗鬆症予防効果などが知られている。
 最近、ヤマブシイタケに神経の成長を促す活性物質が静岡大学の河岸洋和教授によって発見され、アルツハイマーなどの中枢神経系の病気との関連が指摘され、将来的には新薬の開発につながる可能性も秘めているといわれている。
 きのこは植物ではなく、菌類に分類される生物で、きのこ特有のうまみはグアニル酸という成分による。これは核酸の構成成分であり、この量が多いか、少ないかによって味が大きく変わる。きのこに昆布などに含まれるうまみの成分グルタミン酸と一緒になるとうまみが数十倍に上昇するといわれる。

(1)シイタケ食品
 日本でも最も多く食用されているのがシイタケで、糖質が約60%を占め、残り20%がたんぱく質、10%が食物繊維、5%がミネラル、3%が脂質、残りがビタミン類で、とくにDの前駆体であるエルゴステロールが多いのが特徴である。サプレメント食品にはシイタケ自体や子実体に育つ前の菌子体から抽出したエキスが用いられている。
 この菌子体には抗がん作用のあるβグルカンが含まれ、白血球の免疫機能に関与するマクロファージやT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞の機能を増強させることが動物実験で確認されていることから、免疫機能を高めることによってがんを予防する効果があるといわれている。また、シイタケの核酸成分であるエリタデニン、デオキシレンチナシン、5’-AMPには血小板の凝集を防ぐ抗血栓作用があり、エリタデニンには体内のコレステロールの排出と代謝を促進する作用がある。また、動脈硬化、高血圧、糖尿病などの予防にも関与するといわれている。

(2)マンネンタケ食品
 サルノコシカケ科に属する担子菌の一つであり、色の違いによって赤芝、白芝、黄芝など、形の違いによって鹿角芝、牛角芝などと呼ばれている。また、霊妙なる薬効から霊芝とも呼ばれている。
 薬効があるのは子実体(かさの部分)で、これを煎じたり、乾燥させて粉末や粒状、カプセルにしたサプレメントが商品化され、制がん作用、頭痛、不眠症、神経衰弱、白内障、口内炎、気管支炎、胃炎、動脈硬化、婦人科疾患、腰痛など多彩な症状に効果があるといわれている。

(3)アガリクス
 アガリクス茸(和名 かわりはらたけ)の原種は、ブラジル東南部サンパウロ郊外のピエダーテの山中に自生するキノコで、「アガリクス」と名前がつくキノコは32種類存在している。
 現地では「太陽のキノコ」「神々のキノコ」「神秘のキノコ」などと呼ばれ、古くから珍重されてきた。現在市場に出ているものは、人工栽培のものが多く、ピエダ-テの天然アガリクスが日本の市場にでることは、まずありえないといわれているが、産地による大きな違いはない。
 アガリクス茸は、1965年ペンシルバニア州立大学教授のシンデン博士とランバート研究所のランバート博士の二人が制ガン作用等の研究発表を行い、その制がん作用が注目されるようになった。

アガリクス茸(学名:アガリクス・ブラゼイ・ムリル)
ⅰ)成分
   多糖類:β-(1,3)-D-グルカン・β-(1,6)-D-グルカン・キシログルカン・ヘテログルカン蛋白質複合体・キチン質・マンナン・マンノースなど
 アミノ酸:イソロイシン・ロイシン・メチオニン・フェニルアラニン・リジン・バリン・スレオニン・トリプトファン・アスパラギン酸・グルタミン酸・アラニン・グリシン・セリン・プロリン・システイン・チロシンなど
 酵素:アスパラキナーゼ・アミラーゼ・カタラーゼ・グルコシターゼ・スクラーゼ・セルラーゼ・ぺクターゼ・ペプシン・ぺプシターゼなど
 その他:核酸

ⅱ)効能
 最も注目されているのは、アガリクスに含まれるβ-1,3/1,6-Dグルカン(シイタケやマイタケなどに含まれるブドウ糖の独特の結合物)の免疫活性作用である。これは、マクロファージ、顆粒細胞、NK細胞といった特定の白血球細胞の表面にある受容体分子と一致するため、これらの細胞が刺激されて微生物を殺す物質を作り、あらゆる体内の異細胞を分解し、さらに活性化されると白血球を増やすようにB細胞やT細胞に伝えるサイトカインというシグナル分子をつくる。そのため、抗腫瘍作用、制がん作用、がん予防、血糖低下、動脈硬化改善、アレルギー、リウマチ、花粉症予防などの作用があることが知られている。
 そのほかにアガルクスには血圧と動脈硬化に関する作用、肝機能に関する作用、腎機能に関する作用、血液に関する作用、消化機能に関する作用、脳神経系機能に関する作用、成長と発育に関する作用、皮膚や毛髪に関する作用など多くの効用が報告されているが同時に副作用も報告されている。(近藤雅雄)

サプリメントとは、利用にあたっての注意事項

サプリメントの名称は米国で1994年にできた栄養補助食品健康教育法(Dietary Supplement Health and Education Act; DSHEA)からきています。これは単にサプリメント法とも呼ばれていますが、この英語名「dietary supplement」を直訳したものに近いものです。それによると、ビタミン、ミネラル、ハーブ類、アミノ酸などの成分を1種類以上含む栄養補給のための製品で、錠剤、カプセル、粉末、ソフトゲル、液状など、通常の食品以外の形状をとるものはすべてサプリメントと呼ばれ、日本では「栄養補助食品」と訳されることが多い。


米国の健康補助食品
1.ビタミン類
2.ミネラル類
3.ハーブ類(漢方も含む)
4.植物性のもの(生薬類なども含む)
4.アミノ酸類
5.食事として摂取されているもの
6.濃縮されたもの
7.代謝産物
7.構成成分
8.抽出されたもの



 これは食事療法、運動療法、薬物療法にとってかわる物ではなく、健康リズムを回復または維持していくための補助的に利用すべき食品であり、摂取するタイミングや取りすぎには注意が必要です。
 サプリメント(または健康食品)が国内で利用されている背景・目的として、
①現在の日本においては食の西洋化によって油脂や糖質などの高エネルギー食品が増える一方で野菜、雑穀類、穀物類など、また、食物繊維のような低エネルギー食品成分やミネラル、ビタミンといった微量栄養素を多く含む食品の摂取量の減少による補助として
②農薬や産業廃棄物による食品の質の低下による補助として
③土壌の劣化に伴う植物含有栄養素の減少や輸送手段の発達による品質の低下(未熟な野菜、果物の収穫による栄養素の不足)による 補助として
④養殖魚や養鶏で使われている抗生物質など人為的操作による品質の低下を補助するため
⑤健康志向
⑥合理化思想の浸透
⑦核家族の進展による食生活の貧困
⑧健康食品企業の加熱宣伝の効果
⑨人から勧められたり、人が使用しているとまねたりする
⑩スーパー、コンビニ、飲食店、ファーストフード店などの乱立
⑪疲労回復、精力増強などに即効性がある
⑫病気の予防や体質改善(肥満を含む)のため

 などが挙げられます。こられの結果、家できちんと食事を摂らないで、手軽に健康を支える食品として、「いわゆる健康食品」といわれるものが氾濫していると思われます。健康食品と類似の名称として健康補助食品、健康栄養食品、栄養補助食品、ダイエタリ・サプリメント、健康飲料などがあり混乱していますが、健康食品に対する明確な定義はありません。

サプリメント利用にあたっての注意事項!
1.サプレメント利用にあたっては十分な情報を得て、ご自分の判断にて選択してください。
2.ここに記載したサプレメント(アカサタナ・・・順)が健康食品に含まれているとしても、その安全性・有効性が十分であるとは限りません。
3.これらの情報には動物実験結果のものもありますので、有効性については、ヒトを対象とした研究情報が重要です。また、人によって、体調によって、服用する医薬品によって、さらに食べ物によってその効果は異なりますので、健康食品を摂取する場合は十分に注意してください。
4.何らかの病気を持っている方は、健康食品を摂取する際には医師へ相談してください。摂取して、もし体調に異常を感じたときは、直ちに摂取を中止して医療機関を受診してください。
(近藤雅雄:サプリメントとは、2015年6月17日掲載)