医学書「指定難病 日本のポルフィリン症」1, 2, 3 を出版

ポルフィリン症について、3部作で纏めました。
まず、第1部はポルフィリン症の診断・治療、患者の権利、指定難病・未承認薬獲得までの経緯など医学・医療の総合的書物として纏めました。
2022年7月、「ポルフィリン症」の歴史、病因、診断法、診断基準、治療法、疫学・臨床統計、予防法、生活実態などについて、40年以上に亘る研究の成果を独自の視点から科学的に纏めました。また、未承認薬や指定難病の承認の経緯などについて纏めました。(B5版、321ページ)

構成は「Ⅰ.医学編」と「Ⅱ.患者編」に分け、医学編(第1章)ではポルフィリン症の医学と題し、遺伝性ポルフィリン症が「指定難病」認定のきっかけとなった調査研究として、2009年、厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)の「遺伝性ポルフィリン症の全国疫学調査ならびに診断・治療法の開発に関する研究」研究班(研究代表者:筆者)を中心に纏めた診断基準および治療指針を編集・修正して記載すると同時にポルフィリン・ヘム生合成機序ならびにその調節機序、遺伝性ポルフィリン症の発症機序などについて纏めました。患者編(第2~5章)では患者を中心とし、第2章は患者さんの権利獲得に向けた活動(指定難病、未承認薬承認)を中心に書きました。第3~5章は患者さんの治療後の現状、診療体制の問題点、患者さんの生活習慣改善、健康維持に関する諸情報を纏めました。

本書が医師などの医療関係者、医学研究者等々の目に留まり、ポルフィリン症患者の診断の向上並びに臨床研究の発展に繋がることを期待しています。そして、何よりもポルフィリン症患者さんのQOLの向上と健康寿命の延伸、そして、患者さん方が未来に向かって安心・安全な社会活動が送れるよう、病気が根治可能な社会となることを願っています。
そして、第2部、第3部については、2023年4月、「ポルフィリン症2」(B5、200ページ)の診断と治療について、臨床研究用に纏めました。
また、「ポルフィリン症3」(B5,252ページ)は臨床医用に即診断と治療に利用できるよう纏めました。
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植物内ポリフェノールの増量方法の発見

現代人の免疫能は低下し、特に高齢者の免疫能は著しく低下している。その主な原因として、急速な食生活の変化、肥満、加齢、ストレスなど、各種酸化ストレスによる影響が示唆されている。この活性酸素が原因で起こる各種疾病の防御を目的としてフラボノイド類の摂取が注目されている。フラボノイド類には約5-7,000種ともいわれる多数の物質が報告され、その構造は極めて似ているが、その抗酸化機能は各種異なる。これらフラボノイドの標準統一分析方法は未だになく、各々の抗酸化物質の抗酸化能についてもはっきりしていない。
そこで、約30種類の抗酸化物質についてその作用を検討すると同時に、世界に先駆けてUV検出器とHPLC分析による各種フラボノイドの一斉同時自動分析法の開発を行った。さらに、各種野菜・果物のフラボノイドを分画定量し、その含有量およびペンタキープ(ALA肥料、コスモ石油(株))投与による影響を検討した。その結果、これまでに多くの抗酸化物質の中で、ルテオリンが細胞内・外での活性酸素消去能が最も高いことを証明し、さらに、ALAを投与し栽培した植物のフラボノイドおよびミネラル量に及ぼす影響について検討を行った。その結果、ルテオリン(図)をはじめフラボノイド類が平均約10倍増量することを見出した。
PDF:ALA-ポリフェノール

高齢者の健康寿命の延伸を目指して~エイジングの機序とアンチエイジング

健康で生きられる期間を「健康寿命」と言いますが、2016年の日本人の健康寿命は男性71.14歳(2020年の平均寿命は81.64歳)、女性74.79歳(同87.74歳)です。女性の方が男性よりも約6年長生きですが、不健康状態が約2.5年、すなわち介護を要する期間が長い。そして、共に約10年以上、不健康状態が見られます。この原因の一つが酸化ストレスですので、高齢者の健康寿命の延伸とQOL(生活の質)の向上を図るためには、改めて健康増進の三原則「栄養・運動・休養」を見直すことが大切です。そこで、アンチエイジングを目的に、エイジング(加齢、老化)に影響を与える要因を明らかにし、それを除去する方法について検討しました。PDF:加齢の病態生理~アンチエイジング2

ペンタガーデンは植物中の抗酸化能を持つ各種必須ミネラル及びフラボノイドを増やす

 近年、活性酸素が原因で起こる各種疾病からの予防及び健康維持・増進を目的としたフラボノイドの抗酸化能が注目されている。フラボノイドには約7000種ともいわれる多数の化学物質が報告され、その抗酸化能も異なる。そこで、約32種類の抗酸化物質についての抗酸化能を検討した結果、ルテオリンというポリフェノールが細胞内外にて極めて抗酸化能が高いことが分かった。我々は、各種フラボノイドの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析法の開発を行うと同時に、各種植物のルテオリン量を調査した結果、ピーマンなどのベルペッパーに多く含まれていることが分かり、ピーマン中の各種フラボノイドの定量分析を行った。 
 さらに、最近注目されている肥料ペンタガーデン(5-アミノレブリン酸(ALA)配合肥料:コスモ誠和アグリカルチャ株式会社、現在は株式会社コスモトレードアンドサービスに変更)を投与し、栽培したピーマンのフラボノイドおよびミネラル量に及ぼす影響について検討を行ったところ、抗酸化作用を有するポリフェノール類の増量並びに多くの必須ミネラル、とくに免疫や抗酸化作用を有するミネラル類が増量することを見出した。

 ALAはクロロフィルやヘム合成に不可欠な鍵となるアミノ酸であり、このALAを配合したペンタガーデンまたはペンタキープには植物生長促進効果、光合成促進、バイオマスの増大、糖度の上昇、硝酸含量の低減、ビタミン含量の向上、低温・低照度耐性、耐塩性などの様々な機能が知られ農林業、施設園芸、野外圃場、都市や砂漠の緑化など多方面で利用されている。

 最近、筆者もテイクオンで購入したペンタガーデンを家庭園芸に用いたところ、花はより鮮やかに、葉はより緑に、また野菜や果物はより大きく、糖度も増し、各種栽培には欠かせない肥料として楽しんでいます。

 ペンタガーデンの“ペンタ“の意味はギリシャ語で5を指し、5番目の炭素にアミノ基を持ったレブリン酸と言うことで、5-アミノレブリン酸と言い、このアミノ基が植物の成長に大変重要であることからペンタシリーズが開発されたものと推測される。近藤雅雄(2019年6月10日掲載)

 なお、 ペンタガーデンテイクオンALAショツプhttp://takeon-ala.jp/ にて購入できる。
 論文は以下のPDFを参照されたい。ピーマンの各種ミネラル及びフラボノイド量に対する

ALAを合成する酵素の新しい測定とその酵素のミトコンドリア内での様態

 ALAを生産する酵素、5-Aminolevulinate synthase (ALAS)活性の測定はsuccinyl-CoAとglycineを基質として測定されるのが世界的に広く知られています。このALASはヘム合成(ポルフィリン代謝)の律速酵素として最も重要な酵素です。肝性ポルフィリン症などのヘム合成系の酵素障害があるとALAS活性が増量してALAの生産を高めることが指摘され、ポルフィリン代謝異常で最も中心的役割を果たす酵素です。しかしながら、実際に肝臓のポルフィリン代謝障害を起こす晩発性皮膚ポルフィリン症の肝ALAS活性は増加しないことが広く知られ、この矛盾を説明することがこれまでにできませんでした。
 そこで、肝性ポルフィリン症患者の生検肝微量組織からα-ketoglutarateとglycineを基質としてALAS活性を測定した結果、succinyl-CoAとglycineを基質とした値よりもポルフィリン代謝をより反映していることが今回の実験によってわかりました。すなわち、肝ALAS活性の測定にはこれまでの方法と異なって、α-ketoglutarateとglycineを基質として測定した値の方がより肝性ポルフィリン症の病態を反映していることが示唆されると同時に肝ALAS酵素の作用機序がほぼ分かりかけてきました。
 その内容は2015年9月の学術雑誌ALA-Porphyrin Scienceに掲載されました。以下のpdfで参照ください。(近藤雅雄:平成27年11月10日掲載) 肝性ポルフィリン症と肝ALAS

ALAの植物利用

シーズ・メイル対談
 コスモ石油(株)は生命体のエネルギーとなる ALAを用いた事業を推進することで 社会の期待に応えています。ALAは 生命の根源に関わる物質として注目が高まっています。 ALAの働きと可能性、そしてコスモ石油(株)のALA事業について木村社長と意見交換をいたしました。
 現在はコスモALA株式会社にてペンタガーデン等の植物利用に関わる研究及び製造が行われています。
 2011年4月、コスモ石油株式会社の代表取締役社長 木村 彌一氏との対談の内容がシーズ・メイルで紹介され、その内容を下記のpdfで示しました。 PDF:コスモ石油社長と対談

野菜中の各種フラボノイドのHPLC分析法の開発

現代人の免疫能は低下しており、特に高齢者の免疫能は著しく低くなっている。免疫能低下の主な原因として、急速な食生活の変化による肥満および加齢、ストレスなど、酸化ストレスによる影響が示唆され、その結果、細胞障害や免疫能低下が起こることが知られている。そこで、酸化ストレスからの防御方法として野菜などに多量に含まれる抗酸化物質の摂取が注目されている。
 本研究ではこれまでに多くの抗酸化物質の中で、ルテオリンが細胞内および細胞外の活性酸素消去能が高いことから、ルテオリンを中心として各種フラボノイド類のHPLC分析の開発を行った。フラボノイド類には多数の異性体が報告されているが、統一された分析方法はいまだにない。したがって、各々の抗酸化物質の抗酸化機能についてもはっきりしない。(br>  本研究では各種フラボノイドのHPLC分析法の開発と、実際に野菜からの抽出ならびに定量を目的として検討した。(近藤雅雄、2019年4月17日掲載、2006年5月12日発表)PDF:野菜中の各種フラボノイド分析法の開発

天然色素ポルフィリンの科学~生命科学を中心に~

 “ポルフィリン”についての名前は余り親しまれていないが、最近、ポルフィリンに関する研究領域が急速に広がり、注目され出している。
 まず第1に、分子生物学の進歩により、ヒト、植物、細菌など地球上の生物が生命維持に不可欠な物質として共有しているポルフィリンの代謝調節の機序が次々に明らかにされていること。
 第2に、新医療として、ポルフィリンの物理化学的特性を利用したがんの診断と治療法の開発、および人工血液の開発が軌道に乗り出したこと。
 第3に、先端技術としての分子認識素子や光機能材料などの高分子工学、情報工学分野に利用され、まったく新しい分野の研究として注目され始めたこと。
   最後に、植物におけるポルフィリン合成経路が解明され、それにともないこの代謝系を標的とした、人体に無毒の除草剤開発が進んでいることなどが上げられる。
 このように、ポルフィリンに関連する研究が生物、医学領域ばかりでなく、その生物機能を模倣、利用し、分子機能材料などの開発へ発展、その成果が次々に報告され、ポルフィリン研究の重要性が広く認識されはじめた。この注目を浴びている研究の詳細に関しては、現代化学増刊28として市販されているので併せて参照されたい。ここでは、その一部を紹介すると共に、ポルフィリンについての知られざる世界について、以下のpdfにて紹介する。
(掲載論文:近藤雅雄、現代化学49-55, 1995.6) PDF:天然色素ポルフィリンの科学