君が見る夢、4つの夢とその生理

人は生涯を通して多彩な夢を見る。広義には記憶に関わる「睡眠中に見る」ものと生きるための活力となる「将来の希望」といったものの2種類があり、どちらも社会生活上重要である。本稿では、これに2つを加えた4つに分類し、筆者の経験に基づき、その生理について解剖した。
第1の夢はレム睡眠中に見る無意識の夢であり、喜・怒・哀・楽・愛・悪・欲の7情に関するものが多い。
第2の夢は睡眠中に見るものではなく、将来の希望や人生の目標と言ったものを指す。目標を設定し、強い意志でそれに立ち向かえば夢は叶えられることが多い。
第3の夢は寝る前とレム睡眠時に強く意識したことが夢となって現れ、新たなアイデアや発想が浮かんでくることがある。強い意志が夢を呼ぶのだ。
第4の夢は死に直面した無意識の夢「忘却の物語」である。現実世界と死後世界の境界である。臨死体験だが、「川」「光」「闇」の出現は広く知られている。
「人生は夢と共にあり、夢と共に消えゆく」夢が人生を変える。ならば、楽しい夢のある夢を見て生きて行きたいものだ。
PDF:夢23.10.22.vir1doc

二つの脳、右脳と左脳

脳は大脳(皮質、辺縁系、基底核)、間脳(視床、視床下部)、脳幹(中脳、橋、延髄)、小脳からなりますが、人では他の哺乳動物と異なって大脳皮質が大きく発達し、知的な活動もコントロールできるようになりました。この皮質については、①全ての人が同じ数の神経細胞(約140億個)を持つ。②心身(こころとからだの働き)の司令塔である。③感覚、運動の統合、意志、創造、思考、言語、感情の中心となる。④成長に従って発達し、ゆっくり退化する。⑤一日、週、月、四季、摂食・消化、神経・ホルモンの各リズムが存在する。⑥心身の疲労を回復し、記憶に役立つ睡眠のリズムが存在する。⑦男と女との違い等、脳の中で最も重要ですが、その中で人として最も大切なのが、前頭連合野です。この部位は思考、言語、理解、理性、感性と8つの知性など人間としてのこころの働き(精神活動)の中心となっているので、人としての「こころの中枢」と言えます。 PDF:右脳と左脳

内リンパ水腫(蝸牛型メニエール病)の治療評価法の新規作成と治療体験

 近年、蝸牛型メニエール病(急性低音障害型感音性難聴, ALHL)の発症が増加している。本症は「内リンパ水腫」を原因とするのでメニエール病の不全型ともいえる。症状は激しい回転性のめまいはなく、低音が聞こえにくい難聴、耳鳴り、耳閉塞感を主とし、状態がよくなっても再発を繰り返すのが特徴で、メニエール病に移行することが多い。病気が完成すると難治性となるため、早期の治療が重要である。しかしながら、現代の医療では治療法は確立していない。一般的によく言われているのが、安静の確保とストレスを取り除くこと。そして、基本的な薬物療法を行うことである。薬物療法の第一選択は強い浸透圧による脱水力で内リンパ水腫を軽減させるイソソルビドなどの利尿剤が用いられる。内耳の血液循環改善薬が使われることも多い。また、炎症を抑えるためにステロイド剤や精神安定剤、ビタミンB12製剤も使われることがある。

 本論文では、筆者自らALHLを発症したのを契機に、治療に対する評価法を新たに作成し、科学的に原因究明と治療の経過を追及したので報告する。また、本疾患を体験して、大学病院の耳鼻咽喉科における医療の現状についても報告した。(2022年8月1日執筆)

PDF:メニエール病論文  

運動とミネラル:激運動による血液中モリブデン量の減少

 運動は動物にとって生命を維持する上で不可欠な仕事であるが、激しい運動(競技用スポーツ)の場合はそれなりの管理が必要となる。そこで、日常的に激しい運動を行っている男子大学駅伝選手および女子高校バスケットボール選手の体内ミネラルの影響について、とくに汗や代謝によって失われる微量元素の血液中の変動を検討した。
 その結果、選手群は男女共に日常的に運動をしていない対照群に比してモリブデン(Mo)量の著明な減少を世界に先駆けて見出した。また、男子選手群では対照群に比してマンガン(Mn), ガリウム(Ga), スズ(Sn)の有意な減少(p<0.05)とニッケル(Ni), カドミウム(Cd)の増加傾向を見出した。女子選手群では亜鉛(Zn)が対照群に比して有意に減少(p<0.05)したが、男子では有意差は見られなかった。
 以上の結果、激しいスポーツ活動が血液中のミネラル量に与える影響は男女で異なることがわかった。しかし、Moについては男女ともに選手群で著明に減少しており、激運動によってMo量が減少することが明らかとなった。PDF:運動とミネラル

高齢者の健康寿命の延伸を目指して~エイジングの機序とアンチエイジング

健康で生きられる期間を「健康寿命」と言いますが、2016年の日本人の健康寿命は男性71.14歳(2020年の平均寿命は81.64歳)、女性74.79歳(同87.74歳)です。女性の方が男性よりも約6年長生きですが、不健康状態が約2.5年、すなわち介護を要する期間が長い。そして、共に約10年以上、不健康状態が見られます。この原因の一つが酸化ストレスですので、高齢者の健康寿命の延伸とQOL(生活の質)の向上を図るためには、改めて健康増進の三原則「栄養・運動・休養」を見直すことが大切です。そこで、アンチエイジングを目的に、エイジング(加齢、老化)に影響を与える要因を明らかにし、それを除去する方法について検討しました。PDF:加齢の病態生理~アンチエイジング2

鉄欠乏性貧血~ヘム合成とミネラルバランスの新知見~ 

鉄欠乏性貧血は発展途上国のみならず先進諸国においても非常にポピュラーな疾患で、すべての年代での発症が認められます。この原因として、発展途上国では栄養欠乏が、先進諸国では栄養バランスの悪い食事が、各々指摘されています。鉄欠乏状態が続くと,まず貯蔵鉄が減少し,次に血清鉄,最終的にヘモグロビン量が減少し,貧血の発症に至ります。貧血になると免疫機能が損なわれ、心身の様々な機能が低下します。
途上国においてはヨード、ビタミンA、鉄、亜鉛の4大微量栄養素欠乏症の中で、鉄欠乏性貧血症は、最も対策の遅れている健康問題の一つです。我々は血液学的検査と症状から12例の典型的な鉄欠乏性貧血患者を見出し、本症の病態生理として新たにヘム合成とミネラルバランスに関する知見を得ました。そこで、貧血の原因、症状、予防と治療を加えて報告します。(参考文献:Kondo M et al. Iron deficiency anemia, in PORPHYRINS 14(2) 99-104, 2005) PDF:鉄欠乏性貧血症

紅茶による胃がんと風邪の予防

紅茶の健康効果は沢山ありますが、2つを挙げました。
1.胃がんの予防
胃がん発症の一次予防としてはピロリ菌除去と塩分を控えることが大切ですが、紅茶飲用による予防も可能かもしれません。

2.風邪の予防
紅茶(発酵茶)には緑茶に含まれる抗酸化物「カテキン」が発酵過程でテアフラビン(紅茶ポリフェノール)となり、これがインフルエンザウイルスに対して効果があると言われています。紅茶でうがいをしてはどうでしょうか。風邪ウイルスの感染予防として期待できかもしれません。現代のコロナ禍時代は口腔ケアの時代とも言えますね。
 いずれにしてもこれらの詳細は下記のPDFを参照してください。 PDF:紅茶と健康    

こころとからだの健康(18)幸せホルモン・愛情ホルモン「オキシトシン」の多様性

 幸せホルモン、愛情ホルモンとして有名なオキシトシン(Oxytocin, OXT)は、視床下部の室傍核(PVN)と視索上核(SON)の神経細胞で生産され、脳下垂体の後葉から血管内分泌される9個のアミノ酸(Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly)からなるペプチドホルモンです。1906年に英国の研究者ヘンリー・ハレット・デールによって発見され、出産時に子宮を収縮させる作用があることから「早い」と「陣痛」(oxy「早い」、tocin「出産」)を意味するギリシャ語として命名され、1952年に分子構造が決定されました。このホルモンの半減期(寿命)は約3分と短い。

 オキシトシンの分泌調節には未だに不明な点が多いが、エストロゲンによって分泌が増加し、オキシトシン受容体の発現を脳内で増加させる。これまでに、オキシトシンは分娩時に子宮平滑筋を収縮させ陣痛を促進させる作用と授乳による乳頭への機械的刺激に応答して乳汁射出を促す作用があることからり、出産と新生児の栄養補給に不可欠なホルモンとして広く知られてきた。

 一方、男性にもオキシトシンが存在することが分かっていましたが、その作用は長い間不明でした。それが、近年の分子生物学的手法によって、男女共にオキシトシンは大脳皮質前頭前野、海馬、扁桃体などに作用し、抗ストレス、摂食抑制、うつ病の改善、鎮痛、鎮静、催眠、感情、記憶、学習能力の向上、認知症予防など多様な作用が相次いで見出されています。そして、中枢神経のほか、子宮、乳腺、皮膚、腎臓、心臓、胸腺、膵臓、脂肪組織でも発現が確認され、その作用が注目されています。

 本稿では「オキシトシン」検索を行った結果、Google 166万件、Yahoo 201万件ヒット (2019年8月20日現在) し、この中からオキシトシン作用の多様性についてまとめました。
(近藤雅雄:2019年9月1日発表、2020年6月14日掲載)

以下のPDFに内容を示しました。PDF:オキシトシン縦書き    

「こころとからだの健康」第2版出版

 地球規模的に「こころとからだの健康」が問われています。「こころの健康」では海外における人と人との争い、国と国との争い、国内ではいじめ、児童虐待、車社会におけるいわゆる「あおり」、京都アニメーション放火事件等々、非常識な事案が続いています。
 また、「からだの健康」では生活習慣病の増加をはじめ、遺伝子編集、地球環境問題など普通でないことが平然と行われています。
 こころとからだは「心身一如」であり、このどちらかが障害されると、心と身体のバランスが崩れさまざまな障害となって現われてきます。また、2019年11~12月以降に中国武漢市で発生した新型コロナウイルスの感染者および死亡者数の増加はこころとからだの両方に深刻な影響を与え、2020年3月11日に漸くWHOはパンデミック宣言を致しました。このウイルスによってすべての価値が破壊されようとしています。人類の英知によって、何としても「いのちとこころとからだの健康」は守らなければなりません。

 人間形成の基盤を成すこころの教育とは、さまざまな体験や体感を通して、生きるこころと生きる力、いのちを大切にするこころ、他者を思いやるこころ、前向きなこころといった人としての基礎を育むことが大切です。そして、人間を科学(健康、病気、福祉、コミュニケーションなど)できる人材を育てる。さらに、社会が期待する、①前に踏み出す力、②考え抜く力、③チームで働く力を持った人材を育てることが大切です。

 そのためには、自分を取り巻く環境に感謝するこころを持つことは勿論、人間社会において基本的である相手の立場になって(他のすべての生物に対しても共通しています。)、行動することであり、自分自身のQOL(生活の質・人生の質)をいかに高めるかを考えることが大切です。

 ヒトを取り巻くさまざまな環境要因と共存していることを常に念頭に入れた、地域・国家・地球・宇宙を考慮した包括的・学際的な正しい総合的・人文・社会科学的知識が必要であると同時に、このような社会の変遷に対して、常に謙虚に歴史・現状および将来を見据え、現状において最も重要な問題を正しく捕らえた科学的、精神的教育を行うことが必要です。そのための基本的教養を家庭・学校・地域・社会で学ぶことが大切です。
 基本的教養を身につけることは、生きる術として大切な善悪の判断、感謝し奉仕するといった素直なこころ、さらに、前向きに生活技術の工夫を行う知恵と未来を夢見るこころを持つことです。

 この地球上に生まれてきた人間は、この地球を支配する管理者として、この美しい地球を次代に引き継ぐ責任があります。それは人としての義務です。地球環境の保全、持続的な平和を堅持していくために、「こころとからだの健康」が最も大切であることを認識し・未来図を描いて行ってほしいと願います。

 本書では、「こころとからだの健康」と題して、人間教育の四原則である徳育、知育、体育、食育および環境問題などについて、教育・研究・運営の経験をもとに執筆しました。(近藤雅雄著 2020年3月3日発行、総ページ数140p,A4)


目 次
はじめに
1.人間として生きる力を育てる
2.遊びから学ぶ幼児教育、子育て習慣および期待される人材
3.社会の変貌と大学における教育のあり方
4.人を育てる~大学のリーダーに求められる37の習慣
5.研究成果は人類の宝、特に保健・医療・福祉に関わる研究の成果はすべて公開する義務がある
6.健常人と難病患者
7.「ポルフィリン症」難病指定への道
8.研究に懸ける思い~指定難病「ポルフィリン症」診断法の開発、患者発見に対する熱い思い
(1)ポルフィリン症専門外来開設への熱き思い
(2)研究には投資が必要~研究すればするほど自己負担が増加
9.正しい栄養素の摂取と言葉
10.健全な食生活をめざして~現代日本人の食生活を考える
11.食文化の変遷と食育~日本型食生活による健康寿命の延伸
12.食生活と栄養と食育
13.栄養学と医師
14.「こころとからだの健康」12の習慣
15.男と女の寿命の差
16.右脳と左脳を知る
17.摂食障害
18.肥満対策
19.ストレスと心身の障害
20.治癒と治療
21.生体防御機構と免疫システム
22.中高年齢者の免疫強化によるアンチエイジング
23.5-アミノレブリン酸の多様な生物機能
24.ホメオスタシスと生体リズム
25.目の病気の予防・対策に必要な栄養素と食品
26.脳を元気にする食と栄養素
27.血液型と病気
28.人間と地球環境
29.皮膚とこころ
30.幸せホルモン「オキシトシン」作用の多様性
おわりに「君に贈る言葉」
付録 リヴ物語
   国立公衆衛生院
   ロックフェラー大学
   日本の未来年表と医療

生活習慣病予防対策の簡単レシピの1例

生活習慣病7疾患の予防に対する最新の食生活話題について紹介した。

1.がん予防 
 みかんの皮を熱湯消毒し、天日干しで数日間乾燥させる。その後、粉砕して食する。精油のリモネン、フラボノイドのヘスペリジン、カロテノイドのβ-クリプトキサンチン、水溶性食物繊維のペクチン類など作用メカニズムの異なる様々ながん予防物質が見つかっている。

2.認知症予防
 カマンベールチーズ(白いカビ様の部分)にオレイン酸アミド、デヒドロエルゴステロールが含まれ、認知症の原因であるβアミロイドを減らす。より効果的なのはカマンベールチーズに赤ワインを2~3杯程度飲むのが良い。または、ビールの苦み成分、ホップ由来のもので、イソα酸が肥満抑制効果、発がん抑制効果、骨密度低下抑制効果、アルツハイマー病予防効果があることが報告されている。

3.心臓病
 LDL-Cの減少作用→さばの水煮缶(マルハ)にEPA(1.87g/缶)含まれ、1g/1日、1缶/1日。EPAは熱に弱いので、サラダなどで摂取する。大根(イソチアシネート)、たまねぎ(イソアリイン:涙を出す成分)と一緒に摂取するとより効果的。

4.便秘
 食物繊維の1日の必要量:男性20g、女性18gであるが、必要量を満たしてる人は少ない。そこで、100g当たりの食物繊維の含有量多い レタス 1.1g、ごぼう 5.7g、干し柿14g(柿1.6g)にオリーブオイル(オレイン酸含む)をかけ、1日2回、朝と夕方摂取すると良い。野菜としての必要量は一日350gとなる。

5.高血圧(1/3人)
 血管収縮による高血圧対策として、抗酸化物質ポリフェノールを摂取する。100g当たりのポリフェノール量 りんご220mg、赤ワイン180mg、チョコレート840mg。72%以上のカカオが含まれているチョコレートを1日25g摂取する。また、合谷を指圧すると良い。

6.花粉症
 花粉症のIgE抗体を減少させる食材。れんこん(タンニン、ムチン含む)含まれ、40g/1日皮ごと輪切りや細かくしてポタージュスープなどで摂取する。2週間で効果があり、また、レンコンをすって綿棒で鼻に塗付しても効果あり。果実じゃばら(邪払;スーパーフラボノイド、ナリルチンが有効成分)や杉茶(主成分は杉葉精油)も効果がある。

7.糖尿病(Ⅱ型95%、1/5人)
 トマト(赤い色素リコピン(抗酸化物質)が果肉に含まれる)は血糖値を下げ、トマトをジュースにして摂取する。オリーブオイルをさじ1杯加え、レンジで温めて飲むと4.5倍リコピンの吸収率が高まる。血糖降下剤と同じ効果がある。160㎎→110㎎に低下する。
(掲載日:2019年4月2日、近藤雅雄)

こころとからだの健康(17)皮膚とこころ

 東洋医学において皮膚は最も重要な器官である。皮膚の生理作用は保護作用、感覚作用、体温調節作用、吸収作用、分泌・排泄作用、呼吸作用などが知られているが、近年の分子生物学の発展によって、内分泌作用の発見など新たな展開を迎えている。
 近年、皮膚のケラチノサイトがオキシトシンなどのホルモンを生産・内分泌し、他の細胞にいろいろ働きかけていることや様々なホルモンに皮膚が応答することが相次いで報告された。すなわち、グルタミン酸やγアミノ酪酸(GABA)、アセチルコリンやドーパミン、アドレナリンなどの生体物質にケラチノサイトが反応すること。さらに、記憶や学習に関与する脳の海馬にNMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)グルタミン酸受容体が局在し、これが表皮でも見出されたこと。これらの結果から、皮膚はこれまでの生体情報連絡系である神経‐内分泌‐免疫の三大システムに皮膚が加わり、「皮膚と脳」「皮膚と免疫」「皮膚とこころとからだの健康」など、生体機能との関連性に興味が持たれる。
近藤 雅雄(東京都市大学)平成31年4月2日掲載
以下のPDF参照
PDF:こころとからだの健康(17)皮膚とこころ

こころとからだの健康(16)血液型と病気

 かつて、血液型といえば几帳面なA型、自由奔放なB型、指導力のあるO型、天才肌のAB型など、また、大脳の右脳と左脳との関係ではA型は左脳、B型は右脳、AB型は左右全体、O型は左脳または右脳の発達が各々優れているなどと言った科学的根拠のない「性格診断」や「占い」が流行った。
 しかし、近年、分子生物学の急速な進展によってABO式血液型と病気の関係についての報告が多くみられるようになった。例えば、O型は胃がんや膵がんになりにくい。前立腺がんの再発率が一番低い。心筋梗塞になりにくい。認知症になりにくい。糖尿病になりにくいなど。また、ノロウイルスの一種であるノーウォークウイルスに感染しないのはB型で、スノーマウンテンウイルスに感染しないのはO型である。貧血になりにくいのはB型、AB型。とくにB型女性はなりにくい。肺塞栓症(エコノミークラス症候群)はO型が一番低い。牛肉アレルギー患者の血液型はA型かO型で、B型、AB型の人は罹らない。などの報告が相次いで出てきている。
 今後、血液型による治療法の違いやこころとからだの健康との関連性などの報告が出てくることが推測されるが、これらの結果に対しては個人差や生活習慣・環境などの違いもあり、さらに基礎的研究および疫学調査による統計学的研究等による更なる科学的根拠が必要であることは言うまでもない。これら血液型に関する最新の話題をPDFに纏めた。(近藤雅雄:2018年12月6日掲載)PDF:こころとからだの健康(16) 血液型

こころとからだの健康(15) 脳を元気にする食と栄養素

「こころとからだの健康(10)脳に良い食品、食品機能性食品とその成分」の改訂版である。
 脳は大脳、間脳、脳幹および小脳から構成され、心身(こころとからだの働き)の司令塔である。とくに、大脳皮質は感覚・運動の統合、意志、創造、思考、言語、理性、感情、記憶を司り、前頭連合野は人間中枢とも言うべき重要な働きを行っている。脳を元気にするためには脳に必要な栄養素の摂取と適度な有酸素運動の実施および良い睡眠をとることが基本である。
 近年、アルツハイマー病やうつ病などの疾病が社会問題となっている。2015年、国際アルツハイマー病協会は認知症の新規患者数は毎年約990万人、2050年には1億3200万人に達し、現在(約4680万人)の3倍になると“世界アルツハイマー報告書2015”に発表した。高齢社会においてその数は急激に増加している。認知症には①アルツハイマー型、②脳血管性、③レビー小体型、④ピック病、⑤混合型、⑥その他などがあるが、この内、70%近くがアルツハイマー病であり、酸化ストレスが病気の進行に大きく寄与している。また、最近、疲労の原因は脳の眼窩前頭野で疲労感として自覚することによると言われ、これも酸化ストレスが関わっている。
 そこで、本論文では情報化・高齢化の時代に認知症やうつ病などの脳の障害を予防し、いつまでもイキイキした脳を維持するために必要な食品および有効成分について文献調査を行った。

Ⅰ.脳が元気になる食品
 人は美味しいものを食べると自然と笑顔となるが、これは脳が元気になったのではない。逆に、濃い味付けや甘いものなどは習慣化し、脳はじめ多くの生体機能にダメージを与えるので注意する。自らの健康は自らが守ることを意識し、脳に良い食品を意識的に摂取することが大切である。

Ⅱ.脳の活性化が期待される主な有効物質
 脳の機能保持には脳の構成材料、脳代謝に不可欠な栄養素および酸化ストレスに対する抗酸化物質の摂取を日常的に意識して摂取することが望ましい。抗酸化物質として、ポリフェノールは植物の色素や苦味の成分であり、アントシアン、タンニンやカテキンなどのタンニン類、ケルセチンやイソフラボンなどのフラボノイド類からなる。フラボノイドは植物に広く存在する色素成分でクロロフィルやカロチノイドと並ぶ植物色素の総称である。広義には赤、紫、青を発するアントシアニンもフラボノイドに分類される。フラボノイドを豊富に含んでいる食品としてはチョコレート、ココア、緑茶、紅茶、赤ワインなどが知られ、注目されている。
 これら抗酸化物質の作用としては活性酸素を除去し老化抑制、抗凝固、血圧降下、消臭、血管保護および血流増加、動脈硬化や心臓病の予防、免疫力増強、抗菌・抗ウイルス・抗アレルギー、血管保護、抗変異原性、発癌物質の活性化抑制など、多様な作用が推測されている。ビタミンC・E、クエン酸を含む食品と併用すると抗酸化作用の相乗効果を示す。
 なお、抗酸化物質についてはいずれも食品として摂取することが望ましく、サプリメントとして摂取する場合は過剰摂取による問題などがあり、十分に配慮することが大切である。(近藤雅雄:平成29年3月25日投稿)
内容の詳細をPDFに記載した。 PDF:こころとからだの健康(15)脳を元気にする食と栄養素2017.3.25

こころとからだの健康(14) 遊びから学ぶ幼児教育、子育て習慣および期待される人材

 この数十年の間に子育てに関する社会環境は大きく変化しました。核家族化や男女共同参画社会の進展など、例を挙げればきりがありません。そうした現代社会において最も懸念されるのは、子育てをする親が孤立してしまうことです。そこから多様な悲劇が起こるとも限りません。昔は大家族、そして近所に子どもの遊び場が沢山あり、親子ともども自然に地域コミュニティーが形成されていました。しかし、都市化と共にそうしたコミュニティーは徐々にその姿を消し、結果として子育てについて気楽に相談できる環境も減少しています。子育てには周囲のサポートが不可欠です。家族の協力は勿論のこと、地域社会の協力も必要です。どれだけ時代や社会環境が移り変わっても、「子どもは一人で育てるものではない」ことに変わりはありません。
 そこで、幼児教育の基礎と子育て習慣について考えました。現在、子育て中の保護者の参考になれば嬉しいです。(近藤雅雄:平成28年5月8日掲載)

幼児教育の基本~人間形成の基盤を成すこころの教育とは
この地球上にて生を受けた人間は地球の恵みに感謝し、自然の恵みを大切にする。そして、自分自身を愛し、家族、友だちを愛し、社会、地球を大切にできる。そんな人間らしさと幸福感に満ちた環境にて子どもを育て、次代に繋いで行く。それが親の責任だと思います。子育て並びにヒトの本質はいつの時代も同じであり、それは「遊ぶこと」です。遊びの環境を設定し、育てるのが保護者の役割です。
 多様な遊びは様々な体験・体感を通して、生きるこころと力、いのちを大切にするこころ、他者を思いやるこころを学びます。これが人間形成の基盤を成すこころの教育であり、人としての基礎となります。
 そのためにも、「教育」を共に育むとした「共育」のこころを持つことです。父親、母親の育った環境とこれからその子どもが育つ環境では20年以上の隔たりがあり、それと共に成育環境は大きく変化しています。したがって、子どもの目線で子どもの育つ時代の環境にて子どもを育むことが大切です。

遊びから学ぶ子育て
 人間には「言語的知性」「音楽的知性」「絵画的知性」「論理数学的知性」「身体運動的知性」「感情的知性」「社会的知性」という8つの知性があると言われています。これらの知性は就学前の4~5歳前後をピークとして形成されるもので、「遊び」によって育まれます。人間の知性、こころは脳の活動に直結していますので、就学前こそ、幼児教育に必要な多くの遊びや体験・体感によって、豊かな知性を育むことが重要で、それが成人になって一つまたは複数の知性が大きく育つ要因になります。
 多くの親が子どもの「教育」について悩んでいるようですが、子育てには迷いや不安はつきものです。難しく考える必要はありません。なぜなら、子どもの成長に最も必要なのは、この「遊び」だからです。とくに幼少期の教育は「遊びの場を用意してあげること」くらいに考えて丁度良いのではないかと思います。お父さん、お母さんはまず、子どもと一緒に遊んであげることから始めましょう。楽しそうな親の姿を見ると、子どもはもっと楽しくなります。そうすると図に示しましたが、好奇心・集中力が増し、さらに多くの事を遊びから吸収するようになります。それが創造力や自発性、課題発見力、さらには生きる力へとつながっていくのです。
 もちろん、親も子どもが遊ぶ中から学ぶことは沢山あります。よく言われることですが、やはり教育は「共育」、育児は「育自」なのです。ぜひ「子どもと」遊ぶ中で「子どもを」学んでください。学びに対する親の姿勢は、必ず子どもに受け継がれていきます。“共育の質の向上は人生の質の向上を担保する”ように子どもとその家族はそれぞれの道、人生に一つの目標・志を持ち、前向きに生きるこころを身に付けます。そして、“社会が求める人間力”が育まれます。

社会が求める人材
 “社会が求める人間力”とは図に示しましたように、3つのパワーから成ります。これは社会・国家が求める人材であり、この基礎が幼児期の「遊び」から養われます。人間社会で生きる上で重要なこの3つのパワーとは、①前に踏み出す力(action power);すなわち、主体性を持って前向きに働きかける力、実行力、②考え抜く力(thinking power);すなわち、課題発見力、計画力、創造力、③チームで働く力(teamwork power);すなわち、発信力、傾聴力、柔軟性、状況把握力、起立性、ストレスコントロール力が身に付きます。これらの基礎力を身に付ける上で基本となるのが、以下に挙げた家族の子育て習慣です。

父親・母親の良い子育て習慣
1.家族の間で、朝起きたら「おはようございます」と言い、毎日挨拶を欠かさないようにしましょう。また、一日に最低一度は食事など団欒の時間を作りましょう。
2.家族は毎日きれいな言葉を使うように努力しましょう。子どもに「お前」「てめえ」「がき」などの汚い言葉で呼ばず、一人の人間として人格を尊んで名前で呼んでください。
3.家族はすべて一人ひとり、お互いに人として尊敬し合い、お互いが感謝のこころを持って接するように努力しましょう。
4.家族は一つの組織です。一人で頑張らないで家族で協力・分担して、日常的に楽しく笑顔を絶やさないよう前向きに生きる努力をしましょう。また、子育てを応援してくれる良い友達を複数持ち、コミュニティーを大切にしましょう。
5.子どものこころの痛みを自分のこころの痛みとして感じる「思い遣り」のこころを持ちましょう。また、子どもとのスキンシップによるコミュニケーションを大切にしましょう。
6.お互いを理解し合い、人の言うことをよく聞きましょう。また、何でも相談し合える環境を創るよう努力しましょう。こ れらが人間関係を形成していく上で大切になります。
7.子どもを泣かすより笑顔を引き出すように努力しましょう。子どもが病気でもないのに泣くのは、悲しいか、怖いかのどちらかです。子どもの気持ちを理解することが大切です。
8.子どもが良いことをしたときや、言うことを聞いたとき、頑張ったときなどは積極的にほめてあげましょう。叱りつけるよりもほめることを優先し、子どものやる気・意欲・能力を引き出すように努力しましょう。「教育」とは「引き出す」という意味でもあります。
9.自然に接する機会をたくさん作り、体験・体感を豊かに育てましょう。ノーベル賞学者など世の中の偉人と呼ばれる人のほとんどが、幼児期には遊びの多い自然の中で育っています。
10.「sense of wonder」という言葉があります。これは「不思議さや神秘さに目を見張る感性」を指し、子どもの教育に大変重要です。子どもは成長過程で様々な体験・体感を通して好奇心、自発性、創造力をからだとこころで育みます。

参考図書
1.近藤雅雄:子育てハンドブック、Tokyu Child Partners、東急グループ、2015
2.澤口俊之:幼児教育と脳、文春新書、2004
3.浜尾実:子どもを伸ばす一言、ダメにする一言、PHP文庫、2001
(近藤雅雄:平成28年5月8日掲載)

こころとからだの健康(13)目の病気の予防・対策に必要な栄養素と食品

 近年、スマホやコンピュータ、大画面テレビなどの急速な発展による生活環境の変化に伴って眼精疲労・ドライアイを自覚する人が増加すると共に白内障、緑内障、加齢黄斑変性などの失明に至る眼病が注目されるようになった。これら背景にはスマホやコンピュータの発展以外に高齢人口の増加と日常的なストレス、偏った食事、無理なダイエットなどによるビタミンやミネラル類の過不足など、栄養障害が考えられることから目の病気も生活習慣に関わる疾病と言える。

 目はこころとからだの健康維持に重要であり、目の病気は様々な行動の妨げとなるなど、日常生活への負の影響は計り知れない。疲れ目やかすみ目で悩んでいる人、スマホやパソコンなどで目を四六時中酷使している人や自動車やトラックのドライバー、飛行機のパイロットなどは一度自分の食生活を見直すことが大切である。普段の食事を意識して摂取する習慣を身に付けたい。食事で摂取できない時は視力回復のサプリメントや緑黄色野菜、果物などを積極的に摂りいれることも考えたい。

 世界の中でも日本人の視力低下は著しく、最近の調査では約83%の人がメガネかコンタクトを使用し、近視の低年齢化が問題となっている。目に関することわざは多数あるが、その中で「目は心の鏡」「目は人の眼(まなこ)」と言われるように、目はこころとからだの入力部位であり、こころとからだを映し出している。目は生体すべての感覚情報の約80%を占めると言われ、生体に入る情報は目に依存していると言える。

 人間において、視力が形成されるのは生まれてから後天的に徐々に発達し、5~7歳位までに完成すると言われている。したがって、この期間における目のケアーにはとくに十分に注意したい。また、目は12~13歳頃から老化が始まると言われている。生涯において目を大切にするこころを持って、目の健康に気を配り、食環境と同時にストレス解消の方法を自分なりに考え、美しい目を保持したいものである。

 本稿では目の病気の予防・対策に必要な栄養素・食品について調査を行った。論文の内容はⅠ.視覚と目の病気(1.視覚の性質、2.目の病気、3.失明の原因となる疾患)、Ⅱ.眼病の予防に良いとされる栄養素と食品(1.眼精疲労・ドライアイに良い栄養素、2.近視抑制に良い栄養素、3.白内障、加齢黄斑変性などに良い栄養素、4.抗酸化物質の機能、5.ブルーベリーは目が良くなる食べ物の代表)、Ⅲ.眼に良い栄養素(1.抗酸化物質、2.ビタミン類、3.ミネラル類、その他)からなる。
 内容詳細は以下のpdfを参照されたい。(近藤雅雄:平成28年2月8日掲載) こころとからだの健康(13)眼の病気の予防・対策に必要な栄養素

こころとからだの健康(12)生体防御機構と免疫システム 

 こころとからだの健康管理には日常的に免疫力を強化することが重要であり、それによって、QOLの向上並びに健康寿命の延伸を図ることが可能となる。
 免疫とは疫病から免れると書くが、正しくは、自己と非自己(異物)を識別し、非自己を排除することによって生体の恒常性を維持しようとする防御システムであり、自然免疫と獲得免疫から成る。一般的には、主に後者の感染症予防的な意味合いが用いられ、病原微生物などの異物が体内に侵入した時の生体防御システムとよく言われる。しかし、現代社会においては、免疫機能を低下させる要因として、各種生体内因子および生体外因子が関与し、これら要因によって体内で発生する活性酸素によるストレス(酸化ストレス)が免疫の機能、すなわち、生体の機能を低下させることが明らかとなった。免疫機能の低下は感染症、生活習慣病、がんなどのさまざまな疾患の発症と強く関係していることから、免疫強化によってこれら疾患の予防が図られる。
 ここでは、免疫の中心となる血液中の白血球細胞群を中心とした生体の防御反応(感染防御)について紹介する。
以下のpdf参照。(近藤雅雄:平成27年10月21日掲載) こころとからだの健康(12)生体防御と免疫システム

こころとからだの健康(11)ホメオスタシスと生体リズム 

 生活習慣が乱れると生体のリズムが乱れ、こころとからだに何らかの異常が生じる。逆に、こころとからだに異常が起こると生活習慣も乱れてくる。このことから、生活習慣および生体のリズムは心身の健康にとって大変重要であることが理解できる。
 さて、現代人の祖先は約500万年前にチンパンジーとの共通の祖先から分かれ、その後、独自の進化が行われてきた。この長い期間で、人類は様々な環境に適応・順化しつつからだの構成とその機能が獲得されてきた。
 生体が外部環境の変化に対応して生存を図ることを生体の適応といい、環境因子の長期にわたる変化に対して起こる生体の変化を順化という。これらのしくみは視床下部を中心とした体温、血圧、呼吸、摂食、血糖、免疫など多数の調節機能に関与するプログラムによって生体内のすべての器官が協調的生理過程を維持しながら、より安定状態を保つように進化してきた。その結果、現代の環境に適応しつつ生体の内部環境の恒常性(ホメオスタシス; homeostasis、均一の(homeo)状態(stasis)を意味するギリシア語からの造語)を維持してきた。
 ここでは、ホメオスタシスと生体リズムについての概念の確立と、その経緯を延べる。以下のpdf参照。(近藤雅雄:平成27年10月21日掲載) こころとからだの健康(11)ホオスタシスと生体リズム

こころとからだの健康(10)脳に良い食品、機能性食品とその成分

 脳は大脳(皮質、辺縁系、基底核)、間脳(視床、視床下部)、脳幹(中脳、橋、延髄)および小脳から構成され、心身(こころとからだの働き)の司令塔である。特に大脳皮質は感覚・運動の統合、意志、創造、思考、言語、理性、感情、記憶を司る人間としての最も重要な器官であり、その中でも前頭連合野は人間としての中枢とも言うべき、様々な重要な働きをし、哺乳動物の中では一番重たい。脳は骨格筋、肝臓に次いで基礎代謝量が高く、多くの栄養素を必要としているため、栄養の摂取バランスの異常や不足は脳の機能にダメージを与え、こころとからだに様々な影響を与える。その代表的なものとして、近年、アルツハイマー病やうつ病などの疾病が大きな問題となっている。2012年の世界保健機関の報告によると、認知症患者は毎年770万件増加し、その数は世界中で3,560万人と推定されている。これが2030年までに倍増、2050年までに3倍以上(1億人以上)になると予測されている。認知症には①アルツハイマー型、②脳血管性認知症、③レビー小体型認知症、④ピック病(前頭側頭型認知症)、⑤混合型認知症、⑥その他などがあるが、この内、70%近くがアルツハイマー病という。
 そこで、認知症やうつ病などの脳の障害を予防し、脳(こころとからだの司令塔)の働きをよくする食品および有効成分について文献調査を行い、こころとからだの健康に役立つ資料とした。 掲載した食品および機能性物質は以下の24食品、24物質であり、その詳細はpdfに掲載した。

1.脳(アンチエンジング)の活性化が期待される食品
 亜麻の種(亜麻仁油)、イチョウ葉、オリーブオイル、カワカワ、くるみ、ココア、コーヒー、魚、ザクロ、センテラ(ゴツコーラ、ブラーミ、ツボクサ)、SOD様作用食品、セイヨウオトギリソウ、セイヨウカノコソウ、ダークチョコレート、納豆、ニンニク、ビルベリー、ブルーベリー、ほうれん草、豆類、松葉、ムール貝、ヨヒンベ(ヨヒンビン)、緑茶の24食品。

2.脳に良いとされる機能性物質
 アスタキサンチン、アントシアニン、イソフラボン、カテキン、γ‐アミノ酪酸(GABA、ギャバ)、ギンコライド、グルタチオン、コエンザイムQ10、サポニン、ジメチルアミノエタノール、食物繊維(不溶性食物繊維、水溶性食物繊維)、タウリン、テアフラビン、テアニン、DHA、トリプトファン、ビフィズス菌、分岐鎖アミノ酸(BCAA)、フェルラ酸、ホスファチジルセリン、ポリフェノール、フラボノイド、メラトニン、レシチンの24物質。
 原稿は以下のpdfを参照されたい。(近藤雅雄:平成27年10月6日掲載) こころとからだの健康(10)脳に良い食品、機能性食品

こころとからだの健康(9)治療と治癒

 生体には様々なバイオリズムがあり、そのリズムの乱れは、脳の視床下部を中心とした体内の恒常性維持機能(これをホメオスターシスという)によって常に無意識的に自己診断、修復、再生の3つの機能が働き、健康状態に戻そうとする治癒力が働いています。
 健康とは完全にバランスの取れた状態であり、これが崩れたときに健常な状態に戻そうとします。この勢いは人為的に作用させることが可能であり、それは治療によって成すべきです。治療と治癒との関係は、治療は受身的であり、病を外部から叩くのに対して、治癒は能動的であり病を内部から除去することを指します。

1.医学誕生における2つの神話
1)医神 アスクレピオス(Asclepius)
 病気の治療は基本的に抗医学であるというのが現在西洋医学思想の根本であり、病気のプロセスを内部に押しやるという本質的に対抗的・抑圧的な医学です。

2)健康神 ヒュギエイア(Hygeia)
 治癒力の強化(自発的治癒、spontaneous healing)は東洋医学をはじめとした西洋医学以外の伝統医学の根本思想です。この思想は現在の西洋医学の一分野である衛生学に見られ、衛生学を健康神の考えを取り入れHygieneと命名されましたが、現代の衛生学は疫学や中毒学が主流であり、ヒーリングシステム(治癒系)、すなわち、自己診断、修復、再生の機序解明に関する研究はこれまであまり行われてきませんでした。また、衛生学は予防医学としての代替、補完、相補医療の領域が重要と思われますが、広く公衆衛生学という見地からすれば、医学部のみで究明できるものではなく、理工学、人文科学、家政学、栄養学、人間科学など多領域に渡る学際的研究分野であるべきです。

2.主な伝統医療 
 日本には貝原益軒(1630~1714)の「養生訓」が有名ですが、明治時代以降医師の権力が著しく増大し、西洋医学一辺倒となっていきました。一方、世界では、アーユルヴェーダ医学、鍼療法、バイオフィードバック、ボディーワーク、中国医学、カイロプラクティック、イメージ療法、生薬医学、ホリスティック医学、ホメオパシー、睡眠療法など多数が知られています。このうち、よく知られているのがインドの伝統的医学であり、ユナニ医学(ギリシャ・アラビア医学)、中国医学と共に世界三大伝統医学の一つでるアーユルヴェーダです。サンスクリット語で長寿の知恵と言います。問診、触診、脈診など患者の様子を細かく観察して診断し、食事療法、薬草療法(生薬、動物薬、鉱物薬)、スチームバスやオイルマッサージなどがあり、インドの庶民の医学となっています。

3.ボブ・フルフォードの教え 
 フルフォードの医学は病気を抑圧するのではなく、からだに備わっている潜在的な治癒力の発現を助長する、非侵襲的な医学であり、古代ギリシャの医師であったヒポクラテスの2大訓戒「①Primum non nocere:傷つけてはいけない、②Vis medicatric nature:自然治癒力を嵩めよ」を遵守し、「①からだは健康になりたがっている、②治癒は自然の力である、③からだはひとつの全体であり、全ての部分は1つに広がっている、④こころとからだは分離できない、⑤治療家の信念が患者の治癒力に大きく影響する」の五つの知恵を実践した。このフルフォードの教えについてはアンドルーワイル著の「癒す心、治る力」は、「自発的治癒とは何か」、「8週間で甦る自発的治癒力」の2冊からなる書物に記載されています。医師をはじめとする治療家には一度は必読されることを望みます。

参考文献:①アンドルーワイル著、上野圭一訳:癒す心、治る力、角川書店、1995年。 (近藤雅雄:平成27年9月2日掲載)