ビタミン(脂溶性)

1.ビタミンA(レチノール)
 ビタミンAは動物性食品に含まれるレチノールと、植物に広く分布するプロビタミンAであるカロテノイド類が存在する。カロテンには3種類あるが、食品中にはβ-カロテンがもっとも多く、しかもビタミンA効力がもっとも高い。
生理作用:①眼の網膜にある視覚を司る物質であるロドプシンの構成成分となっている、②上皮組織における粘膜の糖タンパク質の合成に関与し、機能を維持している、③成長促進、細胞増殖と分化の制御、免疫機能の維持に関与している。
欠乏症:ビタミンAが不足すると、ロドプシンの生成が低下するため、暗いところで物を見る機能が遅れ、夜盲症となる。上皮細胞の角質化が起こり、皮膚、粘膜の乾燥により、細菌感染に対する抵抗力の低下がみられる。
過剰症:過剰に摂取すると肝臓に蓄積されて、急性の脳圧亢進症、慢性では成長停止、関節痛、脂肪肝などがみられる。

2.ビタミンD(カルシフェロール)
 天然には植物起源のビタミンD2と動物起源のビタミンD3があり、両者の生理活性はほぼ同じである。紫外線照射によりビタミンDに変化するものをプロビタミンDといい、ビタミンD2はきのこなどに含まれるプロビタミンD2から、ビタミンD3は動物の皮膚に含まれるプロビタミンD3から生じる。
生理作用:ビタミンDは体内で活性型に変えられ、カルシウムの吸収や骨への沈着、骨からのカルシウムの動員を司っている。このカルシウムの代謝は種々のホルモンも関与している。
欠乏症:幼児期に不足するとくる病、成人では骨軟化症を引き起こす。
過剰症:食欲不振、体重減少が起こり、血中カルシウム濃度が高くなるので腎臓、心臓、動脈にカルシウムが沈着し、動脈硬化や腎不全を起こす。

3.ビタミンE(トコフェロール)
 ビタミンEは天然には8種類あるが、重要なのは生理活性がもっとも高いα-トコフェロールである。
生理作用:ビタミンEは抗酸化作用(酸化防止作用)が強く、多価不飽和脂肪酸が酸化されるのを防ぐ作用がある。細胞内にはビタミンEの大部分が生体膜に組み込まれて存在しており、ビタミンEは抗酸化作用を通して生体膜を正常に保つ作用をしている。
欠乏症:ビタミンEが不足すると、血漿のビタミンE濃度が低下し、細胞膜が破壊されやすくなり、赤血球が溶血しやすくなる。動物ではビタミンE欠乏により不妊症や筋肉の萎縮が起こることが報告されているが、ヒトでは明確ではない。
過剰症:明らかではない。

4.ビタミンK(フィロキノン)
 生理作用:血液の凝固にはプロトロンビンが必要であり、肝臓でのプロトロンビン合成にビタミンKが関与している。またビタミンKはビタミンDとともに骨の石灰化を促進して、骨形成に重要な役割を果たしている。
欠乏症:ビタミンKが欠乏すると血液中のプロトロンビンが減少して、血液の凝固を遅延させる。
過剰症:嘔吐、腎障害
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