納豆

 大豆を納豆菌で発酵させた食品である。たんぱく質はもちろんのことミネラルやビタミンが豊富に含まれ、なかでも骨を作るのに不可欠なビタミンKやナットウキナーゼ1)を含むことで注目されている。食物繊維は100グラム中に4.9~7.6グラムと豊富に含まれる。食物繊維はオリゴ糖などと共にプレバイオティクスと呼ばれ、腸内環境に有用な成分である。納豆菌はプロバイオティクスと呼ばれ、これも腸内環境に有用と考えられている。
 納豆に含まれるレシチンは記憶力や学習能力を高め、血中コレステロールの低下による脂質異常症の予防、血圧低下作用による高血圧予防。たんぱく質は脳内の神経化学伝達物質の合成を活発化する。コリンは脳の神経化学伝達物質の材料となる。ビタミンB1は中枢神経と末梢神経の機能を保つ。カルシウムは不足すると集中力が低下する。ビタミンKは脳の神経伝達を活性化する。カリウムは無気力を防ぐ。マグネシウムは高ぶった神経を鎮静化する。ジピコリン酸、リゾチームはO157病原性大腸菌、サルモネラ菌などの抗菌効果。イソフラボン、SODの抗酸化作用による生活習慣病予防のほか、健脳効果(神経伝達物質の活性化、血液循環の改善)、血栓溶解作用、骨形成促進作用、カルシウム吸収促進作用など多様な効果が知られている。
 ビタミンK2は抗凝血薬(ワルファリン)の作用を弱めることから、ワルファリンの服用中は、納豆は避けるべきである。

ニンニク

 生産量は中国が世界の8割を占めている。球根中のフラボノイドに認知症の予防があると言われるが、科学的根拠に乏しい。
 期待できる効果としては、ノルアドレナリン分泌を促進し、エネルギー代謝を活発にする。血栓形成抑制、血圧上昇抑制、コレステロールの低下、抗菌作用、抗ウイルス作用など多様な作用が報告されている。ニンニク成分の匂いのもととなるアリシンがビタミンB1(チアミン)と結合すると脂溶性のアリチアミンとなり、ビタミンB1の吸収・利用を促進し、元気にする強壮作用がある。無臭のスコルジニンには強力な酸化還元作用があり、体組織を若返らせ、新陳代謝を盛んにし、疲労回復に役立ち、強壮・強精作用を有する。また、にんにくは脳の萎縮を抑え、学習能力を高めることが動物実験で確かめられている。
 臨床的にはいくつかのがん、特に消化器系のがん(結腸がん、直腸がんなど)のリスクを減少させる可能性が示唆されている。アリシンには抗菌作用があり、O157菌等の腸管出血性大腸菌に対する殺菌力から、消化器系の感染予防に効果があることを示唆している。
 副作用としては、①強い悪臭(口臭・体臭)の原因となる。②生のニンニクの強烈な香りと辛味は、刺激が強過ぎて胃壁などを痛める場合がある。③過剰摂取は胃腸障害を起こしうる。④調理などでニンニクアレルギーとなる場合がある。⑤赤血球の溶血を促し、血尿、血便といった溶血性貧血の原因となる場合がある。

苦瓜(ゴーヤ(沖縄))

 ウリ科ツルレイシ属蔓性1年生草本で、果実に特有の苦みがあり、食用としての風味となっている。熱帯アジアが原産地で、中国や東南アジアでは重要な野菜となっている。ヨーロッパでは観賞用として栽培されている。日本では南西諸島と南九州で多く栽培されてきた。比較的害虫に強く、日照、気温と十分な水さえあれば、肥料や農薬はほとんど使わなくても収穫が得られるため、全国的な広がりを見せ、家庭菜園でも人気が高い。 沖縄では古くからゴーヤ(苦いうりの意味)と呼ばれ、夏の重要な野菜である。 1.主な成分と効果  果皮を中心に、ビタミンC、ビタミンB1、B2、葉酸、カリウム、カルシウム、鉄、食物繊維が豊富。種子には共役リノレン酸を含む。 苦み成分はチャランチンとモモルデシン、コロコリン酸であり、チャランチンとコロコリン酸は植物インスリンともいわれ、血糖値の正常化に働き、糖尿病の血糖値改善(食後高血糖改善)に役立つ。動物およびヒトで、肝臓や筋肉へのブドウ糖の取り込みを促進し、グリコーゲンの合成を促す。  科学的根拠としては、糖尿病患者に苦瓜を投与すると空腹時血糖や食後高血糖が改善されたとする報告は数多くある。また、動物実験において、糖尿病改善効果、抗ウイルス作用、抗炎症作用、コレステロール低下作用、抗癌作用なども報告されている。 1)チャランチン  脂溶性の物質であり、膵ランゲルハンス島のβ細胞に働きかけてインスリンの分泌を促し、血糖低下作用が知られている。血糖値が下がった場合は、α細胞からグルカゴンを分泌し血糖値を上昇させ血糖値を安定させるので低血糖にならない。すなわち、インスリンとグルカゴンの分必を促進し、血糖値を調節する作用がある。 2)モモルデシン  抗酸化作用をもつサポニン類の一種で、食物繊維、苦味成分の1つ。食物繊維は腸内の善玉菌の増殖を促進し、糞便量を増やし、腸内環境を整える。サポニンはコレステロールや老廃物を排出し、動脈硬化、糖尿病、がんの予防、胆汁酸の分泌や産生を促してコレステロール値を低下させる。血糖値や血圧を下げ、食欲増進作用、整腸作用などがある。 3)ビタミンC  抗酸化作用があり、苦瓜100g中にビタミンCが76mg含まれ、加熱に強い。 4)共役リノレン酸は脂肪の吸収や蓄積を抑制する。 5)その他  ビタミンBはエネルギー(ATP:アデノシン三リン酸)の生産に不可欠であり、疲労回復、皮膚や粘膜を正常化に役立つ。鉄分と葉酸は貧血を予防する。カリウムは腎臓でナトリウムの排泄に働く。 2.注意事項  サプリメントとして摂取する場合、健康被害や副作用は知られていないが血糖低下作用があるため、効果の現れやすい子どもや高齢者では注意が必要。また、妊娠中や糖尿病患者の場合は医師に相談する。腹痛や下痢といった消化器症状、頭痛などが現れた場合は服用を見合わせる。 (近藤雅雄:平成27年8月11日掲載)