レシチン

 ギリシャ語の卵黄に由来し、ホスファチジルコリンとも呼ばれるリン酸と脂質が結合した物質で、細胞膜などの生体膜や脳・神経組織の構成に欠かせないリン脂質の一つである。乳化作用(界面活性作用)があり、マヨネーズなどの乳化剤として有名であるが、コレステロールが血管壁に沈着するのを防ぎ、血栓を溶かして血液の流れを良くする。また肝臓への脂肪の蓄積を防ぎ、ビタミンAやEなどの脂溶性ビタミンの吸収を高める。したがって、脂肪肝、肝硬変、動脈硬化の予防効果がある。最近では認知症防止や肥満予防に効果があるといわれている。
 レシチンには動物性と植物性があり、コレステロールを乳化するのは植物性だけといわれており、卵黄、大豆、大豆加工品、ビーナッツ、酵母などに多く含まれている。(近藤雅雄)

ルテオリン

 ルテオリンはフラボノイドという抗酸化物質の一種で、さまざまな作用を持つ。ルテオリンの代表的な作用の一つとしてあげられるのが、肝臓の解毒作用の促進である。例えば、発生した癌を、細胞外マトリックスを保護することによって、その成長を抑止する作用も報告されている。また、帝京大学薬学部の山崎博士は炎症性サイトカイン(TNF)生産抑制活性を見出し、さらに、従来フラボノイドはあまり生体内に吸収されないとされていたが、ラットを用いた研究では投与量の約4%が、皮膚からもルテオリンやその配糖体が実際に吸収されることを示した。
 最近、岐阜薬科大学の永井博士はアレルギー発症に必須のマップキナーゼの抑制作用が見出し、新しい抗アレルギー薬の候補ともなっている。
 ルテオリンの作用として最も知られているのが、花粉症やアトピーといったアレルギー症状を押さえることである。ルテオリンなどのポリフェノールは、「ロイコトリエン」という炎症を引き起こす物質を作り出す際に必要な酵素を阻害するため、花粉症の症状、とくに鼻づまり防止に効果を発揮すると言われている。したがって、効能としてはしみ、そばかすの予防、アトピー性皮膚炎の改善、アレルギー疾患改善、花粉症、抗酸化作用、免疫力増加などが知られているが、人での科学的根拠はまだ乏しい。
 ルテオリンを含む食品として、ピーマン、しそ、春菊、カモミール、味噌、イチョウ、明日葉などが知られている。(近藤雅雄)

ルチン

 ルチンはビタミンCの研究中に発見されたビタミン様物質で、ビタミンPの一種である。ジャガイモの花やそばの全草(とくにそばの外側の殻に近い部分に多く含まれる)、中国産の豆のエンジュの葉、つぼみなどに含まれ、そばの特徴的な成分である。ルチンはビタミンCとともに働くため、ビタミンCの豊富な野菜や果物と一緒に摂取するとよい。そして、高血圧や脳血管障害の予防など生活習慣病の改善に効果があるといわれる。

ポリフェノール

 大豆のイソフラボン、柿のタンニン、茶のカテキン、玉ネギのケルセチン、ブルーベリーのアントシアニン、ココアのカカオマスポリフェノールなど、分子内にフェノール水酸基をもつ化合物の総称で、その種類は5000種にものぼる。糖分の一部が変化したもので、植物の葉や花、樹皮などに含まれている。
 ポリフェノールの主なはたらきは強い抗酸化作用であり、動脈硬化、がんの予防・改善、血糖値低下、虫歯菌の増殖抑制などの作用があるといわれる。

βカロテン

 野菜、果物、海藻などに色素として含まれるカルチノイドの一つである。
 カロチノイドにはα-、β-、γ-カロテン、リコピンなどの種類があるが、いずれも体内でビタミンAに変化し、免疫力の増加、皮膚や粘膜の増強、老化防止、がん、動脈硬化、心臓病,眼病,風邪などの予防に効果があるといわれている。

フラボノイド

 2個のベンゼン環を3個の炭素原子で結びつけたジフェニルプロパノイド(C6-C3-C6)構造をもつ化合物の総称。C3部分が酸素を介して閉環したクロマン骨格(フラバンの構造式で四角で囲んだ部分)をもつ三環性のものがよく知られ、植物界に広く存在し、食品の色素、苦味、甘み成分になるほか、抗酸化性、エストロゲン作用と抗発がん性と心保護剤としての可能性が提唱されている。植物体内での合成はマロニルCoAとヒドロキシケイヒ酸CoAからはじまり、カルコンで閉環してフラボン構造が出来た後、側鎖にーOH基、-OCH3基などの修飾を受けたり、糖を付けたりして多数のフラボノイドに分かれる。
 現在では5,000種類のフラボノイドが記載され、6つの主要な亜群が知られ、フラボン(アピゲニン、ルテオリンなど)、フラボノール(ケルセチン、ミリセチンなど)、フラバン(ナリンゲニン、ヘスペリジンなど)、カテキン類ナイシフラバノール(エピカテキン、ガロカテキンなど)、アントシアニジン(シアニジン、ペルアルゴニジンなど)、イソフラボン(ゲニステイン、ダイゼインなど)である。これらのフェノール構造を持つ一連の天然物フラボノイドは果物、野菜、穀物、樹脂、根、茎、花、お茶、ワインなどに含まれている。この多くは花、果物、葉の魅力的な色素・味を提供している。
 効用としては抗酸化作用、発がん抑制、動脈硬化予防、血管保護および血流増加、老化抑制など多彩な作用が推測されている。

老化とフラボノイド
 老化の進行を早める後天的因子として、ストレス、紫外線、放射線、温度、栄養、煙草、酒などがあるが、これらの因子による原因として、スーパーオキシド、O2-などの活性酸素が脂質を中心とする細胞成分を破壊・異常化し、しかも連続的・不可逆的に拡大していく活性酸素、フリーラジカルによる作用が注目されている。このような細胞成分の過酸化連鎖を防ぐために、体内ではビタミンC、E、SOD、NADPH、GSH系などの抗酸化機能が働いているが、フラボノイド類の活性酸素消去能はより直接的、強力で、これを外部から投与することによって老化の防止に役立つと思われる。(近藤雅雄)

ビタミンU

 正式名は塩化メチルメチオニンスルホニウムといい、キャベツから見出されたため「キャベジン」とも呼ばれ、生体内で合成されるビタミン様物質である。主な作用としては、胃潰瘍や十二指腸潰瘍をはじめ、胃酸過多による胸のむかつき、食欲不振など、胃のトラブルを解消するといわれている。キャベツのほかにパセリ、レタス、セロリ、アスパラガス、牛乳、卵、青海苔などに含まれている。

テアニン

 茶葉(とくに玉露)に含まれるうまみと甘味成分で、グルタミン酸エチルアルドとも呼ばれ、カフェインの覚醒作用と異なり精神を安定させ、リラックスさせる作用があるといわれている。利尿作用も期待されている。

タウリン

 アミノエタンスルホン酸(H2NC2H4SO4H)というアミノ酸の一種で、からだの中に広く存在し、とくに細胞内のアミノ酸の中では最も多く、細胞内の浸透圧の調整や、活性酸素から生じる有害物質の中和、細胞膜の安定など重要な生理作用を持つ。
 タウリンは中国の明時代に出された薬学書「本草綱目」に記されている牛黄(ごおう)という生薬の成分の一つでもあり、ヒトでは母乳(初乳)中に豊富に含まれている。血圧や血中の脂質量などを正常にコントロールする働きを持ち、肝臓でコレステロールを分解し胆汁酸生成を促進することから高血圧改善、動脈硬化予防、心臓病予防、肝臓病予防、糖尿病改善などの効果があるといわれている。そのほか、血小板凝集抑制作用や脳神経の興奮を抑え、精神に落ち着きをもたらし、α波(瞑想の脳波)を誘発するといわれている。
 サザエ、トコブシ、牡蠣、ハマグリ、ホタテ貝、マグロ、タコ、ズワイカニ、ヤリイカ、ナマリ、アサリなどに多く含まれている。

セサミノール

 ゴマのセサモリンから生成されるが、ゴマ自体には極少量ふくまれ、ゴマ油の製造過程で大量のセサミノールが生産される。強力な抗酸化作用があり、細胞の老化やがんの促進因子と考えられている過酸化脂質の生成を抑制するため、老化防止、がん予防、動脈硬化の予防、肝臓病改善、二日酔い改善などに有効であるといわれている。また、ゴマ種子には、リノール酸やリノレン酸を主構成脂肪酸とする脂肪油(ゴマ油)が45~50%、セサミンやセサミノール、セサモリンなどのリグナン類が1%程度含有されている。
これらのリグナン類が加熱処理によってセサモールやサミンが生成すると、強い抗酸化作用を有するといわれる。このゴマリグナンの半分を占めるセサミンはビタミンEの約6倍の抗酸化作用を示すことが報告されている。この抗酸化作用として、人の体内で効果が示されたものは今のところビタミンEとセサミンだけという。

ゴマの効能
 ゴマは約2000万年前にアフリカで発祥したと言われ、古くから油をとるために栽培された植物で、メソポタミアや古代エジプトの遺跡からその種子が発見されている。紀元前1555年頃に著されたとされている古代エジプト医学書「エーベルス・パピルス」にも収載されており、薬用や食用とされるほか、ゴマ油が顔料として用いられたと伝えられている。有名な「千一夜物語」に「開けゴマ」の呪文があるように、6世紀頃の中近東では身近な植物であったようである。中国では、2000年前に著された古代中国の薬物書『神農本草経』の上品(不老延命を目的とする薬)に胡麻が収載され、滋養強壮、粘滑、解毒薬として虚弱体質の改善や病後の回復、便秘の治療、また、火傷、歯痛、瘡癰などの治療改善に外用され、また長く服用すると目や耳が鋭敏になると言われている。
 インドやスリランカなどの伝承医学であるアーユルヴエーダにおいても、歯を丈人にし、口内炎や鼻炎の治療および顔の老化を防ぐ効果があり、ゴマ油でのうがいや鼻への滴下がすすめられているなど万能薬として認めており、中国の薬効と共通するところが多い。また、老化防止のマッサージにもゴマ油はなくてはならないものといわれる。(近藤雅雄)

スコルジン

 ニンニクに含まれる有効成分で、エネルギーの燃焼促進作用、末梢血管拡張作用、血中コレステロール低下作用などの作用が知られている。

シスチン

 システインというアミノ酸が2つ結合したもので、卵殻膜に豊富に含まれている。システインはS(イオウ)を含むアミノ酸で髪の毛や爪、皮膚など、からだの表面に多く存在するアミノ酸で体内ではメチオニンというアミノ酸から合成される。しかし、飲酒などによって合成が阻害されるため、食事から積極的に摂取することが重要である。システインを含む食品として大豆、かきや栗などがあるが、最近卵の殻の内部にある薄皮(卵殻膜)にシスチンが豊富に含まれていることがわかった。
 シスチンは美容の維持に役立ち、美肌を求める女性向けサプリメントに利用されている。摂取するにはビタミンCとあわせて摂取するとよいといわれる。

サポニン

 植物界に存在する多環式化合物をアグリコンとする配糖体の総称。アグリコンはサポゲニンと呼ばれ、その構造の違いによりトリテルペノイドサポニンとステロイドサポニンに分けられ、一般に発泡性、溶血作用を持つ。
サポニンは苦味、渋み、えぐみと言って不快感の原因ともなる成分で、水と油の両方に溶ける。血管に付着したコレステロールなどの異物を除去したり、血中脂肪を低減させるはたらきがあるため、動脈硬化、高血圧、高脂質血症などを予防・改善する効果が期待される。しかし、サポニンの多くは溶血作用があり注意を要するが、大豆サポニンについては溶血性や毒性がないという。
大豆サポニンには脂質の合成・吸収抑制作用、脂質の分解促進作用があり、肥満防止に有効であるという。また、肝細胞の再生に関与し、肝機能障害の改善にも効果があるといわれる。

コエンザイムQ10 

 細胞内の発電所といわれるミトコンドリアに多く含まれ、体内のエネルギー物質であるATPの生産に重要な働きをしている補酵素で、ユビキノン、ユビデカレノンとも呼ばれているが、加齢と共に減少する。日本では心筋代謝改善薬として心臓病の治療薬としても使用されている。
 心疾患の改善、老化防止、疲労回復、糖尿病、神経疾患などのリスク軽減、動悸、息切れ、冷え性、運動能力の回復、精子の活発化、免疫増強などの作用が知られ、また、抗酸化作用があり、ビタミンEに似た作用をもつのでビタミンQとも呼ばれる。

コラーゲン

 加齢とともに肌が衰えてくるのはコラーゲンの生産能力が低下するためとも言われている。このコラーゲンは皮膚や細胞間の結合組織、骨や歯の有機質の成分で、からだの全たんぱく質の約30%を占め、細胞や組織の粘着剤となって丈夫な血管や骨、筋肉、皮膚、頭髪、内臓などからだ全体の老化を防ぐともいわれている。最近ではがん予防効果への期待がいわれている。
鶏の手羽肉、ガラ、豚足、豚耳、スペアリブ、牛筋、ドジョウ、ナマコ、ふかひれなどに多く含まれている。

ケルセチン

 カテキン、アントシアニン、イソフラボンと同様に、抗酸化作用の強いポリフェノールの一種で,水溶性の抗酸化物質。ケルセチンの摂取量の多い人は冠動脈の硬化から来る心筋梗塞などの心臓病を起しにくいことが1993年イギリスの有名な医学専門誌「ランセット」に紹介されている。このケルセチンは玉ねぎ、じゃがいも、紅茶、赤ワイン、ココア、リンゴ、ブロッコリー、イチョウ葉に含まれ、とくに玉ねぎとブロッコリーに豊富に含まれている。(近藤雅雄)

グルタチオン

 γーグルタミンシステイングリシンとも呼ばれるアミノ酸の一種で、体内にもともと大量存在する。牛レバー、マダラ、赤貝、ホウレンソウ、ブロッコリー、酵母などに含まれ、体内の還元、細胞の機能低下や変異をもたらす有毒物質の解毒に関与し、慢性肝疾患、薬物中毒、妊娠中毒症、角膜障害、皮膚障害、放射線や抗がん剤による白血球減少の予防および症状の改善に、また、ストレス解消、老化防止などにも有効といわれる。慢性肝障害、角膜損傷、皮膚障害などの医薬品としても使われている。

グルコサミン

 カニの甲羅やエビの殻などに含まれるキトサンを化学処理してバラバラに分解するとグルコサミンが生産される。グルコサミンは軟骨細胞内でグルコース(ブドウ糖)から合成されるアミノ酸(グルコースとアミンが結合した小さな分子)の一種で、グリコサミノグリカンというムコ多糖類の産生を促進し、軟骨の再生に働く成分で、私たちの軟骨の構成成分でもある。
 関節痛、関節炎や痛風の緩和、スポーツ障害の改善に有効といわれているが、中高年には加齢に伴うひざの痛み緩和、軟骨のすり減り防止、症状の改善(とくに変形性関節症に効果がある)など人での多くの根拠がある。しかし、子供や成長期の若年者には本来備わっている軟骨生産能力が衰えることが心配される。(近藤雅雄)

グルカン 

 水に溶けない不溶性食物繊維で、きのこに多く含まれ整腸、便秘改善、肥満解消、がん予防などに効果があるといわれているが、大量摂取すると下痢を起こすことがある。
 グルカンには免疫細胞を活性化し抗がん作用を持つインターフェロンなどを作る作用があるといわれている。この作用はサルノコシカケ科、シメジ科、ハラタケ科に含まれるβーグルカンに強く、パン酵母に含まれるイーストグルカンにも同様の作用が認められている。

クエン酸

 生体のエネルギー物質、アデノシン三リン酸(ATP)の生産システムの中心をクエン酸サイクルというようにATP生産に不可欠なトリカルボン酸である。ブドウ糖が完全燃焼されないとピルビン酸(焦性ブドウ酸)から乳酸が生産され疲労の原因となるが、クエン酸はピルビン酸を分解し、乳酸の生産を抑制するため、疲労回復(精神的、肉体的)効果や肝臓病改善効果が認められている。柑橘類、ウメ、モモ、パイナップル、イチギなどの果実に多く含まれている。