イチョウ葉エキス食品

 イチョウは、およそ1億5千万年前から地球上に存在しており、「生きた化石」と呼ばれている。何千年も生き長らえる生命力の強い植物で、原爆で被災した広島で最初に芽吹いたのがイチョウであったといわれている。
 イチョウ葉エキスにはケルセチン、ケンフェロール、イソラムネチンの配糖体、カテキンなど約20種類以上のフラボノイドのほかビロバライド、クエルシトリン、テポニン、シマリン、他の植物には含まれていないギンコライド(A,B,C,J)などのテルペン類を含んでおり、血小板凝固作用、アレルギー因子の作用抑制,血液の粘性改善し、血液をサラサラにする、血流障害除去、活性酸素の発生抑制、記憶力改善など多彩な作用が知られている。
 副作用としては、一過性の頭痛や胃腸の不快感、アレルギー性の皮診が知られている。アレルギーについてはイチョウの葉に含まれているギンコール酸にアレルギー作用があるため、健康補助食品としてはギンコール酸を極力除去 (5ppm以下)した原料が用いられている。抗凝固剤を使用している場合は血管拡張作用などが強く現れることがあるので、使用しないほうが良い。

 イチョウは古い進化の歴史を持ち、最盛期のジュラ紀中頃(約2億年前)には地球全土で大繁盛していたことがわかっているが,その後、地殻変動や氷河期のたびに絶滅していき、最後にわずか1種類だけが中国南西部の温暖地方に生き残ったのが現存のイチョウである。日本へは12~13世紀ごろに人によって運ばれたと考えられている。
 ヨーロッパ諸国には1730年に長崎の出島に滞在するドイツ人医師によって伝わり、現在ではドイツやフランスでイチョウの葉を乾燥させて成分を抽出したイチョウ葉エキスが脳血管障害や脳機能障害に対する予防・改善効果があることから医薬品として認可されている。日本では高齢化が進む中でボケ防止、生活習慣病予防などにより逆輸入された食品である。(近藤雅雄)

アロエベラ食品

 アロエはアラビア語の「苦み」を意味する Alloch に由来し、有史以前から世界最古の下剤といわれ、食品および香粧品としても広く利用されてきた。ブッシュマンも古くから傷の手当てに用いていた壁画が残っている。古代エジプトの医学を知る上で重要な資料である『医学パピルス』には、マダガスカル島のアロエが苦味健胃薬として用いられていたことが記載されている。

 アロエはアフリカ原産のユリ科植物で、常緑多肉質の葉をもつ多年性草本。最近は、ユリ科からアロエ科アロエ属に分類されている。アロエ属植物はサハラ砂漠以南の岩の多い草地に自生し約350種が知られており、園芸品種を含めると500種以上の品種があるといわれる。代表的のものは日本の太平洋側に野生で生えている茎のあるキダチアロエと西インド諸島のバルバドスを原産地とし、食用向けにアメリカ・テキサス州で大量栽培されているアロエベラで、飲用や食用、外用に使われている。
 アロエの代表的な薬効成分のほとんどは葉皮に含まれ、真中の半透明な部分は抗炎症、保湿の成分を含むが、99.5%が水分である。
 日本では、薬事法上、アロエ薬理成分アロインが下剤として医薬品に登録されているため、アロエベラ、ケープアロエについては、アロインの含まれる葉皮を取り除かないと食品としては使えないが、キダチアロエは特別な場合を除き非医薬品に分類されているので、食品などにも加工されている。

ⅰ)成分
 アロエは多肉植物で、アロイン、アロエウルシン、アロエエモジン、アロエシン、アロエソンエモジン、アロエチン、アロエニン、アロミチン、アロエマンナン、サポニン、アロクチン、アルボランA・B、ホモナタロイン、ベータババロイン、食物繊維、蛋白質ビタミンA、B、C、Eを含み、多肉部分はムコ多糖類とミネラルを含んでいる。

ⅱ)効能
(a) 内服の場合
 便秘、胃、十二指腸潰瘍、糖尿病、高血圧、低血圧、肝臓病、胆石、二日酔い、肩こり、冷え性、喘息、更年期傷害、頭痛、気管支炎、鼻炎、膀胱炎などの抗炎症に効果があるとされている。

(b) 外用の場合
 打ち身、かぶれ、湿疹、ひび、あかぎれ、痔、やけど、すり傷、切り傷、虫刺され、うおのめ、いぼ、歯痛、歯槽膿漏など。(近藤雅雄)

サプリメントとは、利用にあたっての注意事項

サプリメントの名称は米国で1994年にできた栄養補助食品健康教育法(Dietary Supplement Health and Education Act; DSHEA)からきています。これは単にサプリメント法とも呼ばれていますが、この英語名「dietary supplement」を直訳したものに近いものです。それによると、ビタミン、ミネラル、ハーブ類、アミノ酸などの成分を1種類以上含む栄養補給のための製品で、錠剤、カプセル、粉末、ソフトゲル、液状など、通常の食品以外の形状をとるものはすべてサプリメントと呼ばれ、日本では「栄養補助食品」と訳されることが多い。


米国の健康補助食品
1.ビタミン類
2.ミネラル類
3.ハーブ類(漢方も含む)
4.植物性のもの(生薬類なども含む)
4.アミノ酸類
5.食事として摂取されているもの
6.濃縮されたもの
7.代謝産物
7.構成成分
8.抽出されたもの



 これは食事療法、運動療法、薬物療法にとってかわる物ではなく、健康リズムを回復または維持していくための補助的に利用すべき食品であり、摂取するタイミングや取りすぎには注意が必要です。
 サプリメント(または健康食品)が国内で利用されている背景・目的として、
①現在の日本においては食の西洋化によって油脂や糖質などの高エネルギー食品が増える一方で野菜、雑穀類、穀物類など、また、食物繊維のような低エネルギー食品成分やミネラル、ビタミンといった微量栄養素を多く含む食品の摂取量の減少による補助として
②農薬や産業廃棄物による食品の質の低下による補助として
③土壌の劣化に伴う植物含有栄養素の減少や輸送手段の発達による品質の低下(未熟な野菜、果物の収穫による栄養素の不足)による 補助として
④養殖魚や養鶏で使われている抗生物質など人為的操作による品質の低下を補助するため
⑤健康志向
⑥合理化思想の浸透
⑦核家族の進展による食生活の貧困
⑧健康食品企業の加熱宣伝の効果
⑨人から勧められたり、人が使用しているとまねたりする
⑩スーパー、コンビニ、飲食店、ファーストフード店などの乱立
⑪疲労回復、精力増強などに即効性がある
⑫病気の予防や体質改善(肥満を含む)のため

 などが挙げられます。こられの結果、家できちんと食事を摂らないで、手軽に健康を支える食品として、「いわゆる健康食品」といわれるものが氾濫していると思われます。健康食品と類似の名称として健康補助食品、健康栄養食品、栄養補助食品、ダイエタリ・サプリメント、健康飲料などがあり混乱していますが、健康食品に対する明確な定義はありません。

サプリメント利用にあたっての注意事項!
1.サプレメント利用にあたっては十分な情報を得て、ご自分の判断にて選択してください。
2.ここに記載したサプレメント(アカサタナ・・・順)が健康食品に含まれているとしても、その安全性・有効性が十分であるとは限りません。
3.これらの情報には動物実験結果のものもありますので、有効性については、ヒトを対象とした研究情報が重要です。また、人によって、体調によって、服用する医薬品によって、さらに食べ物によってその効果は異なりますので、健康食品を摂取する場合は十分に注意してください。
4.何らかの病気を持っている方は、健康食品を摂取する際には医師へ相談してください。摂取して、もし体調に異常を感じたときは、直ちに摂取を中止して医療機関を受診してください。
(近藤雅雄:サプリメントとは、2015年6月17日掲載)

日本型食生活と健康

平成17年10月5日、虎の門パストラル(東京)にて第6回健康食品フォーラム「『食育』と健康食品」(主催:財団法人医療経済研究所・社会保険福祉協会、後援:内閣府、厚生労働省、農林水産省、文部科学省)をテーマに基調講演が行われました。その内容を一部修正して、掲載しました。 講演内容は、現代の健康問題を日本人が古来から獲得してきた「日本型食生活」の観点からとらえなおすとともに、日本型食生活が欧米型の食生活と比べてどう優れているのか、さらに高齢者に対する食育啓蒙が食育全体に及ぼす効果に関する介入試験の結果をご紹介し、最後に健康健康フォーラム0510食品の現状と食育に関して、それぞれ科学的根拠を基に解説いたしました。 内容は、以下の順にそって解説いたしました。

1.生活の乱れが生む生体リズムの乱れ   食育(社福協)1pdf 近藤 2.食育の教育的アプローチと環境的アプローチ   食育(社福協)2pdf 近藤 3.抗酸化栄養素・魚介類の摂取が日本型食生活の特徴   食育(社福協)3pdf 近藤 4.高齢者への食育・健康意識の啓蒙が食育の輪を広げる   食育(社福協)4pdf 近藤 5.健康な身体の第一歩は生活リズムの構築から   食育(社福協)5pdf 近藤

(近藤雅雄:日本型食生活と健康、2015年6月15日掲載)

こころとからだの健康管理(1)正しい栄養素の摂取と言葉

~正しい栄養素の摂取と言葉~

1.健康とストレス

 半世紀以上も前にWHOが「健康とは身体的にも精神的にも社会的にも完全に健康な状態をいう」と定義し、「社会的健康」の重要性を示しました。この社会的健康とは、最近よく耳にする「人間力」で言えば、「共助」の精神に当たります。8つの知性(言語、音楽、空間、絵画、論理数学、身体運動、感情、社会)では「社会的知性」に当たります。また、自我(自己意識、自己制御)における「自己制御」に当たります。
 しかし、社会的健康、すなわち徳育(道徳心)については、現代の少子・核家族社会・個人情報保護法などによって家族制度や地域社会が急速に変化し、人間の人格形成にかかわる若い時代に学習(躾)されないまま大人になっていくようです。また、家庭や地域社会の中での人間関係が希薄化すると共に、長期間にわたる激しい経済情勢の中で、企業における雇用管理も大きく変化して来ています。これらの結果が、現代人に様々なストレスとなって心身に影響を与えていると思われます。事実、心身の健康について不安を持っている成人が3人に一人いるとも言われています。現代社会では「自己管理」と「社会的知性」がいかに重要であるかがわかります。

2.こころとからだの栄養素

 「自己管理」については、心身の健康管理を怠ると摂食障害などを起こし易くなり、これが病気の原因作り、その病気をさらに増悪させる要因となります。したがって、栄養学的な知識を持つことが重要です。健康寿命の延伸とQOL(生活の質)の向上を目指して、栄養に関する多様な研究が行われていますが、栄養素の過不足が心身の健康に大きく影響を与えることは明白です。
 例えば、チロシンやトリプトファンなどのアミノ酸や葉酸、B12、Cなどのビタミン、銅、鉄などのミネラルの不足は、慢性疲労、頭痛、集中できない、イライラする、学習・精神障害など様々な病気の素因と関係してきますので、このような成分の生理作用およびこれら栄養成分がどのような食品に含まれているのかを知ることが大切です。

~知識の消化吸収は人生最大の栄養素となる!~

 最近、特に若い人の免疫力・体力が低下し、これが心身の病気と関係していると言われます。その原因の多くがストレスに対する適応力の低下(コミュニケーション能力の低下など)と栄養学に対する無関心にあると思われます。生命現象はすなわち栄養現象ですが、生理学的に最も重要なのが免疫力です。免疫力は適正な栄養現象によって獲得されます。
 しかしながら、その免疫力については、スキャモンの発達曲線からも明らかなように、11歳頃をピークとして、免疫中枢である胸腺の萎縮が始まり、その萎縮の原因が多くのストレスやエイジングによって発生する活性酸素によることが最近の研究によって明らかになってきておりますので、如何に体内に多くの活性酸素を発生させないか、また活性酸素を除去させる方法が注目されています。
 その一つの方法としてポリフェノールなどの抗酸化物質や抗酸化ビタミンおよび免疫や抗酸化に関わるミネラル類(亜鉛、セレン、銅、マンガン、鉄など)を日常的に摂取することがあげられます。こころとからだの健康管理の上でも、自分自身が摂取する栄養素をしっかりと意識することによって、体力、健康力に自信を持ち、前向きになれます。
 そして、ストレスを前向きにとらえ、しっかりと自分自身に必要な良質の栄養素を摂取すれば免疫の機能も高まり、心身一如、こころもからだも元気になります。
 次に、社会的健康において最も重要な感謝するこころとからだについて述べます。

3.感謝するこころとからだ

 人間が他の哺乳動物や生物と異なっている決定的な要因は、大脳の前頭葉にあります。前頭葉は人間が400gでチンパンジーが70gです。人の脳の約30%が前頭葉です。猿は12%、犬が6%、ネコが2~3%、ネズミは0%でもわかるように、前頭葉は人間においてのみ大いに発達し、人としての思考、知性、言語、理解、理性など精神活動の中心を司る中枢です。すなわち、「こころの中枢」とも言えます。この前頭葉の働きにおいて、最も脳の活動に影響を与えるのが言葉です。良い言葉を使うと、免疫の機能(生体防御機能)、内分泌機能(成長・発達・代謝機能)、神経機能(自律神経機能、善悪の判断、理性)などの情報連絡系が活性化され、自然治癒力が高まります。言葉そのものが私たちの健康・人生を創っていくといってもよいでしょう。

~言葉は人間の原点であり、こころとからだを健康にする最大の栄養素である!~

 「はじめに言葉ありき、言葉は神と共にあり言葉は神である」と聖書にも出ています。また「言葉は天地(あめつち)を動かす」と古今和歌集に出ています。紀貫之は「力をも入れずして天地を動かし目に見えぬ鬼神をもあわれと思わせ、男と女の仲をも和らげ、猛き武士(もののふ)の心をなぐさむるは歌なり」と言っています。歌とは言葉のことです。言葉には力があります。ドイツ医学はムンドテラピー(ムンテラ)(mund(独):口、言葉の意)を重視しています。すなわち、ムンテラとは「言葉による治療」を意味します。診療や看護には必ず言葉を添えています。日本では適当に症状を説明する位のことしか理解されていませんが、本当は言葉の力による元気づけを意味しているのです。
 言葉を話すのは人間だけであり、人類の発展に大きく貢献し、書物となり永遠と続きます。言葉は、地球の平和と環境保全にも深く関わります。こころは言葉の影響を最も受けやすく、威圧的な言葉、汚い言葉、人の悪口、否定的な言葉を使うのを止め、笑顔で、プラスの言葉を口にしていけば、自分のこころも相手のこころもとても心地よい状態になるはずです。言葉には魂があります。

 一つしかないいのちであれば、人生を感謝と喜びに満ち、明るく、おおらかにプラス思考で生きて行きていくことによって健康寿命は全うできるものと思います。
(近藤雅雄:こころとからだの健康管理(1)、2015年6月5日掲載)    

生命の科学から健康の科学へ

 生体色素ポルフィリン(紫質)とヘム(血基質)は地球上の生物が生存するために必須な光合成反応や酸素の運搬などに関与する生命の根源物質です。しかし、その代謝異常症は、ある日突然に体内にポルフィリンの代謝産物が過剰蓄積し、その結果、太陽と活性酸素によって全身の機能が障害され、生命が奪われる。これまでに、筆者はこの病気の遺伝子異常および発症機序の解明、確定診断法の確立、治療法の開発などといった「生命の科学」に関する一連の研究を行ってきました。その一方で、健常者にこの代謝産物の一つを投与すると、造血促進、免疫力増強、抗酸化機能促進、運動機能促進などといった健康の回復・保持・増進が期待できることを見出しました。
 生命科学の研究は表裏一体であり、良い方向に研究が行われれば、人類、ひいては万物に貢献できますが、悪い方向に進めば、万物の破壊へとつながる危険性を含んでいます。

 本内容は、平成17年4月長生学園50周年記念に刊行された「長生学園史」掲載原稿を少し修正して記載しました。さらに読みたい方は下記のpdfからご覧ください。(近藤雅雄) 生命の科学から健康の科学へpdf  

こころとからだの健康(2)~中高年齢者の免疫強化によるアンチエイジング~

1.はじめに
 介護の必要がなく健康的に生活できる期間を「健康寿命」と言いますが、平成25年の日本人の健康寿命は男性71.19歳(同年の平均寿命は80.21歳)、女性74.21歳(同86.61歳)です。女性の方が介護期間は長くなっています。そこで、中高年齢女性の健康寿命の延伸とQOL(生活の質)の向上を図るには、適切な食生活と運動の習慣等、酸化ストレスからの予防によって目標が達成できます。

2.男女の寿命の違い
 世界中の国において男性の方が短命です。その理由は、①男性は免疫の中枢である胸腺の萎縮が早い(酸化ストレスにかかりやすい)、②基礎代謝量の違い、③染色体の違い(Y染色体は傷つくと回復しない)等が挙げられます。したがって、男性は筋肉量が多く、免疫力が弱い、偏食も多く、デリケートであり、孤独に対して弱いのに対して、女性は免疫力が強く、ストレスに強い。すなわち、男性の方が不適切な食生活や筋肉をたくさん持つことから、酸化ストレスによる免疫力の低下が著しく、その結果、短命であると言えます。

3.免疫強化とアンチエイジング
 筋肉(骨格筋、心筋、平滑筋)は24時間活動を行っていますので、それだけ酸素の需要が多い。すなわち活性酸素の生産量も多くなります。そこで、生体は活性酸素を分解する酵素SOD(スーパーオキシドデスムターゼ)、GPx(グルタチオンペルオキシダーゼ)等を進化の過程で獲得してきましたが、これにはエイジングがあり、40歳前後から酵素活性が著しく減少します。そこで、これら活性酸素を分解する酵素の代替作用のある抗酸化栄養素の摂取、適度な運動、休養が大切になります。そして、免疫にとって重要な臓器である胸腺は活性酸素によるダメージが大きいことが分かっています。12歳頃をピークとして胸腺は萎縮してきますが、その後の萎縮のスピードは活性酸素の発生量が多い男性の方が早い。したがって、免疫強化には抗酸化食品を積極的に摂取することが望ましいのです。

4.活性酸素除去方法(抗酸化は抗加齢・免疫強化につながる)
 抗酸化食品の摂取、適度な運動(手足を動かす)、疲れる前に休むことが重要です。抗酸化・免疫に関わる食品としてはビタミンA,C,E,B6、フラボノイド類、亜鉛、マンガン、銅、鉄、セレン等を多く含む食品が挙げられます。これら栄養素を含む野菜(目安量1日350g)、果物(目安量1日200g)、豆類、良質のタンパク質の摂取、特に、運動後は十分に摂取することが大切です。

5.健康食品としての5-アミノレブリン酸(ALA)
 健康食品には①表示の問題、②過剰の問題、③摂取方法の問題等があり、十分に情報を得てから摂取する必要があります。一方、最近、生体物質である5-ALAが新機能性アミノ酸として貧血予防、運動・代謝機能の亢進、抗酸化、免疫増強、美容などのヘルスケアー領域、脳腫瘍の診断・治療をはじめ多くの疾患の予防・治療などのメディカルケアー領域で、各々注目されています。この5-ALAの大量生産が可能となり、中高年齢者の皮膚の若返りや育毛効果等も期待されます。

6.運動はこころとからだのアンチエイジング
 人は動物です。動物は動く物と書きます。筋肉は第2の心臓ともいうように、適度な筋肉をつけることが大切です。運動は定期的に3メッツ以上の強度の身体運動を毎日1時間は行いたいです。運動によって、脳や筋肉が喜び(心身一如)、循環機能を高めるだけでなく、こころもすっきりし、まさにこころとからだのアンチエイジングにつながります。休養は良い睡眠をとりストレスを貯めない工夫が大切です。そして、言葉の使い方も大切です。こころは言葉の影響を最も受け易いため、日常的に前向きな、きれいな言葉を使うよう心掛けましょう。
こころとからだの健康
1.栄養(バランスの取れた食生活)
2.運動(身体を動かす)
3.休養(疲れる前に休む)
4.体質を知る(遺伝子・環境因子相互干渉作用)
5.感謝の気持ちを持つ
6.生きがいを見出す、夢を持つ
7.環境の向上を図る
8.危険因子からの予防(自己防御)
9.自然との対話(自然環境との融合)
10.からだからのサインを習得する(早期診断)
11.自信を持つ、前向きである
12.概日リズムを守る
(出展:近藤雅雄著:健康のための生命の科学、2004)
7.こころとからだの健康
 こころとからだの健康には日頃から感謝の気持ちを抱くこと、いのちの尊さを理解すること、愛情を持つこと、ストレスを貯めないで前向きであること、目標(夢、志)を持つこと、自然のリズムを大切にすることなどが重要です。これらはすべて酸化ストレスを少なくし、免疫能を増強させます(表参照)。
(近藤雅雄:女子体育4・5Vol.57-4・5,p70-71, Apr.May 2015, JAPEW)

遺伝性ポルフィリン症の生化学診断法および診断基準案の作成

 ポルフィリン症には酵素障害ならびに病態機序の違いによって8病型が報告されています。しかし、鑑別・確定診断のための検査法および診断基準はいまだに統一および一般化されていません。現在、本症の診断には臨床症状からポルフィリン症を疑い、特殊検査としてポルフィリン関連物質の測定を行った後、判定するのが一般的であり、診断には1週間以上を要します。
 本研究では、ポルフィリン症における典型的な臨床症状と患者から得られた血液、尿、糞便中の各種ポルフィリン関連物質の測定値をまとめ、本症の早期診断を目的に、高速液体クロマトグラフィーを用いた生化学診断法による鑑別・確定診断法の確立と診断基準案の作成を検討しました。その結果、現状において十分に診断可能なシステム並びに診断基準案を作成ました。
(近藤雅雄ほか:ALA-Porphyrin Science,2012,1,33-43掲載論文) 内容は下記pdfからご覧ください。 PDF:ポ症の診断基準2012-1  

ALAの植物利用

シーズ・メイル対談
 コスモ石油(株)は生命体のエネルギーとなる ALAを用いた事業を推進することで 社会の期待に応えています。ALAは 生命の根源に関わる物質として注目が高まっています。 ALAの働きと可能性、そしてコスモ石油(株)のALA事業について木村社長と意見交換をいたしました。
 現在はコスモALA株式会社にてペンタガーデン等の植物利用に関わる研究及び製造が行われています。
 2011年4月、コスモ石油株式会社の代表取締役社長 木村 彌一氏との対談の内容がシーズ・メイルで紹介され、その内容を下記のpdfで示しました。 PDF:コスモ石油社長と対談

人間として生きる力を育てる

 地球上には数千万種の生物(生命体)が生息しているといわれるが、遺伝子の構造と原理はすべて共通している。
 この遺伝子の本体であるDNAの構造 が発見されてから約50年経つ。その間の分子生物学の発展は驚異的で、生命のしくみが分子レベルで解明され、2003年4月には人の全遺伝子情報の解読、 2007年11月には人の皮膚細胞からさまざまな組織・臓器の細胞に生長する能力を秘めた「万能細胞」を作ることに成功している。
 しかし、自然科学者の一人として、研究者の飽くなき未知への探求を考えた場合、万能細胞や遺伝子技術はひとたび方向性を間違えなければ、生命系の混乱を惹き起こす。この ことは、地球環境の問題がそうであるように。最終的には人間に及ぶことを忘れてはならない。いま、人類が早急に定めなくてはならないことは、これら技術を 人類の叡智で健康・医療などを目的として、人間社会の持続可能な発展に貢献しなければならないというルール(生命・地球倫理)を作ることである。
 そのためには、基本的教養(人間としての品格)と健康(心身および社会的に健康であること)を身につけることが重要で、すべての人類が教養を持ち健康を意 識すれば、戦争や地球環境の悪化は起こらない筈である。私たちは人間として、地球の恵み、宇宙の恵みに感謝し、自然の営みを大切にする心を持って、次世代 を担う子どもを人間らしく、幸せになるように育てる責任がある。宇宙の中で、人間が住むたった一つのこの美しい地球を次世代に引継ぐべく様々な運動を展開 する必要がある。

 人間は約5000万年前にチンパンジー類の系統から分かれ、250万年前に音声言語を獲得し、現代人へと進化してきた。そして、人間だけが哺乳動物の中で大脳皮質の前頭連合野を大きく進化させ(チンパンジーの約6倍ある)、発達し、地球上の生物界を支配するようになった。
 最近の脳科学の発展によって、人間としての言語、思考、創造、意思、感情、理性、感性などの様々な機能、人格形成はこの前頭連合野にて行われ、その基本的な神経およびシナプスの回路は8歳頃(遅くとも12歳頃)までにほぼ完成されるという。
 この領域が障害すると、統合失調症、うつ病、強迫神経症、注意欠陥/多動障害などのこころの病気が生じる。また、生まれてから8歳くらいまで狼に育てられ たカルマや、幼児の頃から12歳頃まで精神異常の父親によって監禁されたジニーの、人間としての言葉の喪失、前頭連合野に障害を受け、人格が崩壊したファ ニアス・ゲージ、そしてノーベル医学生理学賞を受賞したアントニオ・E・モリスの「前頭葉ロボトミー」による性格(人格)の喪失などでも明らかなように、 人間としての生きる力を失う。

 日本では高度成長期の終焉を迎えた70年代後半から、核家族、少子高齢化、地域コミュニティーの崩壊、地域格差、教育の荒廃が生、その結果、孤立、エゴ、孤食、不登校、陰湿ないじめ、暴力などといった社会問題が起こり、育児放棄や身体的・心理 的・性的虐待などといった児童虐待へと連鎖している。この頃から、子どもや若者は感動すること、感動して涙を流すことが少なくなったように思える。
 涙はこころから湧き出てくる体液であり、他の動物では見られない人間特有の生理現象である。涙を流すことによってこころが洗われるとよく言うが、それは脳 内の良い遺伝子が働き前頭連合野を成長させるからである。したがって、人間として生き、人間として育むためには幼児期における教育がいかに重要であるかがわかる。

 私の幼少の頃は父親あるいは母親に映画や演劇・歌舞伎を観によく連れて行かれたものである(しかし、両親と一緒に行った記憶はない)。そこには感動も含めて、人間として成長・発達していくための多くの要素を含んでいたように思われる。
 演劇は、演じる者、見る者が一体となって、人と人との間のコミュニケーションを基盤に、様々な知恵の伝承、生きる術として大切な善悪の判断、感謝し奉仕す るといった素直な心を養う。個を取り巻く様々な事象(人、社会、自然)を知覚するための知性と感性が育まれ、そこから自主性、独創性、創造性、集中力、積 極性、幸福感、達成感などを感じ取り、将来へ向けた計画、展望、夢を見るようになる。そして、人間として生きる力(自助、共助の精神)を獲得し、相手を思 いやる気持ち、自然を守ることの大切さを知る。これらの前頭連合野の働きはやがて大人になって、「自由」な心で「正当性」、「責任」を持って、「平和(社 会)」に貢献し、様々な技術を善用できるこころと体力を持つようになる。

 人間の本質は遊びである。演劇も遊びである。遊びの基本は自発性であり。好奇心であり、脳の働きそのものである。人間として正しく生きる力を育むためには、幼児期に体系的な感性を育む遊びを中心とした総合的教育が大切である。
 子どもたちの未来のため、人類が平和と環境を堅持するためにも、演劇を通して幼児教育に様々な形で貢献されている児童・青少年演劇の活動に期待したい。
(近藤雅雄:2008年3月25日、児童・青少年演劇ジャーナル「げき6」巻頭言掲載;編集・発行=児童・青少年演劇ジャーナル編集委員会、発売=晩成書房)

高齢者の食生活と免疫強化

 日本人の高齢者は加齢と共に嗜好が変化し、とくに免疫能保持に重要な因子であるタンパク質摂取量は中年期を境に肉類から魚類に変化することによって年齢に関係なく一定量保持できてるという特徴を有していることを見出しました。しかし、同時に、セレンや銅など抗酸化に関与する微量元素量が加齢にしたがって減少することが確認されました。また、抗酸化成分としてルテオリンというポリフェノールを見出し、これを多く含む食品がピーマンであることがわかりました。
 そこで、高齢者にピーマンを実際に食べていただくという介入試験を行った結果、抗酸化機能及び免疫機能などが強化されることがわかりました。
(朝倉書店、食品技術総合辞典、2008年およびアンチエンジングより引用) 高齢者の食生活と免疫強化pdf アンチエイジング

野菜中の各種フラボノイドのHPLC分析法の開発

現代人の免疫能は低下しており、特に高齢者の免疫能は著しく低くなっている。免疫能低下の主な原因として、急速な食生活の変化による肥満および加齢、ストレスなど、酸化ストレスによる影響が示唆され、その結果、細胞障害や免疫能低下が起こることが知られている。そこで、酸化ストレスからの防御方法として野菜などに多量に含まれる抗酸化物質の摂取が注目されている。
 本研究ではこれまでに多くの抗酸化物質の中で、ルテオリンが細胞内および細胞外の活性酸素消去能が高いことから、ルテオリンを中心として各種フラボノイド類のHPLC分析の開発を行った。フラボノイド類には多数の異性体が報告されているが、統一された分析方法はいまだにない。したがって、各々の抗酸化物質の抗酸化機能についてもはっきりしない。(br>  本研究では各種フラボノイドのHPLC分析法の開発と、実際に野菜からの抽出ならびに定量を目的として検討した。(近藤雅雄、2019年4月17日掲載、2006年5月12日発表)PDF:野菜中の各種フラボノイド分析法の開発

中・高齢者の特発性ポルフィリン代謝異常症について~栄養学的アプローチ

 中・高齢者に稀に発症する特発性 (散発性晩発性皮膚) ポルフィリン代謝異常症 (s-PCT) 患者の血液中の微量元素濃度が健常者と異なる事を見出しました。すなわち、患者10名(平均年齢51.4歳 (38~66歳)の血液中の各種元素(Al, As, Ba, Ca, Cd, Cr, Cu, Fe, Ga, K, Li, Mg, Mn, Mo, Ni, Pb, Rb, Se, Sn, Sr, Ti, V, Znの23元素)の濃度を誘導結合プラズマ発光分光分析計(ICP-AES)または誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いて測定しました。その結果、健常者に比してs-PCT患者の末梢血液中のMg, Ni, Se(<0.05)およびRb(<0.01)濃度は有意に低値でした。これに反してMoは有意に高値を示しました(<0.01)。さらに、As, Ca, Fe, K, Znは低下傾向を示し、Cdが高値の傾向を示しました。また、各元素間においても、各々健常者群では見られない有意な相関関係が認められました。しかし、これら各種元素濃度と尿中ポルフィリン量との間には有意な相互関係は見られませんでした。これらの元素変動を調べたのは世界でも初めてのことであり、今後の研究に有用と思われます。
 以上の結果は、これまでにs-PCTの発症には鉄が強く関与することが推測されていることから、これらの元素変動はPCT発症の一因となり得る可能性が示唆されました。(掲載論文:近藤雅雄ほか、薬理と治療、vol.33:S37-S44, 2005)。続きは下記のpdfを参照してください。 PDF:中高齢者の特発性ポルフィリン代謝異常症について

〔食育-25〕日本型食生活で食育推進

健康な身体への第一歩は、規則正しい生活、家族で食事をする、食欲がある、毎日朝食を食べているなど、生活自体の改善が必要です。こうした生活を送ることで、生活リズムが構築され、生体リズムが正常に働くことになります。 結論として、日本型食生活によって、健康への感謝と感謝する心を育む。食は国家の基盤であり、文化や教育の根幹であります。食育というのは、人間形成の 根幹であり、命を大切にする心をもった人を育てることが大事です。地球上で展開されるすべてのストーリーは、人の力によって起こります。この美しき地球を 次の世代に引き継ぐべく、高齢者を活用し、次世代を担う健康な人材を育ててく必要があります。食育のネットワークを広げていく。悪い遺伝子が良い遺伝子に 変わって、どんどん健康になっていく。食育もしかりです。 最後に、今回の介入試験の実施には、農林水産省の委託プロジェクト「食品の安全性及び機能性に関する総合研究」の指定を受けることで実施できましたこと に謝意を述べるとともに、介入試験にご協力いただいた狭山市老人会のみなさん、共同研究者の饗場直美先生をはじめ、多くのご協力いただいた方々に謝意を表 します。ご傾聴ありがとうございました。 nihongata-kenkozoushin

〔食育-25〕今回の介入試験から

実際に今回の介入試験の実施により、被験者の高齢者たちは食に対する意識、健康意識が高揚し、自ら健康クラブを結成して、さまざまな健康活動に取り組む ようになりました。その取り組みは、自身の健康問題にとどまらず、地域の各種催しに参加して子供たちへの食育にも積極的に関与するようになりました。この ように、高齢者の健康・食意識を啓蒙することで、地域における子供たちへの食育にその能力・役割を活用することが可能となりました。 konkai-kainyu-siken

〔食育-24〕高齢者の活用による食育推進

これまでお話しした内容をまとめますと、介入試験により、高齢者の健康意識を高揚させることによって、子供への食育に反映させることが可能であることが 証明されました。高齢者が子供の食育に直接かかわるという側面もありますが、それ以外に食の大切さ、選ぶ能力などを伝えることにより、間接的な食育が行わ れます。それが学校、地域、家庭における知育、徳育、体育につながっていき、感謝の心、平和、保全といったものが獲得されます。 健康であるためには、まず健康を意識することが重要です。健康な人とは、自分自身だけではなく、家族、友人、地域社会、国家、地球を愛する心を持った人 であり、そういう人をどんどん食育に取り込んでいく必要があります。特に、日本文化の保全・継承、日本人としての遺伝形質といったものを大切にするために は、高齢者の活用が重要と思います koreisha-katuyo-shokuiku

〔食育-23〕QOL向上へのアプローチ

介入試験の実施により、高齢者のQOLがどのように向上したかについて考察してみます。今回は、ピーマンに多く含まれるルテオリンという物質を中心に、 栄養面からアプローチしました。ピーマンという緑黄色野菜をいろいろな料理に使用し、実際に食べていただくことで、食生活に反映させたわけです。人の QOLを構成する要素として、栄養・食生活以外に、運動・身体活動・休養・心の健康がありますが、そのどこからアプローチしてもかまいません。今回のよう に食生活からアプローチすれば、健全な食生活により身体が軽くなり、運動したり、心が健康になっていろいろなコミュニケーションがはかられていきます。い ろいろな方面から効果的な評価やフィードバックが可能になり、QOLが向上していきます。 qol-kojo

〔食育-22〕食事記録表

試験前、試験中に作成してもらった食事記録表を調べてみると、介入前と介入中で緑黄色野菜の摂取量が変化しています。弁当1個に含まれるピーマンは約 120g、ピーマン約3個分ですが、これを100として比較すると、高齢者というのは以外に日常的に緑黄色野菜の摂取量が少ないことが分かります。ところ が介入試験の実施により野菜摂取に対する意識が高まり、自由摂取となっている朝食・夕食・日曜日の食事でも、野菜を積極的に食べるようになりました。また 果実類の摂取でも改善が見られ、食物繊維摂取量と食品群の相関もきれいに出ています。これは介入試験の実施により、高齢者に対し食育がなされたと考えてい い結果だと思います。 chousei-hyo

〔食育-21〕自覚症状の変化

ある意味、身体がきれいになったといえるでしょう。さらに自覚症状についてたずねたところ、「便通が良くなった」と答えた人が81.3%いました。たか がピーマン、されどピーマンといいましょうか、ピーマンの中身は空っぽですが、果肉には多くの栄養素が含まれており、食物繊維も豊富に含んでいますので、 その影響かと思われます。 jikaku-shojo-henka