こころとからだの健康管理(1)正しい栄養素の摂取と言葉

~正しい栄養素の摂取と言葉~

1.健康とストレス

 半世紀以上も前にWHOが「健康とは身体的にも精神的にも社会的にも完全に健康な状態をいう」と定義し、「社会的健康」の重要性を示しました。この社会的健康とは、最近よく耳にする「人間力」で言えば、「共助」の精神に当たります。8つの知性(言語、音楽、空間、絵画、論理数学、身体運動、感情、社会)では「社会的知性」に当たります。また、自我(自己意識、自己制御)における「自己制御」に当たります。
 しかし、社会的健康、すなわち徳育(道徳心)については、現代の少子・核家族社会・個人情報保護法などによって家族制度や地域社会が急速に変化し、人間の人格形成にかかわる若い時代に学習(躾)されないまま大人になっていくようです。また、家庭や地域社会の中での人間関係が希薄化すると共に、長期間にわたる激しい経済情勢の中で、企業における雇用管理も大きく変化して来ています。これらの結果が、現代人に様々なストレスとなって心身に影響を与えていると思われます。事実、心身の健康について不安を持っている成人が3人に一人いるとも言われています。現代社会では「自己管理」と「社会的知性」がいかに重要であるかがわかります。

2.こころとからだの栄養素

 「自己管理」については、心身の健康管理を怠ると摂食障害などを起こし易くなり、これが病気の原因作り、その病気をさらに増悪させる要因となります。したがって、栄養学的な知識を持つことが重要です。健康寿命の延伸とQOL(生活の質)の向上を目指して、栄養に関する多様な研究が行われていますが、栄養素の過不足が心身の健康に大きく影響を与えることは明白です。
 例えば、チロシンやトリプトファンなどのアミノ酸や葉酸、B12、Cなどのビタミン、銅、鉄などのミネラルの不足は、慢性疲労、頭痛、集中できない、イライラする、学習・精神障害など様々な病気の素因と関係してきますので、このような成分の生理作用およびこれら栄養成分がどのような食品に含まれているのかを知ることが大切です。

~知識の消化吸収は人生最大の栄養素となる!~

 最近、特に若い人の免疫力・体力が低下し、これが心身の病気と関係していると言われます。その原因の多くがストレスに対する適応力の低下(コミュニケーション能力の低下など)と栄養学に対する無関心にあると思われます。生命現象はすなわち栄養現象ですが、生理学的に最も重要なのが免疫力です。免疫力は適正な栄養現象によって獲得されます。
 しかしながら、その免疫力については、スキャモンの発達曲線からも明らかなように、11歳頃をピークとして、免疫中枢である胸腺の萎縮が始まり、その萎縮の原因が多くのストレスやエイジングによって発生する活性酸素によることが最近の研究によって明らかになってきておりますので、如何に体内に多くの活性酸素を発生させないか、また活性酸素を除去させる方法が注目されています。
 その一つの方法としてポリフェノールなどの抗酸化物質や抗酸化ビタミンおよび免疫や抗酸化に関わるミネラル類(亜鉛、セレン、銅、マンガン、鉄など)を日常的に摂取することがあげられます。こころとからだの健康管理の上でも、自分自身が摂取する栄養素をしっかりと意識することによって、体力、健康力に自信を持ち、前向きになれます。
 そして、ストレスを前向きにとらえ、しっかりと自分自身に必要な良質の栄養素を摂取すれば免疫の機能も高まり、心身一如、こころもからだも元気になります。
 次に、社会的健康において最も重要な感謝するこころとからだについて述べます。

3.感謝するこころとからだ

 人間が他の哺乳動物や生物と異なっている決定的な要因は、大脳の前頭葉にあります。前頭葉は人間が400gでチンパンジーが70gです。人の脳の約30%が前頭葉です。猿は12%、犬が6%、ネコが2~3%、ネズミは0%でもわかるように、前頭葉は人間においてのみ大いに発達し、人としての思考、知性、言語、理解、理性など精神活動の中心を司る中枢です。すなわち、「こころの中枢」とも言えます。この前頭葉の働きにおいて、最も脳の活動に影響を与えるのが言葉です。良い言葉を使うと、免疫の機能(生体防御機能)、内分泌機能(成長・発達・代謝機能)、神経機能(自律神経機能、善悪の判断、理性)などの情報連絡系が活性化され、自然治癒力が高まります。言葉そのものが私たちの健康・人生を創っていくといってもよいでしょう。

~言葉は人間の原点であり、こころとからだを健康にする最大の栄養素である!~

 「はじめに言葉ありき、言葉は神と共にあり言葉は神である」と聖書にも出ています。また「言葉は天地(あめつち)を動かす」と古今和歌集に出ています。紀貫之は「力をも入れずして天地を動かし目に見えぬ鬼神をもあわれと思わせ、男と女の仲をも和らげ、猛き武士(もののふ)の心をなぐさむるは歌なり」と言っています。歌とは言葉のことです。言葉には力があります。ドイツ医学はムンドテラピー(ムンテラ)(mund(独):口、言葉の意)を重視しています。すなわち、ムンテラとは「言葉による治療」を意味します。診療や看護には必ず言葉を添えています。日本では適当に症状を説明する位のことしか理解されていませんが、本当は言葉の力による元気づけを意味しているのです。
 言葉を話すのは人間だけであり、人類の発展に大きく貢献し、書物となり永遠と続きます。言葉は、地球の平和と環境保全にも深く関わります。こころは言葉の影響を最も受けやすく、威圧的な言葉、汚い言葉、人の悪口、否定的な言葉を使うのを止め、笑顔で、プラスの言葉を口にしていけば、自分のこころも相手のこころもとても心地よい状態になるはずです。言葉には魂があります。

 一つしかないいのちであれば、人生を感謝と喜びに満ち、明るく、おおらかにプラス思考で生きて行きていくことによって健康寿命は全うできるものと思います。
(近藤雅雄:こころとからだの健康管理(1)、2015年6月5日掲載)    
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