分岐鎖アミノ酸(BCAA、バリン・ロイシン・イソロシン)

 体内では生産されない必須アミノ酸。BCAAが十分にあると脳内の疲労物質セロトニンの合成が押さえられ、中枢性疲労が軽減される。
 筋タンパク質中の必須アミノ酸の約35~40%がBCAAで、筋肉のタンパク質分解を抑制するといわれている。哺乳類にとって必要とされるアミノ酸の40%を占め、活動エネルギー源となることから、運動時に摂取すると良いと考えられている。ただし、アミノ酸の代謝にはビタミンB群が必須であり、同時摂取しないと十分な効果は発揮できない。
 臨床では火傷の治療、肝硬変、肝性脳症などの治療に用いられている。大豆・チーズ・マグロの赤身などに多く含まれているほか、BCAAを含むサプリメントも市販されている。

フェルラ酸

 米ぬかから精製されたフェルラ酸がアルツハイマー型認知症に有効との論文がいくつか報告されている。ポリフェノールの一種で、抗酸化作用がある。アルツハイマー病の原因となるアミロイドβの凝集を防ぎ、アルツハイマー病の治療や予防に効果があるという。

ホスファチジルセリン

 大豆由来レシチンから生産される。脳機能改善、アルツハイマー病の改善と進行遅延作用、ストレス緩和作用、脳内グルコース代謝の活性化、アセチルコリン分泌促進、イオンポンプの活性化、神経細胞の樹状突起増加などの各作用が報告されているが、そのメカニズムは明らかでない。
 科学的根拠として、痴呆症、記憶障害、アルツハイマー病、運動ストレス、心理的ストレス、認知症の患者に対する二重盲検試験があり、有意な改善効果が報告されている。

ポリフェノール

 分子内に複数のフェノール性ヒドロキシ基(ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香環に結合したヒドロキシ基(OH))を持つ植物成分の総称。ほとんどの植物に含有され、その数は5,000種以上に及ぶ。光合成によってできる植物の色素や苦味の成分であり、アントシアン、タンニンやカテキンなどのタンニン類、ケルセチンやイソフラボンなどのフラボノイド類からなる。フラボノイドを豊富に含んでいる食品としてはチョコレート、ココア、緑茶、紅茶、ワインなどが知られている。
 ポリフェノールは抗酸化作用により活性酸素を除去し、動脈硬化や心臓病の予防、免疫力の増強、抗アレルギー作用、血管の保護、発がん物質の活性化抑制、老化抑制などの効果があると言われている。

フラボノイド

 植物に広く存在する色素成分でクロロフィルやカロチノイドと並ぶ植物色素の代表的な総称。 植物の花、葉、茎、果実などに、黄色または橙色を与えている。広義には赤、紫、青を発するアントシアニンもフラボノイドに分類される。特殊なものを除き植物の色素は、カロチノイドかフラボノイドのどちらかに属する。
 フラボノイドを多量に含む赤ワインや茶類の機能性が注目されている。ルチン、ヘスぺリジン、エリオシトルリンなど称してビタミンPと呼ぶことがある。
 生理的作用としては強い抗酸化機能を有し、同時に抗酸化物質であるビタミンC、ビタミンE、クエン酸と使用すると抗酸化作用の相乗効果を示す。抗変異原性、発がん抑制、抗菌、抗ウイルス、抗アレルギー、抗血液凝固、血圧降下、消臭作用、血管保護および血流増加、動脈硬化予防、老化抑制作用など多様な作用が推測されている。

メラトニン

 脳の松果体から内分泌されるホルモンで、夜間に分泌量が増えて昼間低下することから概日リズムの形成および睡眠と覚醒リズムの変調を正常化し、睡眠・生体リズムを調節する。主として不眠症や時差ボケの解消など睡眠障害の治療に利用されており、近年ではうつ病の治療に期待されている。抗酸化作用、老化防止作用なども期待されるが、生殖毒性や医薬品との相互作用などが危惧される。子ども、妊娠を希望する女性、妊婦、授乳中の使用は避けた方がよい。

レシチン

 卵黄、大豆、酵母、カビ類などに含まれるリン脂質で、生体膜の主要構成成分。体重の約1%がレシチンであり、リン脂質としては最も多く、細胞膜などの生体膜や脳、神経組織の構成成分として重要である。体内で脂肪はタンパク質と結合して血液中を移動するが、このタンパク質と脂肪の結合にレシチンを必要とする。
 臨床的には痔や皮膚病の治療薬、アルコール性肝障害に伴う肝臓の繊維化と肝硬変の予防、肝障害の改善、C型肝炎の改善などが報告されている。
 作用としては、脳内のアセチルコリン(神経化学伝達物質)合成に不可欠な成分であることから記憶力や集中力を高め脳の機能を保持する。認知症の予防、動脈硬化の予防、糖尿病の予防、脂肪肝の改善、肥満の解消・予防などである。不足すると、疲労、免疫力低下、不眠、動脈硬化、糖尿病、悪玉コレステロールの沈着など多くの症状の原因となることが知られている。しかし、経口摂取で下痢、吐き気、腹痛などが報告され、ヒトでの有効性・安全性については信頼できるデータに乏しい。妊娠中・授乳中および通常の食物中の含有量を超える摂取は避けるべきである。

有害元素4.ヒ素(As)

 ヒ素は金属精錬、合金添加元素、特殊ガラス、農薬、顔料、半導体などに使われており、これらの製造に関与している人の場合、年に2回の健康診断が義務付けられている。ヒ素による毒性は、化学形に依存しており、一般に無機ヒ素は毒性が強く、有機ヒ素は毒性が弱い。海産物中のヒ素の多くは有機ヒ素化合物であり、人が摂取しても速やかに尿中に排泄される。また、無機ヒ素が微量に取り込まれたとしても、肝臓中でメチル化され尿中に排泄される。
 日本人が常食しているひじきには発がんのリスクが指摘されている無機ヒ素を多く含有している(22.7mg/kg)。そこで、英国食品規格庁(Food Standards Agency, FSA)は2004.7.28に英国民に対してひじきを食べないように勧告し、厚生労働省でも食品安全委員会、農林水産省など関係省庁と連携し、国際的な状況など調査を開始しようとしている(2004年)。

1.中毒の発症機序
 3価または5価のヒ素が、体内でシステインのチオール基(SH基)などに結合することにより、これを含む酵素やタンパク質の機能(とくにATP合成酵素と、呼吸鎖系酵素)を阻害するためと考えられている。

2.中毒症状
 急性中毒症状として、嘔吐、血性下痢、激しい腹痛などの胃腸障害(コレラ様下痢)、頻脈、血圧および体温低下などの基礎代謝の低下、痙攣、呼吸麻痺などの麻痺型の症状、腎不全、黄疸、末梢神経炎などが起こる。
 慢性中毒症状では全身の倦怠感、爪、毛髪の萎縮、欠損、皮膚の角化および色素異常(黒皮症)、鼻中隔穿孔、気管支炎、多発性神経炎(脚気)、発熱なども起こる。

コラム<中毒例>
○森永ヒ素ミルク事件

 1955年の夏に岡山、広島県を中心に起きた食品汚染による中毒事件。被災児は12,131名にのぼり、発熱、嘔吐、皮膚の色素沈着、黄疸などに苦しみ、130名が死亡した。生き残った者も、身長が同年齢平均より明らかに低く、脳波の異常所見や難聴の出現率が高いなどの重大な影響が残った。粉ミルクの安定剤に使用していた第二リン酸ソーダに、3~9%混入していた亜ヒ酸ソーダ(NaAsO2)が原因である。(2015年8月11日掲載:近藤雅雄)

有害元素とは(環境医学)

 必須性が確認されてないが、微量で急性あるいは慢性中毒を起こすミネラルとしてベリリウム(Be)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)、ヒ素(As)、鉛(Pb)が広く知られている。このうち、水銀による水俣病、カドミウムによるイタイイタイ病、ヒ素によると宮崎土呂久事件はわが国の産業衛生の歴史上重大な公害病として語り継がれていかなければならない。
 また、これら金属に関連した職業に従事しているヒト、または従事していなくてもこれら金属は私たちの生活環境中に身近に沢山存在しており、これら金属中毒を起こす可能性はいつでも存在しているので、日頃からこれら有害元素についての基礎知識についても学習しておく必要がある。
 たとえば、和歌山カレー中毒事件や茨城の飲用水によるヒ素中毒事件など、また、他の金属による身近な装飾品からの接触皮膚炎、さらに必須元素であっても、サプレメントとしてセレン、クロム、亜鉛などなど過剰摂取することによって発症する中毒症例が多く報告されている。

 ミネラルの場合は他の栄養素と異なって、微量でも中毒を起こすことを念頭に、サプレメントとして摂取する場合は、成分を調べた上で(ほとんど記載されていないが)サプレメント含有当該元素による副作用(過剰症、あるいは中毒症状)を十分に考慮し、もしも症状が出現した場合には直ちに必要な処置を取ることが重要である。
(近藤雅雄:平成27年8月11日掲載)

苦瓜(ゴーヤ(沖縄))

 ウリ科ツルレイシ属蔓性1年生草本で、果実に特有の苦みがあり、食用としての風味となっている。熱帯アジアが原産地で、中国や東南アジアでは重要な野菜となっている。ヨーロッパでは観賞用として栽培されている。日本では南西諸島と南九州で多く栽培されてきた。比較的害虫に強く、日照、気温と十分な水さえあれば、肥料や農薬はほとんど使わなくても収穫が得られるため、全国的な広がりを見せ、家庭菜園でも人気が高い。 沖縄では古くからゴーヤ(苦いうりの意味)と呼ばれ、夏の重要な野菜である。 1.主な成分と効果  果皮を中心に、ビタミンC、ビタミンB1、B2、葉酸、カリウム、カルシウム、鉄、食物繊維が豊富。種子には共役リノレン酸を含む。 苦み成分はチャランチンとモモルデシン、コロコリン酸であり、チャランチンとコロコリン酸は植物インスリンともいわれ、血糖値の正常化に働き、糖尿病の血糖値改善(食後高血糖改善)に役立つ。動物およびヒトで、肝臓や筋肉へのブドウ糖の取り込みを促進し、グリコーゲンの合成を促す。  科学的根拠としては、糖尿病患者に苦瓜を投与すると空腹時血糖や食後高血糖が改善されたとする報告は数多くある。また、動物実験において、糖尿病改善効果、抗ウイルス作用、抗炎症作用、コレステロール低下作用、抗癌作用なども報告されている。 1)チャランチン  脂溶性の物質であり、膵ランゲルハンス島のβ細胞に働きかけてインスリンの分泌を促し、血糖低下作用が知られている。血糖値が下がった場合は、α細胞からグルカゴンを分泌し血糖値を上昇させ血糖値を安定させるので低血糖にならない。すなわち、インスリンとグルカゴンの分必を促進し、血糖値を調節する作用がある。 2)モモルデシン  抗酸化作用をもつサポニン類の一種で、食物繊維、苦味成分の1つ。食物繊維は腸内の善玉菌の増殖を促進し、糞便量を増やし、腸内環境を整える。サポニンはコレステロールや老廃物を排出し、動脈硬化、糖尿病、がんの予防、胆汁酸の分泌や産生を促してコレステロール値を低下させる。血糖値や血圧を下げ、食欲増進作用、整腸作用などがある。 3)ビタミンC  抗酸化作用があり、苦瓜100g中にビタミンCが76mg含まれ、加熱に強い。 4)共役リノレン酸は脂肪の吸収や蓄積を抑制する。 5)その他  ビタミンBはエネルギー(ATP:アデノシン三リン酸)の生産に不可欠であり、疲労回復、皮膚や粘膜を正常化に役立つ。鉄分と葉酸は貧血を予防する。カリウムは腎臓でナトリウムの排泄に働く。 2.注意事項  サプリメントとして摂取する場合、健康被害や副作用は知られていないが血糖低下作用があるため、効果の現れやすい子どもや高齢者では注意が必要。また、妊娠中や糖尿病患者の場合は医師に相談する。腹痛や下痢といった消化器症状、頭痛などが現れた場合は服用を見合わせる。 (近藤雅雄:平成27年8月11日掲載)  

ラクトフェリン

 1939年、ベルギーにて牛乳成分の中に赤いたんぱく質が発見され、乳(ラクト)と鉄(フェリン)からラクトフェリンと命名された。  ラクトフェリンは哺乳動物の乳に含まれている多機能タンパク質で、母乳中にも含まれ、生れたばかりの赤ちゃんが、母親から受け継いだ抗体により、風邪などの病気にかかりにくくなっている。特に初乳には5∼8g/L含まれ、通常の母乳の2~3倍多く含まれている。初乳を飲むことによって感染などに対する抵抗力を持つ。  効果としては、微生物の増殖を抑える抗菌作用、大腸菌などの悪玉菌の増殖を抑え、ビフィズス菌などの善玉菌の増殖を促進する。その他、抗炎症作用、免疫強化、抗ウイルス作用、がん予防、がん転移抑制効果などが知られている。(近藤雅雄:平成27年8月7日掲載)

クロロゲン酸

 コーヒー酸(カフェ酸ともいう)とキナ酸のエステル化合物。コーヒー豆から初めて単離され、現在ではエゾウコギ、多くの双子葉植物(ナス科、セリ科、キク科に多く見られる)の種子や葉から見いだされている。コーヒー豆中5〜10%近く含まれ、含有量はカフェイン(1〜2%)よりも多い。  クロロゲン酸はポリフェノールの一種で、コーヒーの苦味や香りを出したり、ゴボウなどの野菜の切り口を茶色く変色させたりする成分。食品加工中の褐変や変色の原因となる。  クロロゲン酸の効果としては、抗酸化作用、消臭効果、発癌性物質の生成を抑える効果、胃潰瘍発生予防効果、老化防止効果、ダイエット効果などが報告されている。  しかし、コーヒーに含まれているクロロゲン酸量は微量で、コーヒー1杯には、約0.1gのカフェインが含まれている。しかも、クロロゲン酸は熱に弱く、200℃以上で焙煎するとコーヒー酸とキナ酸に分解され、生コーヒー豆中に含まれるクロロゲン酸量は5%以下になるという。したがって、コーヒーを飲んでも、カフェインは摂取できるが、クロロゲン酸はほとんど摂取できない。だから、コーヒーを飲んでいても痩せない。(近藤雅雄:平成27年8月7日掲載)

主なハーブ類とその効能

1.各地独特のハーブ

 ヨーロッパや地中海地方のハーブは有名だが、日本のミョウガ・山椒・ワサビなどの薬味や、ヨモギ・シソなどの野草、また生薬として使われてきた薄荷(ハッカ)・生姜・芍薬(シャクヤク)なども日本独自のハーブといえる。同じように、中国では漢方薬、インドではスパイスなど、世界各地でそれぞれの独特なハーブがある。

2.ハーブの効用

 ハーブには、殺菌・抗菌作用のあるものや、血液をきれいにする作用のあるものが多いため、飲んだり食べたりすることで体内をきれいにするといわれている。ハーブを体内に通過させる方法としてはハーブティーが昔から愛飲されている。また、ハーブには身体に良い成分(ミネラル、ビタミン、鉄分、カリウム、カルシウム、マグネシウム、プロテイン、繊維質、タンパク質など)を含んだものが多いため、最近ではダイエットを目的としてハーブティーを飲む人も増加している。
 ハーブティーにするハーブとしてはローズ・ミント類・カモミール・レモングラス・ハイビスカスなど、料理に良く使うハーブとしてはローズマリー・タイム・バジルなどである。ただし、シャクナゲ、トリカブト、チョウセンアサガオ、スズランなどには毒があり、すべてのハーブが食用になるとは限らないので注意が必要である。以下に主なハーブの推測効能を示した。

主なハーブの推測効能

カモミール:抗炎剤であるアズレンが含まれており、のどの痛み、口内炎、腹痛に効果がある。他に、発汗・保湿、鎮静、浄血、消化促進、駆風(腹の中にたまったガスの排出)の作用
キャラウェイシード:消化促進作用
サザンウッド:殺菌作用、抜け毛予防、毛髪の成長促進
セイジ:消化促進作用、殺菌効果
セントジョーンズワート:精神安定作用
チコリ:血液浄化作用
タイム:殺菌作用、消化器系、気管支系の薬草として知られる
チャイブ :防腐、殺菌作用
パセリ:ビタミンAやCを多く含み、消化促進、利尿作用のほか、血行促進作用
バジル:殺菌効果
ヒソップ :かぜの諸症状やのどの不快感をやわらげる働き
フェンネル:種に消化促進作用
ペパーミント:殺菌作用、花粉症、アレルギー性鼻炎に
ポットマリーゴールド:保湿効果
ボリジ:無機塩類やカリウムなどが含まれおり、体調を整える
マロウ:のどや気管支の炎症を抑える
ラベンダー:殺菌作用
レモンバウム(メリッサ):気分を高め、頭をすっきりさせる.不安や憂鬱を和らげる.他に、健胃、強壮作用

3.香りの効用

人間が元来持っている自然治癒力の活性化に香りが効果的である。香りが健康に効果的であると着目されてからハーブは芳香療法、すなわち、アロマテラピーとして注目を集めている。心地良いと思われる香りが私たちの心に働き、やる気を起こす、リラックスする、不安を取り去る、集中力を高める、ストレス解消などの効果が知られている。また自律神経失調症にも有効であるという。

4.代表的なハーブ

西洋の代表的ハーブ
カモミール:日本ではカミツレと呼ばれている。他にカモマイル、カミルレなどと呼ばれる。語源は「地面のリンゴ」で、花はリンゴやパイナップルに似た甘い香りがする。
オレガノ:イタリア料理にはなくてはならないハーブで、乾燥させたものの方が風味は強く、ミートソースやピザに使われる。
タイム:シソ科で、ローレル(月桂樹)やパセリと相性が良く、ほとんどの洋風料理に合う。ブーケガルニ(煮込み料理に使う香草の束)には欠かせない。ハーブビネガーやハーブオイルにも適している。
ローズ:薬効や芳香がある「オールドローズ」と呼ばれるバラの原種。ダマスクローズ、ドッグローズ、八重に咲く香りの強いバラを指す(ダマスクス系、ガリカ系など)。農薬を使用せずに栽培されたものなら、花弁をハーブティーやジャム、シャーベットなどに使える。
バジル:強い芳香と殺菌効果を持つシソ科のハーブで、シナモンの香りのシナモンバジルや、レモンの香りのレモンバジル、赤紫色のダークオパールや、矯性種のブッシュバジルなどがある。
 インドでは「聖なる灌木」とされ、神々に捧げられる一方、古代ギリシャ人にとっては不吉な意味を持つ植物で、バジルの種をまくときには罵りながらまかないとうまく育たないという俗信があった。また、中国ではバジルの種子を光明子と呼び、眼病の治療に用いた。日本でもかすみ目や目にゴミが入ったときに種子を目に入れてゴミを取り除いたため、メボウキ(目箒)という和名がついている。
コリアンダー:セリ科の独特なエスニックな香りがするハーブ。世界で最もたくさんの人が使っているといわれている。中国や東南アジア系料理には「香菜(シャンツァイ)」と呼ばれるコリアンダーの葉が欠かせない。種子はピクルスやカレーなどに使われる。
薄荷(ハッカ):日本特産のシソ科の植物で、各地の湿った原野に自生している。特有の香りがあり、口に含むと清涼感がある。
梅:早春の花の代表として梅があげられます。梅は中国原産で唐の時代に渡来したと言われている。万葉集にも数多くの歌が詠まれている。
どくだみ:別名をジュウヤクといい、10種類の薬効があるという意味。昔から煎じて薬として用いられてきた。
柚子:夏から初秋にかけての「青ゆず」と、秋から冬の「黄ゆず」、どちらも日本人には馴染み深い。冬至の日にゆず湯に入るが、疲労回復や神経痛に効果がある。

a)その他の西洋のハーブ
 キャラウェイ、スウィートマジョラム、セイジ(和名=薬用サルビア)、センテッドゼラニウム、タラゴン、チャイブ、ディル、ナスタチウム、パセリ、ヒソップ、フェンネル、ポットマリーゴールド(和名=キンセンカ)、ボリジ、マロウ(和名=ウスベニアオイ)、レモングラス、レモンバウム(メリッサ)、ロケット、ナツメグ、クローブ、キャットニップ、アーティチョーク、セントジョーンズワート、チコリ、チャイブス、スティンギングネトル、タンポポの根など多数が知られている。

b)その他の日本のハーブ
 シソ、ワサビ、ニラ、フキノトウ、ミツバ、セリ、からしな、にんにく、月見草、ジンジャー、トウガラシなど多数が知られている。

麦類若葉食品

 からだに不足しがちな緑黄色野菜の補給として、麦類若葉食品は飲みやすい手軽な青汁として好評である。大麦、小麦、ライ麦の幼穂形成期前の若葉を摘み取って絞り、これをろ過したエキス製品である。
 麦類の若葉は、緑黄色野菜以上に栄養素が豊富でたんぱく質、ビタミンB1、C,E,カリウム、カルシウム、マグネシウムが多く,葉緑素、各種抗酸化酵素を含む。とくに抗酸化作用のあるフラボノイドやスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)を含んでいることから動脈硬化、がん、高血圧、肝疾患、貧血、骨粗鬆症などの予防と改善、疲労回復、精神安定などの多彩な機能を持つといわれている。

ギムネマシルベスタ食品

 インド、東南アジア、熱帯アフリカ、オーストラリアなどに自生するつる性植物で、インドでは2500年前から生薬として健胃、強壮、糖尿病治療などに用いられてきた伝承医学であり、最近ではダイエット効果でも注目されている。
 ギムネマとは「砂糖を壊すもの」というヒンディー語で、ギムネマ・シルベスタの葉をかむと1~2分で甘味だけを感じなくなる。この作用はよくわかっていないが、舌の味細胞の甘味受容体の興奮抑制作用と推測されている。また、葉に含まれているギムネマ酸は小腸からの糖吸収抑制作用、虫歯を防ぐ抗う蝕作用、血糖値と血中インスリン値の上昇抑制が認められ、糖尿病の改善に効果があるといわれている。しかし、ギムネマのヒトにおける安全性や有効性は不明確である。

まこも食品

 河川や湖沼などの水辺に群生するイネ科の多年草植物で、クロロフィルと食物繊維の含有量が多く、その他、ビタミンB1、B2、鉄分、カルシウムなどを含む。
 主な効能としては免疫力の増強、糖代謝促進、血圧調節、性ホルモンの活性、胃腸運動促進などが知られ、胃腸疾患や高血圧、糖尿病などの予防および改善作用があるといわれている。

オタネニンジン根食品

 高麗人参や朝鮮人参として知られているオタネニンジン(ジンセン)はウコギ科の多年草本である。中国最古の薬草書「神農本草経」に記載されており、滋養強壮をもたらす万能薬として有用され、日本では生薬として有名である。
 成分はビタミンやミネラルを豊富に含むが、薬効成分は根茎のジンセノサイドというサポニン配糖体にある。効果としては血液循環の改善、冷え性の解消、免疫機能の強化などが知られているが、その作用機序についてはあまりわかっていない。

プルーンエキス食品

 プルーンは西洋スモモともいわれ、西アジア・コーカサス地方原産のバラ科サクラ属落葉樹の実である。ビタミンAとB1が多く、カリウム,鉄、リン、カルシウムおよびマグネシウムなどのミネラル類を豊富に含む。これら栄養素の生理作用のみならず、プルーンには水溶性の食物繊維であるペクチンが多く、ヨーロッパでは古くから便秘薬代わりに摂取され、整腸・緩下作用が知られている。

梅エキス食品

 酸味とうま味に効果がある日本特有の伝統食品である。梅エキスは青い梅のみを絞り、長時間煮詰めたペースト状もので、1kgの梅から約20gしか取れない。
 梅エキスの成分として、クエン酸、リンゴ酸、ピクリン酸、カテキン酸などの有機酸が豊富に含まれている。 クエン酸は梅特有のすっぱさの原因であり、生体内のエネルギー物質アデノシン三リン酸(ATP)生産に関与することから、疲労回復や新陳代謝を促進する。カテキン酸は胃腸の働きを活発化し、便秘や下痢などを改善する効果がある。ピクリン酸には肝機能を高める効果があるといわれている。これ以外に、冷え性、肩こり、二日酔い、風邪など幅広く効果があるといわれている。
アデノシン三リン酸(ATP)
 ATPは筋肉の収縮、体温生産、たんぱく質の合成、分泌、吸収、細胞の興奮、神経刺激伝達、物質の能動的取り込みなど生体内のエネルギー物質として、生命維持に最も重要な物質である。

健康食品の話題

1.薬と食品の相互作用およびサプリメントの副作用

 医薬品の多さと同じように食品も多種多様なものが氾濫している今日、薬同士の相互作用、薬と食品との相互作用、および食品同士の相互作用のチェックも重要な課題となってきた。例えば、次のようなことが広く知られている。
①民間薬の強壮剤として使用されてきた高麗人参は心臓に作用して血圧を上昇させるので、血圧が高く降圧剤を服用している人は避けた方がよい。
②抗凝血療法(血栓防止)にワルファリン(脳血栓を起しやすい人や心臓の手術をした人が主に服用する薬)を使用している人が納豆およびクロレラ食品を摂取するとワルファリンの効果が減弱する。これは、ワルファリンがビタミンKの作用に拮抗するため肝臓でビタミンKによってプロトロンビンなどの血液の凝固因子の生産が促進し血栓形成を促進するためである。このほか、ほうれん草、ブロッコリー、ワカメをはじめとする海藻類などには比較的ビタミンKが多いので大量の摂取は避けた方がよい。
 このほかにも薬品と食品成分との相互関係を示すものは多数知られているので、薬を服用している人はサプリメントを利用する場合には必ず医師に相談することが望ましい。
 一般に、サプリメントを利用する場合は、自分の健康状態をチェックし、健康診断で異常があるか無いかを調べ、はっきりとした異常があれば病院でそれに対する治療を行い、異常が無い場合は日常の食生活や運動などの生活習慣を見直し、食生活の中でなかなかとれない栄養素(サプリメントとして)を摂るように心がけるのが望ましい。しかし、サプリメント自体にも過剰摂取や粗悪品を飲用して副作用が生じた報告もかなり多い。

2.米国のサプリメント

 サプリメント(栄養補助食品)の法制度化を最初に手がけたのは米国であり、従来、米国では食品、医薬品、化粧品を取り扱う基本的な法律は「連邦食品、医薬品、化粧品法(USFDCA)であったが、米国議会はこの法律の一部を改正してサプリメントを食品の1カテゴリーとして扱う「栄養補助食品健康教育法(Dietary Supplement Health and Education Act; DSHEA)単にサプリメント法とも呼ばれる)」が1994年10月クリントン大統領時代に成立してからアメリカ人の日常生活に浸透し、需要と供給が増加している。
 この制度によってサプリメントを「食事を補充する目的で製造されたもの」と定義付け、サプリメントの構造、機能表示を認めた。この法律によって、ビタミンやミネラル、ハーブ、植物性栄養物、代謝産物、代謝に必要な成分、組成物、抽出物、濃縮物およびそれらの混合物などまでがサプリメントに組み入れられた。したがって、これまでに医薬品扱いであった副腎皮質ホルモンであるデヒドロエピアンドロステロン、松果体ホルモンであるメラトニン、ハーブ類などもサプリメントとして扱われるようになった。これらサプリメントの販売は医薬品扱いをしない、あくまでも食品であるとしている。
 これらDSHEAは有効性と安全性に関する科学的な指針や、第三者による実証試験の機能評価が無くても表示できるが、替わりにボトルのラベルにはこの効能を米国食品医薬品局(FDA)は認知していないという表示がされる。そこで、ここ数年、米国ではサプリメントの服用者から死亡事例が出たことから(因果関係が不明な例がある)、2003年9月から暫定的ながら条件付ヘルスクレーム表示制度を導入し、信頼度をA~Dの4つのランクに分け、科学的な根拠の強さによって判断できるようにし、このランクの違いの意味を説明するための文章を表示に加えることが条件とされている。
表 ヘルスクレーム(健康への効果効能表示)の信頼度
A High 良好な機能がある
B Moderate 良好な根拠があるが、限定的で結論できない
C Low 示唆的な根拠はあるが、限定的で結論付けられない
D Extremely Low 限られた初歩的な根拠しかなく、協調表示を支持する科学的根拠は殆ど無い
 ここで、商品のイメージからも表のDに示した表示を付けるサプリメントはなく、これまでのDSHEA法に基づいて販売されている多くの商品はDより下に位置づけられる。また、これらの表示が信頼できるという判断基準が明確にされていない。交通やインターネットが便利になった今日、各国で販売している機能性食品を手軽に入手する機会が多くなっていることから、サピリメントに対する有効性や安全性などに関する国際的な総合的議論が期待される。

3.サプリメントを購入するときの注意点

 サプリメントを購入する際には以下の点について気を付けたい。
①ラベルに原材料、内容成分がわかりやすく表示されていること。
②中蓋シールでしっかり密閉され、開封した後が無いこと。
③アレルギーの人はアレルギーに該当する成分をチェックすること。。
④自分の体質に合ったものを選択する。
⑤信頼できるメーカーの製品を選ぶ。例えば、メーカーに直接問合せた時に、きちんと対応してくれるかどうか。
⑥出来ればインターネットなどで、サプリメントの副作用事例などについてチェックする。
(近藤雅雄:健康食品の話題、2015年7月10日掲載)