こころとからだの健康(7)摂食障害

摂食障害 拒食や過食などの摂食障害は年々増加の傾向にあります。その病因は成熟恐怖や家族問題などの心理的要因(心因説)、摂食調節因子異常などの生物学的要因(身体因説)、ダイエット流行などの文化・社会的要因(文化・社会因説)などが考えられ、また、これらの要因が相互に関連しあって発症する多元的モデルが広く受け入れられています。
 一方、拒食と過食は相反するもののように捉えがちですが、拒食症から過食症に移行するケースが約60~70%出現し、「極端なやせ願望」あるいは「肥満恐怖」などが共通し、病気のステージが異なるだけの同一疾患と考えられています。

1.拒食症(神経性食欲不振症、神経性無食欲症)
 とくに若年層(思春期)の女性に多く、また、先進国に多いことから文化的要因も含まれていることが推測されます。
 この病気は体重増加への強い恐怖心を持つものが多く、その発症には第2次性徴期における特有のこころとからだの成熟のアンバランスからくる不安定な心理状態が関与しているといわれています。症状としては、女性の場合は拒食のために体重減少(標準体重の-20%以上)、無月経、性ホルモン低下、糖質コルチコイド(ステロイドホルモン)上昇などを引き起こし、「うつ」に移行することもあります。また、時には隠れ食いをしては嘔吐を繰返すこともあります。重症例では死亡することもあります。

2.過食症(神経性大食症、神経性過食症)
 過食症の場合は1週間に2回以上ヤケ食いやドカ食い(俗に週末過食症候群などと言われる)が見られ、結果的には肥満(単純性肥満)となりますが、体重増加を止めるため食べたあと吐くこともあります。原因は不明ですが、認知行動療法(体重と自己評価)や抗うつ剤が効く場合もあるということです。
 拒食症や過食症はこころの病が中心であることは間違いなく、その治療には、体重を調節するだけではなく、摂食障害についてよく理解し、ストレスとなる原因を早期に発見、その対処を考えることがなによりも大切です。
(近藤雅雄:平成27年8月30日掲載)

食生活と栄養と食育

戦後70年における「住」「食」環境の変化がもたらしたもの
 戦後の経済や生活環境の発展は言うまでもないが、ここではとくに生活の根本的な「住」と「食」との部分での変貌について展望する。
 戦前までの日本は3世代や4世代が同じ屋根または敷地内に住むという大家族社会が当たり前で、「家」という継承の体制が確立されていたが、戦後は、核家族政策によって居住空間が細分化し、アパートやマンションあるいは小スペースの一戸建て住居が乱立し、少数家族あるいは単身世帯が確立、これが現在、定着するようになった。そして、代々引き継がれてきた様々な伝承が時代とともに薄れ、集団から個人の社会へと変化した。
 とくに、食生活の面からみると日本が長い年月を通して形成してきた日本型食生活から、西洋・中国・東南アジアなど世界中の料理、ファーストフードやいわゆる健康食品というものを自由に取捨選択できる豊かな自由型食生活へと変わり、いつでも食べたいときに好きなものが食べられる時代となった。
 このように「食」と「住」という根本的な部分での生活様式を大きく変え、先進国の一員として競争・発展してきたが、逆に、今日では、日本は世界で最も自殺率の高い国となると共に国家や組織、家族など様々な環境に対して無関心な国民が増加している。また、貧富の差が増し、少子・高齢化という少数単位での生活環境がからだとこころをますます脆弱化している。

次代をになう乳幼児・子どもの生活・行動の変化
 近年の核家族・少子化に伴って就労女性が増え、育児休暇などの問題が噴出するようになったが、現実は育児休暇をとることは難しく、そこで託児所や保育園が急増するようになった。しかし、最近の厚生労働省研究班の調査では「保育園で過ごす時間の長さは子どもの発達にほとんど影響せず、家族で食事をしているかどうかが子供の発達を左右する」という結果(とくに乳児期に神経細胞が急激に増殖するため、この時期に正しい栄養や生活環境を獲得しておかないと神経回路の形成に影響が出るといわれる)を報告している。
 子どもたちはといえば、親を含めた社会の期待が学力中心の過保護社会へと変化し、塾通いをする一方で、狭い居住空間に閉じこもってコンピューターゲーム、テレビ、マンガに夢中になり、からだを動かさない生活やレトルト食品、コンビニ食品を摂取するという生活様式が定着し、子どもの知力、体力、運動能力の低下が問題となっている。
 さらに、最近の子どもおよび若者は感動することおよび感動して涙を流すことが少ないと言われている。涙はこころから湧き出てくる体液であり、他の動物では見られない人間としての特有の生理現象である。涙を流すことによって心が洗われるとよく言うが、最近のTVでも現在の人間模様を反映してか、一過性の虚楽を求めるものやお笑いが蔓延し、涙を誘うドラマなどがきらわれ、少なくなっている。
 一方、このような現状が生じているにもかかわらず、国家を挙げてIT化が推奨され、幼児教育からコンピュータが導入され、小学生でも携帯電話を持っているように、IT関連ツールは日用必需品となり、「孤立」、「エゴ」が蔓延し、デジタル型からアナログ型に移ろうとしている。読書の方はと言えば既に漫画時代といったアナログ型が定着している。食生活の面では「孤食」が定着しようとしている。
 こうした現実は、とくに次世代をになう子どもたちの体力の低下、書字能力の低下、計算能力の低下、記憶能力の低下、対人技術の発達の遅れなどが起こり、日本および地球の発展・未来において計り知れないほどの損失が生じるという危惧感を抱く。子どもは成長につれて知力や体力も自然とついてくるという錯覚を捨てるべきである。

「食育」の重要性
 そこで、上記した諸問題を真摯に受け止め、改善の方向性を探ると、最も基本的で緊急を要する課題は乳幼児期からの「家族」としての食生活のあり方である。すなわち、育自・共育の精神を持って正しい食生活をすれば健全な家庭生活を送ることができる。しかし、食生活のあり方を一歩間違えれば生活習慣病や摂食障害などの精神障害をまねき、さらにこれが遺伝的体質として次世代へも引き継がれかねない。
 こうした中、食と栄養の専門家である服部幸應氏は「食育」と言う言葉を流行させ、次の日本を作っていくためには「食育」がいかに大切であるかについての教育活動を展開し、2007年食育基本法の制定に貢献した。そこには「食育」に対する強い信念が伺えられる。
 一般に、現代人は、食に対しては好きなものを好きなときに、あるいは今あるもの(または残り)を取り寄せて食べているのが実情であり、食あるいは栄養に対する科学的な知識は殆ど持ち合わせていないのが現状である。私たちは、食を通してからだとこころの成長が図られることを忘れてはならない。団欒のある楽しい食生活やおいしい食べ物を摂取した時の自然と笑みがこぼれる幸福感を忘れてはならない。すなわち、「食育」は「職育」であり、幼児期であれば正しく成長するために、子どもであれば、知識を学習するために、大人であれば、それぞれの任務・責任を遂行するために、つまり生涯についての重要な営みである。

生活にリズムをつける
 例えば、エネルギーの貯蔵組織である脂肪細胞が増殖する時期にはリズムがあり、生涯において3回存在する。最初は、妊娠末期3ヶ月の胎児期で、この時期に母胎内から外界に出るために必要なエネルギーを蓄えることが出来るように脂肪細胞数が増える。2回目は生後1年以内の乳児期で、この時期に誕生と同時に外界において生存、成長していくために必要な脂肪組織を作り上げる。そして第3回目は思春期である。これらの時期に生活のリズムが乱れ、過食すれば当然脂肪細胞の数は増え、肥満となり、生体のリズムは乱れる。一度増殖した脂肪細胞は生涯減少しない。
 私たちの住む地球には時間や周、月、季節の各リズムがあるように、生体にも同じ時間的な体内リズムがある。1日のリズム(これをサーカディアンリズム(概日リズム)という)には食生活(摂食)のリズム、睡眠のリズム、自律神経系のリズム、免疫のリズム、内分泌のリズムなどがあり、生体の機能維持にとって重要な働きとなっている。したがって、これらのリズムを知り、生活にメリ・ハリをつけることが大切である。生活のリズムが崩れると生体のリズムも崩れ、さらに生体恒常性維持機能(これをホメオスターシスという)が崩れ、病気となる。

いまこそ「食生活」の見直し、教育・学習が必要であり、この期を失うと未来への損失は計り知れないものとなる
 生命維持において最も基本的で根本的なものが「食」であり、正しい食生活を維持・継続することによって生体のリズムが構築され、知識や技術の向上が図られる。さらに、健全なからだや精神(感謝)という個人レベルの健康だけでなく、健全な社会が構築され、延いては国家が元気となる。
 まさに、「知識の消化吸収は人生最大の栄養素となり、多くの知恵を生み出す」ように、健全な食生活から得られるものは計り知れない。すなわち、「食生活と栄養」に対する知識を得ることによってからだとこころを大切にし、団欒などから知恵を引き継ぎ (親からの伝承など)、生きる術として大切な善悪の判断、感謝する素直なこころを持つ。さらに、前向きに生活の工夫を行う知恵などを持ち、将来を夢見るこころを持つようになる。そしてこれらの習得が「自由」なこころで「正当性」、「責任」を持って、「平和 (社会)」に貢献できる体力とこころを持つようになる。これがさらに、次の世代に引継がれていく。
(近藤雅雄:平成27年8月1日掲載)

日本の食文化の変遷と食育~日本型食生活による健康寿命の延伸

はじめに
 連綿と引き継がれてきた日本の伝統的な食文化が戦後の約70年間で劇的に欧米化、依存化されるようになった。この結果は中高年齢者の免疫能の低下、がん、生活習慣病の発症および次世代をになう子どもたちの学習・記憶・体力の低下、対人技術の発達障害や摂食障害などといった心身への影響だけでなく、食糧自給率の低下、食品に関する偽装問題、薬物混入などといった食の安全・安心の問題まで発展し、国民として、日本国家として新たな様々な問題が出現してきているのが現状である。
 ここでは、科学的根拠を基に日本人としての食生活および食育のあり方について考える。

1.食文化の変遷と食育の必要性
 現在の日本の食生活は、経済成長と共にこれまでの日本型から欧米など世界中の料理、ファーストフードやいわゆる健康食品というものを自由に取捨選択し、食べたいときに好きなものが食べられる豊かな自由型(洋風型)へと変わった。その反面、核家族化の定着と共に食糧自給率の低下、「こ食」(孤食、小食、固食、粉食、個食、濃食、戸食など)が習慣化し、さまざまな問題を生じさせている。これは、とくに次代をになう子どもたちの学習・記憶・体力の低下、免疫能の低下、対人技術の発達障害などと言った心身の問題を含み、また、将来、これまでに日本文化を通して獲得されてきた日本人体質に変化が生じ、生活習慣病や摂食障害などを誘発し、さらに、これが遺伝的体質として次世代へも引継がれかねない。
 現代人は、好きなものを好きなときに、あるいは今あるものを寄せて食べ、食あるいは栄養に関する科学的な知識は殆ど持ち合わせていないのが現状である。そこで、これら諸問題の改善の方向性を探ると、最も根本的で緊急を要する課題が乳幼児期からの「食」のあり方である。食を通してからだと心の成長・健康が図られ、貧しい食事であっても団欒のある楽しい食生活や四季の旬のおいしい物を食べた時の自然と笑みがこぼれる幸福感・心のゆとりが得られ、そこからさまざまな知恵が伝承される。すなわち、「食育」は「職育」であり、各々のlife stageにおいて知力、体力、抵抗力、作業能率、正しい判断力、感性を育むための生涯に亘っての重要な営みであり、「いまこそ食育」が必要である。
 一方、政府は国民が生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性を育む事ができるよう、食育を総合的かつ計画的に推進することを目的として、平成17年7月15日に食育基本法を施行し、国民運動として、家庭における食育、学校における食育、地域における食生活の改善のための取組および食育推進運動を展開している。

2.日本型食生活の解析と健康寿命の延伸
 日本人の免疫能はこの数十年間で低下してきている。免疫の中心である胸腺は酸化ストレスや加齢によって萎縮し、免疫能が低下する。これが、近年の生活習慣病、がんや自己免疫性疾患、感染症などといった様々な疾病を発症する原因の一つとして広く指摘されている。その主たるものの原因が前述した戦後の食生活の劇的な変化が挙げられる。すなわち、私たちの住む地球には時間的リズムがあるように、生体にも同じ時間的な体内リズムがある。一日のリズム(概日リズム)には睡眠のリズム、自律神経のリズム、免疫のリズム、内分泌のリズム、摂食(食生活)のリズムなどがあり、日本人が長い歴史を通して獲得してきたさまざまな体内リズムの中心となっているのが「食」であり、生体の機能維持にとって最も重要な働きとなっている。近年、この「食」を中心とした生活習慣(リズム)の変化が生体のリズムを変化させ、肥満をはじめとした各種生活習慣病が起こることが分かってきた。したがって、これらの疾病は「食源病」といっても過言ではない。
 そこで、われわれは、国民栄養調査結果から日本人食生活の実態を解析した結果、免疫能に重要な影響を及ぼすタンパクの摂取量は男・女共に、成人後大きな変化が認められなかったが、タンパク質をどの様な食品から摂取しているかを年齢別にみると、40歳代以降から肉類と魚類の摂取量が逆転するという特徴的な食事摂取パターンを見出した。また、このパターンの変化が起こることで、高齢者のタンパク質摂取が保持できていることがアメリカ人の食生活パターンと比べることによって明らかになった。これは日本人がアメリカ人よりも高い平均寿命を有していることの一つの原因と思われる。
 しかし、免疫能および抗酸化能に影響を及ぼす微量元素量は加齢に伴って血中濃度が減少する傾向を見出し、これら元素の変動が不定愁訴などの各種自覚症状や血圧などの循環機能と関係していることがわかった。したがって、高齢者では抗酸化・免疫能を高める微量元素やビタミン、フラボノイドなどを多く含む豆類、野菜、果物、魚介類などを積極的に摂取することによって、ますます健康寿命の延伸が可能であると思われる。
 一方、現代の子どもが将来高齢者となった場合に、現在の高齢者と同じような食事の摂取パターンを取るかについては疑問である。すなわち、味覚や嗜好は乳幼児期に形成されるためである。そこで、とくに、安全な食物を選別できる能力、食物の大切さを知る能力等を小児期に育てることが重要である。

3.免疫能を高める食材の選別
 酸化ストレスからの防御を目的として、食品中に含まれるミネラルやビタミン、フラボノイド等の抗酸化成分を胸腺(免疫)細胞に投与し、活性酸素の消去能について検討したところ、細胞の内外での抗酸化能力が異なっていることを見出した。このことは、抗酸化成分の効果的な摂取法として、細胞内外にて作用を発揮する成分を摂取することの方が、細胞を酸化ストレスから防御するにはより有効であることを示す。事実、細胞内外にて抗酸化能を発揮するフラボノイド(ルテオリン)を多く含む野菜(ピーマン)を高齢者に摂取させると、摂取前と比較して抗酸化能及び免疫能は有意に上昇することが分かった。
 以上の結果から、日本人の高齢者はタンパク質においては十分に摂取できていることから、これらの食生活に加えて、銅、亜鉛、セレン等の抗酸化酵素関連微量元素や細胞の内外にて抗酸化能力を発現しうる抗酸化成分を多く含む食品群(主に豆類、野菜、果物、魚介類)を十分に摂取することによって抗酸化能力を高め、免疫能を保持し、QOLを高める。このことは若年者においてもまったく同じことが言え、免疫能の健全化のためにも「健全な日本型食生活」が重要であることを示唆している。

おわりに
 この60年間で日本社会のあり様が著しく変貌し、今後もさらに急速に変化していくものと思われる。このような時世において、健康な生命を維持する上で最も重要なものが「食のあり方」である、正しい「食生活」を維持・継続することによって生体のリズムが構築され、知識や技術の向上が図られる。さらに、健全なからだや精神(感謝)という個人レベルの健康だけでなく、健全な社会が構築され、延いては国家が元気となる。また、「食」に対する知識を得ることによってからだと心を大切にし、生きる術として大切な善悪の判断、感謝し奉仕するといった素直な心を持つ。さらに、前向きに生活の工夫を行う知恵などを持ち、将来を夢見る心を持つようになる。そしてこれらの習得が「自由」な心で「正当性」、「責任」を持って、「平和 (社会)」に貢献できる体力と心を持つようになる。これが、次の世代に引継がれる。
 「食」は国家の基盤、文化や教育の根幹である。これらの根本である「食育基本法」が誕生してからすでに10年を経たが、未だに家庭、地域、学校、行政、企業、等々の連携による社会全体での活力ある国民総運動が期待されている。
(近藤雅雄、日本の食文化と食育~日本型食生活と健康寿命の延伸、平成27年7月21日掲載)

健康食品の話題

1.薬と食品の相互作用およびサプリメントの副作用

 医薬品の多さと同じように食品も多種多様なものが氾濫している今日、薬同士の相互作用、薬と食品との相互作用、および食品同士の相互作用のチェックも重要な課題となってきた。例えば、次のようなことが広く知られている。
①民間薬の強壮剤として使用されてきた高麗人参は心臓に作用して血圧を上昇させるので、血圧が高く降圧剤を服用している人は避けた方がよい。
②抗凝血療法(血栓防止)にワルファリン(脳血栓を起しやすい人や心臓の手術をした人が主に服用する薬)を使用している人が納豆およびクロレラ食品を摂取するとワルファリンの効果が減弱する。これは、ワルファリンがビタミンKの作用に拮抗するため肝臓でビタミンKによってプロトロンビンなどの血液の凝固因子の生産が促進し血栓形成を促進するためである。このほか、ほうれん草、ブロッコリー、ワカメをはじめとする海藻類などには比較的ビタミンKが多いので大量の摂取は避けた方がよい。
 このほかにも薬品と食品成分との相互関係を示すものは多数知られているので、薬を服用している人はサプリメントを利用する場合には必ず医師に相談することが望ましい。
 一般に、サプリメントを利用する場合は、自分の健康状態をチェックし、健康診断で異常があるか無いかを調べ、はっきりとした異常があれば病院でそれに対する治療を行い、異常が無い場合は日常の食生活や運動などの生活習慣を見直し、食生活の中でなかなかとれない栄養素(サプリメントとして)を摂るように心がけるのが望ましい。しかし、サプリメント自体にも過剰摂取や粗悪品を飲用して副作用が生じた報告もかなり多い。

2.米国のサプリメント

 サプリメント(栄養補助食品)の法制度化を最初に手がけたのは米国であり、従来、米国では食品、医薬品、化粧品を取り扱う基本的な法律は「連邦食品、医薬品、化粧品法(USFDCA)であったが、米国議会はこの法律の一部を改正してサプリメントを食品の1カテゴリーとして扱う「栄養補助食品健康教育法(Dietary Supplement Health and Education Act; DSHEA)単にサプリメント法とも呼ばれる)」が1994年10月クリントン大統領時代に成立してからアメリカ人の日常生活に浸透し、需要と供給が増加している。
 この制度によってサプリメントを「食事を補充する目的で製造されたもの」と定義付け、サプリメントの構造、機能表示を認めた。この法律によって、ビタミンやミネラル、ハーブ、植物性栄養物、代謝産物、代謝に必要な成分、組成物、抽出物、濃縮物およびそれらの混合物などまでがサプリメントに組み入れられた。したがって、これまでに医薬品扱いであった副腎皮質ホルモンであるデヒドロエピアンドロステロン、松果体ホルモンであるメラトニン、ハーブ類などもサプリメントとして扱われるようになった。これらサプリメントの販売は医薬品扱いをしない、あくまでも食品であるとしている。
 これらDSHEAは有効性と安全性に関する科学的な指針や、第三者による実証試験の機能評価が無くても表示できるが、替わりにボトルのラベルにはこの効能を米国食品医薬品局(FDA)は認知していないという表示がされる。そこで、ここ数年、米国ではサプリメントの服用者から死亡事例が出たことから(因果関係が不明な例がある)、2003年9月から暫定的ながら条件付ヘルスクレーム表示制度を導入し、信頼度をA~Dの4つのランクに分け、科学的な根拠の強さによって判断できるようにし、このランクの違いの意味を説明するための文章を表示に加えることが条件とされている。
表 ヘルスクレーム(健康への効果効能表示)の信頼度
A High 良好な機能がある
B Moderate 良好な根拠があるが、限定的で結論できない
C Low 示唆的な根拠はあるが、限定的で結論付けられない
D Extremely Low 限られた初歩的な根拠しかなく、協調表示を支持する科学的根拠は殆ど無い
 ここで、商品のイメージからも表のDに示した表示を付けるサプリメントはなく、これまでのDSHEA法に基づいて販売されている多くの商品はDより下に位置づけられる。また、これらの表示が信頼できるという判断基準が明確にされていない。交通やインターネットが便利になった今日、各国で販売している機能性食品を手軽に入手する機会が多くなっていることから、サピリメントに対する有効性や安全性などに関する国際的な総合的議論が期待される。

3.サプリメントを購入するときの注意点

 サプリメントを購入する際には以下の点について気を付けたい。
①ラベルに原材料、内容成分がわかりやすく表示されていること。
②中蓋シールでしっかり密閉され、開封した後が無いこと。
③アレルギーの人はアレルギーに該当する成分をチェックすること。。
④自分の体質に合ったものを選択する。
⑤信頼できるメーカーの製品を選ぶ。例えば、メーカーに直接問合せた時に、きちんと対応してくれるかどうか。
⑥出来ればインターネットなどで、サプリメントの副作用事例などについてチェックする。
(近藤雅雄:健康食品の話題、2015年7月10日掲載)

ヘム鉄

 鉄は体内で鉄を吸収するタンパク質であるフェリチン(貯蔵鉄)、鉄を輸送するタンパク質のトランスフェリン(輸送鉄)、そして様々な生理作用を持つヘムタンパク質(機能鉄)に分かれる。
 ヘムは、プロトポルフィリンという赤い色素に2価鉄が結合したものです。鉄は、体内での需要と供給のバランスから、成長期や運動、女性の生理、妊娠などによって鉄分が不足すると、ヘムの生産量が減少しますので、ヘムタンパク質の機能が発揮できず、貧血、息切れ、疲れやすいなどといった様々な症状が出やすくなります。
 そこで、食品から鉄分を摂取する際に鉄の吸収率が大きな問題となって、鉄の吸収率の高いヘム(10~30%吸収;肉類、レバーなどの動物性食品に多い)を「ヘム鉄」と呼び、吸収があまりよくない鉄分(1~5%吸収;野菜、穀類などの植物性食品に多い)を「非ヘム鉄」と分けるようになりました。ヘム鉄は非ヘム鉄と異なって、穀類に含まれるフィチン酸、お茶に含まれるタンニン、あるいは食物繊維などによる吸収阻害がありません。
 ヘム鉄を多く含んでいる食品の摂取は鉄分補給に効果的ですし、また、消費者庁から「特定保健用食品」として許可されたヘム鉄飲料などが市販されています。
(近藤雅雄:ヘム鉄、2015年7月9日掲載)

ミネラル(必須性が認められているもの)

 ミネラルには、人が日常健康生活を送る上で、生命の機能維持に必要不可欠であると確認されているものを必須ミネラルと呼び、これまでに16種類(Na, K, Cl, P, Ca, Mg, S, Zn, Fe, Cu, Mn, Co, Cr, I, Mo, Se)が知られている。その中でも、特に欠乏や過剰が心配される13元素(Ca, Fe, P, Mg, Na, K, Cu, I, Mn, Se, Zn, Cr, Mo)については、摂取基準が策定されている。
 ミネラルは体のバランスを調節し、機能を保つ働きを持つ。さらに、ナトリウムとカリウムのように、関わりあいながら機能しているミネラルもあるので、全体的にバランスよく摂取することは、健康の維持・増進、疾病の予防に重要な役割を発揮する。そのため、毎日の食事では補いきれず不足しがちなものを補うのが、サプリメント活用の目的である。

1.カルシウム(Ca)
 カルシウムは人体でもっとも多く存在する無機質で、成人体重の約2%(体重50kgの成人で約1kg)を占める。人体中のカルシウムの約99%は骨や歯などの硬い組織に存在し、生体を維持する働きをする。これらの硬組織はカルシウムの貯蔵組織としても機能する。残りの約1%のカルシウムは細胞や血液中に存在し、生命の維持に必要な機能の調節に重要な役割を果たしている。さらに遊離カルシウムの濃度は細胞内が細胞外より大きく、この差が情報伝達に関与している。
 生体内の細胞や血液中のカルシウム濃度は、副甲状腺ホルモン、活性型ビタミンD、カルシトニン(甲状腺ホルモン)により一定に保たれている。さらに腸管からのカルシウム吸収を調節し、血液中のカルシウムを骨に沈着させ、骨のカルシウムを血液中に溶出させることによってカルシウム濃度が一定に保持される(図2-7)。したがって、カルシウム欠乏状態が長く続くと骨のカルシウム含量を低下させ、骨粗鬆症の原因となる。
 骨は硬組織ではあるが、約3ヶ月単位で骨吸収と骨形成を繰り返し、常に作り変えられている。
 細胞や血液中のカルシウムは、主としてイオンとして①細胞の分裂・分化、②筋肉の収縮、③神経の刺激、④細胞膜の透過性、⑤血液の凝固などに関与している。
欠乏症-血液中のカルシウム濃度はホルモンによって一定に保たれているので、カルシウム欠乏は貯蔵部位である骨にみられることが多い。幼児では骨のは発育障害、成長障害がおこる。高齢者、特に閉経後の女性では骨粗鬆症が多く見られる。

**骨粗鬆症**
 骨粗鬆症は骨の外形は変化せず、骨塩量の低下により内部が萎縮する疾病で、骨折の原因となる。骨折の後発部位は胸椎、腰椎、大腿骨頚部、上腕骨頭部である。人体の骨量は骨形成と骨吸収のバランスで定まり、骨量は青年期に最大骨量となり、それ以後男女ともに減少する。最大骨量が少ないほど発症しやすいので、青少年期までのカルシウム摂取は重要である。女性は閉経期以降、卵胞ホルモン(エストロゲン)の低下に伴い、発症が多くなる。本症はビタミンDの血中濃度が低く、副甲状腺ホルモン分泌が亢進して、骨量減少が進行する。予防として日光浴と運動が有効である。ビタミンK摂取も良い。また摂取するカルシウムとリンの比率は1:1程度がよく、同時にマグネシウムの摂取も必要である。減量経験者や低体重者は骨密度が低いので、注意が必要である。

2.マグネシウム(Mg)
 マグネシウムは人体に約0.05%(成人で約25g)存在し、リン酸塩や炭酸塩として骨に沈着し、また筋肉に多く、血液にはわずかしか存在しない。マグネシウムは300種以上の酵素の活性剤として働き、エネルギーの生産、アミノ酸の活性化、タンパク質の合成に関与している。また神経の興奮を抑制し、血管を拡張して、血圧を降下させる。その他、脂肪酸合成、ビタミンDの活性化、体温調節にも関与している。過剰症は発生しにくい。カルシウムの約半量摂取するのが望ましい。
欠乏症-マグネシウムが慢性的に欠乏すると虚血性心疾患などの心臓血管の障害をもたらす。欠乏が進行すると、神経過敏症、筋肉のけいれん、不整脈、循環器障害がみられる。

3.リン(P)
 リンはカルシウムについで多く存在する無機質で、成人体重の約1%(約500g)を占めている。そのうち、大部分がカルシウムとともに骨や歯に存在する。残りの大部分はタンパク質、脂質、糖などと結合した有機リン化合物としてすべての細胞に含まれ、細胞の構成成分として、また高エネルギーリン化合物(ATP)としてエネルギー代謝に供給するなど、多くの代謝反応に関与する。また遺伝情報を担う核酸にも含まれる。体液中のリン酸塩はpHや浸透圧の調節にも関与する。
欠乏症と過剰症-リンは日常食品中に十分含まれ、欠乏症はほとんどみられない。長期的に欠乏すると、骨の石灰化が阻害される。現在の日本の食生活では加工食品の利用増加に伴い、食品添加物として広く用いられているリン酸塩の摂取が多くなっている。リンの過剰摂取はカルシウムの吸収を低下させる。カルシウムとリンの摂取量の比率は1:1から1:2の範囲が望ましい。

4.鉄(Fe)
 鉄は体内に男性3.8g、女性2.3g含まれ、その60~70%が血液中のヘモグロビン、20~30%が肝臓、脾臓、骨髄などのフェリチン、ヘモシデリンに貯蔵鉄として、3~5%が筋肉中の酸素運搬・貯蔵物質のミオグロビンに、約1%が鉄含有酵素に存在している。体内に存在する鉄は機能鉄と貯蔵鉄に分けられ、貯蔵鉄の割合は男性は全身鉄の1/3であるが、女性は1/8である。食物中の鉄の形態は、ヘモグロビンやミオグロビンなどのヘム鉄や植物、乳製品、貯蔵鉄に含まれる非ヘム鉄(食品中の鉄の85%以上を占める)からなる。ヘム鉄の吸収率は非ヘム鉄の数倍高い。非ヘム鉄はビタミンCを同時に摂取すると吸収がよくなる。一方、穀類、豆類に含まれるフィチン酸、野菜などに含まれるシュウ酸、お茶に含まれるタンニンは吸収を低下させる。
 鉄は赤血球のヘモグロビンや筋肉細胞のミオグロビンの構成成分となり、酸素を運搬する。また種々の酵素に含まれATP生成に必要なため、エネルギー代謝にもかかわっている。
欠乏症-鉄欠乏は貧血、疲れやすい、頭痛、動悸を起こす。乳児では発育が遅れる。

5.ナトリウム(Na)と塩素(Cl)
 摂取した食塩はナトリウムイオンや塩化物イオンとして吸収される。吸収されたナトリウムは腎臓で調節を受けて、排泄される。ナトリウムは血漿浸透圧に関与している。血漿浸透圧が高くなると、脳視床下部の口渇中枢を刺激して水分摂取を促し、抗利尿ホルモンの分泌を刺激する。したがって、食塩の過剰摂取は高血圧発症因子である。高血圧発症の機序としては、循環血液量の増大が心拍手量を大きくすることによる。そのほかに腎臓のナトリウム排泄能の低下、内因性ジキタリス様物質の放出増大、交感神経亢進が考えられる。
 ナトリウムは体液の浸透圧の維持、細胞外液量の調節、酸・塩基平衡の保持、神経の興奮、筋肉の収縮、細胞膜の糖やアミノ酸の輸送などに関与している。
欠乏症-日常の食事でナトリウムが不足することはないが、多量の発汗に起因するけいれん、食欲不振、疲労などがある。
塩素は浸透圧の調節、酸・塩基平衡、胃酸としてペプシンやアミラーゼの活性化、膵液の分泌刺激などに関与している。
欠乏症-腎臓にカルシウムが沈着する。

6.カリウム(K)
 カリウムは成人で約100g存在するが、大部分は細胞内にある。ナトリウムとともに浸透圧の維持、神経刺激の伝達、筋肉の収縮、水分の維持などに関与する。カリウムは腎臓でのナトリウム再吸収を抑制して尿中への排泄を促進するため、高血圧症に対して降圧作用がみられる。
欠乏症-カリウムは多くの食品に含まれるので欠乏症はほとんどみられない。

7.亜鉛(Zn)
 成人の体内に約2gの亜鉛が含まれ、95%以上が細胞内に存在している。全量の50%以上が筋肉に、約20%が皮膚に存在している。血液中には全量の0.5%が含まれ、その70%が赤血球中に、10~20%が血漿中に存在する。亜鉛は100種類を超える亜鉛含有酵素として機能している。また中枢神経活動、免疫系の発達と維持、遺伝子の転写制御、細胞の増殖と分化などに関与している。
欠乏症-成長障害、食思不信、発疹、味覚障害、免疫能低下、皮膚障害が起こる。亜鉛の吸収は鉄やカルシウムと拮抗し、フィチン酸により吸収が阻害される。

8.銅(Cu)
 人体に70~100mg存在し、肝臓や脳に比較的多く存在する。銅は銅含有酵素として機能している。また乳児の成長、ヘモグロビンの合成、骨の合成に関与している。
欠乏症-ヘモグロビンの形成が減少して、貧血になる。骨折・変形を起こす。

9.マンガン(Mn)
 マンガンは人体では肝臓、膵臓などの組織に比較的多く存在し、骨の発育に必要とされる。炭水化物、脂質、タンパク質代謝における各種酵素の活性剤として機能する。
欠乏症-体重減少、骨の生育低下、生殖能力低下、運動失調。
10.ヨウ素(I)
 ヨウ素は人体に15~20mg存在し、その70~80%は甲状腺に含まれる。甲状腺ホルモンの成分として、タンパク質の合成や交感神経の感受性に関与している。
欠乏症と過剰症―欠乏症は日本ではまれであるが、世界的には内陸地域では多くみられ、甲状腺肥大、肥りすぎ、疲労、発育停止が起こる。過剰摂取によっても甲状腺腫や甲状腺機能障害を引き起こす可能性がある。

11.セレン(Se)
 グルタチオンペルキシダーゼという酵素の成分であり、この酵素は抗酸化作用を有し、過酸化脂質を還元する。生体内で過酸化物から細胞を防御する役割を持つ。
 克山病という心筋壊死をともなう心疾患は中国でみられ、セレン欠乏が基本的誘因と考えられている。セレン過剰症としては脱毛や爪の変形がみられる。

12.クロム(Cr)
 糖代謝、脂質代謝、発育、免疫力に関与する。クロムの必要量は極めて微量であるため、通常は欠乏しない。クロムを取り扱う作業者は呼吸器障害などの過剰症がみられる。

13.モリブデン(Mo)
 キサンチン酸化酵素、フラビン酵素、アルデヒド酸化酵素の補因子として機能する。食生活が原因の欠乏症は知られていない。モリブデンを過剰に摂取すると銅欠乏症を発症する。
(近藤雅雄:必須ミネラル、2015年7月8日掲載)

ビタミン(水溶性)

1.ビタミンB1(チアミン)
生理作用:ビタミンB1は糖質が体内で代謝されるときに必要な酵素の補酵素として作用している。食物から摂取された糖質はグルコースに変えられ、血液中を血糖(グルコース)として運ばれ、各臓器で利用される。このグルコースを完全に燃焼し細胞内でエネルギーに変えるには、解糖系、TCA回路、呼吸鎖などの経路が必要である。この解糖系とTCA回路を結ぶ酵素にピルビン酸デヒドロゲナーゼがあり、この酵素の反応には補酵素としてチアミンにリン酸が結合したチアミンピロリン酸が必要である。
欠乏症:糖質が多い食生活の場合にビタミンB1が欠乏すると、脚気(多発性神経炎、浮腫)やウエルニッケ脳症(精神障害、運動障害、眼球運動麻痺)を起こす。

2.ビタミンB2(リボフラビン)
生理作用:ビタミンB2は生体内ではフラビンモノヌクレオチド(FMN)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)として存在している。両者は多種類の酸化還元酵素に固く結合して存在するが、これらの酵素はフラビン酵素として知られ、生体内の酸化還元反応に関与している。また水素伝達系の構成員として水素の運搬をする。すなわちビタミンB2は糖質、脂質、タンパク質からエネルギー(ATP)の生成に関与している。
欠乏症:口角炎、舌炎、皮膚炎

3. ビタミンB6(ピリドキシン)
自然界にはビタミンB6の作用のある物質としてピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミンの三つの型がある。生体内ではリン酸エステルとして存在しており、ピリドキサールリン酸(PLP)が活性型である。
生理作用:PLPは酵素の作用でアミノ酸と結合して、アミノ酸の代謝に広くかかわっている。したがって、タンパク質の摂取が多くなると、ビタミンB6の必要量が増加する。
欠乏症:ヒトでは腸内細菌によってビタミンB6が合成されることもあり、欠乏症は起こりにくい。欠乏が起これば皮膚炎、貧血を起こす。

4.ナイアシン(ニコチン酸、ニコチン酸アミド)
ニコチン酸とニコチン酸アミドを総称してナイアシンという。体内ではリボース、リン酸、アデノシンと結合してニコチン酸アミド・アデニン・ジヌクレオチド(NDA)あるいはニコチン酸アミド・アデニン・ジヌクレオチド・フォスフェート(NDAP)として存在し、補酵素として作用する。
生理作用:NDAおよびNDAPは多くの脱水素酵素の補酵素として水素の伝達反応に関与し、糖質、脂質、タンパク質の代謝に広く関与している。
欠乏症:ペラグラ(皮膚炎、下痢、中枢神経症状(認知症))、口舌炎、胃腸病

5.パントテン酸
パントテン酸は補酵素コエンザイムA(CoA)の構成成分である。
生理作用:体内でパントテン酸は補酵素であるCoAとなり、脂肪酸の分解と合成など広範な代謝にかかわっている。
欠乏症:動物がパントテン酸欠乏になると、成長障害、皮膚炎等などが起きることがある。ヒトでは腸内細菌がパントテン酸を合成するので欠乏症はあまりみられないが、重症の栄養失調症では手足の麻痺や疼痛がみられる。

6.ビオチン
ビオチンは酵素タンパク質と固く結合してビオチン酵素を形成している。
生理作用:ビオチンは代謝過程で生成する二酸化炭素を糖質や脂質に固定するピルビン酸カルボキシラーゼやアセチルCoAからマロニルCoAカルボキシラーゼなどの補酵素として重要な役割を果たす。
欠乏症:ビオチンは腸内細菌によって合成され吸収利用されるので、通常の食生活では欠乏することはない。しかし生卵白を大量に食べると、卵白中のアビジンという糖タンパク質とビオチンが結合して吸収を阻害するため、欠乏を起こすことがある。卵白を加熱するとアビジンの作用は消失する。ビオチン欠乏では、皮膚炎、筋肉痛、食欲不振、悪心などの症状を呈する。

7.葉酸(フォラシン)
ホウレンソウから抽出した成分が乳酸菌の増殖に有効であることが見出され、葉酸と命名した。
生理作用:葉酸の活性型であるテトラヒドロ葉酸は、1炭素原子の転移反応の補酵素として作用する。たとえばグリシンからのセリンの合成、核酸塩基の合成、コリンの合成、ヘモグロビンのポルフィリン核の合成などに関与している。
欠乏症:葉酸が欠乏すると巨赤芽球性貧血となり、さらに口内炎、舌炎、下痢などの症状を呈する。

8.ビタミンB12(コバラミン)
分子中にコバルトを含むのでコバラミンとよばれる。生体内では補酵素型であるアデノシルコバラミン、メチルコバラミン、ヒドロキシコバラミンとして存在する。
生理作用:生体内での補酵素作用としてはメチル基、転移反応、核酸の合成、アミノ酸や糖質の代謝に関与している。
欠乏症:ビタミンB12は赤血球の成熟に関係があり、欠乏すると悪性貧血を起こす。しかし腸内細菌が合成するので、一般的に欠乏症は起こりにくい。

9.ビタミンC(アスコルビン酸)
ビタミンCにはアスコルビン酸(還元型ビタミンC)とデヒドロアスコルビン酸(酸化型ビタミンC)がある。アスコルビン酸は酸化されるとデヒドロアスコルビン酸となるが、この物質は還元されるともとのアスコルビン酸に戻る。ビタミンCは体内に広く分布しているが、摂取量が多くても体内の貯留量はそれほど増えず、尿中に排泄される。
生理作用:アスコルビン酸の強い還元力で下記のような生体内の種々の酸化還元反応に関与して、アスコルビン酸はデヒドロアスコルビン酸になる。
① 過酸化脂質の生成抑制、ビタミンEの作用を増強。
② 肝臓の解毒物質の代謝に関与。
③ コラーゲン(結合組織タンパク質)の生成に関与。
④ 副腎皮質ホルモンの合成に関与。
⑤ フェニルアラニン・チロシン代謝に関与。
⑥ 鉄の吸収促進。腸管内での吸収を高める。
⑦ 発ガン物質であるニトロソアミンの生成抑制。
欠乏症:ビタミンCの欠乏により、結合組織のコラーゲンの生成が不足し、毛細血管が損傷しやすく、歯ぐきや皮下の出血が起こる。そのような症状を壊血病という。また小児では骨の形成不全がみられる。

ビタミン(脂溶性)

1.ビタミンA(レチノール)
 ビタミンAは動物性食品に含まれるレチノールと、植物に広く分布するプロビタミンAであるカロテノイド類が存在する。カロテンには3種類あるが、食品中にはβ-カロテンがもっとも多く、しかもビタミンA効力がもっとも高い。
生理作用:①眼の網膜にある視覚を司る物質であるロドプシンの構成成分となっている、②上皮組織における粘膜の糖タンパク質の合成に関与し、機能を維持している、③成長促進、細胞増殖と分化の制御、免疫機能の維持に関与している。
欠乏症:ビタミンAが不足すると、ロドプシンの生成が低下するため、暗いところで物を見る機能が遅れ、夜盲症となる。上皮細胞の角質化が起こり、皮膚、粘膜の乾燥により、細菌感染に対する抵抗力の低下がみられる。
過剰症:過剰に摂取すると肝臓に蓄積されて、急性の脳圧亢進症、慢性では成長停止、関節痛、脂肪肝などがみられる。

2.ビタミンD(カルシフェロール)
 天然には植物起源のビタミンD2と動物起源のビタミンD3があり、両者の生理活性はほぼ同じである。紫外線照射によりビタミンDに変化するものをプロビタミンDといい、ビタミンD2はきのこなどに含まれるプロビタミンD2から、ビタミンD3は動物の皮膚に含まれるプロビタミンD3から生じる。
生理作用:ビタミンDは体内で活性型に変えられ、カルシウムの吸収や骨への沈着、骨からのカルシウムの動員を司っている。このカルシウムの代謝は種々のホルモンも関与している。
欠乏症:幼児期に不足するとくる病、成人では骨軟化症を引き起こす。
過剰症:食欲不振、体重減少が起こり、血中カルシウム濃度が高くなるので腎臓、心臓、動脈にカルシウムが沈着し、動脈硬化や腎不全を起こす。

3.ビタミンE(トコフェロール)
 ビタミンEは天然には8種類あるが、重要なのは生理活性がもっとも高いα-トコフェロールである。
生理作用:ビタミンEは抗酸化作用(酸化防止作用)が強く、多価不飽和脂肪酸が酸化されるのを防ぐ作用がある。細胞内にはビタミンEの大部分が生体膜に組み込まれて存在しており、ビタミンEは抗酸化作用を通して生体膜を正常に保つ作用をしている。
欠乏症:ビタミンEが不足すると、血漿のビタミンE濃度が低下し、細胞膜が破壊されやすくなり、赤血球が溶血しやすくなる。動物ではビタミンE欠乏により不妊症や筋肉の萎縮が起こることが報告されているが、ヒトでは明確ではない。
過剰症:明らかではない。

4.ビタミンK(フィロキノン)
 生理作用:血液の凝固にはプロトロンビンが必要であり、肝臓でのプロトロンビン合成にビタミンKが関与している。またビタミンKはビタミンDとともに骨の石灰化を促進して、骨形成に重要な役割を果たしている。
欠乏症:ビタミンKが欠乏すると血液中のプロトロンビンが減少して、血液の凝固を遅延させる。
過剰症:嘔吐、腎障害

サプリメントとは、利用にあたっての注意事項

サプリメントの名称は米国で1994年にできた栄養補助食品健康教育法(Dietary Supplement Health and Education Act; DSHEA)からきています。これは単にサプリメント法とも呼ばれていますが、この英語名「dietary supplement」を直訳したものに近いものです。それによると、ビタミン、ミネラル、ハーブ類、アミノ酸などの成分を1種類以上含む栄養補給のための製品で、錠剤、カプセル、粉末、ソフトゲル、液状など、通常の食品以外の形状をとるものはすべてサプリメントと呼ばれ、日本では「栄養補助食品」と訳されることが多い。


米国の健康補助食品
1.ビタミン類
2.ミネラル類
3.ハーブ類(漢方も含む)
4.植物性のもの(生薬類なども含む)
4.アミノ酸類
5.食事として摂取されているもの
6.濃縮されたもの
7.代謝産物
7.構成成分
8.抽出されたもの



 これは食事療法、運動療法、薬物療法にとってかわる物ではなく、健康リズムを回復または維持していくための補助的に利用すべき食品であり、摂取するタイミングや取りすぎには注意が必要です。
 サプリメント(または健康食品)が国内で利用されている背景・目的として、
①現在の日本においては食の西洋化によって油脂や糖質などの高エネルギー食品が増える一方で野菜、雑穀類、穀物類など、また、食物繊維のような低エネルギー食品成分やミネラル、ビタミンといった微量栄養素を多く含む食品の摂取量の減少による補助として
②農薬や産業廃棄物による食品の質の低下による補助として
③土壌の劣化に伴う植物含有栄養素の減少や輸送手段の発達による品質の低下(未熟な野菜、果物の収穫による栄養素の不足)による 補助として
④養殖魚や養鶏で使われている抗生物質など人為的操作による品質の低下を補助するため
⑤健康志向
⑥合理化思想の浸透
⑦核家族の進展による食生活の貧困
⑧健康食品企業の加熱宣伝の効果
⑨人から勧められたり、人が使用しているとまねたりする
⑩スーパー、コンビニ、飲食店、ファーストフード店などの乱立
⑪疲労回復、精力増強などに即効性がある
⑫病気の予防や体質改善(肥満を含む)のため

 などが挙げられます。こられの結果、家できちんと食事を摂らないで、手軽に健康を支える食品として、「いわゆる健康食品」といわれるものが氾濫していると思われます。健康食品と類似の名称として健康補助食品、健康栄養食品、栄養補助食品、ダイエタリ・サプリメント、健康飲料などがあり混乱していますが、健康食品に対する明確な定義はありません。

サプリメント利用にあたっての注意事項!
1.サプレメント利用にあたっては十分な情報を得て、ご自分の判断にて選択してください。
2.ここに記載したサプレメント(アカサタナ・・・順)が健康食品に含まれているとしても、その安全性・有効性が十分であるとは限りません。
3.これらの情報には動物実験結果のものもありますので、有効性については、ヒトを対象とした研究情報が重要です。また、人によって、体調によって、服用する医薬品によって、さらに食べ物によってその効果は異なりますので、健康食品を摂取する場合は十分に注意してください。
4.何らかの病気を持っている方は、健康食品を摂取する際には医師へ相談してください。摂取して、もし体調に異常を感じたときは、直ちに摂取を中止して医療機関を受診してください。
(近藤雅雄:サプリメントとは、2015年6月17日掲載)

日本型食生活と健康

平成17年10月5日、虎の門パストラル(東京)にて第6回健康食品フォーラム「『食育』と健康食品」(主催:財団法人医療経済研究所・社会保険福祉協会、後援:内閣府、厚生労働省、農林水産省、文部科学省)をテーマに基調講演が行われました。その内容を一部修正して、掲載しました。 講演内容は、現代の健康問題を日本人が古来から獲得してきた「日本型食生活」の観点からとらえなおすとともに、日本型食生活が欧米型の食生活と比べてどう優れているのか、さらに高齢者に対する食育啓蒙が食育全体に及ぼす効果に関する介入試験の結果をご紹介し、最後に健康健康フォーラム0510食品の現状と食育に関して、それぞれ科学的根拠を基に解説いたしました。 内容は、以下の順にそって解説いたしました。

1.生活の乱れが生む生体リズムの乱れ   食育(社福協)1pdf 近藤 2.食育の教育的アプローチと環境的アプローチ   食育(社福協)2pdf 近藤 3.抗酸化栄養素・魚介類の摂取が日本型食生活の特徴   食育(社福協)3pdf 近藤 4.高齢者への食育・健康意識の啓蒙が食育の輪を広げる   食育(社福協)4pdf 近藤 5.健康な身体の第一歩は生活リズムの構築から   食育(社福協)5pdf 近藤

(近藤雅雄:日本型食生活と健康、2015年6月15日掲載)

こころとからだの健康管理(1)正しい栄養素の摂取と言葉

~正しい栄養素の摂取と言葉~

1.健康とストレス

 半世紀以上も前にWHOが「健康とは身体的にも精神的にも社会的にも完全に健康な状態をいう」と定義し、「社会的健康」の重要性を示しました。この社会的健康とは、最近よく耳にする「人間力」で言えば、「共助」の精神に当たります。8つの知性(言語、音楽、空間、絵画、論理数学、身体運動、感情、社会)では「社会的知性」に当たります。また、自我(自己意識、自己制御)における「自己制御」に当たります。
 しかし、社会的健康、すなわち徳育(道徳心)については、現代の少子・核家族社会・個人情報保護法などによって家族制度や地域社会が急速に変化し、人間の人格形成にかかわる若い時代に学習(躾)されないまま大人になっていくようです。また、家庭や地域社会の中での人間関係が希薄化すると共に、長期間にわたる激しい経済情勢の中で、企業における雇用管理も大きく変化して来ています。これらの結果が、現代人に様々なストレスとなって心身に影響を与えていると思われます。事実、心身の健康について不安を持っている成人が3人に一人いるとも言われています。現代社会では「自己管理」と「社会的知性」がいかに重要であるかがわかります。

2.こころとからだの栄養素

 「自己管理」については、心身の健康管理を怠ると摂食障害などを起こし易くなり、これが病気の原因作り、その病気をさらに増悪させる要因となります。したがって、栄養学的な知識を持つことが重要です。健康寿命の延伸とQOL(生活の質)の向上を目指して、栄養に関する多様な研究が行われていますが、栄養素の過不足が心身の健康に大きく影響を与えることは明白です。
 例えば、チロシンやトリプトファンなどのアミノ酸や葉酸、B12、Cなどのビタミン、銅、鉄などのミネラルの不足は、慢性疲労、頭痛、集中できない、イライラする、学習・精神障害など様々な病気の素因と関係してきますので、このような成分の生理作用およびこれら栄養成分がどのような食品に含まれているのかを知ることが大切です。

~知識の消化吸収は人生最大の栄養素となる!~

 最近、特に若い人の免疫力・体力が低下し、これが心身の病気と関係していると言われます。その原因の多くがストレスに対する適応力の低下(コミュニケーション能力の低下など)と栄養学に対する無関心にあると思われます。生命現象はすなわち栄養現象ですが、生理学的に最も重要なのが免疫力です。免疫力は適正な栄養現象によって獲得されます。
 しかしながら、その免疫力については、スキャモンの発達曲線からも明らかなように、11歳頃をピークとして、免疫中枢である胸腺の萎縮が始まり、その萎縮の原因が多くのストレスやエイジングによって発生する活性酸素によることが最近の研究によって明らかになってきておりますので、如何に体内に多くの活性酸素を発生させないか、また活性酸素を除去させる方法が注目されています。
 その一つの方法としてポリフェノールなどの抗酸化物質や抗酸化ビタミンおよび免疫や抗酸化に関わるミネラル類(亜鉛、セレン、銅、マンガン、鉄など)を日常的に摂取することがあげられます。こころとからだの健康管理の上でも、自分自身が摂取する栄養素をしっかりと意識することによって、体力、健康力に自信を持ち、前向きになれます。
 そして、ストレスを前向きにとらえ、しっかりと自分自身に必要な良質の栄養素を摂取すれば免疫の機能も高まり、心身一如、こころもからだも元気になります。
 次に、社会的健康において最も重要な感謝するこころとからだについて述べます。

3.感謝するこころとからだ

 人間が他の哺乳動物や生物と異なっている決定的な要因は、大脳の前頭葉にあります。前頭葉は人間が400gでチンパンジーが70gです。人の脳の約30%が前頭葉です。猿は12%、犬が6%、ネコが2~3%、ネズミは0%でもわかるように、前頭葉は人間においてのみ大いに発達し、人としての思考、知性、言語、理解、理性など精神活動の中心を司る中枢です。すなわち、「こころの中枢」とも言えます。この前頭葉の働きにおいて、最も脳の活動に影響を与えるのが言葉です。良い言葉を使うと、免疫の機能(生体防御機能)、内分泌機能(成長・発達・代謝機能)、神経機能(自律神経機能、善悪の判断、理性)などの情報連絡系が活性化され、自然治癒力が高まります。言葉そのものが私たちの健康・人生を創っていくといってもよいでしょう。

~言葉は人間の原点であり、こころとからだを健康にする最大の栄養素である!~

 「はじめに言葉ありき、言葉は神と共にあり言葉は神である」と聖書にも出ています。また「言葉は天地(あめつち)を動かす」と古今和歌集に出ています。紀貫之は「力をも入れずして天地を動かし目に見えぬ鬼神をもあわれと思わせ、男と女の仲をも和らげ、猛き武士(もののふ)の心をなぐさむるは歌なり」と言っています。歌とは言葉のことです。言葉には力があります。ドイツ医学はムンドテラピー(ムンテラ)(mund(独):口、言葉の意)を重視しています。すなわち、ムンテラとは「言葉による治療」を意味します。診療や看護には必ず言葉を添えています。日本では適当に症状を説明する位のことしか理解されていませんが、本当は言葉の力による元気づけを意味しているのです。
 言葉を話すのは人間だけであり、人類の発展に大きく貢献し、書物となり永遠と続きます。言葉は、地球の平和と環境保全にも深く関わります。こころは言葉の影響を最も受けやすく、威圧的な言葉、汚い言葉、人の悪口、否定的な言葉を使うのを止め、笑顔で、プラスの言葉を口にしていけば、自分のこころも相手のこころもとても心地よい状態になるはずです。言葉には魂があります。

 一つしかないいのちであれば、人生を感謝と喜びに満ち、明るく、おおらかにプラス思考で生きて行きていくことによって健康寿命は全うできるものと思います。
(近藤雅雄:こころとからだの健康管理(1)、2015年6月5日掲載)    

高齢者の食生活と免疫強化

 日本人の高齢者は加齢と共に嗜好が変化し、とくに免疫能保持に重要な因子であるタンパク質摂取量は中年期を境に肉類から魚類に変化することによって年齢に関係なく一定量保持できてるという特徴を有していることを見出しました。しかし、同時に、セレンや銅など抗酸化に関与する微量元素量が加齢にしたがって減少することが確認されました。また、抗酸化成分としてルテオリンというポリフェノールを見出し、これを多く含む食品がピーマンであることがわかりました。
 そこで、高齢者にピーマンを実際に食べていただくという介入試験を行った結果、抗酸化機能及び免疫機能などが強化されることがわかりました。
(朝倉書店、食品技術総合辞典、2008年およびアンチエンジングより引用) 高齢者の食生活と免疫強化pdf アンチエイジング

野菜中の各種フラボノイドのHPLC分析法の開発

現代人の免疫能は低下しており、特に高齢者の免疫能は著しく低くなっている。免疫能低下の主な原因として、急速な食生活の変化による肥満および加齢、ストレスなど、酸化ストレスによる影響が示唆され、その結果、細胞障害や免疫能低下が起こることが知られている。そこで、酸化ストレスからの防御方法として野菜などに多量に含まれる抗酸化物質の摂取が注目されている。
 本研究ではこれまでに多くの抗酸化物質の中で、ルテオリンが細胞内および細胞外の活性酸素消去能が高いことから、ルテオリンを中心として各種フラボノイド類のHPLC分析の開発を行った。フラボノイド類には多数の異性体が報告されているが、統一された分析方法はいまだにない。したがって、各々の抗酸化物質の抗酸化機能についてもはっきりしない。(br>  本研究では各種フラボノイドのHPLC分析法の開発と、実際に野菜からの抽出ならびに定量を目的として検討した。(近藤雅雄、2019年4月17日掲載、2006年5月12日発表)PDF:野菜中の各種フラボノイド分析法の開発

〔食育-25〕日本型食生活で食育推進

健康な身体への第一歩は、規則正しい生活、家族で食事をする、食欲がある、毎日朝食を食べているなど、生活自体の改善が必要です。こうした生活を送ることで、生活リズムが構築され、生体リズムが正常に働くことになります。 結論として、日本型食生活によって、健康への感謝と感謝する心を育む。食は国家の基盤であり、文化や教育の根幹であります。食育というのは、人間形成の 根幹であり、命を大切にする心をもった人を育てることが大事です。地球上で展開されるすべてのストーリーは、人の力によって起こります。この美しき地球を 次の世代に引き継ぐべく、高齢者を活用し、次世代を担う健康な人材を育ててく必要があります。食育のネットワークを広げていく。悪い遺伝子が良い遺伝子に 変わって、どんどん健康になっていく。食育もしかりです。 最後に、今回の介入試験の実施には、農林水産省の委託プロジェクト「食品の安全性及び機能性に関する総合研究」の指定を受けることで実施できましたこと に謝意を述べるとともに、介入試験にご協力いただいた狭山市老人会のみなさん、共同研究者の饗場直美先生をはじめ、多くのご協力いただいた方々に謝意を表 します。ご傾聴ありがとうございました。 nihongata-kenkozoushin

〔食育-25〕今回の介入試験から

実際に今回の介入試験の実施により、被験者の高齢者たちは食に対する意識、健康意識が高揚し、自ら健康クラブを結成して、さまざまな健康活動に取り組む ようになりました。その取り組みは、自身の健康問題にとどまらず、地域の各種催しに参加して子供たちへの食育にも積極的に関与するようになりました。この ように、高齢者の健康・食意識を啓蒙することで、地域における子供たちへの食育にその能力・役割を活用することが可能となりました。 konkai-kainyu-siken

〔食育-24〕高齢者の活用による食育推進

これまでお話しした内容をまとめますと、介入試験により、高齢者の健康意識を高揚させることによって、子供への食育に反映させることが可能であることが 証明されました。高齢者が子供の食育に直接かかわるという側面もありますが、それ以外に食の大切さ、選ぶ能力などを伝えることにより、間接的な食育が行わ れます。それが学校、地域、家庭における知育、徳育、体育につながっていき、感謝の心、平和、保全といったものが獲得されます。 健康であるためには、まず健康を意識することが重要です。健康な人とは、自分自身だけではなく、家族、友人、地域社会、国家、地球を愛する心を持った人 であり、そういう人をどんどん食育に取り込んでいく必要があります。特に、日本文化の保全・継承、日本人としての遺伝形質といったものを大切にするために は、高齢者の活用が重要と思います koreisha-katuyo-shokuiku

〔食育-23〕QOL向上へのアプローチ

介入試験の実施により、高齢者のQOLがどのように向上したかについて考察してみます。今回は、ピーマンに多く含まれるルテオリンという物質を中心に、 栄養面からアプローチしました。ピーマンという緑黄色野菜をいろいろな料理に使用し、実際に食べていただくことで、食生活に反映させたわけです。人の QOLを構成する要素として、栄養・食生活以外に、運動・身体活動・休養・心の健康がありますが、そのどこからアプローチしてもかまいません。今回のよう に食生活からアプローチすれば、健全な食生活により身体が軽くなり、運動したり、心が健康になっていろいろなコミュニケーションがはかられていきます。い ろいろな方面から効果的な評価やフィードバックが可能になり、QOLが向上していきます。 qol-kojo

〔食育-22〕食事記録表

試験前、試験中に作成してもらった食事記録表を調べてみると、介入前と介入中で緑黄色野菜の摂取量が変化しています。弁当1個に含まれるピーマンは約 120g、ピーマン約3個分ですが、これを100として比較すると、高齢者というのは以外に日常的に緑黄色野菜の摂取量が少ないことが分かります。ところ が介入試験の実施により野菜摂取に対する意識が高まり、自由摂取となっている朝食・夕食・日曜日の食事でも、野菜を積極的に食べるようになりました。また 果実類の摂取でも改善が見られ、食物繊維摂取量と食品群の相関もきれいに出ています。これは介入試験の実施により、高齢者に対し食育がなされたと考えてい い結果だと思います。 chousei-hyo

〔食育-21〕自覚症状の変化

ある意味、身体がきれいになったといえるでしょう。さらに自覚症状についてたずねたところ、「便通が良くなった」と答えた人が81.3%いました。たか がピーマン、されどピーマンといいましょうか、ピーマンの中身は空っぽですが、果肉には多くの栄養素が含まれており、食物繊維も豊富に含んでいますので、 その影響かと思われます。 jikaku-shojo-henka

〔食育-20〕介入前後における体内酸化物の尿中排泄

またT細胞に関係するリンパ球の幼若化(芽球化)能に関しても、介入後に増加しています。つまり2週間のピーマン摂取により、免疫能が高まっていることが 証明されました。体内の酸化物動態についても、介入前は体内に酸化物がたくさんありましたが、介入後は少なくなっています。 kainyugo-sankahaikibutu