アリシン

 ニンニクやネギ、ニラ特有のにおいの成分でアリル化合物、硫化アリルなどとも呼ばれている。ニンニク(英名はガーリック)は、ユリ科植物ネギ属の多年生草本で、学名をAllium (臭う)Salivumという。最近、欧米を中心に、ニンニクの科学的研究が盛んに進められ、発がん抑制効果、抗菌、抗ウイルス作用、血小板凝集能改善効果、高血圧の改善、免疫能増強、水虫の治療効果などが報告され、また、セレニウム含量が高く、強心作用があるといわれている。
 1990年にアメリカ国立がん研究所は、ニンニクは食物の中では最もがん予防が期待され、強い抗酸化能があると報告している。
 ニンニクは自然の状態では無臭であり、ニンニクを刻んだり、砕くと細胞が壊れ無臭のアリインと酵素アリナーゼが混ることによって、アリインが分解され、強い刺激臭のあるアリシンに変化する。
 このアリシンは不安定な化合物で、さらに二硫化ジアリルなどのニンニク特有の臭気を有する含硫化合物へと変化する。アリシンはビタミンB1と結合し、容易に安定な化合物アリチアミンになる。アリチアミンはビタミンB1分解酵素チアミナーゼの作用を受けず、ただちに腸管吸収し、体内でビタミンB1に戻る。
 オイル焼きしたニンニクには、その成分のS-アリルシステインが脳神経細胞を刺激し、がん予防作用もあるといわれている。
 ニンニクを食べた後、生のリンゴを食べると臭みを感じなくなる。最近は、無臭ニンニクが栽培され、また生のニンニクをバジルやローズマリーなどのハープエキスに涌ければ無臭になるといわれている。
 アリシンの主な作用は抗菌、抗がん、血圧低下、血行改善、ビタミンB1吸収促進(疲労回復)、胃液の分泌促進、たんぱく質の消化促進、代謝促進、解毒促進、食欲促進、冷性の改善、風邪の初期症状の改善、血小板凝集抑制、抗酸化、抗ストレス、肝細胞保護などの多彩な作用が知られている。
 しかし、生のニンニクには細胞毒性があるため、生や加熱したものでも大量に摂取すると、胃粘膜(胃炎)を荒らし、貧血(溶血性)、疲労の助長、アレルギーなどの症状が出ることがあるので、食べ過ぎには注意が必要である。(近藤雅雄)

アスパラギン酸

 アスパラガスから発見されたアミノ酸で、体内でアスパラギンとなり、主に代謝を活性化し、疲労回復効果があるといわれる。アスパラガスのほかに大豆やもやしなどの発芽しかけた豆類にも豊富に含まれている

アスタキサンチン

 βーカロチンなどと同じカロチノイドの一種で、βカロテンの環状構造物が酸化されてヒドロキシル基とケトンを持った化合物。キサントフィルの一種で、サケ、エビ、カニ、イクラ、オキアミ、サクラエビ、キンメダイや海藻などの魚介類に多く含まれる赤い色素である。カロチノイドの仲間の中では抗酸化力に極めて優れ、ビタミンEの約1000倍といわれる。同じカロチノイドの仲間で緑黄色野菜にはルテイン、リコペン、βカロテンが多い。これら抗酸化力の直接試験についての知見は乏しいが、アスタキサンチンはビタミンEの約1000倍の抗酸化力(サントリー基礎研究所)が示され、自然界で最強の抗酸化物質との指摘がある。
 主な効能は脂質の酸化防止、LDLコレステロールの低下、動脈硬化の予防・改善、糖尿病性白内障の進行抑制、ストレスなどによる皮膚の免疫機能低下の抑制、紫外線による皮膚の酸化障害防止、炎症の抑制、ビタミンAの生産、日周リズム(概日リズム)の調節などといわれている。最近、脳血管性認知症やアルツハイマー病の予防、糖尿病の合併症予防、白内障の予防、加齢性黄斑変性症の予防などにも効果が期待できると注目されている。(近藤雅雄)

ウコン

 ウコンは日本には平安時代中期に中国から入ってきた。秋ウコンは主に食材として、春ウコンの根茎は健胃薬や利胆剤などの生薬に使われてきた。
 ウコンはショウガの仲間で、分類はショウガ目ショウガ科ウコン属に属する多年草植物で、ウコン属のものが約50種類ある。中でも代表的なものはキョウオウ(春ウコン)、ウコン(秋ウコン)、ガジュツ(紫ウコン)の3種類で、ショウガと同様に根茎が利用されている。ウコンの英語名は「ターメリック」と呼ばれ、諸外国でも食品や染物等に使われていた。ウコンの黄色い色素は「クルクミン」という成分で、カレーや沢庵などの黄色に利用されている。クルクミンは肝臓の機能を高め、胆汁分泌作用をもつことが知られているが、人での臨床的な試験データは見当たらない。

1.春ウコン(キョウオウ)
 英語名:ワイルドターメリック 
 原産地:インド
 開花期:4月~6月、春に淡いピンクの花が咲く。
 成 分:クルクミンが約0.3%含まれる。精油分は3種類のウコンの中では一番多く、約6.0%含まれ、テルペン類はとしてターメロン、クルクモール、B-エレメン、カンファー、 カンフェン、その他フラボノイド、タンニン、ビタミンB、ビタミンCなどが含まれています。ミネラルは約6%で、カルシウム、カリウム、マグネシウム、リン、鉄などが含まれている。
 予防作用:肝臓病、糖尿病、高血圧、心臓病、狭心症、痔、慢性肝炎、胃潰瘍、黄疸ろく膜、十二指腸潰瘍、利尿促進、二日酔い、活性酸素除去、胃酸過多、むくみなどが知られている。

            2.秋ウコン(ウコン)
 英語名:ターメリック
 原産地:熱帯アジア・東南アジア
 開花期:8月~10月、夏から秋にかけて白い花が咲く。
 成 分:クルクミン約3.6%含まれ、精油分1~4%で、テルペン類はターメロン、デヒドロターメロン、ジンギベレン、シオネ-ルなどが、ミネラルは春ウコンと同じ成分が含まれているが0.7%と少ない。また、ビタミンB、ビタミンCなどが含まれる。
 主な効能:肝炎、胆道炎、胆石症、カタル性黄疸、健胃、動脈硬化、閉経痛、腹痛などが知られている。
 その他:クルクミンの含有量が多いためカレー、タクアンの着色のほか、染物などに用いられている。

3.紫ウコン(ガジュツ)
 英語名:ゼドアリー
 原産地:インド、マレーシア
 開花期:6月~8月初夏にピンクの花が咲く。
 成 分:精油分1~1.5%で、テルペン類はクルクメノ-ル、クルクモール、クルクマジオール、シネオール、カンファー、カンフェンで、その他サポニン、ビタミンB、ビタミンCなどが含まれている。ミネラルは春ウコンと同じ成分が含まれているが、1.3%と低い。
 主な効能:胃・十二指腸潰瘍、消化不良、腹痛、下痢、抗がん作用、高血圧、高血糖、活性酸素除去、花粉症、腎臓病、喘息、神経痛、ピロリ菌除去など。ガジュツはダイエット成分だけではなく昔から医者要らずと呼ばれるほど様々な働きが知られている。
 その他:クルクミンの含有率は0%で、春、秋ウコンに比べて苦味が強い。ガジュツはインド、中国南部、スリランカ、東インド諸島などで、また日本でも屋久島,奄美大島,沖縄などの一部で栽培されている。近藤雅雄)

蜂産品類

蜜蜂と自然が生み出したからだに優しい栄養バランスを含んだ花粉食品と各種フラボノイド化合物が濃縮されたプロポリス食品が認定されている。

(1)花粉食品
 蜜蜂のはたらきバチが食糧にするために集めた花粉で、栄養価が高い。成分としてはアミノ酸を約10%含むほかビタミンA、B群、C、E、ルチン、カリウム、リン、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅などの必須栄養素、各種酵素、抗菌酵素、成長促進因子など多数の成分を含んでいる。効用としては食欲増進、消化吸収、新陳代謝亢進により、成長促進、体力回復、強壮、精神安定、更年期障害の症状改善、前立腺疾患の症状改善など、虚弱体質、更年期を迎えた人、勢力が衰え始めた人、貧血気味の人に効果があるといわれている。

(2)プロポリス食品
 プロポリス(propolis)プロポリスの歴史は古く、古代エジプトでは腐敗、保存の効果目的で、ミイラを作る時の防腐剤として使用されていた。また、東欧諸国でも早くからニキビや肌荒れ防止、育毛剤など民間薬として使われてきた。 プロポリスは蜜蜂が樹木から集めた樹脂状のものに自らの唾液を混合させて作ったもので、強い殺菌、消毒作用がある。これを巣の入り口や、隙間の壁に塗りつけて、巣の修理補強や細菌繁殖、外敵の侵入を防ぐというような、幼虫を育てやすい環境を作るのに重要な働きをしている。そこで、プロポリスはギリシャ語でプロ(前を守る)とポリス(都市)を結合し命名された。すなわち、巣を守る(敵の侵入を防ぐ城壁)という意味である。これに対して、ローヤルゼリーや蜂蜜はもともと食べ物で、ミツバチのメスの幼虫にローヤルゼリーを与えると女王蜂になり、蜂蜜と花粉を与えると働き蜂となる。
 プロポリスの成分は樹脂、ミツロウ、精油、花粉、各種有機酸、脂肪酸、アミノ酸、ミネラル、ビタミン、酵素などが知られているが、薬効の中心を担うのはフラボノイド化合物で,その一部はビタミンPとも呼ばれている。この成分は産地により異なるが、化学成分のほとんどはフラボノイドである。フラボノイドの多くは植物中に配糖体として存在するが、プロポリスのものは、すべて加水分解され、糖の脱離したアグリコン(非糖部)として存在する。その他、ケルセチン、カフェイン酸フェネチルエステル、クロレデン系ジテルペン、アルテピリンCなどが薬効成分として注目されている。
 効用として免疫機能の強化、抗菌・抗ウイルス・抗炎症、抗がん・抗腫瘍、抗酸化、毒性軽減、細胞膜の若返り、打撲症・切り傷・しもやけ・あかぎれ・火傷・日焼け・角化症・いぼ・脱毛症、カンジダや白癬菌などの抗菌などに効果があるといわれ、また、不眠症の人、便秘の人、湿疹・アトピー性皮膚炎の人、花粉症・喘息などのアレルギー症状のある人、リウマチの人や、また、糖尿病、肝臓疾患、循環器疾患、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・大腸炎などの消化器疾患、がんなどにも効果があるといわれている。
 しかし、プロポリスにはブラジル産、オーストラリア産、中国産、日本産などが市販されており、産地によってハチが樹液(ユウーカリ、アレクリン、カバ、ポプラなど)を採取する植物が違うために薬効にも差があることが知られている。日本ではブラジル産のユーカリ系製品が多い。
 プロポリスは養蜂家の接触皮膚炎などを引き起こす原因でもあり、香料アレルギーなどを示す人の場合は、プロポリスでかぶれる可能性が高く、注意が必要である。サプリメントとして使用する場合は効果に製品差、個人差があるので摂取に際しては専門家のアドバイスを受けることが望ましい。(近藤雅雄)

発酵微生物類

酵母食品、乳酸菌(生菌)利用食品、植物発酵食品、植物エキス発酵飲料、納豆菌培養エキス食品にJHFAマークが表示されている。

(1)酵母食品 
 酵母(イースト)は単細胞の菌で、無酸素下で糖類をアルコールと炭酸ガスに分解する作用があり、ビール酵母、黒酵母、亜鉛酵母などがある。この作用を利用して酒類、味噌、醤油、パンなどが生産される。健康補助食品や医薬品、調味料などにはビール酵母やパン酵母を分解・抽出した酵母エキスが用いられており、その成分は約50%がアミノ酸バランスの優れたたんぱく質で、その他ビタミンB群、ミネラルを多く含む。また、多糖類のグルカンやマンナンなどの食物繊維、解毒や抗酸化作用のあるグルタチオン,核酸を含んでおり、肝臓・消化器系に対する作用、造血系に対する作用などがいわれている。

(2)植物発酵食品
 食べにくい・消化しにくいという食用植物の難点を、微生物発酵させることによって解決した新しいタイプの発酵食品であり、穀類(玄米、胚芽、ハトムギなど)、大豆、根菜類、きのこ、果実類、海藻類、ゴマ、ミツバチ花粉などが含まれている。これを麹菌、酵母、納豆菌、乳酸菌などで発酵させ、数年間をかけて熟成後、粉末、顆粒、ペーストなどにしたもので、多種類の栄養成分を含む。

油脂類

 油脂類としてはアボガド油、オリーブ油、玄米胚芽油、ゴマ油、小麦胚芽油、コメ油、シソ油、大豆油、月見草油、ヒマワリ油、ベニバナ油、亜麻仁油、クリルなど多数が知られている。健康補助食品に認定されているのは不飽和脂肪酸のγ-リノレン酸含有食品、イコサペンタエン酸(EPA)含有精製魚油食品およびドコサヘキサエン酸(DHA)含有精製魚油食品、大豆レシチン食品および月見草油である。
 必須脂肪酸としてアラキドン酸、リノール酸、リノレン酸が知られているが、EPAやDHAはα-リノレン酸から生産される。月見草油は古くから有用植物として知られ、γ-リノレン酸を豊富に含んでいる。近年、注目されている亜麻仁油にはα-リノレン酸がゴマの約100倍含まれている。また、オキアミから抽出されるクリルにはDHA、EPAを豊富に含み、さらに抗酸化成分のアスタキサンチンが含まれ脂質過酸化防止に有用である。
 不飽和脂肪酸にはn=3系(αリノレン酸、EPA, DHA)とn=6系(リノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸)との関係がある。n=3とn=6系の摂取比率には多くの議論がある。これらのうち、EPA(エチルエステル)は動脈硬化症(閉塞性)の医薬品(医療用)として認可されている(商品名エパデール)。

藻類

 藻類には紅藻(アサクサノリなど)、褐藻(昆布、若布など)、緑藻(クロレラ、青海苔など)、藍藻(スピルリナ、スイゼンジのりなど)などが知られているが、このうち、健康補助食品として認可されているのはたんぱく質、ビタミンB2、鉄分などが豊富で緑黄色野菜の多いクロレラとスピルリナである。これらの食品は健康食品の中でも総合的な栄養補給に優れた食品として注目されているが、その反面副作用も多く報告されている。

 クロレラには解毒作用、糖尿病の予防、抗がん作用、免疫力増強作用など多数の効用が報告されているが、副作用も多く報告されている。クロレラは単細胞で極めて増殖力が旺盛で、たんぱく質のほか炭水化物、脂肪、ビタミン(E、カロチン、B群、C)、ミネラル(鉄、マグネシウム、カルシウム、カリウム)、食物繊維、葉緑素などを豊富に含み、いわゆる完全食品としてNASA(アメリカ航空宇宙局)が宇宙食として試作、話題を呼んだことで有名である。このクロレラは、1890年オランダ人バイリングが発見し、ギリシャ語のクロロス(緑の)とラテン語のエラ(小さいもの)をあわせて命名された。

 スピルリナは細胞の形がスパイラル(らせん状)をしており、緑黄色野菜の代替として、糖尿病、肝炎、貧血症、高脂質血症、慢性膵炎、胃腸炎、解毒作用など多くの効果が報告され、メキシコでは1937年にスピルリナを正式な食品として認可している。

きのこ類

 きのこ類にはたんぱく質、ビタミンDやB2、ミネラル類、βーグルカンなどの多糖類を多く含んでおり、シイタケ食品やマンネンタケ(霊芝)食品が健康補助食品としてJHFAマーク表示されている。
 国内には4~5千種類のきのこが自生しているが、このうち食用になるのは約百種類で、毒キノコ類など食用にならない方が圧倒的に多い。通常市販されているものにはマツタケ、シイタケ、マイタケ、ブナシメジ、ナメコ、エノキダケ、メシマコブなどが有名で、多くの効用が報告されている。
 きのこに多く含まれているβグルカンには腸の環境を整え、免疫力を活性化し、がんを防ぐ作用があることが動物実験で確認されている。さらに便秘の予防や血中コレステロール減少作用、骨粗鬆症予防効果などが知られている。
 最近、ヤマブシイタケに神経の成長を促す活性物質が静岡大学の河岸洋和教授によって発見され、アルツハイマーなどの中枢神経系の病気との関連が指摘され、将来的には新薬の開発につながる可能性も秘めているといわれている。
 きのこは植物ではなく、菌類に分類される生物で、きのこ特有のうまみはグアニル酸という成分による。これは核酸の構成成分であり、この量が多いか、少ないかによって味が大きく変わる。きのこに昆布などに含まれるうまみの成分グルタミン酸と一緒になるとうまみが数十倍に上昇するといわれる。

(1)シイタケ食品
 日本でも最も多く食用されているのがシイタケで、糖質が約60%を占め、残り20%がたんぱく質、10%が食物繊維、5%がミネラル、3%が脂質、残りがビタミン類で、とくにDの前駆体であるエルゴステロールが多いのが特徴である。サプレメント食品にはシイタケ自体や子実体に育つ前の菌子体から抽出したエキスが用いられている。
 この菌子体には抗がん作用のあるβグルカンが含まれ、白血球の免疫機能に関与するマクロファージやT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞の機能を増強させることが動物実験で確認されていることから、免疫機能を高めることによってがんを予防する効果があるといわれている。また、シイタケの核酸成分であるエリタデニン、デオキシレンチナシン、5’-AMPには血小板の凝集を防ぐ抗血栓作用があり、エリタデニンには体内のコレステロールの排出と代謝を促進する作用がある。また、動脈硬化、高血圧、糖尿病などの予防にも関与するといわれている。

(2)マンネンタケ食品
 サルノコシカケ科に属する担子菌の一つであり、色の違いによって赤芝、白芝、黄芝など、形の違いによって鹿角芝、牛角芝などと呼ばれている。また、霊妙なる薬効から霊芝とも呼ばれている。
 薬効があるのは子実体(かさの部分)で、これを煎じたり、乾燥させて粉末や粒状、カプセルにしたサプレメントが商品化され、制がん作用、頭痛、不眠症、神経衰弱、白内障、口内炎、気管支炎、胃炎、動脈硬化、婦人科疾患、腰痛など多彩な症状に効果があるといわれている。

(3)アガリクス
 アガリクス茸(和名 かわりはらたけ)の原種は、ブラジル東南部サンパウロ郊外のピエダーテの山中に自生するキノコで、「アガリクス」と名前がつくキノコは32種類存在している。
 現地では「太陽のキノコ」「神々のキノコ」「神秘のキノコ」などと呼ばれ、古くから珍重されてきた。現在市場に出ているものは、人工栽培のものが多く、ピエダ-テの天然アガリクスが日本の市場にでることは、まずありえないといわれているが、産地による大きな違いはない。
 アガリクス茸は、1965年ペンシルバニア州立大学教授のシンデン博士とランバート研究所のランバート博士の二人が制ガン作用等の研究発表を行い、その制がん作用が注目されるようになった。

アガリクス茸(学名:アガリクス・ブラゼイ・ムリル)
ⅰ)成分
   多糖類:β-(1,3)-D-グルカン・β-(1,6)-D-グルカン・キシログルカン・ヘテログルカン蛋白質複合体・キチン質・マンナン・マンノースなど
 アミノ酸:イソロイシン・ロイシン・メチオニン・フェニルアラニン・リジン・バリン・スレオニン・トリプトファン・アスパラギン酸・グルタミン酸・アラニン・グリシン・セリン・プロリン・システイン・チロシンなど
 酵素:アスパラキナーゼ・アミラーゼ・カタラーゼ・グルコシターゼ・スクラーゼ・セルラーゼ・ぺクターゼ・ペプシン・ぺプシターゼなど
 その他:核酸

ⅱ)効能
 最も注目されているのは、アガリクスに含まれるβ-1,3/1,6-Dグルカン(シイタケやマイタケなどに含まれるブドウ糖の独特の結合物)の免疫活性作用である。これは、マクロファージ、顆粒細胞、NK細胞といった特定の白血球細胞の表面にある受容体分子と一致するため、これらの細胞が刺激されて微生物を殺す物質を作り、あらゆる体内の異細胞を分解し、さらに活性化されると白血球を増やすようにB細胞やT細胞に伝えるサイトカインというシグナル分子をつくる。そのため、抗腫瘍作用、制がん作用、がん予防、血糖低下、動脈硬化改善、アレルギー、リウマチ、花粉症予防などの作用があることが知られている。
 そのほかにアガルクスには血圧と動脈硬化に関する作用、肝機能に関する作用、腎機能に関する作用、血液に関する作用、消化機能に関する作用、脳神経系機能に関する作用、成長と発育に関する作用、皮膚や毛髪に関する作用など多くの効用が報告されているが同時に副作用も報告されている。(近藤雅雄)

イチョウ葉エキス食品

 イチョウは、およそ1億5千万年前から地球上に存在しており、「生きた化石」と呼ばれている。何千年も生き長らえる生命力の強い植物で、原爆で被災した広島で最初に芽吹いたのがイチョウであったといわれている。
 イチョウ葉エキスにはケルセチン、ケンフェロール、イソラムネチンの配糖体、カテキンなど約20種類以上のフラボノイドのほかビロバライド、クエルシトリン、テポニン、シマリン、他の植物には含まれていないギンコライド(A,B,C,J)などのテルペン類を含んでおり、血小板凝固作用、アレルギー因子の作用抑制,血液の粘性改善し、血液をサラサラにする、血流障害除去、活性酸素の発生抑制、記憶力改善など多彩な作用が知られている。
 副作用としては、一過性の頭痛や胃腸の不快感、アレルギー性の皮診が知られている。アレルギーについてはイチョウの葉に含まれているギンコール酸にアレルギー作用があるため、健康補助食品としてはギンコール酸を極力除去 (5ppm以下)した原料が用いられている。抗凝固剤を使用している場合は血管拡張作用などが強く現れることがあるので、使用しないほうが良い。

 イチョウは古い進化の歴史を持ち、最盛期のジュラ紀中頃(約2億年前)には地球全土で大繁盛していたことがわかっているが,その後、地殻変動や氷河期のたびに絶滅していき、最後にわずか1種類だけが中国南西部の温暖地方に生き残ったのが現存のイチョウである。日本へは12~13世紀ごろに人によって運ばれたと考えられている。
 ヨーロッパ諸国には1730年に長崎の出島に滞在するドイツ人医師によって伝わり、現在ではドイツやフランスでイチョウの葉を乾燥させて成分を抽出したイチョウ葉エキスが脳血管障害や脳機能障害に対する予防・改善効果があることから医薬品として認可されている。日本では高齢化が進む中でボケ防止、生活習慣病予防などにより逆輸入された食品である。(近藤雅雄)

アロエベラ食品

 アロエはアラビア語の「苦み」を意味する Alloch に由来し、有史以前から世界最古の下剤といわれ、食品および香粧品としても広く利用されてきた。ブッシュマンも古くから傷の手当てに用いていた壁画が残っている。古代エジプトの医学を知る上で重要な資料である『医学パピルス』には、マダガスカル島のアロエが苦味健胃薬として用いられていたことが記載されている。

 アロエはアフリカ原産のユリ科植物で、常緑多肉質の葉をもつ多年性草本。最近は、ユリ科からアロエ科アロエ属に分類されている。アロエ属植物はサハラ砂漠以南の岩の多い草地に自生し約350種が知られており、園芸品種を含めると500種以上の品種があるといわれる。代表的のものは日本の太平洋側に野生で生えている茎のあるキダチアロエと西インド諸島のバルバドスを原産地とし、食用向けにアメリカ・テキサス州で大量栽培されているアロエベラで、飲用や食用、外用に使われている。
 アロエの代表的な薬効成分のほとんどは葉皮に含まれ、真中の半透明な部分は抗炎症、保湿の成分を含むが、99.5%が水分である。
 日本では、薬事法上、アロエ薬理成分アロインが下剤として医薬品に登録されているため、アロエベラ、ケープアロエについては、アロインの含まれる葉皮を取り除かないと食品としては使えないが、キダチアロエは特別な場合を除き非医薬品に分類されているので、食品などにも加工されている。

ⅰ)成分
 アロエは多肉植物で、アロイン、アロエウルシン、アロエエモジン、アロエシン、アロエソンエモジン、アロエチン、アロエニン、アロミチン、アロエマンナン、サポニン、アロクチン、アルボランA・B、ホモナタロイン、ベータババロイン、食物繊維、蛋白質ビタミンA、B、C、Eを含み、多肉部分はムコ多糖類とミネラルを含んでいる。

ⅱ)効能
(a) 内服の場合
 便秘、胃、十二指腸潰瘍、糖尿病、高血圧、低血圧、肝臓病、胆石、二日酔い、肩こり、冷え性、喘息、更年期傷害、頭痛、気管支炎、鼻炎、膀胱炎などの抗炎症に効果があるとされている。

(b) 外用の場合
 打ち身、かぶれ、湿疹、ひび、あかぎれ、痔、やけど、すり傷、切り傷、虫刺され、うおのめ、いぼ、歯痛、歯槽膿漏など。(近藤雅雄)