こころとからだの健康(18)幸せホルモン・愛情ホルモン「オキシトシン」の多様性

 幸せホルモン、愛情ホルモンとして有名なオキシトシン(Oxytocin, OXT)は、視床下部の室傍核(PVN)と視索上核(SON)の神経細胞で生産され、脳下垂体の後葉から血管内分泌される9個のアミノ酸(Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly)からなるペプチドホルモンです。1906年に英国の研究者ヘンリー・ハレット・デールによって発見され、出産時に子宮を収縮させる作用があることから「早い」と「陣痛」(oxy「早い」、tocin「出産」)を意味するギリシャ語として命名され、1952年に分子構造が決定されました。このホルモンの半減期(寿命)は約3分と短い。

 オキシトシンの分泌調節には未だに不明な点が多いが、エストロゲンによって分泌が増加し、オキシトシン受容体の発現を脳内で増加させる。これまでに、オキシトシンは分娩時に子宮平滑筋を収縮させ陣痛を促進させる作用と授乳による乳頭への機械的刺激に応答して乳汁射出を促す作用があることからり、出産と新生児の栄養補給に不可欠なホルモンとして広く知られてきた。

 一方、男性にもオキシトシンが存在することが分かっていましたが、その作用は長い間不明でした。それが、近年の分子生物学的手法によって、男女共にオキシトシンは大脳皮質前頭前野、海馬、扁桃体などに作用し、抗ストレス、摂食抑制、うつ病の改善、鎮痛、鎮静、催眠、感情、記憶、学習能力の向上、認知症予防など多様な作用が相次いで見出されています。そして、中枢神経のほか、子宮、乳腺、皮膚、腎臓、心臓、胸腺、膵臓、脂肪組織でも発現が確認され、その作用が注目されています。

 本稿では「オキシトシン」検索を行った結果、Google 166万件、Yahoo 201万件ヒット (2019年8月20日現在) し、この中からオキシトシン作用の多様性についてまとめました。
(近藤雅雄:2019年9月1日発表、2020年6月14日掲載)

以下のPDFに内容を示しました。PDF:オキシトシン縦書き    
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