[食育-10] 日本型食生活の解析(10-3)

神奈川県某町で、抗酸化ミネラル量の血中濃度を計測しました。調査した170人はいずれも疾病を持たない健常者ですが、加齢にしたがって抗酸化元素である 銅、クロム、マンガン、セレン、亜鉛が減少しています。特に抗酸化元素の減少と、頭痛、めまい、手足のしびれといった身体の変調に関する自覚症状との間に 有意差をもって逆相関がみられます。加齢により抗酸化元素量が減少し、抗酸化酵素活性も減少することが、自覚症状と関連しているのではないかと推測できま す。こうしたミネラル類の不足に対しては、魚貝類、海藻類、野菜、果物を十分に摂取することが必要になります。 抗酸化ミネラル類の間には相互作用があり、その摂取は難しい面があります。肝臓中の元素相関を例に、体内のミネラルバランスについて見てみました。たと えばセレンが不足している人は、身体の変調についてさまざまな自覚症状を持っていますが、セレンが足りなくなると、銅や亜鉛も不足してきます。先ほど魚介 類にメチル水銀が蓄積しているので妊婦は摂取を控えるように基準が出されているという話がありましたが、マグロの場合セレンを多く含んでおり、メチル水銀 との間に相殺効果があります。ところがキンメダイにはセレンが少ないそうですので、マグロ以上に危険性が高い可能性があります。 以上、日本型食生活の解析を行った結果、日本人では加齢に伴って豆類、果実類、きのこ類の摂取が増えていることが分かりました。また図には示しませんで したが、海藻類の摂取量も同様に増加していることが分かっています。こうした食品には、抗酸化に関係する栄養素を多く含んでいます。また加齢により、蛋白 源が肉類から魚介類へ移行しており、このことが日本人の長寿に大きく関係しているのではないかと推測できます。一方、加齢にしたがって抗酸化ミネラル量は 減少していますが、野菜などミネラル分を多く含む食品の摂取量を増やせば、もっと健康になり、長生きできるのではないかと推測できます。 日本人では、年齢に応じて食べ物の嗜好が変化することが分かりましたが、今の子供たちが同じように将来嗜好を変化させるとは限りません。子供のころの記 憶がずっと残っており、味覚というのは歳をとっても子供のころに戻るといわれます。その意味で、子供たちに対する食育は、緊急を要する課題といえるでしょ う。
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