苦瓜(ゴーヤ(沖縄))

 ウリ科ツルレイシ属蔓性1年生草本で、果実に特有の苦みがあり、食用としての風味となっている。熱帯アジアが原産地で、中国や東南アジアでは重要な野菜となっている。ヨーロッパでは観賞用として栽培されている。日本では南西諸島と南九州で多く栽培されてきた。比較的害虫に強く、日照、気温と十分な水さえあれば、肥料や農薬はほとんど使わなくても収穫が得られるため、全国的な広がりを見せ、家庭菜園でも人気が高い。 沖縄では古くからゴーヤ(苦いうりの意味)と呼ばれ、夏の重要な野菜である。 1.主な成分と効果  果皮を中心に、ビタミンC、ビタミンB1、B2、葉酸、カリウム、カルシウム、鉄、食物繊維が豊富。種子には共役リノレン酸を含む。 苦み成分はチャランチンとモモルデシン、コロコリン酸であり、チャランチンとコロコリン酸は植物インスリンともいわれ、血糖値の正常化に働き、糖尿病の血糖値改善(食後高血糖改善)に役立つ。動物およびヒトで、肝臓や筋肉へのブドウ糖の取り込みを促進し、グリコーゲンの合成を促す。  科学的根拠としては、糖尿病患者に苦瓜を投与すると空腹時血糖や食後高血糖が改善されたとする報告は数多くある。また、動物実験において、糖尿病改善効果、抗ウイルス作用、抗炎症作用、コレステロール低下作用、抗癌作用なども報告されている。 1)チャランチン  脂溶性の物質であり、膵ランゲルハンス島のβ細胞に働きかけてインスリンの分泌を促し、血糖低下作用が知られている。血糖値が下がった場合は、α細胞からグルカゴンを分泌し血糖値を上昇させ血糖値を安定させるので低血糖にならない。すなわち、インスリンとグルカゴンの分必を促進し、血糖値を調節する作用がある。 2)モモルデシン  抗酸化作用をもつサポニン類の一種で、食物繊維、苦味成分の1つ。食物繊維は腸内の善玉菌の増殖を促進し、糞便量を増やし、腸内環境を整える。サポニンはコレステロールや老廃物を排出し、動脈硬化、糖尿病、がんの予防、胆汁酸の分泌や産生を促してコレステロール値を低下させる。血糖値や血圧を下げ、食欲増進作用、整腸作用などがある。 3)ビタミンC  抗酸化作用があり、苦瓜100g中にビタミンCが76mg含まれ、加熱に強い。 4)共役リノレン酸は脂肪の吸収や蓄積を抑制する。 5)その他  ビタミンBはエネルギー(ATP:アデノシン三リン酸)の生産に不可欠であり、疲労回復、皮膚や粘膜を正常化に役立つ。鉄分と葉酸は貧血を予防する。カリウムは腎臓でナトリウムの排泄に働く。 2.注意事項  サプリメントとして摂取する場合、健康被害や副作用は知られていないが血糖低下作用があるため、効果の現れやすい子どもや高齢者では注意が必要。また、妊娠中や糖尿病患者の場合は医師に相談する。腹痛や下痢といった消化器症状、頭痛などが現れた場合は服用を見合わせる。 (近藤雅雄:平成27年8月11日掲載)  
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