油脂の健康効果~話題の「こめ油」「クリル」「亜麻仁油」の比較

1.こめ油
原料:米糠
成分:米糠に特有の成分γ‐オリザノール(オリザノールA、オリザノールC)とオレイン酸、ビタミンE(α‐トコフェロール、α‐トコトリエノール)、ビタミンK、鉄などを含む。γオリザノールとはフェルラ酸とステロールとが縮合したエステル類の総称。
効果:以下のように多様な効果が知られている。
①自律神経調節作用:自律神経失調症の緩和に有効、自律神経のバランスを整え、肩こり、眼精疲労、腰痛、更年期に起こりやすい不定愁訴などの症状を改善する。
②皮膚の健康維持作用:皮膚の血行をよくするとともに、皮脂腺の機能を高め乾燥性の皮膚疾患を改善する。老化した角質を取り除き、皮膚の表面を膜で保護する。また、シミの原因となるメラニン色素の増殖を抑え、紫外線吸収作用があり、皮膚の酸化および老化を防ぐ。皮膚の血管を拡張し、血液循環を促進する。
③血中脂質改善効果:脂質代謝に関与し、コレステロールを低下させる。また、コレステロールの吸収・合成を抑制する効果が知られ、高コレステロール血症や動脈硬化症など脂質異常症の予防・治療薬に多く利用されている。
④生殖機能改善作用:無月経、卵巣機能障害、性腺刺激作用などの効果。
⑤抗酸化作用:ポリフェノール成分で、ビタミンEとともに抗酸化作用が知られ、脂質過酸化防止、リノール酸の体内作用の強化、ホルモンバランスの改善、脳や皮膚の老化防止などが知られている。
⑥その他、抗ストレス作用、成長促進やがん治療効果、心身症改善効果などが知られ、医薬品および化粧品としても利用されている。医薬品としての副作用は発疹・かゆみなどのアレルギー症状、眠気•嘔吐、吐き気•下痢、脱力感、倦怠感、また、0.1%未満であるが、めまいやふらつき、頭痛、便秘、食欲不振、腹痛、口内炎、動悸、むくみ、などの症状が報告されている。

2.クリル
原料:オキアミ類
成分:EPAとDHA
効果:オキアミから抽出されるクリルにはDHA、EPAを豊富に含む。DHAは脳内に存在する主要な多価不飽和脂肪酸であり、脳の発達と機能のために重要である。脳のシナプスに豊富に含まれ、ニューロンでのシグナル伝達に関与していることが示唆されている。記憶の要である大脳辺縁系の海馬にも多く含まれる。脳の代謝・血流改善作用として、①血管壁や赤血球の細胞膜を柔らかくする。②神経伝達物質の産生量を増やすことが知られている。また、ストレス耐性を強化する働きもあるという。注意欠陥多動性障害 (ADHD)の子どもに症状のわずかな改善が認められたという報告がある。 さらに抗酸化成分のアスタキサンチンが含まれ脂質過酸化防止に有用である。

アスタキサンチン
ビタミンEの約1000倍の抗酸化力とされ、自然界で最強の抗酸化物質との指摘がある。
主な効能は脂質の酸化防止、LDLコレステロールの低下、動脈硬化の予防・改善、糖尿病性白内障の進行抑制、ストレスなどによる皮膚の免疫能低下の抑制、紫外線による皮膚の酸化防止、炎症抑制、ビタミンAの生産、概日リズムの調節などが言われている。最近、脳血管性認知症やアルツハイマー病、糖尿病の合併症、白内障、加齢性黄斑変性症などの予防効果が期待できると注目されている。

3.亜麻仁油
原料:亜麻仁種子
成分:αリノレン酸
効果:オメガ3系脂肪酸の一種であるαリノレン酸は、体内でエイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)に変換される。亜麻仁油にはα-リノレン酸がゴマの約100倍含まれ、脂質異常症患者の血中中性脂肪と超低比重リポタンパク質(VLDL)値を全般に低下させると言われている。
効果としては学習能力や記憶力の向上、認知症予防、アレルギー症状の緩和、血流改善、エストロゲン作用、便秘解消、高血圧、動脈硬化、心血管疾患、骨粗鬆症、糖尿病、がんなどの生活習慣病予防など多様な効果があると言われている。ドイツでは慢性の便秘、緩下剤誘発性結腸障害、過敏性腸症候群、腸炎、憩室炎での使用を承認している。 (参考文献:Wikipediaなど)(著者:近藤雅雄、平成26年11月23日)

ALAを合成する酵素の新しい測定とその酵素のミトコンドリア内での様態

 ALAを生産する酵素、5-Aminolevulinate synthase (ALAS)活性の測定はsuccinyl-CoAとglycineを基質として測定されるのが世界的に広く知られています。このALASはヘム合成(ポルフィリン代謝)の律速酵素として最も重要な酵素です。肝性ポルフィリン症などのヘム合成系の酵素障害があるとALAS活性が増量してALAの生産を高めることが指摘され、ポルフィリン代謝異常で最も中心的役割を果たす酵素です。しかしながら、実際に肝臓のポルフィリン代謝障害を起こす晩発性皮膚ポルフィリン症の肝ALAS活性は増加しないことが広く知られ、この矛盾を説明することがこれまでにできませんでした。
 そこで、肝性ポルフィリン症患者の生検肝微量組織からα-ketoglutarateとglycineを基質としてALAS活性を測定した結果、succinyl-CoAとglycineを基質とした値よりもポルフィリン代謝をより反映していることが今回の実験によってわかりました。すなわち、肝ALAS活性の測定にはこれまでの方法と異なって、α-ketoglutarateとglycineを基質として測定した値の方がより肝性ポルフィリン症の病態を反映していることが示唆されると同時に肝ALAS酵素の作用機序がほぼ分かりかけてきました。
 その内容は2015年9月の学術雑誌ALA-Porphyrin Scienceに掲載されました。以下のpdfで参照ください。(近藤雅雄:平成27年11月10日掲載) 肝性ポルフィリン症と肝ALAS

成長・発達、加齢の栄養・生理学

 ヒトの生涯の各時期における生理学的特徴、頻度の高い疾患を把握し、栄養学的な諸問題を理解する。小児期では著しい成長・発達は生涯栄養学の基礎的問題として重要である。成人期は生活習慣が変動する時期であり、生活習慣病発症の予防として栄養・食生活管理が重要である。高齢期については、老化のメカニズムを理解し、高齢期の生理的・心理的変化からさまざまな体調の変動が起こる時期であり、それぞれの体調に合った最適な栄養ケアができるようにする。
 本稿では、ヒトの生涯における栄養と生理について下記の項目にしたがって概説したので、pdfを参照されたい。
Ⅰ.成長、発達、加齢の概念
 1.成長  2.発達  3.加齢
Ⅱ.成長・発達に伴う身体的・精神的変化と栄養
 1.身長、体重、体組成  2.消化・吸収  3.代謝  4.運動、知能、言語発達、精神発達、社会性  5.食生活、栄養状態
Ⅲ.加齢に伴う身体的・精神的変化と栄養
 1.臓器の構造と機能の変化  2.分子レベルの老化(テロメア、活性酸素による障害)  3.高齢者における疾患(病態、症候、治療)  4.高齢者の生理的特徴(予備力、適応能力)  5.高齢者の心理的特徴  6.高齢者における食事摂取の特徴  7.栄養状態の変化
(近藤雅雄:平成27年11月6日執筆掲載) 成長、発達、加齢の栄養・生理学27.11