有害元素1.ベリリウム(Be)

 ベリリウムは工業用酸化ベリリウム(BeO)の製造、合金の製造に用いられ、これら作業に従事している場合は年に2回の健康診断が義務づけられている。
 ベリリウムの粉塵、フューム等は、肺から吸収されるものがほとんどで、消化器からの吸収率は低い。肺内から侵入したベリリウムの大部分は、血液中を移動し、骨や軟部組織に蓄積する。また、肺組織内、特に肺リンパ節内にも長期間残留する。体内に侵入したベリリウムの殆どは糞中へ排泄される。

1.中毒の発症機序
 生体内の重要な酵素類、特にアルカリ・ホスファターゼの阻害により、リン酸塩の代謝に影響を与える。また、核酸代謝系の酵素障害によって細胞増殖と複製を阻害する。

2.中毒症状
 ベリリウム症、ベリリウム病などと呼ばれる肺症状を伴う全身性の肉芽種性疾患を発症する場合があるが、ベリリウムに対する感受性には、個人差が大きい。

1)急性ベリリウム症
 急性中毒としては接触性皮膚炎および皮膚潰瘍、眼結膜炎、咽頭炎、気管支炎、肺炎などの障害が起こる。呼吸器障害(咳、痰)、労作時の疲れ、胸部痛と、食欲不振、全身倦怠感。症状が軽い場合には、風邪症状が出現する。また、可溶性ベリリウム化合物が皮膚に付着すると、接触性皮膚炎が、不溶性ベリリウム化合物が創傷面に付着すると、潰瘍や皮下肉芽腫が発症する。

2)慢性ベリリウム症
 慢性中毒としては肺肉芽腫性変化による慢性ベリリウム肺、皮下肉芽腫が起こる。呼吸器障害が主で、徐呼吸、慢性的な咳、発熱、血痰、胸と関節の痛み、心拍数の上昇、食欲減退、体重減少、疲労感、全身倦怠、全身衰弱などの症状が出現する。末期にはチアノーゼや心不全を伴う。
 心機能不全を伴う右心房の拡張、肝腫、脾腫、湾曲指肝機能障害、腎臓結石、骨硬化症、肉芽腫を伴う慢性肺炎、肺がんも認められている。(ただし、ベリリウムによる肺がんの誘発は動物腫に対して特異性が高く、ウサギ、ハムスター、モルモットなどの実験動物では、腫瘍は認められていない)
 胸部X線写真像上にベリリウム肺として知られる特異な変化が出現する。
(近藤雅雄:平成27年8月11日掲載)
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