こころとからだの健康(8)肥満対策

 肥満とは単に体重が多いということではなく、脂肪量(中性脂肪)が過剰に蓄積した状態をいい、脂肪が増量している組織および場所(分布)によって皮下脂肪型(下半身型、洋梨型)肥満と内臓脂肪型(上半身型、りんご型)肥満に分類されます。生活習慣病との関わりがあるのは内臓脂肪型肥満です。
 肥満発症の原因は①食べ過ぎ、②誤った食事パターン、③運動不足、④遺伝、⑤熱産生機能障害などが挙げられますが、生活習慣による影響が多いことが分かっています。

1.肥満のメカニズム
 肥満のメカニズムの研究は1994~1995年に肥満の遺伝子およびその受容体遺伝子などが相次いで発見され、漸く肥満のメカニズムの概要がわかってきました。ヒトの体重は身長に対して設定されたように遺伝子によって食欲や消費エネルギーが調節されています。その調節には主に①レプチン(白色脂肪細胞から内分泌される蛋白質で摂食中枢を抑制する。すなわち、もう食べなくても良いという信号を脳に伝える。レプチンとはギリシャ語で“やせ”の意味です)、②レプチン受容体(視床下部の摂食中枢に存在する)、③β3アドレナリン受容体(エネルギー倹約遺伝子)、④脱共役蛋白(UCPファミリー;ミトコンドリア内膜に局在する蛋白で、ATP生産を伴わずに熱産生を行う)などが関与し、これらの遺伝子の異常と様々な環境要因が肥満を発症させる原因となります(肥満に関連した遺伝子は約70種類存在するという)。
 近年、急速に肥満者が増加(とくに小児の肥満が多い)し、社会問題となっていますが、その原因は過食や運動不足などが考えられます。

2.小児肥満の対策
 小児肥満の問題点として、①成人肥満への移行、②生活習慣病の発現、③いじめの対象となるなどがありますが、これらの対策として、こころの教育が最も大切です。小児肥満は、①家族、学校での教育(共育)、育児(育自)、②食生活改善、③糖質、脂質の摂取量を減らす、④積極的に運動を奨励する、⑤ダイエットの自重などによって予防することができます。

3.食事と健康
 こころとからだの健康を堅持していくために最も重要なのが食です、日頃から食に対する考え、興味を持ち、栄養についての正しい知識を身に付けたいものです。
 栄養は生命を維持するために必須な行為であり、その目的は生体機能の調節、生体組織の修復・再生、体温生産およびエネルギーの獲得などです。栄養素の摂取が十分であるかないかは、年齢に適した発育(身長・体重)、日常作業に十分見合った体力(作業能力)、病気に対しての抵抗力(免疫力)、などによって栄養状態が判定されます。
 これらの栄養状態が適正であるためには栄養素の過不足がないようにバランスよく食事摂取することが重要です。特に、食事は日常の生活習慣に欠かせない現象であり、生活習慣と深くかかわる病気の予防や改善のためには、毎日の食生活、食事に気を配ることが重要です。

4.肥満を誘発する原因が氾濫
 近年、24時間営業のコンビニエンスストアで外国の食材、加工食品、健康食品が氾濫し、気安く購入できることから需要が急増しています。しかし、これらの食品には一時のファッション的な、科学的裏づけのないものが多く出回っています。また、外食産業が発展し、今や欧米と同じように日本人の食生活並びに健康管理は個人に委ねる時代となりましたが、その結果、日本人の肥満人口が増加し、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病が蔓延することとなりました。

5.太らないための10か条
 肥満は①生活習慣病に直結する、②免疫力が低下する、③動きが鈍くなる、④息切れがするようになる、⑤やたらに汗をかく、⑥寿命が短くなる等、デメリットが多く、メリットがあまりありません。私も、青年期に56㎏であった体重が、中年期には過食と運動不足によって70kgと過体重となり、様々な生活習慣病を発症すると共に、先に挙げたデメリットが出てきました。そこで、健康について意識するようになり、これまでの生活習慣、特に食に対する意識を変え、日本人本来の日本型食生活に変えてから体重が減少し、現在は青年期の56㎏に戻すことに成功すると同時に生活習慣病もなくなりました。以下に、私の経験に基づき作成した太らないための条件を挙げます。

太らないための10か条
1)自分の体質を知る
2)1日3食、時間をかけて楽しくいただく
3)食塩、脂肪類は控えめに
4)刺激物、甘物、アルコール類などの嗜好品は控えめに
5)毎日野菜、海産物を多く食べる
6)寝る2~3時間前までに食事を終える
7)1日30分以上の運動(有酸素運動、徒歩1万歩)を行う
8)からだをこまめに動かす
9)体重計に乗る習慣をつける
10)入浴中は腹式呼吸を行い、ストレス解消を図る

6.健康度に対する健康指数
 標準体重は身長(m)×身長(m)×22によって、また、肥満度(BMI:体格指数)は体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)によって求められます。評価は、BMI 18.5~25が正常で、18.5以下がやせ、25以上が肥満です。やせすぎの場合も病気の罹患率が高く、BMI=22が最も病気の罹患率が低いと言われています。
(近藤雅雄:平成27年8月30日掲載)
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