こころとからだの健康(4)男女の寿命差

 介護の必要がなく健康に生活できる期間を「健康寿命」と言いますが、平成25年(2013年)の日本人の健康寿命は男性71.19歳(同年の平均寿命は80.21歳)、女性74.21歳(同86.61歳)でした。平均寿命からすると女性の方が男性よりも約6年長く、健康寿命は女性の方が約3年長い。しかし、介護を要する期間は男性よりも女性の方が約3年長いという結果でした。
 健康寿命の延伸とQOL(生活の質)の向上を図るためには、健康増進の3原則である栄養、運動、休養を生活習慣にうまく取り入れることが大切です。しかし、仕事を抱えた男性はなかなか困難で、惰性になりがちですが、健康に対する意識改革が必要です。一方、女性は介護を必要とする期間が長いことから、老後自立できるような工夫を早期に講じることです。

1.男女の寿命の違い
 男女の違いはY染色体の有無で決まります。性を決定する遺伝子であるY染色体上のSRY(Sex-determining region on the Y chromosome)は男性ホルモンであるテストステロンを生産し、男性生殖器への分化や男性の性格形成を促進すると言われています。例えば、染色体(XX)は女性でありながら性格が男性の場合は男性ホルモンが胎児期の脳に入った場合に起こり、反対に染色体(XY)は男性なのに男性ホルモンが脳に入る量が少ない場合は女性の性格になるといった、いわゆる性同一性障害となることが知られています。
 さて、世界中の国において男性の方が短命です。その理由は、①男性は免疫の中枢である胸腺(免疫器官)の萎縮が早い、②筋肉量が多いため基礎代謝量が高い、③染色体の違い(Y染色体は傷つくと回復しない)等が挙げられます。男性は、一般的に生活のリズムが不規則、仕事によるストレス、不適切な食生活(偏食が多い)などによる生体リズムの乱れや筋肉をたくさん持つことから、女性に比して酸素の摂取量が多く、それだけ多くの活性酸素を発生する。これが酸化ストレスとなって免疫力の低下、病気や孤独に弱い、デリケートである等の理由によって短命となると言えます。したがって、男性は日常的にビタミンA、C、Eやポリフェノールといった抗酸化・免疫増強物質を摂取し、ストレスとうまく付き合う生活習慣を身に付ける等、酸化ストレスからの防御が必要です。

2.夫婦の寿命の差
 長年、夫婦が幸せに暮らし、ある日どちらかが先に亡くなった場合を想定します。もし、夫を亡くした妻は1年位落ち込みますが、それ以降は、のびのびと暮す場合が多く見られます。逆に、妻に先立たれると5年寿命が短くなり、離別するとさらに10年寿命が短くなるそうです。また、50歳からの平均余命は、妻のいる男性では約30年なのが、妻のいない男性は約21年と短い。さらに、60歳以上の自殺による死亡者数は離婚した男性が妻のいる男性に比べ46倍も多いと言われています。
 結婚は夫婦それぞれのこころとからだの健康に大きく影響し、特に、男性は配偶者・家族の存在の恩恵を強く受けます。男女ともに健康寿命と平均寿命をまっとうし、介護の必要のない生活を送るのが理想的な寿命と言えます。
 夫婦が幸せに暮らしている姿はだれが見ても微笑ましいものです。夫は妻を、妻は夫を、お互いに理解し、末永く幸せに暮らす方法を若い時から考えていきたいものです。
(近藤雅雄:平成27年8月26日掲載)
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