介護の必要がなく健康的に生活できる期間を「健康寿命」と言いますが、平成25年の日本人の健康寿命は男性71.19歳(同年の平均寿命は80.21歳)、女性74.21歳(同86.61歳)です。女性の方が介護期間は長くなっています。そこで、中高年齢女性の健康寿命の延伸とQOL(生活の質)の向上を図るには、適切な食生活と運動の習慣等、酸化ストレスからの予防によって目標が達成できます。
2.男女の寿命の違い
世界中の国において男性の方が短命です。その理由は、①男性は免疫の中枢である胸腺の萎縮が早い(酸化ストレスにかかりやすい)、②基礎代謝量の違い、③染色体の違い(Y染色体は傷つくと回復しない)等が挙げられます。したがって、男性は筋肉量が多く、免疫力が弱い、偏食も多く、デリケートであり、孤独に対して弱いのに対して、女性は免疫力が強く、ストレスに強い。すなわち、男性の方が不適切な食生活や筋肉をたくさん持つことから、酸化ストレスによる免疫力の低下が著しく、その結果、短命であると言えます。
3.免疫強化とアンチエイジング
筋肉(骨格筋、心筋、平滑筋)は24時間活動を行っていますので、それだけ酸素の需要が多い。すなわち活性酸素の生産量も多くなります。そこで、生体は活性酸素を分解する酵素SOD(スーパーオキシドデスムターゼ)、GPx(グルタチオンペルオキシダーゼ)等を進化の過程で獲得してきましたが、これにはエイジングがあり、40歳前後から酵素活性が著しく減少します。そこで、これら活性酸素を分解する酵素の代替作用のある抗酸化栄養素の摂取、適度な運動、休養が大切になります。そして、免疫にとって重要な臓器である胸腺は活性酸素によるダメージが大きいことが分かっています。12歳頃をピークとして胸腺は萎縮してきますが、その後の萎縮のスピードは活性酸素の発生量が多い男性の方が早い。したがって、免疫強化には抗酸化食品を積極的に摂取することが望ましいのです。
4.活性酸素除去方法(抗酸化は抗加齢・免疫強化につながる)
抗酸化食品の摂取、適度な運動(手足を動かす)、疲れる前に休むことが重要です。抗酸化・免疫に関わる食品としてはビタミンA,C,E,B6、フラボノイド類、亜鉛、マンガン、銅、鉄、セレン等を多く含む食品が挙げられます。これら栄養素を含む野菜(目安量1日350g)、果物(目安量1日200g)、豆類、良質のタンパク質の摂取、特に、運動後は十分に摂取することが大切です。
5.健康食品としての5-アミノレブリン酸(ALA)
健康食品には①表示の問題、②過剰の問題、③摂取方法の問題等があり、十分に情報を得てから摂取する必要があります。一方、最近、生体物質である5-ALAが新機能性アミノ酸として貧血予防、運動・代謝機能の亢進、抗酸化、免疫増強、美容などのヘルスケアー領域、脳腫瘍の診断・治療をはじめ多くの疾患の予防・治療などのメディカルケアー領域で、各々注目されています。この5-ALAの大量生産が可能となり、中高年齢者の皮膚の若返りや育毛効果等も期待されます。
6.運動はこころとからだのアンチエイジング
人は動物です。動物は動く物と書きます。筋肉は第2の心臓ともいうように、適度な筋肉をつけることが大切です。運動は定期的に3メッツ以上の強度の身体運動を毎日1時間は行いたいです。運動によって、脳や筋肉が喜び(心身一如)、循環機能を高めるだけでなく、こころもすっきりし、まさにこころとからだのアンチエイジングにつながります。休養は良い睡眠をとりストレスを貯めない工夫が大切です。そして、言葉の使い方も大切です。こころは言葉の影響を最も受け易いため、日常的に前向きな、きれいな言葉を使うよう心掛けましょう。
こころとからだの健康 1.栄養(バランスの取れた食生活) 2.運動(身体を動かす) 3.休養(疲れる前に休む) 4.体質を知る(遺伝子・環境因子相互干渉作用) 5.感謝の気持ちを持つ 6.生きがいを見出す、夢を持つ 7.環境の向上を図る 8.危険因子からの予防(自己防御) 9.自然との対話(自然環境との融合) 10.からだからのサインを習得する(早期診断) 11.自信を持つ、前向きである 12.概日リズムを守る (出展:近藤雅雄著:健康のための生命の科学、2004) |
こころとからだの健康には日頃から感謝の気持ちを抱くこと、いのちの尊さを理解すること、愛情を持つこと、ストレスを貯めないで前向きであること、目標(夢、志)を持つこと、自然のリズムを大切にすることなどが重要です。これらはすべて酸化ストレスを少なくし、免疫能を増強させます(表参照)。
(近藤雅雄:女子体育4・5Vol.57-4・5,p70-71, Apr.May 2015, JAPEW)