こころとからだの健康(5)右脳と左脳を知る

1.男と女の脳の違い
 男性の脳重量が1.45㎏前後に対して女性は1.25~1.35㎏ですが、この理由はよくわかっていません。脳の機能からすると男性は主に右脳を使っているのに対して、女性は右脳と左脳の両方を使っていると言われます。このことは、人間の誕生以来、男性は家族を養うべく食糧を獲得しなければならないため、筋肉運動、推理能力、空間認識などを機能とする右脳が発達し、女性は子孫を残し、愛情を持って育てるべく持久力、語学能力、言語能力、計算能力、書字能力など育児を司る左脳と、本能的に子どもを外敵(環境)から守る右脳をうまく使って発達してきたと思われます。この違いが脳の進化・発達に影響を与え、性差による右脳と左脳の違いとなって現われたものと思われます。すなわち、胎児期に男性ホルモン量が多いと右半球の成長が早くなり、左半球の成長が遅くなって、男性は右脳が発達してきたと考えられます。

2.大脳皮質前頭連合野働き
 脳は大脳(皮質、辺縁系、基底核)、間脳(視床、視床下部)、脳幹(中脳、橋、延髄)、小脳からなりますが、人では他の哺乳動物と異なって大脳皮質が異常に大きく発達し、知的な活動をコントロールできる機能が発達してきました。この大脳皮質については、①全ての人が同じ数の神経細胞(約140億個)を持つ。②心身(こころとからだの働き)の司令塔である。③感覚、運動の統合、意志、創造、思考、言語、感情の中心となる。④成長に従って発達し、ゆっくり退化する。⑤1日、週、月、四季、消化、ホルモンの各リズムが存在する。⑥心身の疲労を回復し、記憶に役立つ睡眠のリズムが存在する。⑦男と女との違い等、脳の中で最も重要ですが、その中でも人間として最も大切なのが、前頭連合野です。
 この前頭連合野は思考、言語、理解、理性など人間としてのこころの働き(精神活動)の中心となっていますので、人としての「こころの中枢」と言えます。哺乳動物では、前頭連合野の重さはヒトが約400g(脳重量の約30%)に対してチンパンジーは約70g(17%)です。さらにサル、イヌ、ネコでは、各々脳重量の12%、6%、2~3%しかありません。笑いは進化の証と言われますが、地球上の生物の中で、笑う動物は前頭連合野の多い人とチンパンジーだけです。さらにチンパンジーよりも大きく前頭連合野が発達した人は言語の機能を獲得し、自分自身に関する情報を意識的に保持しつつ組み合わせて(自己意識)、自分自身をコントロール(自己制御)することが可能ですので、「人間力の中枢」とも言えます。

3.右脳と左脳の違い
 人の言語機能の約90%は左半球にあり、大脳半球左右差の典型例と言えます。言語機能から見ると、左半球は言語半球あるいは優位半球と言われています。この言語に関しては左の前頭葉にブローカの「運動性言語中枢」があり、側頭葉にウェルニッケの「感覚性言語中枢」があります。両者はお互いに連絡し合って生命の司令塔として機能しています。例えば、運動性の言語中枢に障害をあると会話が出来なくなり(運動性の失語症)、感覚性の言語中枢に障害があると相手の話す言葉や書かれた文字の意味がわからなくなる(感覚性の失語症)ようになります。
 左脳は言語のほかに図に示したように計算、書字など分析的、抽象的、論理的な機能が多いのに対して、右脳は空間的知覚や情操的な音楽などについての機能を持ち、言葉で表現できない直感的な理解に関与すると言われています。
左脳と右脳  したがって、左脳は生後に獲得される言語、計算、書字、記憶などを司り、右半身の感覚と運動を支配します。一方、右脳は芸術脳と言って、音楽や絵画、空間認識、非言語的な概念を司り、左半身の感覚と運動を支配します。この左脳と右脳は約2~3億5000万の神経線維を含む脳梁で連絡しています。
 古来より、人間の知恵として、「しわの一番多い手の掌を左右合わせることによって幸せになる」とよく言い伝えられてきましたが、まさに人間はうれしい時、感謝の意を表する時に手を合わせたり、手をたたいたりします。この現象は、脳が活性化し、喜んでいることを反映しています。つまり、左脳からの情報が右脳に移動し、またはその逆が起こり、左右の大脳皮質が猛烈に活動していることを示しています。
 したがって、左脳に入ってきた様々な情報を右脳に連絡するためには左手と右手を合わせることで両方の脳が発達することが考えられますので、毎日欠かさず朝の起床時にいのちに対する感謝を込めて、寝る前に一日の生活・行動への感謝を込めて、そして食事の前後に生きる力を頂くことへの感謝を込めて手を合わせる習慣を身に付けてはいかがでしょうか。
(近藤雅雄:平成27年8月26日掲載)
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