ポルフィリン症研究の歴史と世界及び日本の第1例報告

 ポルフィリン症は「病気の主座がポルフィリン代謝の異常にある一群の疾患」と定義する。ポルフィリン症はポルフィリン・ヘム合成の中間代謝物が過剰に体内に蓄積することによって発症する遺伝性の難病で、患者は皮膚、消化器、精神・神経、循環器、運動器、内分泌等の多彩な機能障害および症状を呈することが特徴である。
 ポルフィリン症は医聖ヒポクラテスにより既に紀元前460年頃に記載されていることが報告されている1)が、今日的には1874年Schultz2)による先天性骨髄性ポルフィリン症(congenital erythropoietic porphyria, CEP)と思われる症例報告が初めてである。その後、1912年、有機化学者のH. Fischer3)によってポルフィリンの本格的な研究がスタートし、患者のぶどう酒様の尿の中から赤い色素を分離し、その構造を決定してからポルフィリンの生化学、臨床医学が急速に進展した。本症の原因は長い間不明であったが、1950年代には米英の研究者により、ヘム合成に関与する各酵素が発見され、ポルフィリン・ヘムの生合成経路が解明された。その後、1960~1970年代には各種遺伝性ポルフィリン症の発見および酵素異常が次々と明らかにされ、1995年までにすべてのポルフィリン代謝系酵素cDNAのクローニングが完成し、ポルフィリン遺伝子異常の解明が一気に進んだ。現在では生化学的、分子生物学的、臨床医学的に総合的なアプロ-チが成されるようになった。
 ここでは、ポルフィリン症の基礎と臨床の研究が一体化して歩んできた歴史的事実と、ポルフィリン症の各病型について世界および日本で初めて発見された症例を紹介する。(近藤雅雄:掲載日2017年3月5日) PDF:ポルフィリン症研究の歴史と世界及び日本の第1例報告
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